同性愛が無い世界/Over Quality.
【用語】
『飛蝗』
:一定の範囲に居る同種の密度が規定値に達することでバッタが変異体を為し群生し共喰いを含む個体の自滅的補食の暴走で長距離移動に奔り生息密度を急減させること。レミング同様、自殺なのだが「人間だけに自意識がある」というキリスト教の基本原理から「あれは事故死である」とWikipediaに書いてあるとか。
例えの話。
パソコンには及ばない。
電話機には及ばない。
どちらかとして使えば不自由だ。
商品名「高機能端末」のことです。
低機能故の汎用性なんですがね。
・・・・・・・・・・騙さないと売れないし、騙されても気がつかない。
多世界の話。
環境に適応しないことで環境に適応するんですよ。
環境に適応出来ない種は、滅びます。
環境に駆逐されるが故に。
環境に適応し過ぎた種は、滅びます。
環境に吸収されるが故に。
異世界の話。
帝国の支配階級には同性愛が無いんですよ。
禁止じゃありません。
知らないんです。
概念自体を。
それを必要とする環境にはないからですよ。
バッタだって指定の条件を与えなければ飛蝗に成れない。
それとおなじことです。
個体に意思があり得る、と仮定しても関わることはない。
その条件は何か、です。
過少と過剰。
必需品のこと。
餓えていれば人口が増やせません。
出産規制なんか必要ありません。
飢餓を防ぐ為に人口を減らす。
そもそも素人考えなんですよ。
人口過剰で飢餓は起きません。
飢餓は生産減少で起こります。
供給過剰社会でなければ、ね。
生産減少により人口減少。
生産量と消費量の調整。
変動落差と比例します。
経過時間と反比例です。
それを完全に調和させることができたら予言です。
そう出来なくても、そう為ります。
餓死以前に産まれなく為る前に産まなくなります。
だから、神託は必要が無いんです。
・・・・・・・・・・その似姿も、です。
ああもちろん、同性愛も同性愛者も、幾らでもある一つのオプションに過ぎませんが。
不適切な環境への適応。
適応する為に生じた不適応。
逆もまた真なり。
材料が無いから生産出来ない。
それが飢餓の状態ですね。
ならば過剰でも同じことです。
適切過ぎる環境への適応。
不適応により生み出す適応。
古代ギリシャ文明に置いて「少年愛は哲学者の嗜み」と言われていました。
――――――――――それが必要だったから。
過剰供給に溺死させられないために。
人口は消費もしますが、生産も出来てしまうでしょう?
生産過剰。
それは当然、破局をもたらします。
蓄積されるだけの財貨。
廃棄されるだけの商品。
意味を失っていく価値。
広大な惑星の極々僅かな可住領域を磨り潰す前に、個々区々な生活範囲と時間が無くなります。
・・・・・・・・・・今、貴殿方は生きてますか?
生きているのだとすれば人口を、生産を、増やすことだけは防げたからです。
高齢化の御蔭。
ニートの功績。
少子化の功徳。
そして同性愛者にも感謝しましょう。
誰一人も産み出さないでいてくれて有り難う今後もそう在り続けてください!
・・・・・・・・・・状況が変わるまでは。
異世界に来たくらいでは、何も変わりませんけれども。
異世界侵略戦争で過剰在庫の処分が済めば変わるかも。
異世界同化政策で宇宙一つ再開発するから変わるかも。
異世界異種族との混淆を進める過程を経て変わるかも。
まだ、変えません。
――――――――――地球人類については。
既に変えています。
・・・・・・・・・・不適応というオプションが必要ない世界。
従来の異世界。
帝国の支配階級は充たされています。
世界を支配して奪い続けてますから。
帝国の支配階級は満たされていません。
世界を征服し奪い続けていますから。
餓えるから奪う。
奪えるから満腹。
抑える必要が、まったく、無い。
そりゃ、飛蝗がバッタに還る必要は、ありませんよね。
異世界に最適化した帝国支配階級が、異世界からの侵略に滅ぼされるのは、過剰適応がもたらす必然に過ぎません。
環境に適応する為の不適応。
不適応による環境への適応。
環境に隷属しない生物は、居なくなる。
――――――――――ならば?――――――――――
《国際連合信託統治理事会/国際連合工業開発機関/同化政策部会》
【大陸東北部/太守領中心/太守府中央/王城/正門前】
ボクは思わず一言。
「うん、ムカつく!」
――――――――――拐いに来いよ!
せっかく無理の全くない旅程で、太守府まで来たってのに。
エルフじゃないから疲れたら仕草に出る。
婆と違って、疲れが髪や肌には出ないけれど。
常に視られることも、常日頃に過ぎない。
青龍に、しかも、夜も視られるのは初めてだけど。
だから今も青龍には視られているわけで。
――――――――ナニしてんのさ!――――――――
どうせ押印と進講に追われてるんでしょ?
秘書官に説かせる。
書記官に書かせる。
一問一答。
三行一文。
繰り返し繰り返し繰り返し
・・・・・・・・・・年末のボク?
はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。
うぅん。
今はいいや。
どうしようかな。
動きなし。
・・・・・・・・・・待ってらんない、退屈。
拐われないらしい。
意地になってるな。
それは、アリかも。
・・・・・・・・・・やだ!
新しい嗜好に目覚めさせられた!
――――――――――これから?
それまで、どうしようかな。
ボクが迎えを待つとはね。
まだかな。
まだかな?
まだかな!
待ち伏せするのは得意だけど。
身を隠さず。
隠せず。
誇示してる。
ただ立っているだけだけど。
立礼も得意。
行進くらい。
実戦な好き。
装飾品扱いも愉しいけど。
慣れてはいる。
魅せながら観る。
煽って魅せる。
ボクを魅ている連中。
青龍の使い魔。
衛兵。
執事。
職人。
奉公人。
各家のメイド。
・・・・・・・・・役目を忘れない、って、どうなのさ!
むちゃくちゃ命賭けで戦ってる。
―――――――――頭上に剣でも吊るされてるのかな?
だからと無視できる、ボクじゃない。
男は当然、色目を使ってくる。
女なら当たり前、って程度じゃない。
観るだけ八割、残りは考える。
・・・・・・・・・・はぁ~~~~~~~~~。
オマエじゃない。
顔が良くない。
肢体は普通。
頭も平凡。
全く
――――――――――引き立て役、御苦労。
空を見上げて挑発。
ほらほら、ボクが視られてますよ?
焦らすの止め、そういうのいいから。
拐って閉じ込めれば独り占めだよ?
・・・・・・・・・・退屈。
メイドの屈辱は、まあ面白いか。
比較は原理。
自分と他人。
優劣は自明。
こと魅力となれば、例外は無く。
でも農婦なら比べやしない。
目を伏せて見えないフリ。
でも街娘なら見倣ってみる。
素材が違うと観えてない。
でも邦を統べる周りならば。
どうしても比べちゃう。
眼を逸らせない。
審美眼を鍛えられているから。
真似も出来ない。
比べられたら自殺モノ。
かといって、何も感じられないほどに、諦めきれない。
屈辱は誇りの証。
向上心が盛んで宜しい。
それが無駄でも。
産まれも育ちも異なるから。
一生、観上げてるだけ。
ボクらは鏡みたいなもんだ。
立位置を思い知らせる。
自分を知ることが出来るなんて、これほど好都合なことはない。
ボクを基準に、どれくらい下か。
魅力を測って、使うと良いよ。
それが出来る、価値がある。
反発出来ないにせよ、このボクと自分を比べて観る、ことを出来る出来ちゃう、やっている。
・・・・・・・・・・自信持ちすぎ。
それは此処だから。
太守府。
邦一番の街。
豊かさも一番だ。
この邦は小麦が溢れている。
皆、肌艶が良い。
農婦でさえ。
底々は。
その中でも、丸々と肥る太守府の者たちは、特別な部類だ。
豊かさに包まれ。
上を目指して争える。
良い血統が溢れ。
飛沫が民草に混ざる。
没落も勃興も、自由自在。
混淆して。
撹拌して。
分離して。
決して一つには為らない。
仕える者。
仕えられる者。
誰もが標準より上。
その中から、美しさと可愛らしさだけで選ばれた、メイド。
自負がある。
誇りとは違う。
だからこそ必死。
恵まれた産まれに安住できず、磨き上げ研鑽を重ねた容姿。
出来なかった。
磨く余地があった。
まだ答えじゃなかった。
そりゃ、ボクを観せられたら、絶望するよね。
最高の武具が蝋の斧。
唯一の命綱が蜘蛛の糸。
自分の寿命が一昨日まで。
容姿って、勝敗の決定的な差なんだから。
生まれは越えられない。
優れさせる血の連なり。
そこから選別したんだ。
愛らしく美しく可愛らしいなんて、基本さ。
妬まれるのが、限度だけど。
手が届かない、程度のこと。
比べられちゃう、んだけど。
これがエルフなら違うんだけどな。
誰もが憧れ比べられない。
ハーフエルフも違うんだけどな。
誰もが蔑み比べられまい。
ボクの容姿は人の範疇
・・・・・・・・・・ってこと。
言い換えれば、手が届く。
邦の主と為れば尚のこと。
手が届くから延ばしなよ。
ほんと、ナニヤってんのかな?
――――――――――青龍の貴族。
なんであれ謁見は難しいけど、邂逅なら易しい。
ボクならどうする?
――――――――――で、判ること。
最初の作戦とは違うけど。
普通に太守と御目通り。
身分に不足がなく、初見。
ま、五年くらいはかかるよね。
手順を間違えずに金に糸目をつけなければ、だけど。
帝国の太守相当が、ここに居る青龍の貴族。
なら諸王国時代ならば王様。
当時は形骸化していたから普通は会う機会がない。
実権を持つ、宰相大臣侍従長辺りが会う。
権威と権力が二つ有った時代。
以後、帝国とは真逆の発想。
その時代の方が偉い奴に会い易かったよね。
だから殺し易かったわけで。
帝国支配で階級と権力が等しくなったから。
殺さない、のに会いにくい。
普通なら何年かかるのやら。
モノ凄く魅力的な女なら一ヶ月。
王が男ならば、当然じゃんか。
ボクがわざわざ自分で来た理由。
身元の確認さえ抜ければ済む。
その用意もしてきたんだけどなぁ。
ボクが王に出逢えばすぐ解決。
そりゃ当然、独り占めされるよね。
でも、出逢うまで、一日で済む。
・・・・・・・・・・そこから先は、一生モノ。
青龍は強いからね。
殺されるのを気にしない。
それが強さだから。
しかも此処の青龍は強い。
だから、すぐ済む。
ボクを縛って放すだろう
・・・・・・・・・・今もそう判る。
領民の女たちを奪って傅かせて支配。
何故か青龍がヤらないこと。
此処の青龍、青龍の貴族だけがヤる。
ならボクの先は決まってる。
面通しまで済んでいるしね。
港街で眼を付けられていた、とかさ。
だから人魚が触れてきた。
ならボクが拐われるのは、当たり前。
とりあえず、でも、一週間じゃ済まない、かな。
我慢できる範囲、で収められるなら、二ヶ月が限度、かなぁ。
だから早く初めて欲しいんだけど。
初心者には慣れる時間が必要。
早く速くはやく、ってのに。
・・・・・・・・・・解って無い訳が無い。
頭上に居る、青龍の使い魔。
ボクが居るのに、無視してるな。
初体験を強いて弄ぶ訳、ね。
侵略して蹂躙し隷属しろってか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ボクから、行くワケ?
「ムカつく~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」




