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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十九章「帰郷作戦」

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人は環境の奴隷ではなく、環境そのものである。

【用語】


『人間』

:本作で最初から繰り返しているがインターバル長いから大丈夫!……だよね。奴隷として世界と別に成れるって、凄い思い上がり。人間というのは自然現象であり風や波と変わらない。この辺りは哲学ではなく科学理論で既に古典となりつつある。人間/人格を脳や代替え機器の機能とみなす発想に至っては古典ですらない天動説。そのレベル(科学以前)から先に進めない辺りファンタ(天上天下)ジー脳(唯我独尊)。幼稚だから承認欲求を持ち、劣等だから欲求不満で、人間と自分を同一視して自らを慰めることでのみ息をつける。



人格。

あるいは知性。

――――――――――つまりは貴方。


それが頭の中、脳の働きと考えられていた時代がある。

およそ半世紀前のこと。

・・・・・・・・そこで急停止しているがフィクション(ファンタジー)


人格とは?

五感が認知した環境全体の総和。


肉体を離れた人格などない。

関係と無縁な知能などあり得ない。


指一本欠ければ違う人間。

友人一人失えば違う人間。

同じ宇宙にいるのならば同じ人間でしかない。


人間は外見が9割ではない。

中身に価値があったりしない。


ブラスだけ売れない。

マイナスだけ棄てられない。

バラ売りは出来ない。


貴方。

貴男。

貴女。

さて、幾ら?




【異世界大陸北東部/帝国辺境領/回復予定領/割譲可能領/作戦周辺領/低要度・高危険度区域/斥候周回範囲/???】


驚いて魅せるべきだったかもしれない。

――――――――――観せずに魅せる――――――――――


そうして然るべき。

その魅力が自分にはある。

そう出来なかった。


怪しい彼女の現状認識、再検証。


河中までは人魚と気付かなかった。

――――――――――良くある反応。


河中では人魚と理解出来なかった。

――――――――――当たり前の思考。


引き揚げられる刻それは関心外だ。

――――――――――演ずるまでもない。


河岸で人魚であると理解が出来た。

・・・・・・・・・・ここまでは良いだろう。


だが。

標的に話し掛けられるとは!

――――――――――全く予想外。


だから驚けなかった。


そのまま会話を続けてしまった。

・・・・・・・・・・まさに、しまった!

あそこは驚いて魅せるべきではなかったか?


より多くの情報を得る機会。

ビジネスライクに短い会話。

混乱すれば、もっと話せた。


より多くのカードを得る為。

ダメージをアピールすべき。

そこから返酬を引き出せた。


高い価値がある怪しい彼女。

自然に誘いの隙を観せれば。

油断という隙を造れたかも。


対等に扱われることは何の役にも立たない。

単に奪われる獲物になりたいなら別だが。

魅力に溢れているからこそ見下されるべき。


(まったく、度しがたい)


プリインストールされている反応。

自己防衛。

危機回避。

自己保存。


それこそ、後天的に組み込んだ条件反射。

転んだ刻に手を突かない。

飛来物を避けず、防がず。

危険を感じて動く止まる。

不自然な反応を後から仕組むなど容易い。


すべては本能(OS)と関わりがないこと。

オペレーションソフト以外はオプション。

本能(OS)ではないから変更は仕様の内。


意志。

慣れ。

惰性。

それならならば事前に仕組むこと。


だから状況に応じて再インストールする。

・・・・・・・・・・為るのではなく成す。


事態なら何程のことは無い。

物理法則の範囲。

魔法効果の範囲。

人間関係の範囲。

考えれば如何様にも出来る。


だからこそ反応せずに判断しようとする。

――――――――――必ず出来るとは言わないが。


考えるとは留まること。

別の何かを進めながら。

判断するまで行動せず。


慣れてしまえば簡単なこと。

馴れられるようにシュミレーションも出来る。

想定範囲のバリエーション。

実際に複数人での机上演習を繰り返してきた。


だからこそ、想定範囲外には、反応する。

――――――――――その様に造られているから。


止まれば?

殺される。

留まれば?

殺せない。


()()ではなく、()()こと自体が最適解。

――――――――――主導権を手放さない。


先手必勝とは、そういうこと。


手数を相手より増やす。

数の優位は何であれ効く。

予定を相手より増やす。

起こすだけなら予定の内。


だが静的な事物には通じない。


あの人魚。

あれには驚く。

だからこそ反応。


最適解が無いのならば答えを出さない。

――――――――――応えるだけ。


好意。

好奇心。

好感。


それだけで警戒もせずに近付いてみた。

・・・・・・・・・・そこまでは佳し。


人魚に好かれた自信はある。

その持ち主ほどではないにせよ。

好い関係、それ自体が成果。


だからこそ、想定範囲に出会して(でくわして)、まま応え。


人魚に話しかけらているとき。

言葉であるとしか判らないが。


明快な意志が聴こえた。


怪しい彼女、独りへの語らい。

他の誰にも聴こえてはいない。


明確にそのようにして。


音に満ちた河岸で、独りへと。

あれは青龍の貴族、その声か。


青龍の魔法

・・・・・・・・・・そう判断出来てしまった。


怪しい彼女には驚くべきことでもない。

科学も魔法も非ファンタジー的に一緒。

そんな異世界では音響技術は広く普及。

とはいえそれを知るのは魔法使いだが。


聖都では都市一つを楽器にしていた。


大神殿が起点。

海風陸風が奏手。

大都市が伴奏。


世界を満たす音を調律した永久演奏。


音は振動。

遠くなるほど小さく。

――――――――――成る訳がない。


熱力学第一法則。

エネルギーは消滅も発生もせず、形を変えるだけ。


音は認識。

他の音に打ち消される。

――――――――――成る訳がない。


熱力学第二法則。

エネルギーは多いから少ないへと拡散していく。


振動は伝達物質により伝わる。

伝わる速度も強さも物質次第。

振動同士が複合して消えない。

音を自在に操る理屈は簡単だ。


振動を特定の方向へ跳ばす。


空気。

河水。

地面。


それぞれに合わせてだろう。


速度。

強さ。

時間。

位置。


振動が互いに干渉し合う様。


この辺りの理屈。

概ね、その通り。

地球の一般技術。


とある地点の囁き声を、遠い別な場所に響かせる。

意図であれ偶然であれ、そんな建物や場所は多い。

街の各所に配された機器の発振を誘導したのだが。


地球人類が科学と呼んでいる。

異世界では魔法の一ジャンル。


知ってしまえば簡単なこと。

体験すれば思い出す。

だから怪しい彼女も判った。


周りの誰にも気が付かれることなく、彼女とだけ会話していった青龍の貴族。

振動が、一番強く、あの時、怪しい彼女の耳元で、鼓膜に向けて解放される。

怪しい彼女は振動を声と判別して、それを解釈、認識する以外の反応はない。

ましてや、人魚の話を聞けないか、と耳を澄まして考えている最中のことだ。


怪しい彼女の魔女や執事も知っている。

だが注意していないから気が付かない。

気付かない音から声を聴くことは無理。


だからこそ、独りで対処せざるを得なかった。

・・・・・・・・・・内心忸怩たる思い。


声が響いてきた刻。

不意を打たれたフリをすべきだった。

いや、気付かない方が自然だったか。

手持ちのカードを晒して観せるより。

隠す姿勢を示せばゲーム続行の合図。

真っ正直切り返し。


駆け引き不要と宣言したも同然。

・・・・・・・・・・与し易い、と思われただろう。


初対面で素の反応を返してしまったのだから。

――――――――――怪しい彼女には重大なこと。


なんのことかと思う無かれ。

怪しい彼女は社交が得意。

だが男の扱いは耳学問。


女の十代後半としては、大問題。

本来であるならば子供を産み終わっている年頃。

次の男を品定めしている頃合い。

まあ立場がそれを許さないことも、まま在るが。

産まなくとも慣れていて当然だ。


これから長い付き合いにする男との、初対面がコレ。

観えてはいないが視られていたのはアタリが付いた。

不慣れ以前に未経験、だとバレてしまっただろうか。


――――――――――致し方なし――――――――――

・・・・・・・・・・希望的観測は捨てる、怪しい彼女。


どうせ隠しおおせる訳が無いのだ。

自分の顔と肢体なら、十分に埋め合わせが付く。

一から教えてもらえるなら好かろ。

組み敷かれる方が、想像するに、好みに合うし。

なら与し易いと知られて構わない。


――――――――――と、良いのだけれど。

怪しい彼女の正しい判断。

・・・・・・・・・・意外と弱気。


女としての魅力に圧倒的な自信。

しかしそれを使ったことがない。


魅せ衒らかすのは使った内には入らず。


スペックが高い分だけ余計不安。

美男美女の処女童貞って、コレ。


拗らせるとマメシバ・ハナコが出来上がり。


街中を征く馬車の怪しい彼女。

そんなことを考えているとは(おくび)にも出さない。

なにしろ今も観られている、に決まっている。

青龍が空から観ているのは常。


だが、そんな一般的な意味ではなく、自分独りが注視されていると疑い様がないのが、怪しい彼女。


抜きん出た容貌だけが理由ではなかろう。

――――――――――そこは客観的な怪しい彼女。


港に降りた瞬間に拉致られた。

河では、人魚に出迎えられる。

しかも先に声までかけられた。


決してマイナスではないのだろうけれど。

・・・・・・・・・・言いきれないところにダメージ。


(今更、演じても仕方がない、か)


最初から自身で挑むの悪くない。

青龍の貴族には気に入られたし。


むしろ自然に出会えれば好意を示され易くなる。

・・・・・・・・・・そこはまったく疑わない。


程度の問題であり、男には好かれるものだから。

――――――――――それは客観的な事実だろう。


ただ、残念ではある。

より好い関係が狙えたのではないか

それを思えば、残念。


最高の料理(怪しい彼女)には最高の味あわせ方がある。


本来、別な自分を造るつもりだった。

欠陥を隠すこととは、まったく違う。


最期まで通す気もない仕掛けの一つ。


そも標的の好みが判らないのだから。

あくまでも捨てやすいカバーを纏う。


真に迫ったソレで魅せ、近付いてから正体を表す。

相手に変えられた風を装いマイナスに見えぬよう。


人は自分が生み出したと思えば愛着が湧くものだ。

元々が好い女ならばこそ、好かれるだけでは不満。


立場に役割の延長線上に在りながらそれを越える。

聖都の帝国軍捕虜収容所の女騎士にも通じている。


敵とは獲物であり、愛する対象であるから、獲るのだ。

()()()から()()()とは限らないし、()()とは知れないが。


この辺りの感覚は狩猟民族特有のものだろう。

農耕社会の延長線上にある先進国には無い感覚。


怪しい彼女にとって青龍の貴族はトロフィー。

自分がトロフィーにされるかもしれないのだが。


それくらいでないと

――――――――――狩るに値しない。


黒髪の子供が、怪しい彼女の一族を継ぐのだから。




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