仕える人々。
【用語】
『軍政部隊』
:「俺」が率いる増強分隊。司令官(俺)、監察官(神父)の二人の将校と下士官一人、兵十名(選抜歩兵2名、衛生兵一名)。極端な小単位で独立した作戦単位として活動する為に無理に治安維持活動へ準じた訓練を受けているが練度は高くない。軽装甲機動車と3 1/2tトラック各ニ台、KLX250(軍用バイク)二台、偵察ユニット四機と機動ユニット、各種支援装備が配備されている。
手をたたく。
鳴るのは、右手か左手か。
――――――――――公案に「答え無し」とは愚物が証。
考え無しへは応え無し。
「ま、誰にでも解るよなぁ」
「口説かれてるのは判ります♪︎」
『右手が応えたら跳ねちゃうぞ♪︎♪︎』
《とある男女女のプライベート・トーク/東北の旧家から発見された国際連合規格固定記録媒体より》
【異世界大陸東北部/占領地域/軍政主府/軍政司令部/軍政司令官私室/青龍の貴族】
俺の5m圏内。
王城の一区画の広い部屋。
その片隅で依って纏まり塊っている。
いや俺もだけど。
「いやむしろたいちょーを核にした結晶では」
移動しても皆で纏まって動くから、部屋ってか、広間の大半が空っぽ。
「その空間を往き来する美ょぅι゛ょ美童女256歳美少女15歳美少女たちに十代半ば美少女メイドの集合体って珊瑚かな?」
いちいち広い、からな。
豪奢なベッドは大人が十人まとめて寝るも、まだ余る。
普段は大人が一人に大人サイズ六人に二人ちびっ娘だが。
だいだい十人分くらい。
いや広いだけじゃないけれど。
観て触って確かめる価値はある。
うちの娘たちにも、良い刺激。
俺と違いこういう物に慣れてる。
だが、この部屋は二百年以上、使われていなかったんだから。
最近は、帝国軍兵士がチェックしただけ、十年前。
――――――――――手入れする使用人と職人以外は立ち入り禁止。
俺たちが来たせいで陽の目を観た美しさ。
これだけでも数十万人の殺害に値する。
娘どもたち、良く御覧。
壁や天井や柱は彫金上等透彫り通常。
魅る者にだけ観せる仕様は意図的。
絨毯は要〃に敷かれて床は剥き出し。
全体としてフローリングは磨かれた黒檀かな。
異世界の、って付ければ構わん国連方針。
石床じゃないのは北邦特有の贅沢な防寒。
普通の家屋は壁と天井だけだから比較対象外。
石造りに木材の断熱性を生かすのが贅沢。
特権階級標準では石床に木製の床を持ち込む。
小上がりみたいな木製のスペースを設える。
上流階級標準なら厚い絨毯だけだそうな。
広い部屋の一角にだけ断熱構造を設える。
樹々は豊かな土地柄だが材木以外は高級。
農民たちの宿舎なら1シーズン建替え。
それなら継ぎ足し継ぎ接ぎの方がいい。
いざとなれば城や館へ逃げ込むのだし。
だから城に館は石造り土造り魔法強化。
建替え前提の城なんて無いし館も城館。
戦時なら基地だし平時なら有価資源倉庫。
その内装に樹を盛るならば同じ設計思想。
だから難しく、だからステータスに為る。
広い一枚板を採れる巨木は少ないわなぁ。
人が踏み分けて行ける範囲にかぎればだけど。
その辺りは日本と余り変わらない発想だ。
異世界で良い樹を獲るために必要なのはコレ。
魔獣が一杯の南部密林に軍隊を送り込む。
南方作戦かな?
インパールかな?
ベトナムかな?
もちろん異世界では十分な兵站を整える。
大量の食糧。
大量の兵器。
大量の資材。
大勢の死亡計画者。
物質を運搬し糧道を造り使役魔獣が喰う。
地球の先進国ではなかなか出来ないたまにしか。
現代戦の舞台が砂漠や荒野を選ぶ理由だね。
切り開く必要が無いだけで軍隊を動かしやすい。
・・・・・・・・・・実質、動かした、フリなんだが。
帝国以前は使役魔獣が少ないから、余計に高くついたとか。
それを実行できたんだから、この邦は豊かだったんだな。
豊かさ故の過剰人口を廃棄していたってのもあるんだろう。
そんな贅沢素材で広い床一面がおおわれた部屋。
王様に謁見待ちする国家要人たちの待ち受け処。
帝国に滅ぼされる前から使われなくなっていた。
君臨するだけの王に誰も会う必要がなくなって。
新たな支配者帝国は後宮で執務するから来ない。
それでも、ここ二百年くらい今すぐに使える状態を維持してきたんだ、とか。
「惰性?前例?それとも権威?」
異世界の何処にも官僚制は無い。
・・・・・・・・・・帝国は、旧支配者を根絶やすというが。
歴史の改竄は苦手なんだな。
ソフトウェアに捕らわれる官僚主義。
・・・・・・・・・・ハードウェアに無頓着な遊牧民ゆえか。
「石の都なんか反帝国の象徴!」
聖都を壊すのは、魔法使いの希望、だったか。
ならば、この邦に、王の部屋が残っているということは?
「国際連合が爆砕しない理由」
今、そこ。
「マジ空間」
俺たち居住者が纏まって居るから、常に広間の一角だけが込み合っているんだよね。
「纏まったまま動くし」
俺だけなら貧乏性だ。
広い空間の使い途が無い。
うちの娘たちは、まあ、特権階級と中枢住まい。
広い空間を使わないと暮らせない文化の出身。
なのに敢えて密集密着密接してるってことは。
趣味嗜好で通せるんじゃないかな、多分。
「惚れた男に合うタイプ
――――――――――合わせるじゃない」
合わせる辛さに無縁。
社会生活が最も巧く出来るタイプ。
自然な協調性は好きな相手に好かれるのが当たり前。
支配者の性質。
権力が無理強いなら、権威は見倣われる。
ならば、同じく纏まる彼女らは?
メイドさんたちは主や雇用主やゲストに合わせ
・・・・・・・・・・無理がある。
メイド五人衆については。
むっちゃ踏み込んで来てる。
離れて待機の発想がない。
一応、外周、に侍る。
刻が多い、計ってないが。
その外周が5m先。
一っ跳びで届く範囲
――――――――――いやマジ高校生女子なら距離規定がない助走最短でもいけます軽く走幅跳びの記録はそんなもん。
結果。
俺、キャンプ中かな?
「美ょぅι゛ょ美童女256歳美少女が寝袋で15歳美少女たちがテントで十代半ば美少女メイドがテーブルと椅子とか」
屋内キャンプって異世界有数の穀倉が蓄えた富と技術と魔法で造ったデカい城の大きな広間の片隅に娘どもたちで巣が出来た俺は外聞が悪いと思われ。
「しかも広間の中で遊牧生活って美少女テントじゃなくて美少女パオかな?」
メイド五人衆が今も配膳中。
俺の分。
うちの娘らの分。
指揮官と最優先保護対象ら。
此処は王城の中で、間違い無く国際連合占領軍の中心だ。
此処はメイド五人衆の縄張り。
なら中枢以外、国際連合占領軍自体、軍政部隊と言えば。
メイド五人衆から先の縄張り。
うちの部下たち。
普通科十名。
下士官一名。
文官が二人。
監察官は他人か。
カタリベは部外者でいたりいなかったり。
ちゃんと居ますよ。
同じ屋根の下。
城内ってだけ、じゃなく。
同じフロア。
俺の私室。
その隣。
俺の執務室。
その対面。
メイド五人衆の部屋。
更に、その先。
軍政司令部の外郭。
そこが、うちの連中の宿舎。
彼処は選抜されたメイドの縄張り。
つまりは俺たち以外の暮らし。
下士官兵卒の生活、全般だが。
将校との繋がりは下士官のみ。
下士官は兵卒と共に暮らす。
中枢を護る鋼の矛と肉の盾。
将校は下士官兵卒と一緒に過ごしたりは、しない。
まあ一般的な軍隊や戦闘集団あるあるだよね。
同じ釜の飯を食うのは野営中の例外だけ。
戦場より非戦場が圧倒的。
そりゃ仲良しにならない。
ならない様に離れている。
体の距離は、心の距離だ。
肉体関係から始める恋愛とおんなじこと。
なら離れればそうなれる。
視ても観せるな一方通行。
親しむ無かれ畏れられよ。
敵を憎むな、憎めよ将校。
仲間に出来るのは一緒に死ぬ程度のこと。
そんな程度のことなら、国家が暴力装置に命じんわ。
殺すだけでも足りないってのに。
安全に殺せるなら戦争じゃない。
ならば異世界侵略は戦争なのか。
まだまだ油断していないだけか。
名前を借りた作業かもしれない。
いずれにせよ戦時体制のままだ。
日本国会並びに国際連合が命じる。
殺されることで殺す、その命令。
だから将校は部下に関わらない。
人間は対等の相手には従わない。
ましてや殺されては、くれない。
仲間の為じゃ殺すのがせいぜい。
人間は差別する相手の為にだけ、服従し殺して殺される。
その為の仕掛け。
つまり生活、特に、食事は別ける。
だから部下たちは別の部屋。
徒歩三分もあるんだよこれ。
お城っていうか宮殿だから。
現代火器の有効射程を生かせる広さがある。
走ればフル装備で三分です。
普段の迷彩服3型から、フルフェイス&ボディアーマー装着。
もちろん五人は改めて着けずとも常にフル装備で待機してる。
装備の手間を省けば二分か。
戦闘走法だから二人一組で二組がフォローし合いながらだが。
佐藤に芝は単独行動になる。
曹長は隊員と常に一緒で一番先に食べ終わり皆は順番に続く。
全員戦える刻が曹長の食事。
隊員が欠けている刻は曹長が指揮で補い、俺は邪魔をしない。
俺が最も大切な役割だよね。
「死ねって言われないくらい」
そんな三分、向こう側。
軍政司令部の外郭。
俺の部下のエリア。
曹長や文官を含む。
気を使わせてるが、うちの娘たちの、まあ俺の部屋には近付かない様にしている。
神父は特に近付かせない。
毎回〃俺ってか、うちの娘たちの部屋、その前までやって来ては、追い返される。
来て追われるまでが作法。
いまは来客接待中だから来ないんだけど。
カタリベは居たら来いって誘っておいた。
尊重さている、部外者。
自衛隊でも俺の部下ではない。
国際連合占領軍監察官。
それを確認しさせる為の儀式。
距離を置くのは、文字通り距離だけだけどね。
皆も朝昼晩の三食。
ほとんど同時間帯。
俺に合わせて始終。
指揮官と同じことを同じ時間に別な場所で行わせる。
可能行動やタイミングを統一して部隊として動く。
別室にて交代で食事している。
戦闘員だから仕方がないね。
食いながら殺せるもんか。
食事時間は同じだが、飲食は時間帯内で交互。
でも料理は同じ魔女っ娘料理。
美味しいから仕方がないね。
料理の為なら死ねるだろ。
そら魔女っ娘料理を独占したら背後から水平援護射撃をくらうわ。
だから兵士たちの死因を離れた彼処に運ぶ必要がある。
陸上自衛隊初のクーデターを防ぐ為に魔女っ娘料理をうちの部下たちへ運んで行くのは王城メイドが別の一組。
うちの連中は野戦以外の配膳はしない。
野戦中なら味方以外を殺してから食事。
警戒をするだけで足りる。
滞在先では受けるに徹し配膳も調理もしない。
そこは敵地だから、だ。
全員が、戦闘体勢か即応体勢を保てるように。
交互に食い毒味は十分。
王城では、それを軍属の皆さん任せ。
メイド長は不動の統括。
伝令メイドはメイド長付。
メイド五人衆は軍政司令官付。
そして軍政司令部専任メイド。
もちろん俺はメイド長を魅ていると、皆に示す。
実務は彼女の手足が司る。
それを担うのが軍政司令部専任メイドさんたち。
此処から料理を運び出すメイドさんたち。
もちろんメイド長は常に俺を視界に収めている。
「なんで向けるのが主君目線?!ご主人様目線を向けられてるのに?!?」
どうちがうのそれ。




