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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十九章「帰郷作戦」

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【用語】


『奴隷』

:人型の家畜。人間じゃないから勘違いしないように。そもそも人間の概念が思い付かれる前に生じた上に、人間とはなにか未だに結論どころか概念の普及すらしてないから他者を私物化する婚姻や親子の概念が混在出来るのだと思われ……まあ関係無いからいいや。奴隷自体は古代から続いているが例によって例の如く「奴隷(どれい)」字と発音が似ていても全く意味が重ならない。実際、古いけど広く普及した制度ではないから、廃止や禁止が簡単だった。

奴隷自体の経済性は極めて低い。人と同じ餌が必要であり、人と同じ力しかなく、人同士だって意志疎通は難しい、強制しようとしたらまた人手と費用が……。しかも感染症や寄生生物、身体の構造的に死んだら再利用出来ずに始末に手間暇がかかる。要らないから追い出したら不法投棄で社会的制裁を受けます。あれ、どうやって利益だしてたんだろう。北米みたいな極端な人口過疎地帯の開発期だから循環したんだろうな、しばらくは。だから農奴制や雇用の方が都合良く使い潰せるから長く続いて永く続きそうなんですね。

巧くやらずに普通にしてるだけで奴隷以下になれます。


統治の原則は無原則です。


原則があれば人は安心していまいます。

緊張感を失えば原則すら守らせられません。

原則に統治が従うことになってしまいます。

当然にして不変の統治も原則もありません。

原則があれば変更は恐慌を起こします。


従わせるのは原則に、であってはなりせん。


常に死を意識させること。

同時に生を自覚させること。


不安と心配こそが緊張感を生みます。

緊張感からの解放こそ甲斐を生みます。

セルフチェックは組込むから機能します。


ルールを定めないこと。

ルールは明示し続けること。


従うのは我々に、でなければなりません。


《国際連合統治軍/軍政マニュアル/基本編》




【異世界大陸北東部/帝国辺境領/回復予定領/割譲可能領/作戦周辺領/低要度・高危険度区域/斥候周回範囲/???】


馬車の車室。


観測所か。

戦闘指揮所か。


開かれた視界。

遮蔽物の陰。

隠された肢体。


周りより高い位置。

狙われない程度に低い。

しかも移動が自由自在。

指揮偵察の最適解。


キャビン(車室)とは正に自分が居るべき場所

――――――――――怪しい彼女の感想でした。


まるで初めて馬車に乗ったかのようだが。

実際には二回目。


この邦に来るまで乗る機会がなかった。

一度目は今日拉致されて乗せられた。

そして今は病人としてのせられた。


実際、怪しい彼女の日常は馬上ではある。

いや、将軍も騎乗しているのが当たり前。


指揮官の馬車とは、資料や資材を運ぶ物でしかない。

複数人で観やすい地図。

黒板や脚立や紙にペン。

兵站を記す帳簿の類い。

報告書や命令書の控え。

後は軍旗に予備信号旗。

それとて異世界では、将と呼ばれる者しか使わない。


兵站物資は別として、装備は人や馬で運べる範囲だ。

人一人。

馬一頭。

身一つ。

日常的に、即時突撃態勢に備えていれば、そうなる。


馬車に乗せられるのは戦傷者に戦病者。

乗ることもあるのは、上級指揮官。

突撃に加わったら御仕舞いな者たちだ。


上級指揮官は地球の基準で言えば佐官クラス以上。

・・・・・・・・・・今なら怪しい彼女にも許されそう。


もっとも、いちいち許可など要らない。

格式を保証するのは階級と位階だけだ。


必要な物は、必要な刻に、必要なだけ使う。

――――――――――効果的であれば、許すのは自分。


ならば合目的性だけ、かと言えば然に非ず。


大抵の指揮官は馬車に乗らず馬上に在る。

騎乗しての率先指揮が不要な場面でも。


下馬乗車して車内で過ごすべき理由が無い限り。

健康ならば馬上で寛ぎ馬上で寝て馬上で暮らす。


これは気分の問題であり、単なる慣習なのだろう。

それは怪しい彼女でも、騎乗の方が気分は良いが。


キャビン(車室)の方が楽に過ごせる。


歩いているか座っているか。

騎乗と車乗の違いは、それ。


産まれた時から馬上に居ても、歩けば疲れる座りたい。

産まれた時から足の上にいる、二足歩行動物も納得だ。


空馬を左右に並走させれば、すぐ跳び乗り走り出せる。

こんなことを感じる辺り怪しい彼女はものぐさだろう。


もちろん今は()()が必要なのだけれど。

騎乗してしまえば目立つでは済まない。


いつでも跳び出せない態勢でも仕方がない。

ずっと椅子の上はかえって疲れるのだが。


馬車に座乗しつつ時々は騎乗したいなぁ、と。

・・・・・・・・・・まあ、我慢出来なくもない。


キャビン(車室)がオープンだから。

室内が基本キライな民族特性。

故郷は雨が少ない土地柄故に。


雨とは革のポンチョで防ぐもの。

油や蝋で防げる程度とも言える。


太守領には帰って来たが、故郷ではない。

湧水や温泉にも不自由しない異常な土地。

そう知ってはいても、そう感じられない。


だから街中を睥睨中。

半ば椅子(ソファー)に埋まって。

視える、は観られる。


怪しい彼女であるならば当然に目立ってしまう。

身を起こして観回さない辺り、旅人扱いされていない。


観たことが無い美少女が物慣れた風に道を行く。

道行く人々が怪訝そうなのは、そのためだろう。


コミニュティの大小挟広を問わず、美男美女は目立つ。

初見であっても、ああアレが、と為るのが普通。


両替商人全員を知る染め物職人はいないだろう。

だが街一番の職人ならば、船乗りだって知っている。


まったくの他人。

その口の端に登らぬようなら。

まったく無価値。


男に知られぬ美女は居ないし、女なら美男を全て知る。

その辺りまでは異世界と地球の先進国でも同じ。


性道徳がある地球先進国ならば僅かな誤差に敵意が向く。

処女童貞が当たり前の飢餓地帯ゆえやむを得ず。


餓えが日常ならばパン屑一つで殺し合いが起きるものだ。

だが処女童貞って何?な異世界でも注目される。


誤差では済まない美貌ならば、同性が相手でも目が行く。

それが自分の生涯に関係が無くても、構わない。


基準とはそういうモノで、手が届かないから誤差が無い。

だから当然、怪しい彼女は或意味で怪しまれる。


怪しい彼女は馬上に観える。

一段上から、どう魅える?


あのモノ慣れた様子なら箱入り娘ではない。

あの容姿なら窓から覗くだけで人目を惹く。

あの美少女なら、噂だけでも聴いている筈。


世評に疎い弱者に観られぬよう皆が知った被り。

あらゆるリソースを偽装に割くのが弱者たる所以。

だから一方的に観られて視ている、怪しい彼女。


視るべきは街の様子ではない。

――――――――――統治の有り様。


港街南岸市街地。

富裕層の邸宅街。

ギルドの中心街。

点在している高級店。


富裕層の街だけに路地裏すら馬車が楽に入れる。

大通りを流すだけでも、街路を見通せる。

ましてや一段高見からならば。


街頭の人口密度が高い。


番頭。

手代。

小僧。


商会の運営スタッフ。

彼らは主の傍らに在る。

加えて日常スタッフ。


メイド執事は総合職。

馭者や料理人は専門職。

下男下女は外注委託。


彼らは主一族と共に居る。

出歩く人影は奉公人たちだ。

・・・・・・・・・・常ならば。


今、街頭を往来する者たち。

常の者たちへ小商人や荷役人足が足されている。


視たところ奴隷は少ない様だ。

穀倉地帯ではよくあること。


所有していれば高くつく。

例えて言えば終身雇用。


組織の中核に据える者にしか与えない。

世襲貴族がソレならば、奴隷もまたソレ。

被差別民に共感し得るのは皇帝だけだとか。


宰相が奴隷の世界帝国は、特に珍しくもない。

帝国ではなく「世界」帝国ってところに注目。


奴隷出身ではなく、そのまま奴隷だった辺り。

誰でも出来る、所謂、仕事なら安く上げたい。


常に余剰人口が居るなら、解決。


要るだけ。

要る刻だけ。

雇って、解雇。


雇用の流動性とかなんとか。

人口を維持出来る穀倉地帯にのみ出来ること。


惑星上の極少を占める可住地帯。

その大半には望めない贅沢。

貧しい地域では奴隷を買う。


日々、食わせ。

常に、従わせ。

始めに、教え。


要らなくなれば始末もする。

本当に要らないか見極めて。


労働力を維持できる唯一の方法。


貧困故の奴隷は、組織の中核ではない。

組織そのものを維持する為に買われる。

その組織を出れば途端に労働効率低下。


食えない上に転売し難い。

他に方法があるなら、誰が奴隷など買うものか。

だから奴隷産業は不滅だ。


他に方法がある太守領に奴隷市場があるくらい。

買付けがメインなのだが。

余剰人口の更に余剰な脱落者を他邦へ輸出する。


販売は嗜好品がメインだ。

愛玩奴隷や戦闘奴隷など技能持ちに債務奴隷か。


債務奴隷は、債権と交換。

質流れの如く他邦に売られたりはしない余り者。


そんな太守領で一、二を争う豊かな都市。

そこで最も豊かな街区を走る奴隷は僅か。

誤差の範囲と思うなかれ。


目立つということは?

馴染んでいない。


新たに街頭へ駆り出された、ということ。

人手不足の顕著な証。


北岸街区が全滅したまま機能不能。

片付けは今月中に終わり。

再建には三ヶ月。

人を含めた再組織化は大商会主導。


復興まで半年というところか。


船乗り。

人足。

船大工。

等々。


港を運営している人々は帰る場所を失った。

だから港で暮らしているが。


生活を支えていた市場や小商人をも失った。

だから育成中なのだけれど。


更に北岸街区再建ボランティアが集結参加。

税を免除された農民たちだ。


港街半壊前と比べ人口が同じ位に回復した。

それを支えるインフラストラクチャーが半壊したままで。


結果。

機能している港街南岸街区および港湾地区がフルチャージ。


経過。

元々、無駄にスペースをとってステータスとしていた街だ。


港湾地区。

港街壁外。

そこを新たな暫定居住地とする。


港湾地区には港の運営スタッフが居住。

商品倉庫を空にして居住空間を造る。

自然な職住一致に観えるだろう。


街の壁外にはボランティア。

青龍に棄てらるのを畏れた勤労奉仕。


市外の農村部から交代で集まる。

壁外の方が来やすく帰りやすい。


人は全て南岸以外に集中。

南岸のスペースは、その為に使われる。


街に運び込まれたのは港の倉庫の商品資産。

人と違って清潔な上に定住しようとはしない。


しかも富裕層の街は警備が万全。

河から南岸に生活物質を蓄積。

再建作業。

港運営。

都市運営。

その対価に生活必需品を配給。

格差を造らせぬ為に日々与える。


まとめて与えたら、元手無しの闇商いが始まるからだ。


商才を発揮するのは構わない。

むしろ歓迎すべきこと。


だが既得権益化するのは困る。

そう思い込むだけだが。


終わらせまい、とするだろう。

そんな武力も無いのに。


周りの全てを巻き添えにして。

皆殺しにしてもいいが。


今回、それは選ばれなかった。

費用対効果の結果次第。


めんどくさくなった青龍が介入してきたら、邦が無事では済まないかもしれない。


可能性に結果を賭けるべきではない。

可能性に手間を掛けるべきなのだ。


だから邪魔をしないことに注力。

育てようとすれば腐るのが才能。


支援や補助から回収は出来ない。

与えて儲けるなど貧乏人の発想。


だから異世界では、順調に市場が育ち始める。


怪しい彼女に視えたもの。

仕入れた嗜好品の商い。

調理等、付加価値の工夫。

自由にやって構わない。


そして現状。

あらゆる物資の供給元。

荷入れ。

荷出し。

買い付け。

売り付け。

南岸街路に人が溢れた。


居住人口が変わらないからこそ、移動人口が増える。


(期待出来そうじゃない)


――――――――――ショッピング――――――――――


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