鏡を魅せれば判ること/Chanel N°5.
【登場人物】
『わたし』
地球側呼称《魔女っ子/魔女っ娘/幼女/ちびっ娘》
現地側呼称《あの娘》
10歳/女性
:異世界人。赤い目をした魔法使い。太守府現地代表。ロングストレートのブロンドに赤い瞳、白い肌。身長は130cm以下。主に魔法使いローブを着る。お嬢やマメシバの着せ替え人形にされることが多い。
ラスボス。
突然、異世界からの侵略者に拉致され、その独りに肢体も心も全て永遠に捧げることを誓わされた(第10話「冬の日。春の日。」より)んだから片想いじゃない絶対に好かれているし愛されてるし所有されているし、それは期限無し条件無し変更不可能だからわたしが産まれてきた理由はそれしかないんです(本人の証言)!
女が自分の魅力に気がついたら、いくつの産業が潰れるだろう。
だからと言って、当事者以外、誰も困らない。
人生が無駄だった、とは耐え難い、らしい。
・・・・・・・・・・無駄とわかる偉大な成果!
必要とされていないからだ
――――――――――必要を造っているだけで。
下手な絵を顔に描く時にだけ様を為す絵具屋。
健康な肢体の醸し出す良香を知らぬ臭気爆弾。
服に着られ服に欲情させようとする本末転倒。
全ての前提。
「貴女はブスだ」
・・・・・・・・・・事実を知られたら、誰が困る?
いや
――――――――――破滅する。
今まで醜くなるために努力していた女たちが、特に。
取り返しがつかない。
だからこそ。
若い世代に女のたしなみを強いていたのに。
より多くの人々が幸せなる。
――――――――――醜くくされた女を観させられる不幸な人々もいなくなる。
元々のブスは誤魔化せなくなるが、取るに足りない少数派。
何よりも不幸になる者たち。
・・・・・・・・・・不要な労働を重ねた人生が要らなかったと気付く者は、自業自得。
下手な御絵描きのために、顔を潰してしまった可哀想な女が如何ばかり。
とはいえ日々、誰にも必要とされていない過剰生産で自滅し続けているのは、貴方方。
朝、起きる。
何故?
出勤する。
何故?
仕事をする。
何故?
必要の無い産業を回転させて、自分の環境を貧しくするため。
無意味だったら、まだよかったか。
全ての前提。
「我々は貧しい」
事実を知れば、誰が困る?
――――――――――世代を重ねて積み重ねた何もかも全てが無駄だったと判ることは、素晴らしい成果!
認めてしまえば、果実となる。
「最大多数の最大幸福」とは、こういうこと。
《産業革命以後の需要と供給について》
【異世界大陸東北部/占領地域/軍政主府/軍政司令部/軍政司令官私室】
俺は塩味。
魔女っ娘が言ってた。
ふみふみさせながら、思い出す。
ふみふみは、お嬢とエルフっ娘。
また、やろう。
やらせる、か。
これについては魔女っ娘の昔話。
真っ赤に涙目で供述させた想出。
やっていることは子どもっぽい。
子どもっぽいのは娘どもだから。
恥ずかしがるのが子どもらしい。
娘どもは何でも口にする。
それを応用できる賢い娘。
うちの娘は出来た娘です。
それを世界中に自慢したいと言ったら号泣して縋られてしまいました。
・・・・・・・・・親バカ・ムーブは子どもに嫌われる。
教えられていない魔女っ娘の料理人本能。
料理を食べる相手の状態に応じた味付け。
相手の味で、その状態が味わえる。
主に塩ょっぱいのは発汗にナトリウムが使われるから。
場所によっては苦いそうな。
それは参考にしないそうな。
その塩加減でメニューを決める、とか。
それほど汗はかかない俺だが。
まあ人間、動かなくても汗はかくしな。
異世界種族でも、それは同じ。
地球人と変わらぬ異世界人。
多分、変わらない魔法使い。
エルフにハーフエルフたち。
基本、塩味。
バリエーションはあるが。
体内と体外でも違うからね。
内側の方が特徴の無い味だ。
無味なのに誰かは解るけど。
〇〇味と言うべきだろうな。
それこそ地球人と同じか。
んで、俺の魔女っ娘。
こまめに俺をチラ見して蕩け顔しているのは、いつものこと。
娘どもたちに安心感を与えているのは、俺の自慢だ憶えとけ。
つまり普段が不安だから安心を与えられるとは、忘れなさい。
子どもは大人に視られていればいい。
だが、なかなか、そうはいかない。
娘どもに視られていても、まあいい。
護る側が視るのは当然。
まあ、視なくても出来るが。
知っていれば護るのは簡単。
護られる側が見詰めてくる。
不安が無いのは視りゃ判る。
ならば何が観えるのか。
俺を観てるのが面白い、ならいい。
ならば気楽だが、そうはならない。
とはいえトータルでなら、まあいい。
委ねさせてしまえば支障はないしな。
不安と安堵のアップダウンも定着させてしまえば安定と同じ。
俺をチラ見しながら手作業に揺るぎが無いのも、普段と同じ。
料理と呼ばれる運動が醸し出すのは健康な動物特有の、それ。
魔女っ娘の薫り。
料理とは、調理の過程を含むもの。
厨房を私室に備えさせたその理由。
うちの娘たちの希望はもちろんだ。
うちの娘たちは、お手伝いに熱心。
傍に居たいと側に置きたい安心感。
魔女っ娘主導でも料理はその代表。
そしてそれが、食事の質を上げる。
調理それは料理。
メインメニューに魔女っ娘自身がくるのは、理の当然。
匂い。
所作。
装い。
刻と処で変化。
変わるだけではなく、替えることが出来る要素。
それを感じているからこそ、目の前で調理する。
それを知っているからこそ俺の前で調理させる。
魔女っ娘自身の味は変わらない。
――――――――――装いが違う。
エプロンという兵器。
装うとは攻撃を意味する。
裾丈股下ゼロcm。
覆うより浮き立たせる。
脚の長さと頭身と。
前面に防御を集中。
エプロンは作業着だからね。
後背に火力を集中。
ファッションはアピールだからね。
厨房を歩き回る。
背面。
側面。
後背。
ズレや隙間も魅せる。
防御力とアピールの比率。
普段のゆったりと違う。
自己主張に目覚めた。
なので必要だから着る。
普段の服と今の装束。
どちらが強い?
本来の魔女っ娘が服を着るときは、長衣が基本。
ほぼ全身をカバー仕切る。
外套もしくは防具の一種。
ナイフくらいは防げます。
アウター素材は外革に内毛皮が大部分。
ローブの下はワンピース。
丈は膝下ブーツまで。
今はストラップサンダル。
防御より足捌き特化。
アンダーはスリップ一つ。
今は何も付けてない。
インナー素材は絹の様な異世界の生地。
昔はズボンにシャツだった。
最初に寝かし付け刻までか。
翌日はスカートへ変わった。
肌に触れる部分は全て柔らかくて滑らかな素材。
異世界の特権階級が御用達。
マメシバが大喜びしている不思議素材。
別に魔法はかかっていない。
接収帝国資産にいくらでもあったから。
特に魔女っ娘の衣服に使う。
他人の稼ぎだと思うと気楽でいいよね。
お陰で、うちの娘らが健康。
文字通り、珠の様な肌が卵肌のままだ。
普通の長衣ではこうならない。
あの娘は肌が強くないから、外套の裏地にさえ負けるのだ。
負けさせたことはありませんけどね。
炊事洗濯が好きだから手荒れはある。
すぐに治癒魔法で治させていますが。
これが日本で一般化したら、便利だろうな。
好きなだけ水仕事できますよ。
手袋って好きじゃないんだよ。
触感が鈍りやり難いんですよ。
完成され老化以前の大人の体でさえ、コレ。
ましてや魔女っ娘をや。
ちっちゃいし。
可愛いいし。
弱いし。
そりゃ防備にも負ける。
いやそれは娘どもの特徴かな。
ちびっ娘以下、お嬢と魔女っ娘。
それに盗賊ギルド頭目の愛娘。
港街のフレンズもって、結構多い。
肢体が成長し終わる前は、こんなもの。
多世界共通。
地球人類と同じ様子。
女性は15歳くらいまで。
そこから先は大きくならない、諦めましょう。
例外はあるが。
元カノくらい。
例外は例外だ。
それまでは丁寧に扱い、防備を固めましょう。
優しく踏んづけ。
軽く抑え。
悉く先回りして。
得意です。
俺は馴れてるから無防備でも大丈夫。
それでも、しっかり着込んで欲しい。
プロフェッショナルでも失敗はある。
念のため。
掴んで持ち歩くから?
俺が良くやる、ちびっ娘移動。
力いっぱい握っても大丈夫!
痕は浸いても痣にはならない。
毎回チェックするよ?
そこはそれ。
人は耐えてしまう、耐えられないのに。
――――――――――我慢が出来てるようじゃダメ。
質観。
触感。
反応。
動作確認を繰り返し繰り返し繰り返し。
――――――――――耐えない堪えない癖をつける。
声を上げる。
肢体が跳ねる。
向かい来る。
肢体のスペックを限界値以上に引出す。
――――――――――壊してしまえば壊さずに済む。
平時だからこそ、確認で済む。
緊急時には無理をさせない。
何をさせても殺さずに出来る。
弱音を吐かない奴は作戦行動の邪魔だ。
――――――――――だから我慢しないを躾て置く。
挹まなく。
隙なく。
余さずに。
そもそも我慢は良くない、肢体に悪い。
――――――――――やり過ぎの先くらいが最適解。
もちろん子どもを運ぶのは慣れたもの。
運ばれたがるのが娘どもたち。
そら俺だって歩きたくない。
大人には許されない贅沢。
それを強請って止まない女は幾らでも居やがりますけどプレゼントに抱っこからスタートってなにそれ。
・・・・・・・・・・うちの娘たちもそうなるのかな。
女でも女の子でも、平時なら運んだくらいで傷めない。
が、念のため。
しかも今は有事。
占領地という戦場。
保護下にある娘どもたちくらいは守れているかどうか。
――――――――――メンテナンスの基本は点検。
柔肌の女を嬲らないときのように。
嬲るべきは心だなんて言いません。
むしろ見栄や拘り趣味嗜好こそを。
・・・・・・・・・・どうすると、申さないから効果的。
もちろん無傷なんだけどね。
安全第一、俺流娘ども運搬術。
真っ裸でも全力全速でも無傷。
内出血どころか痛みも与えず。
とはいえ用心にしくはない。
だから子どもたちに与える装備。
本人くらい軽く。
本人くらい柔らかく。
本人より丈夫であること。
脚回りはブーツ。
もちろん足に合わせてる。
兵隊じゃないからね。
足が一番オーダーメイド。
靴に汎用性を求めちゃいけない。
既製品より三流職人。
プロフェッショナルの作品。
セミプロの大量生産製品群。
レベルが異次元マジ。
まあ、それもこれも外出着だけ。
王城外。
王城内。
司令部。
他人の眼がある場所は全部、外。
うちの娘たちだけじゃないが。
異世界の服を着る人々の感覚。
寝間着ってあれ私服なんだよ。
寝るときに服なんか着ないし。
寝る部屋で着る服ってことだ。
脱ぐのは寝る前、寝落ち以外。
私服と言っても身内に観せる為だ。
相手に俺お前をアピールする刻に。
本当に身内ならば服なんか要らん。
本音と建前にツッ込んじゃいかん。
基本的に服はプライベートに非ず。
服とは即ちオフィシャルとの宣言。
寝間着を寝る刻に着たりはしない。
温度調節は着るではなく掛ける布。
本質的に服は実用品である世界。
・・・・・・・・・・服を仕立てられるのが、上流階級だけなんだが。
だからもちろん、俺の寝床や私室へシャネルNo5を着るような腐肉が侵入したりはしない。
だからこそ、うちの娘たちはリングに上がれる。
――――――――――FIGHT!――――――――――




