決まりごと/Manifest Destiny.
【用語】
地球側呼称《カタリベ/歴史家》
現地側呼称《青龍の史家》
?歳/女性
:地球側の政治指導者が定めた役割。すべての情報へのアクセスを許可されており、発表を禁止されている代わりにどんな情報も入手可能。軍政部隊に同行しているのはジャーナリスト志望の大学生。
初登場は第11話「幕間:自由と民主主義のために」
『アムネスティ』:日本の異世界転移後、国連より早く再建された国際的な人権団体(NGO)。売春合法化の実地試験を兼ねて、日本で育成した娼婦を雇用し異世界大陸国連統治下で営業している。なおアムネスティの「売春合法化論」は現実に準拠しており小説上の設定ではない。ただし、支部ごとの独自性が強い団体なので全体の総意と言えるかは微妙。
(詳細は第29話「アムネスティ」 より)
『アムネスティガールズ』:太守領にやってきたアムネスティの人員のうち娼婦の10人。他に管理職、料理人、専門医、エステスタッフなどがいる。強大な侵略者の娼婦となれば異世界種族の敬意の対象。畏れられる貴族や騎士と違ってコミュニケーションが盛ん。彼女たちも蔑んでいる地球人より異世界種族の方が話しやすい。
名前が出ているのはシュリのみ(第35部 「奴隷市場ろうどうしじょう」冒頭 )。
ユダヤ人排斥法が成立しました。
だからユダヤ人に石を投げに行きました。
ユダヤ人差別禁止法が成立しました。
だからユダヤ人を抱きしめにいきました。
私は何も悪いことをしていません。
嫌いだから殺す、よりも尚、気色悪いわ、早く死ね。
・・・・・・・・・・歴史上、繰り返された、実際の主張。
もちろん間違っている。
だから、だ。
稲葉警部は懲役刑。
アイヒマン中佐は絞首刑。
ベリヤNKVD議長は銃殺刑。
地方検察庁特捜部の大坪、佐賀、前田検事は懲戒免職に刑事罰。
法律は個人に命じる。
様々なことを。
最期に、こう命じる。
法律に従った結果は個人が全て独断にて行ったと認めて社会の為に喜んで殺し殺されろ。
吊るすか吊るされるかは籤引きで。
法律に従うとは、そういうこと。
善良な市民は義務を完遂した。
おめでとう!
籤次第で、全人類から個人的に蔑まれ、嘲られ、ただただ汚名だけを遺して惨殺されても。
貶め騙し捏造し拷問して巧く殺した成果を讃えられ殺された者の蔑みから目を逸らしても。
貴方だけは知っている。
――――――――――自分は悪くない――――――――――
間違っても
「なにも悪いことはしてないのに」
などと思わないことだ。
司法判断は尊重されるべき?
何故と答えられてから言え。
籤引きで将軍を選んだ時代なら、籤は神意で運命だけど。
その程度を、考えられもしない輩が名乗れる、歴史学者。
因果応報とは原因と結果。
なんの関係がある?
殺されることと悪いこと。
強弱。
優劣。
善悪。
殺し殺される。
誰にも平等に。
さあ、皆さん、御一緒に。
法律は正しい!
・・・・・・・・・・一般的先進国なら、正気を疑われる。
フランス革命は合法か?
違法です。
アメリカ独立は合法か?
犯罪です。
ホロコーストは合法か?
合法です。
常識として答えられる。
だから今でもパリ市民は日常的に暴動を起こすし、合衆国市民は常々銃器を蓄え、モサドは法律を守った者を殺害する。
無能だが正当な政府なんぞに従う理由はなく、利害の一致しない本国の都合に振り回されるのは迷惑で、虐殺されるのは御免だから、法律を破って一所懸命に犯罪を犯す。
民主制?
法律と同じ。
たかが道具。
誰が魚を捌くのに金槌を使う?
金槌は金属を打つ刻に使うだろ?
自分にとって便利な刻だけ使えばいい。
人々は投票日だけ自由であり、その前後は奴隷に過ぎない。
・・・・・・・・・・そんな警告がある世界。
だから、どうする?
――――――――――解っている、皆が、行う当たり前。
悪法も、また法なり。
ソクラテスは被害が自分に留まるのなら、と受け入れ他者が被害を受けるならば認めなかった。
法に従うは趣味嗜好。
当たり前だ。
法律に従ったのが悪い。
当たり前だ。
そも法律は何処に成り立つ。
世論か?
なら世論が正しい訳だ。
議会か?
なら議会が正しい訳だ。
伝統か?
なら歴史は正しい訳だ。
法治社会ならば誰でも皆が知っている。
上位概念が無ければ法律は成り立たない。
だから法律は成り立たせなくてもいい。
法律より先に社会があったと知っている。
法律は、使えれば十分だ。
鑿のように。
槌のように。
刃のように。
法律も社会も組織も、たかが道具で人間が従う理由など無い。
なのに従ったりするから、殺されて当たり前じゃないか。
法律を守るなんて、何処の荒野から迷い込んだ野蛮人なのか。
法律を考え出した文明の常識。
考え出す必要があった、と言うべきか。
その辺り、数世紀に渡る平和を法度だけで創り維持した文明には、解らない。
数世紀に渡る混乱を無理に収めてはみ出した国も、解らなかったと判らない。
さて。
法治国家ごっこ中の皆々様。
自分が悪いと思いたくないなら、法律を守りたまえ。
自分のせいじゃない、と胸をはって主張したまえ。
法律が君を守ってくれる理由などは無いが。
アイヒマンのように。
「法律に従うなんて、だからナチスは頭が可笑しい」
みんなが嗤ってくれますよ。
【異世界大陸東北部/占領地域/軍政主府/軍政司令部/軍政司令官私室/青龍の貴族】
俺の感想ねぇ。
それ重要?
「重要」
さようか。
比較出来ない。
結局、手が届く範囲にいるのは、ぷにぷに。
異世界種族。
地球人類戦闘員。
「異世界種族だけで掌が指先まで塞がって喰い込んでいますけど」
たゆんたゆんには手が届かない。
風俗嬢とか。
ジャーナリストとか。
「プロフェッショナル好きはドSの鏡」
要るには居るが、触れ無い。
「だれが12時間マイナス補正っ娘たちを壊しながらゼロ距離補正と文字通りタッチされ&フリーズとあらあら補正を焦らしながらわざとらしく他の女たちに観せてるのかな?」
まあ、うちの娘たちは家事以外ずっとマイナス距離だけど。
料理が魔女っ娘。
お嬢が菓子作り。
皆が給仕したり風呂入ったり。
誰かが競って整理整頓。
エルフっ娘に限れば狩り。
お嬢やエルフっ娘には、邦の偉いさんから雑談希望。
それ以外の時間は皆、俺の膝や背中で地球の認可資料を閲覧視聴。
シスターズの手が塞がっている時間はColorfulが甘えてくるわな。
尚メイド五人衆にメイド長は俺の指示待ち。
俺が指示したことないけど。
軍政司令部から奉公人への指示は文官の役割。
俺は責任者で決定者に非ず。
だけど俺を視ている彼女たち。
主の言葉にされる前に求めに応じるのが役割なんだとか凄いな。
俺の様に食事中とかなんとか正当な理由も無しになんとなく理屈を付け来客へ指揮下にない神父を押し付けて早く片付けてオマエの責任でとか考えているが来客に申し訳ないと思うから会わずに済ませたい。
言われたことだけで楽して稼ごうどうせ税金、とか教え込むのは難しそう。
結果。
24時間、地球基準の未成年者に見習われている、立派な大人。
つまり俺には風俗通いの時間がないんですよ、ちょっと早いとおもうの。
アムネスティガールズ。
プロフェッショナルには、娘どもバリアーで近付けない。
当人たちからもサービス券付きで早よ来いまだ早いとか。
順番待ちしてるから、などと意味不明なことを言われる。
俺が順番を待つなら、まだ判るのだが風俗嬢が待つとか。
後日ゆっくりと問い質そう。
「口説くってことか」
プロフェッショナルを口説くのは比較的簡単。
心と肢体は一体不可分。
物理的距離を縮め易い役割なら仲良くなれる。
お金は余りかからない。
仲良くなって中好くなれるかはまた別だがな。
それはナンパの大前提。
「まぁ牡の底辺に囲まれ続けたら男の魅力が映えますよね」
接客業とは違うからね。
一緒に酒をのむだけで何を売っているのやら。
そらぼったくられるわ。
いや直接売れないからこそ仕方なく苦肉の策。
余計な規制が生む犯罪。
必要なことを規制しても守られることはない。
俺には関係無いけれど。
たかが法律。
女が欲しけりゃ女だけを売ってる店へ。
酒が欲しけりゃ酒だけを売ってる店へ。
女なら仲良く中良くなる機会も買える。
店の雰囲気が好きな場合もあるのかも。
酒ならある。
女を売る店は適当だから。
だが来店しないと始まらん。
なのに娘どもたちが許さない。
「風俗嬢も順番まもってるやんけ」
大切なのは順番を守ることじゃない。
守る方が良い順番を創ることだから。
そして生真面目な大学生。
カタリベを口説いてはいるが、口説けて数ヶ月はかかる。
一人に拘る訳もないが口説ける女が少ないからやむ無し。
とはいえ彼女には嫌われているから素晴らしくチャンス。
第一印象だけが重要。
憎まれてるなら避ける。
相手の苦痛だからな。
理由なんて、どうでも
理屈じゃないからな。
気付かれないなら無理。
観たことはあります。
本当に石ころ扱いです。
とても可哀相でした。
好かれてるとやり難い。
まあやるんですけど。
新たに嫌われたくない。
好みの問題ですけど。
だから対処に気を遣う。
跳ぶ簡単、飛ぶ困難。
まあ大多数はフラット。
可もなく不可もなく。
取っ掛りを造る、から。
手間はかかるが慣れだよ慣れ。
たかだがルーチンワーク。
マイナスからは楽だ。
後はあげるだけだもの。
何だって試せるから。
成否がどちらでもいい。
思い切り愉しめます。
嫌われる位で丁度良し。
「挑戦か!十代に優るか微妙でも勝るのは確実な女に考えを読ませてコレか!」
つまり手の届く範囲の女は?
カタリベ。
マメシバ。
アムネスティガールズ。
これだけ数が居れば一人くらいは口説きおとせるかも口説ければ。
さによって届かないなら
・・・・・・・・・・それどころじゃないシスターズ以外がフリーズしてる。
「――――――――――」
そ~いうとこだぞマメシバ。
肝心な刻に固まってしまうから押し倒されないんじゃないか。
刃渡16cmも。
45口径も。
拳ダコは醜いから間接技に特化した戦闘力も。
動けなくなったら台無しだから襲うに襲えぬ。
娘どもたち。
これがだめな大人です。
はい、注目。
Colorfulは長めの耳を向ける。
エルフに似てるが違うんだな。
エルフっ娘なら耳だけ動く。
メイド五人衆が静止、メイド長が監視。
こちらを視ない様にする。
視ない五人を見詰めてる。
シスターズは、それどころじゃないさっきから。
パタパタ。
グイグイ。
ピクピク。
元気で宜しい。
視てるのは十一人。
直接は視ないメイドさんたち。
マメシバ経由で視る。
Colorful経由で視る。
彼女が俺に反応する故に。
彼女たちが俺に反応する故に。
そうと判って視れば、鏡越しでも判ることは多いもんだ。
人間は人間を反射する鏡だよ。
対人観察の基本だね。
相手に視てると思わせない。
視られていると構えてしまう。
素に近い態を把握してからでないと反応を測れないじゃないか。
流石はメイドさんたち。
一人の主に仕えるプロフェッショナル。
執事さんたちも同じか?
まあ、俺にはバレてるけど。
「女を口説くなら他の女を口説きながら、っていうのは常道」
・・・・・・・・・・フリーズしていたマメシバに合わせて、メイド五人衆が配膳再開。




