幕間：こちらニッポン……
【用語】
『連合与党』：作品世界における政権与党。複数政党と複数会派による連立政権。日本の政治にはよくあることだが、政治思想から政策まで左右両派が混在。中心となっているのは国連中心主義/経済統制志向の左派リベラル系。転移前から与党第一党幹事長の指導力だけで成立しているといわれ、その強烈な個性に引きずられている側面を持つ。極端な議会中心主義をとり、首相は「幹事長の操り人形」で「閣僚は衆参両院各委員会の事務処理係」と言うのが世評。転移後の混乱に乗じて各種立法が通過、従来にはあり得なかった議会強化策が実行される。移転前から官僚機構とは真正面から対立しており、連立の中枢議員は逮捕間近とささやかれていた。移転後は国会の会期消滅通年化で議員不逮捕特権に空白が無くなり、在日米軍を背景とした米国など各国の視線が厳しいために宣伝合戦でにらみ合いが続いている。「異世界よりも国内の敵と戦っている」と指摘されるのも故なしとは言えない。だが国際連合を再建し対異世界戦争を開始推進しているのは間違いない。
『野党』：作品世界における連合与党に対抗する単一政党。転移時点の党執行部／主流は党内左派。異世界転移後、リベラル系与党連合と大連立、挙国一致内閣を造る。が、第一回閣議で閣内不一致を理由に、野党閣僚が全員罷免。全く選挙準備の無いまま、衆議院が解散。準備完了している与党との選挙戦に入った。これを「騙し討ち解散」と呼ぶ。野党内では責任をとって左派執行部は総退陣。代わって少数派ながら責任追求の急先鋒である、党内極右派が執行部を掌握。左派右派ともに執行部から距離を置き、選挙戦に突入。極右のみで創られた公約が、支持層の離叛を招いた結果、大敗。改選前議席が与野党で３：１であったものが、４：１へ。左派議員はほぼ落選。極右と右派は議席を残したが、執行部から極右は追放され右派が主導権を握る。現在、野党は対異世界戦争推進に反対ではないためにその点への言及は避ける方針。代わりに与党の統制経済を批判し、自由主義経済で論陣をはっている。
野党党首に関して
覚書
・この人物は日本最後の右翼思想家と言われている。
・そもそも戦時経済（統制経済/開発独裁）志向の保守思想なので自由主義経済の解釈は微妙。
・与党の詐術で野党内左右両派閥が壊滅しなければ総裁の地位に就くことはなかっただろう。
・右翼団体の多くがそうであるように台湾系半島系の人脈に強い。
・与党幹事長が大陸系（大平洋双方）に強いことと好対照をなしている。
※第２２８話＜この日、なんの日、恥辱の日＞参照のこと
※第３１５話＜無限責任＞ 参照のこと
「働かざる者、食うべからず」
などとは言わぬが善かろう。
「.…貧乏って、辛いんですね」
と憐れまれるだけだ。
ちょうど、その頃。
日本列島。
異世界転移直後に遡って全ての資産は凍結された。
労働人口の八割は自宅待機。
別に待機しなくても良いが。
必要な労働力は、一割以下。
十人に九人の労働が元々、不要だった。
なら何故、今まで働いていたのか、ということになるが。
趣味の過労死。
娯楽の痛勤。
暇潰しの義務。
結果は、誰にとっても害でしかない、環境破壊と自己満足。
どうしてこうなった？
産業革命の後。
誰も言わなかった。
もう造らなくていい？
・・・・・・・・・・そりゃ言えない。
ダイエットする人に言えるか？
――――――――――食わなきゃいいだろ。
逆のことが言われ始めたのは、この頃。
働かざる者、食うべからず。
人類の歴史で、初めて誕生した概念だ。
なにしろ必要を満たす以上に生産できてしまうのだ。
そうとでも言わなければ、働かせられなかったのだろう。
生産物を捨てる場所を市場と呼び、それを争う消費が戦争。
帝国主義が始まったのも、この頃。
何故？
別に理屈なんかない。
陰謀があれば良かったが。
人間はそれほど利口ではなく。
強いて言うなら。
惰性。
弾み。
偶然。
必然性は全く無い。
何かのタイミング次第で真逆になっただろう。
――――――――――強いて言うなら、異世界転移がなかったから、か。
欠乏が日常だった地域の動物。
それは必要以上に食いたがる。
普通そんな処では暮らさない。
生物は環境の付属品に過ぎない。
豊かな環境にこそ動物は住まう。
そも飢餓地帯には生物がいない。
それを覆せるのは人の営み。
だいたいローマ帝国のせい。
物流を整えて、貧しい欧州と豊かな中東アフリカを結んだ結果、自給自足出来ない地域に過剰人口が日常化。
栄光のローマ
――――――――――欧州文明の原点。
だからこそ
・・・・・・・・・・素晴らしい過去。
それが数百年続いて、崩壊。
人口の維持システムだけが残された。
そりゃ日常的に飢餓となる。
だから食うのを止めずにダイエット。
そんな貧困層が武装して世界へ流出したのが西欧化と呼ばれる。
欧州というグローバル・スタンダードの完成。
霊長類と言われる種族の特異な例外の一般化。
今日明日の飯に困らぬ多数派、ほとんどの人類が巻き込まれた。
わずか二十年。
一世代挟めば当たり前。
宇宙開闢以来の真理に思えてしまう。
常識なんか、その程度。
当たり前の理由を考えなかったから。
だから製品やサービスが有り余り、消滅させるために経済政策が必要だった。
みんながみんな、働く為に働いていた、ということになる。
それが止まった、半年前。
―――――異世界転移したから仕方がない―――――
だろ？
今まで全く無駄な生産で自分の首を絞めていました、より判りやすい。
数百年苦労してきたのは全く徒労ではなくやらない方が良かったです。
日々の営み、つまりは愚行を停められない理由は、そんなところだし。
何もしない方が良かった、と認めて取り消すのが一番楽で確実だ。
馬鹿だから間違いなく失敗することをやらかしました、すいません。
馬鹿が馬鹿をやらかすのを停められませんでした、って言えません。
馬鹿なことをしたなんて自覚して豆腐メンタルは生きていけません。
だから皆さまの御意見を生かして今後も改良に努めてまいります。
・・・・・・・・・・人類史上よくあること。
だから、なにもかも、考えちゃいけなくて、すべて天変地異のせい。
その結果。
産業基盤の八割が遊休施設であり、保守管理のみ続けられている。
数ヶ月の経験で、凍結解除のあとに資産に意味がある、と思っているものは誰もいない。
それは財産権の侵害だが国際連合決議がある。
日本国憲法前文が国際社会の意志を尊重しているから仕方がない。
無数の訴訟が増え続けているが、結審する頃に判決が意味を持つのやら。
官僚は根本的に自由に馴染まず、統制経済をこそ必須にしている。
裁判官と言う官僚が自らの酸素を取り除く訳がないのだ。
官庁の無制限キップ、統治行為論で判断回避が今から決定している。
国家の上に法があり。
法の上には官僚がいる。
原理と原則、現実はない。
レバノン人が裸足で逃げ出す法治国家。
有価資源は公的な管理に移され、各地方自治体が管理。
・・・・・・・・・・何をするわけでもないが。
金融資産は一定比率以内で利用可能だが、利息は無し。
・・・・・・・・・・何が出来るわけでもないが。
海外が無ければ資源や資産の管理など容易いこと。
多くの赤色貴族を支えた海外口座は存在しない。
資産や資材、まとめて言えば財産。
何処から何処に移そうと、ポケットの右から左と同じこと。
個人や法人のソレは孤立していて見付かり易い。
誰が見付けるのかと言えば国会議員から地方議員、各種支持団体のネットワークに必ずかかる。
とはいえ確認以外はなにもされない。
金が意味を失えば心づけにも意味がない。
不足が無いから隠しても意味がない。
有り余る資源の中、余剰資産など誰も必要としていないからだ。
一応確認しておくのは、もしかしたらに対する演習。
むしろ労働意欲を満たす為の遊び、かもしれない。
異世界転移だって起こったんだから、何でもありだ。
・・・・・・・・・・本気にしているとはいえないが、一応、口上はそうなってます。
凍結される以前に、財産が意味を失った世界。
産業革命以前に戻しやり直したらこんな感じ。
日本が異世界転移したんだから、仕方がない。
・・・・・・・・・・本気にしているとはいえないが、一応、口上はそうなってます。
そもそも先進国一般で、財産権の見直しは進んでいたよね？
公共経済。
私権の制限。
ベーシックインカム。
異世界転移で好都合とか。
――――――――――理解出来ない奴に説明する手間が省けたとか、思ってないから。
あくまでも緊急事態に伴う恒久的な非常措置であり異世界再転移が起きたら見直しを検討いたします。
・・・・・・・・・・現状なにも困らぬ議員たちによる日本国衆議院決議より。
公的な、あるいは私的な労働は社会の維持に必要な範囲のみ。
公的な活動すら半分以上必要無い。
農業を中心とした一次産業。
一次産業と再活性化に必要な作業。
軽工業を中心とした二次産業。
二次産業は消耗品の生産再生のみ。
ほぼ不要となった三次産業。
三次産業は流通以外は必要が無い。
一番重点を置かれたのは一次産業だが、それも既存生産の消滅を加味して総量は激減した。
当然、労働力も労働時間も必要無い。
農協や漁協。
組合。
地方公務員。
末端の雇用主に指揮された非正規労働者の一部。
それで社会が維持できるかやれば解った。
ほぼ自主管理だけで日本は維持出来てる。
働く者だけは給与体系に沿った給与を得られる。
自宅待機者には、従来収の半額が支給。
納税記録を元に上限下限はあり勤務先経由支払。
自営業には仕方なく税務署が支払代行。
それを使おうが使うまいが個々人の勝手となる。
元手は日本銀行券なのだから幾らでも印刷する。
まさにそのまま、経済の凍結停止転移前を維持。
そのうち戻る、と信じる向きは減少し続けてる。
そのうち戻す、と考える議員は余りいない様子。
何故ならば、既存の利権構造崩壊、大歓迎。
昨年政権を獲ったばかりの与党連合はもちろん。
次回政権奪還を目論む単一野党も同じ。
キャスティングボードを握りたい確かな野党も。
与党連合の支持基盤は労働組合が中心。
組合自主管理の利権構造は、その為に造られた。
地方公務員組合で地方自治体も管理下。
圧倒的な優位で次の選挙を勝ち獲る日程作成済。
目指せ二大政党制が選挙責任者の理想郷。
単一野党は政権を失った前指導部を完全に追放。
反主流派いわゆる守旧派が指導してる。
彼らは農協や郵便局など一次、二次産業に強い。
補助金や地域経済なら、お手のものだ。
現政権を利用し従来の利権構造を根絶しにする。
恨み辛みを擦付け綺麗な体で政権復帰。
今度こそ、ぶっ壊されずに一党独裁、野党も保護しますよインドネシア並みに。
確かな野党は多数を占める非組合労働者が狙い。
農業漁業、他全てに員数外は大勢いる。
外国人労働者や滞在者で大使館と距離がある者。
それらを経由し新たな体制に食い込む。
議席に即応しないからこそ、かえって好都合。
恐れられない。
侮られなず。
潰され難い。
そこを突くことで最も効率よく権力を握れる。
議会制民主主義の真骨頂。
戦争という最高の大衆動員ツールを自由に使えるとなれば、変わった世界も思うがママ。
――――――誰がこんな機会を逃すものか――――――
「人は銃剣で支配することは出来ない」
出来るなら、それは人ではない。
敵であれ。
味方であれ。
誰であれ。
支配しなくても、何も困りはしないから。
