ピクニック/Ｂｌｏｏｄ Ｓｐｏｒｔｓ

どうもどうも。

日本語上手でしょう？３年も留学してますから、これくらいは。今日の会見は動画投稿しますしね。ユーザーに言語を合わせます。

ともあれ、人民共和国と民国が統一された中華連邦をよろしくお願いします。

なぜ統一か？

両系統の華僑を合わせると、師団に届くんですよ！旅団２つより、師団一つの方がアピール出来ますよね。

みなさんに広く知らせたいのですよ。ネズミを捕る猫ですよー！って。

え？

国際連合大使が旧人民共和国側な理由？

あらためますか。

留任しただけです。

わざわざ入れ替えて、常任理事国代表との関係を結びなおす手間を省きました。ホームステイ先が、人類の最高指導者宅になりましたからね。

人類の、国連軍最高司令官同然の大統領が毎日訪れますし。

別な人間を大使を選んだら、こんな環境得られませんよ。

良い猫、良い猫。

我が国が常任理事国である理由です。

なにしろ、我が国ほど国連軍を知っている国がありますか？あの、合衆国大統領のお祖父様と正面から殴り合ったんですよ？

現在の国連軍は、アレです。あの一族に率いられた国際連合軍のトルーマン抜き！

異世界の皆さまには謹んで御冥福を。

いやいや、親愛なるトルーマン！

彼が居なければ、共和国がどうなっていたことか！え？判りきってる？では、どうなっていたんでしょうね。

北京に立つのはどちらになったのか。

星条旗？キノコ雲？

《中華連邦国際連合大使会見／海外特派員協会記者会見》

【太守領辺境/廃神殿近郊森の中/軍政・黒旗団混成戦闘部隊中央】

俺はＨＭＭＷＶを離れ、仕方なく、嫌々、愚痴を隠して行軍中。いや、子供が見てるからね？愚痴は言えないよね。

しかし大したことないんだよな。

だいぶ近くまでＨＭＭＷＶで接近出来た。森を抜ければ開けた草原、その先に野盗がたまるアジトの建物。もっと歩きやすい道はあるけれど、あえて森を抜けている。

出来る限り見とがめられずに接近したいからな。大した距離でも険しい地勢でもなかったし。

「ガス」

ダメ。

「トマホーク」

ダメ。

「２０３ｍｍ」

あんのかよ！

「うん。試験配備」

Ｍ１１０・・・・・・俺は頭が痛くなった。２０３ｍｍ砲弾を剣で打ち返した黒騎士は先代だろ。元カノは黒旗団と一緒に黒騎士の名も引き継いでいる。もちろん魔法騎士じゃない。言うまでもなく、砲弾を打ち返せない。魔法は使えない。

「召還！ガンシップ！！」

ちげーよ！！！！それは航空支援要請！！！！！！

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・現地語翻訳すると、そうなるか？

「これかやるのは野盗狩りだからな」

葬式ならＦ-１６を三機呼べる。

だが、愚連隊以下の暴徒狩りに航空支援なんか有り得ない。

なにしろヤツらのアジトには非合法に略奪された民間人がいる。現地の観点から非合法、つまり、野盗アジトに監禁されている民間人の所有権は、野盗にはない。

国際連合は現地慣習法規を尊重するからだ。故に、商取引によらず戦時慣習によらず野盗に略取された民間人は、自らの所有権を自ら持つ、と認めている。

もちろん、俺たちがそれを救出する理由はない。

俺たちは占領軍。

現地の治安維持は、基本的に、現地政府の仕事。

もちろん、基本的に、ってのがミソ。国連軍の都合は常に最優先。このケースでＲＯＥ（交戦規定）が求めるのは、敵、つまり野盗の全滅。

野盗は平和的に散策中の軍政官を襲撃（未遂）したのだから。

では野盗以外は？

協力者でもなく、管理下にも入っていない現地住民。

――――――――――どーでもいい――――――――――

国際連合も国連軍もそんなもん無視、か、まとめて処分。俺たち地球人の責任範囲ではないからだ。

だから、俺たちは命令を完遂する。それ以外は、指先一つ動かさない。動かしてはならない。

「標的は一人残らず殺す」

そう。例外はない。軍事参謀委員会は、牙を剥いた敵の存在を許さない。

「そのために、標的を可能な限り識別した上で殺さなければならない。ゆえに捕獲された現地住民を確保し、標的から分離しなければならない」

どーよ？この理路整然たる名分つくり！元カノはニヤリと笑った。

「そーいうトコも、好き」

【太守領辺境/廃神殿近郊森の中/青龍の野盗討伐軍/青龍の貴族の後ろ】

時折、あたしに確認を求める青龍の貴族。視線を向けるだけだけどね。黙っていれば肯定。異見があれば発言。

さっきまで歌っていたドワーフたちは黙り込んで、散開。黙ってはいるけれど機嫌は良さそう。目がキラキラしてる。

あたしたちは土龍を降りて森の中を進む。

逆三角形に陣形を組み進むドワーフたち。

先頭底辺が三人。大きな銃（ＡＫ-４７Ｊ）を背負い、真ん中の一人が幅広な片刃の剣を振り回して歩くのに邪魔な下生えを刈り、道を造る。

片刃の剣（？）にしては湾曲してるわね？

左右二辺の中央がまた、それぞれ一人。

下生えも茂みも踏み潰して前進。みにがんを構え前衛を支援出来る構え。

最後尾、逆三角形頂点が、まーくじゅうきゅう（Ｍｋ.１９ 自動擲弾銃）

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだか、わからない、鋼の塊を構えている。

逆三角形の陣形、その中心は正三角形。

青龍の貴族が先頭頂点。彼の背後が青龍の女貴族。そして続くのが、あたしたち三人。その更に後ついてくるのがＣｏｌｏｒｆｕｌの五人。

それを囲む三角形左右頂点がマメシバ卿と青龍の道化。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あたしたち、Ｃｏｌｏｒｆｕｌもだけど、青龍の陣形中心が定位置になってるわね。

――――――――――――――――――――――――――――――なんか、間違ってる気がする、かな？

【太守領辺境/廃神殿近郊森の中/軍政・黒旗団混成戦闘部隊中央】

俺は地勢に感謝。比較的平坦な地形、安定した地盤、障害になる植生はせいぜい林レベル。

いや、インドア派事務職だからね、俺。

これが山登りだったら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、お留守番だな。

子供らの目がとってもイタい事に・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・陸上自衛隊の基礎訓練に感謝。完全事務職にも訓練を省かなかった三佐にもかんしゃ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいや。

おつりがくるくらいに、苦労させられてるし。

やっぱり子供ウケするのは体力だよね。

「ロリコン基礎知識！明日の為に！Ｒｅｐｅａｔ！」

一気にアブナくなったじゃねーか！！！！！！！！！！

牽制してくるマメシバ三尉から離れて弾けてるな！！！！！！！！！！

「ジュネーヴ条約に基づき士官としての待遇を――――――――――」

神父が元カノが向けた銃口にバンザイアピール。ガバメントのトリガーにはしっかり指がかかっているあたら、プロとしてどうなのか。

まあ、それ以上に問題なのはフレアスカートにブーツなＣｏｌｏｒｆｕｌ。しかもブーツがファッション性優先で、ヒールが高くないのがまだしも、ってレベル。

改めてみると、違和感がすごいな。

俺たち野戦服の兵士。弾帯と兵器でぐるぐる巻きになり人外豆戦車状態のドワーフ。それに囲まれているのは・・・・・・・・・・・・・・

革の鎧姿が乗馬服のように見えるエルフっ子

生成（きなり）の長衣から眩い金髪をあふれさせた魔女っ子

フリルをふんだんにあしらったドレスにふわふわのクリームブロンド、長めのブーツを履いたお嬢。

そして、白・朱・翠・蒼・橙の色鮮やかな髪に、制服を意識したコスプレのような制服、っというややこしいＣｏｌｏｒｆｕｌ。

戦場かファッションショーかどちらか？

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ショーじゃないかな・・・？？？？？？？

けっして足元が弱くないから支障はない、から、いいんだけどね。

その足元を支えるブーツは、ファッショナブルだが本土から持ち込んだのではない。ドワーフメイド、ってオッサンズは金属だけじゃなく、細工もの全般に強いらしい

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほんとーに、何処に向かっているのか異世界最強傭兵団。

シスターズはいつものことだし、小さい二人向けの野戦服はないから仕方ない、ともいえる。だがしかし、Ｃｏｌｏｒｆｕｌようの野戦服は用意済み。

まあ足元はドワーフの芝刈りで歩きやすいし、ロングブーツなら森林浴にも相応しい。

んが！！

似合っているが、そうじゃない。

俺は出発前の騒動を思い出す。

想定戦場の、想定待機場所が原生林だってことは、偵察結果で最初から判っていたことだ。だから野戦服を支給しようとしたのだが。

即時拒否。

全力拒否。

拒否確定。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マメシバ三尉が。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌスタイリスト、コーディネーターたるマメシバ三尉。なんで決まったなぞ役職。

・・・・・・・５０ｋｍ圏内で女の子のファッションについて口出しできる能力があるのは、マメシバ三尉だけだったからだが。

俺が何かいう前にＣｏｌｏｒｆｕｌ達に

「可愛い姿を魅せたいですよね！！！！！！！！！！」

と、先手を打たれた。

肯くんじゃありません、Ｃｏｌｏｒｆｕｌ。

マメシバ三尉はＣｏｌｏｒｆｕｌの上司じゃない、指揮系統が違う。だが、遠慮深いＣｏｌｏｒｆｕｌ、この子らには断りにくかろう。

パワハラじゃないかな？

うん、間違いない。パワーハラスメントは、形式的上下関係に因らずに認定される。

「思ったままに言え」

と水を向けたのだが。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・似合いませんか？」

と橙。

いやいやいや、そう来るか？

「我が君が、この装束をお嫌いでしたら従います」

と白。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――かくして、決着。

似合っていて嫌いではない無いために、何故かマメシバ三尉の主張が通った。

俺の感想を基準にするのやめてくれる？

司令官だけどね？？

形式的には一番の責任者だけどね？？？

能力で言うなら元カノの方が上だからね？？？？

戦闘指揮もファッションチェックも責任は持つけど判断の自信はないから！！！！！

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、戦場ではあっても戦闘させるわけじゃなし。Ｃｏｌｏｒｆｕｌ自身も服を気に入ってるからいいか。

おしゃれしたい年頃だ。

奴隷にするべく、選ばれた母体から計画的に出産されたハーフエルフ。

それがＣｏｌｏｒｆｕｌたち。

奴隷の子供は血統によらずに奴隷となる。

異世界のルール、故に美しく貴重なハーフエルフを生産する事業が成立する。競走馬の育種家と理屈は同じだ。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌたちに訊けば奴隷としての訓練中ってか学習中（おなじか）、は薄物一つで過ごしていたらしい。

肉体が透けて見えるので・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・奴隷の育成具合をチェックしやすいように。

その話をＣｏｌｏｒｆｕｌたちから聴いた。凄く気分が悪くなったが、顔には出さなかった。なぜかＣｏｌｏｒｆｕｌが気にするからね。

もちろん育成係の女奴隷に囲まれて、魔法や家屋で暑さ寒さを調整され

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・文字通り、温室育ち。

商品のラッピングとして、持ち主に合わせる為に、ドレスや化粧は学んだようだが。

あー、だから、俺の感想を求めるのか。

雇用主の代理人に過ぎないのだが。Ｃｏｌｏｒｆｕｌは俺たちから見れば第二次反抗期相当だが、中世相当なこちら側では大人。

ただ、育ちかたが微妙に過ぎる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうすっかな？

軍属としての支度金、これからは給料だってでる。国連軍の給料は現地通貨に換算可能。太守府に戻ったら、お嬢にたのんで店を紹介してもらい、Ｃｏｌｏｒｆｕｌも自身の服を買ってみればいい。

自分の力、お金がもたらす、ささやかな自己決定。

自分の好きな服を買う。

そこから始めればいいか。

俺たちがいなくなっても、生き残ろうとするように。

元カノが視線で合図。

さて、お仕事お仕事。

【太守領辺境/廃神殿近郊森の中/青龍の野盗討伐軍/青龍の貴族の後ろ】

「確認」

青龍の女将軍が歩きながら、皆に聴かせた。

「標的は８０前後」

青龍の操る、天空の眼。あたしたちの上に浮かぶそれ。略奪を終えて、昨日から、朝から移動中の野盗を捉えていた、らしい。

まあ、あたしは青龍の貴族が見ていた水鏡を横から見ていただけ。

真上から見た野盗たち。頭に印が付き、人数が表示された。一組二十人以上。青龍に潰された組以外の三組７２人。

みな根城に帰っていることは確認済み。

根城に残っていた野盗が１０人くらいなら、捕らえた野盗達が言う人数より多い。村で殺した１４人、捕らえて土龍に縛り上げた４人。それを加えれば１００に届く。

尋問された野盗たちは青龍の魔法で嘘はつけない。なら、思い違い？にしては、４人が同じように勘違いするかしらね。

【太守領辺境/廃神殿近郊森の中/青龍の野盗討伐軍/青龍の貴族の右後ろ】

「内部の略奪品は三、四十人くらいかな」

わたしの体が震えます。

さらわれた人たち・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・女の人たち。

ねえ様、ちいねえ様は教えてくださらない。

わたしも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・考えたく、ありません。

酷いことになっているのはわかります。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わたしは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ううん。

出来ることをさがさないと。

みつからないかも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ご主人様が、手を握り返してくださいました。

【太守領辺境/廃神殿近郊森の中/軍政・黒旗団混成戦闘部隊中央】

「場所は石造りの建物、神殿、跡？」

元カノが続ける。

俺の視線にエルフっ子が無言で肯定。

帝国以前に地域をまとめていた、神殿の廃墟。しかし破壊もされていない。帝国が敵視する神殿には、後難を恐れて誰も近づかなかった、だけらしい。

丈夫でそれなりに広く人目につかない。犯罪者のたまり場に最適の不動産。

俺はそれをホログラフ――――――――――佐藤、芝の視線で確認。

つまり二人の装備についているカメラの映像。さらに哨戒気球の高高度映像。自動旋回中の偵察ユニット、つまり大型ラジコンのスキャン結果。

などなどが複合処理され表示されている。

風も穏やか、ラジコン日和。でもなきゃ、自動旋回で放置できない。

天気がよく視界が広い――――――――――つまり光学走査に最適。

春の日差しは穏やかで、森林の木陰が作戦地域の熱量を安定させる――――――――――赤外線走査に最適。

建物の中以外は丸見えだ。

「建物は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・壊しちゃだめか」

元カノがステータスを確認。

ＵＮＥＳＣＯ（国際連合教育科学文化機関）から非破壊指定が付いている。

開戦以来、もしかしたら開戦前から、異世界の建造物はデータがすべて国際連合に送られている。主に軍事目的だが、それだけじゃない。

受け取った情報を国連の専門機関が検証し、いろんな注文をつけてくるのだ。

もちろん、国連軍作戦上の必要はすべてに優先する、ってのは伊達じゃない。

特例を除き国連軍兵士、軍属、協力者の安全は優先される。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それ以外、現地住民の安全は、そもそも考慮されない。

文化的価値が高い、と判断された宗教建築物がある街に帝国軍がたてこもったケース。

該当の帝国軍部隊は少数故に、兵站線を脅かす可能性はなく作戦上は無視して良かった。

だが、保全要請を受けた為に作戦変更。

神経ガスによる掃討と除染、協力者と軍属による持続的保存作戦が設えられた。考慮されなかった人数は万を超えるだろう。

曹長が実際に参加した作戦・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・このように国連軍は異世界文物の保護に熱心だ。

戦後はＵＮＥＳＣＯ強制保全部隊が創られるというネタすら

「出来るよ」

マジか元カノ。珍しく、うんざりした表情。

「そーいうの、好きでしょう」

俺は嫌いだが、越権と見分けがつかないような、曖昧な指揮系統で、敵味方の区別が必要ない、予算も装備も出所を遡れない・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・そんな部隊が大好きな三佐を、１人だけ知っている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・がんばれよ、元カノ。

「なんでアタシよ！！！！！！！！！！」

よって。

「ちょ！！！！！！！！！！」

さておき、俺たちは８０名オーバーの敵を小火器だけで制圧するのである。建物を傷つけないように、弾痕ぐらいは勘弁していただくとして。

・・・・・・・・・・・・・・・馬鹿正直に上の判断を仰いだら、ガスを使えって言ってくるかもな。

ここは現場の判断だ。

人質、もとい、略奪された現地住民を傷つけないような結果になるだろう――――――――――なるべくね。

「ぜーったい、巻き添えにしてやる」

・・・・・・・・・・・・・・・ＵＮＥＳＣＯ強制保全部隊、三佐の悪戯への巻き添えは御免被る。