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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十九章「帰郷作戦」

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901/1003

脅かさない敵と安全な脅威/Love your enemies.

【登場人物/三人称】


地球側呼称《三尉/マメシバ/ハナコ》

現地側呼称《マメシバ卿》

?歳/女性

:陸上自衛隊医官/三尉。国際連合軍独立教導旅団副官。

ほとんど死傷者がいない国際連合武力制裁活動における実戦緊急医療の最多経験者。治癒魔法と現代医学複合施術のパイオニアにして、異世界人への治療を目的とした医療行為のスペシャリスト。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・というところはあまり意識されていない。

ぶぁか親(本人談)」が付けたキラキラネームの本名をかたくなに拒み「ハナコ」を自称。上官の元カノが勝手に「マメシバ」とあだ名をつけて呼んでいる。キラキラネームを付けらるという児童虐待の犠牲者共通の真理として、実親を心から軽蔑し憎みすでに無視している、が、時々思い出して激昂する。法的に有効な改名の手順を考えてくれた主人公を師と仰いでいる、が、それより大切なものがある模様。恋愛至上主義者で、倫理や道徳はおろか「愛は地球(人類)より重い」と即答できるタイプ。

陸上自衛隊の正服第2種礼装(緑色)を自分で仕立て直したように見せかけた完全新作を着用。裁縫というよりデザインを含む服作りが得意なために、今日もせっせと経費を流用させて新作にいそしみ、異世界に流出中。


()()には治療方法があります。

()()は治療方法が無いんです。


つまり?


女は顔と肢体の見栄えにだけ価値がある。


まあ、他に付加価値山盛りの女が言うのもナンですが。

人類の半分はそれを疑ってない。

――――――――――だから価値が無いのも居ます。


そんな彼女たちだから顔に絵を描いてマスクして肢体を隠して締め上げる。

だから周りにも特に若い娘たちにそれを無理強いて死なば諸共、一蓮托生。

隠しているからこそ、肢体を使う機会も閉ざしたまま禁忌や倫理で強いる。

教義と無関係に性の抑圧が強い宗教は()()()()()女が主体だったからです。

・・・・・・・・・・バレちゃいますから。


――――――――――へ?

人類の二割が敵にまわっても良いですけど。

まあ、半分の内の四割くらいですか。


諦めし者でもなく。

持てる者にはなく。


でも、大丈夫!

モテる者はモテざる者の敵ですから♪︎

――――――――――産まれた刻から死んだ後まで。


人類の八割(私の味方)は置いといて。

敵の半分は友達です。


自分にだけは金輪際、絶対、手に入らないことを()()()にして生きてるフリをするよりも、全否定してあげた方が治るんですよ。


たいちょーみたいに正直であることは善いことですよ。


むしろ止めを刺してあげればこそ、別な()()()を求められるようにしてあげられるんですから。


だから、お医者さんの言うことを、聞きたい患者が多い訳、です。





【異世界大陸北東部/帝国辺境領/回復予定領/割譲可能領/作戦周辺領/低要度・高危険度区域/斥候周回範囲/???】


憐れむ側には憐れまれることが理解出来ない。

怪しい彼女が今の両替商人を観たら興味を持っただろう。

それはつまり、訪れなかった機会ということ。


両替商人以下、部外者は外で待機。


怪しい彼女が居る場所に両替商人はいない。

いるのは怪しい彼女の魔女と執事だけだ。

高貴な女性が肌を晒すことは無い様に配慮。


富裕層が居住する都市住民の常識。


特権階級は氏族社会。

産んだ女の身分が全て。

血統管理が重要視される。


故に産まれる子供の男系は無意味。


父と言う概念は有るが血統には依らない。

それは子供の保護者の代表たる男を指す。


地縁社会ならば血が繋がっていても偶然。

血族組織の氏族ならば血統の濃淡は無視。


偶然、近距離に居る男が成ることは多い。

そもそも血統を気にするのは特権階級だ。


もちろん子供は一族が育てるので父とは、その子供の現時点での担当者、程度の意味。


なら何故に男を遠ざけるのかと言えば、それこそが血統管理の最たる交配管理の意味。


血統で仕切られる氏族を強化するために、血統に依らない手段は、余り使いたくない。


実際のところは養子や縁組で優秀な者を取り立て、次世代で血統を繋げたりもするが。


自分たちの一族を最初から優秀な血統にすることが出来ればそれにこしたことはない。


そしてそれは容易く実現出来る。

畜産農業の世界では当たり前。

地球での品種改良は紀元前から。

異世界でもそのくらいからだ。


それに帝国が熱心なのは、馬や竜を身体の一部とみなしていたからだろう。


上に倣うは下の常。

世界帝国こそ常識。

最優先の品種改良。


肉体的な性能は、何処までも追及出来る。

基礎条件さえ揃えば教育訓練も効率が良い。

ソフトウェアは幾らでもブラッシュアップ。

後は幸運次第だが、分の良い賭けだろう。


まあ異世界でも、いや、では特に、血統など大半の者には関係無いが。


そして怪しい彼女の個別事情。

佳い血が欲しい(特権階級の常識)だけじゃなく。

受胎している時間がとれない。


生死の偶然性。


殺すことはコントロール出来る。

産まれることは、ほぼ出来ない。


十代後半、肢体の最盛期。

最良の母胎が最高の子供を造る。


本来なら最優先なのだが。

刻として、そうはいかないのだ。


まあ怪しい彼女としては、まだ視ぬ佳い血を求める旅、でもあるのだけれど。


だから特権階級のタブーは守る。

怪しい彼女の魔女と執事が手配り。


溺れた彼女を小屋に運び込んだのは船乗りたち。

水気をとる大量の布を用意させたのは両替商人。

革鎧を外し着衣を脱がせ拭ったのは魔女と執事。


怪しい彼女を包む厚手の布。

北岸、港街の富裕層の街区。

その辺りから集めた品々だ。


助けるに値する者への善意。

値が付くような事ではない。

だからこそ精算は出来ない


両替商人の背負う貸しとなる。

――――――――――選択の余地無く問答無用で貸しを背負うことが出来るなんて。


貸し借りとは取引のこと。

貸し借り出来る相手なら。

貸し借りしても損はない。


両替商人にはツイている日だ。

・・・・・・・・・・それはそれとして、怪しい彼女たちからも返礼があるのだから。


個々の財布と予算や経理の違い。

規模が大きくなるほど逆になる。

収支が合わないと破綻する財布。

収支を合わせると破綻する会計。


当然、特権階級や都市などは会計。

両替商人も、そちら寄りの経理だ。

そして怪しい彼女は予算の方だが。


異世界に転移してなお財務省(財政均衡狂信者)には解らない世界(国家経済)


財政学を記憶させる。

決して理解させない。

そんな者を造る世界。


異世界には、そんな遊び(滅び)許容する(思い出さない)余地はない。


肢体の動作検証を終えた怪しい彼女。

自分が理解すべきを反芻し続ける。

起床身支度は魔女と執事が行うこと。


なにもかも自分で出来る。

だからといって、自分でしてはいけない。


自分でするのは贅沢だから。

暇で暇でどうしようもない時にすればいい。


他にやるべき事がない。

やれる事がない。

それなら自分でやれば良いが。


怪しい彼女。


そういう階級ではなかった。

その程度の無能力でもなかった。


だから仕方がない。


他人の目が無いなら、自分のことを自分でしては、ならない。


(それも旅の楽しみ)


怪しい彼女の魔女と執事。


二人が着付けたのはワンピース。

スカートは合わせる手間が少ない。

だいたいの丈が合っていればいい。

機能的で省資源な衣服の代表格。


手。

腕。

首回り。

胴回り。

それはリボンでまとめてある。


近場ですぐに手に入りやすい服。

両替商人が手配したのだろう。

魔女と執事は離れないから。


これから買い込む服は、これを基調としよう。


そう考える怪しい彼女。

前後左右から確認する魔女と執事。

鏡など置いてはしない。

二人のチェックが終わり戸が開く。


先ほどから感じている気配の理由が判らない

・・・・・・・・・・必要以上に人がいる。


両替商人、は当然。

船乗りたち。

暇じゃあるまいに。

舟客までが。

――――――――――全員、残ってる?


怪しい彼女が其処から河に跳び込んだ渡し舟。

その舟に、その刻に、同乗した者全員が居る。

半刻も経ってはいないにしても時間の無駄だ。


しかし皆が怪しい彼女を観ている。


注目されるのは当たり前だが。

美しく可愛く麗しい女なのだから。

出待ちされても可笑しくはないけれど。

――――――――――怪しい彼女の感想。


解せない。

・・・・・・・・・・男以外も残っている。


女が女を気遣う?

格差がコレだけあるのに?

眼を背けるのが普通でしょう?

――――――――――怪しい彼女の常識。


戸惑いを隠さない、怪しい彼女。

ここは表した方が自然だろう。


{бёΛдЧΠёΛбΜΛΥΠЧжжЭЭЭЭ♪︎♪︎♪︎}


怪しい彼女は戸惑うことを止めた。

まっすぐ河面へ向かい船着き場へ。

桟橋の下を観降ろして、良く視た。


河水中にて、手を振る少女。

――――――――――人魚。


(淡水魚なのかしら)


怪しい彼女の肢体から塩味はしない。

まだ湯浴みをしていないから河水だ。

雪解けの増水が海水を圧してるのか。

人魚が淡水で暮らせることは解った。


いや、それより。


でも淡水だけであるハズはない。

河川湖池の限られた範囲ならば。

帝国が人魚を見つけない訳ない。


いや、それよりは。


人魚の纏う衣装。

布地の少ない独特のスタイル。

それはビキニというのだけど。

異世界にはない。


や、それもそうだが。


極めて薄く滑らかなソレは、果たして布なのか。

つまりそれは、この世界のモノではなく、それはいいが。

人獣の流れにある人魚だから、でもないだろう。


その答えを言葉に換える

―――――――『ご無事で結構、お嬢さん』―――――――

前に答えが囁かれた。


()()()()たりはしない。

答えを知っているから。


怪しい彼女の肢体が硬直する。

魔女と執事は、即応体勢。

つまり応じるべき敵がいない。

怪しい彼女に応じただけ。

そこまでは気配で読み取った。


()()()視ているだけだ。

殺さないでくれている。


なのに気配がしない。

そも、いない。


いや、囁きではない。

普通の会話だ。


耳元に響いただけ。

そう、耳元に、だ。


これは攻撃。

戦闘中なら、殺されている。

耳元の声ひとつ。

動きが止められてしまうから。


話しかけた側に害意はないが。

害意が無いから寄り恐ろしい。


バーチャル・スピーカー。


原理は簡単。

哨戒気球。

偵察ユニット。

人魚のドック・タグ。


それらには集音だけではなく発音機能も付いている。

大気を振動させ、その波を指定ポイントで干渉させる。

複数地点から発振し、同時に合成すれば、其処で鳴る。

怪しい彼女の耳元でしか聞こえない声の完成である。


怪しい彼女と会話したい。

人魚が、そう思った。


『うちの子が心配していたんだ』


だが、人魚の言葉は伝わらない。

異世界ですら発見されたばかりの新種。

既存の異世界言語と共通点が無い。

ましてや海に縁がない帝国公用語など。

異種族同士でゼスチャーも難しい。


翻訳するだけで何年かかるやら。

それを躱せる便利な魔法もない。


魔法翻訳は異世界と地球を跨ぐ。

異世界人同士の翻訳は出来ない。


「問題ない、と伝えて」


だから良くある解決方法。


『間違いなく』


地球人が間に入れば宜しい。

異世界言語(人魚の言葉)を魔法翻訳が地球人(青龍のの貴族)に伝える。

地球言語(日本語)を魔法翻訳が異世界人(怪しい彼女)に伝える。

魔法は通信を介して使える。


だから良くあるコミュニケーション。


可愛い人魚の素直なおねだり。

通信を介せば距離は関係無い。

何処かに居はする青龍の貴族。


偶々索敵装置が注目した地点。

通信網に居る人魚は問題無し。

通信器を持たない怪しい彼女。


干渉波による呼び掛けは確立してる。


だから?

『うちの子を助けてくれてありがとう』


怪しい彼女は質問しない。

「助けられた、の間違いではなくて

――――――――――お礼申し上げてください」


『助かったかどうかは問わない。次回も期待している』

「また跳び込んだりしませんわ」

『考えたりしないでくれたまえ』

「それなら安心なさいな」

『まったく安心だね

――――――――――うちの子からの伝言だが』

「肢体に支障はありません、って伝えてください」

『あとからあれば知らせるよう』

「誰かに言えば伝わる訳ですね、ご領主様」

『言わないと伝わらない刻もあるがな』

貴男の女(人魚)にも宜しく伝えてください」


言葉は途切れた。

人魚が水飛沫を上げて跳び、跳び込む。

・・・・・・・・・・これで終わり、らしい。


(人魚は脅威ね)



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