味方とは敵の別名である/The road to hell .
【用語】
『ポチョムキン村』
:権力者がしばしば監禁される牢獄。権力者に従っている者たちが共謀して造る従っている者たちの為の世界。それはしばしば権力者自身にとっての桃源郷。なにしろ部下が失敗せず、勧められた政策は成功し、みんなが権力者を賛美し、失敗は全てやむを得ないことで、批判するのはマスコミの定型文だから気にする必要はなく、街頭では観たこともない人々がちやほやしてくれる……気付けよ、って話だが、気がつかない。皇帝、王様、首相、様々な独裁者がココに監禁され殺されるまでは幸せな時間を過ごした。ありとあらゆる失敗の責任をとらされる為に肥育されるブロイラー。官僚制と相性が良いのは無限無責任体制を回す為には定期的に断頭台に首を送り込む必要があるからだろう。ポチョムキン村が出来た時点で、その体制は破綻しているので脱出を推奨する。
権力者が御忍びをしたがるのは、何故?
――――――――――出来ているとは言わないけれど。
まあソコは敢えて人気が無い処で街頭演説
・・・・・・・・・・プロフェッショナル以外しないか。
で、理由は、権力を持つ者だけが、求めるのは何故か。
ポチョムキン村に閉じ込めたい奴らはいくらでもいる。
閉じ込められたら、次に目を覚ますのは断頭台だから。
目を覚ませないかもしれないけどね。
妙に自信たっぷりの議員がいるでしょう?
大臣と名が付く人形どものこと。
まあ、ブロイラーとも言う。
官僚の秘書官に包まれて報告だけが真実。
警護と称する囲いを造られヤジは防がれる。
記者クラブの創る大本営発表だけが世間。
大きな幼児の出来上がり。
選ばれし者にしか無理。
普通は手前で吐くからね。
利害関係の無い大都市で野次馬に歓迎されて。
党が動員した支持者に囲まれて。
本人の知性は最低辺。
よくあるよくある寓話になってる。
独裁者が街を視察したところ、人々は皆が豊かで満足していると言う
――――――――――全員が秘密警察の要員でした。
だから、よ。
政治家は批判を好む。
敵が何処に居るか知るため。
不満分子のガス抜きのため。
ヤジが無ければ演説した気分にならない。
――――――――――まさに、その通り。
ネットで好みの偏見だけ取捨選択してるのは社会的死者。
・・・・・・・・・・政治でそれをしたら殺されて当然。
比喩じゃなくて物理的に。
言論の自由、万歳!
・・・・・・・・これほど安上がりな索敵装置はない。
ヤジを防げば、次に飛んでくるのは銃弾。
内戦を制度に閉じ込めたものが民主制度。
民主主義の基本知識なのだけど。
――――――――――官僚主義者には解らない。
だから内戦を起こされちゃうと。
殺させたらガス抜きになるから良いのか。
そこまで、いや、考えたりは出来ないか。
どうでも良いから、切り替えは出来る。
「次いこう」
ってね。
【異世界大陸北東部/帝国辺境領/回復予定領/割譲可能領/作戦周辺領/低要度・高危険度区域/斥候周回範囲/???】
――――――――――人魚――――――――――
そは何ぞ?
何が何かを決める。
そを支配と呼ぶ。
時に破壊とも為る。
怪しい彼女たちと地球の先進国の違い。
それを自覚しているかどうか。
自覚していなければ猿をバナナと呼ぶ。
バナナも猿もゴミになるだけ。
自覚していれば馬を鹿と呼べるのだが。
馬鹿が身動げば足元で潰れる。
図体がデカイだけの馬鹿は自ら転ぶが。
自覚できないから自殺でなし。
異世界には、そんな者はいない。
昔も今も、この先も。
だから決める。
当人とは関係無く当事者が。
強者は当事者。
あらゆる全てを支配する故。
それが帝国だった。
今もそうかもしれない。
滅ぼされるまでは。
帝国の理は異世界の原理。
最初で最後の異世界定義。
知らなければ征服不可能。
知ら示さねば征服不可能。
最初に言葉ありき、とか。
世界帝国とは先ずそれだ。
相手の殲滅。
領土の拡張。
物質の略奪。
それは処刑になる。
制度の強要。
それは境界になる。
我等の強制。
それは経済になる。
利害の強迫。
ならば怪しい彼女はグローバル・スタンダード。
地球先進国の七割以上の認識と無関係とは違う。
帝国主義の旗立競争とは違う虱潰しの侵略戦争。
直下に剣を突き付けて頷かせている異世界常識。
獣の様な人は獣人。
人の様な獣は人獣。
これらは知られている。
上流階級以上の常識。
それ以外には知らない者も多い。
産まれた集落の内だけで生涯を過ごす。
それが総人口の8割。
そもそも出る必要が無いのではあるが。
異種族が当たり前に居る異世界。
虎が居るように。
ライオンが居るように。
だが異世界人に比べ異種族は少ない。
異種族が同居する集落は無いに等しい。
情報の流通は乏しく大半の者に無関係。
惑星規模はおろか大陸規模の通信は帝国独占。
虎もライオンを観たことが無い。
それらを観せるサービスも無い。
見聞きしなければ、知らない。
それは存在しない、に等しい。
―――――――――帝国が生まれる以前―――――――――
もちろん怪しい彼女は観たこともある、側。
異種族など帝国軍には幾らでも居る。
帝国軍が略奪するのは、価値がある者と物。
エルフ以外ならば、種族は問わない。
個々に価値があるならば誰であれ何であれ。
当然エルフ以外、異種族も査定対象。
牙があり爪があり、それが無くても力強い。
エルフの様に器用で素速いもあるが。
むしろ異世界人より秀でていることが多い。
だから数が少ないのかもしれないが。
弱い生物が種として残るのは数が多いから。
残る為に、ではなく結果としてだが。
強い生物の数が少ないのは互いに争わぬ為。
強くて数が多ければ、必ず共倒れる。
食物連鎖が人間以外はピラミッド型な理由。
強者は弱者に支えられている、の意。
異世界の異種族は、余り人を喰らわないが。
人よりも弱く肥えた獲物が多いから。
異世界の異種族が共倒れしないで続く理由。
地球人類80億に対し家畜は50億。
数が多ければ共倒れ、ってそーいうことか。
まだ異世界は人口爆発を迎えてない。
迎えるのかどうかも判らない変数が人以外。
自分たち以外に敵がいない程の強さ。
なら最少数のエルフなど最強かも知れない。
少数種族最強戦は幾度か行われたが。
もちろん主催は帝国での結論は極当たり前。
ケース・バイ・ケースで状況による。
いずれにせよ、ポテンシャルが極めて高い。
だからこそ軍に加えられる者は多い。
むしろ市井よりも軍内の方が異種族は多い。
比率に置いても、絶対数に置いても。
数が決する戦争が役割。
決して多数派ではない。
異世界人が圧倒的多数。
が、だからこそ目立つ。
原野に独り立つ獣人よりも、無数の騎士兵士の中央を駆ける獣人たち。
整然と隊列を組む一糸乱れぬ陣形の中で抜き出る頭二つ大きい獣人たち。
市街地で騎士と向き合い連絡し打ち合わせ議論し行動に移す獣人たち。
だから帝国軍を観れば異種族を見聞きするものだ。
帝国軍の侵攻進行ルートに進駐拠点。
街道と呼ばれる規模の道は全て帝国の手が入った。
規模は問わず都市と観なされる場所。
そんな処には帝国軍が来て通る。
そんな処の周りに伝わり聞かされる。
帝国軍さえ行き交えば観ずとも聴く。
皆が必死に帝国の動向を窺う最中だ。
否が応でも目に入り印象に残る。
異世界に世界認識を初めて始めた帝国時代。
異種族の存在なら、異世界の半分位には伝わった。
――――――――――帝国の定義が常識となる。
さて、人魚とは何ぞや?
怪しい彼女が定義、其は世界認識。
魚の様な人ならば魚人。
人の様な魚ならば人魚。
怪しい彼女に水没中と勘違いされた少女。
少女?
――――――――――外見は人に観えた。
なら人寄り。
水中で肢体の大半が観えた。
身を任せた。
怪しい彼女、溺者の最適解。
お陰で反芻。
大雑把に少女の特徴を把握。
華奢な腕脚。
だが筋はしっかりしていた。
豊満な乳房。
あれは乳か胸板かどちらか。
柔弱な肢体。
怪しい彼女を抱く腕掴む掌。
優しい加減。
溺れている者の動きに非ず。
なら魚の様。
人の様な魚ならば、人魚だ。
そこまでが怪しい彼女に観えたこと。
細部まで確認するのは、これからの課題。
ここからは怪しい彼女に視えること。
あれは異種族、気持ち以外が伝わったから獣ではない。
――――――――――視線で意志疎通出来た。
怪しい彼女への興味。
怪しい彼女を救う意志。
怪しい彼女の返答に反応。
こちらが間違って助けようとしたことは伝わってない。
・・・・・・・・・・だから不思議そうだった。
ということは?
誰も助けようとしたことがない、ということ。
隠れる様子無し。
水中に没した少女を、街の皆が放置している。
ということは?
助ける必要が無いと知れ渡っている。
港街の当たり前として。
ということは?
――――――――――港街の者たちに、人魚が広く知られている。
怪しい彼女は組み立てる。
誰かに聞こうとは考えない。
幼い刻から仕込まれた慣習。
判らないことは考えなさい。
・・・・・・・・・参考にするのは、意志が介在しない現象。
敵の供述は、信用出来ない。
どう思わせたいか、だけは判るが。
味方の報告は、もっと信用出来ない。
どう思われたいか、だけは解るが。
世界には敵と味方しかいない。
聞けるのは他人の思い込み。
読めるのは過去の思い込み。
尋問しても当てにならない。
・・・・・・・・・指を落として眼を抉れば、多少は使える。
アレは脅威だろうか?
数はいない。
だから怪しい彼女は知らなかった。
数がいるなら。
案内役の両替商人が教えただろう。
見かけたなら。
事故が起きる可能性を考えるから。
見かけまい。
そう考えたからこそ言わなかった。
旅人に必要なことではなく。
実物を観せずには説明し難い。
だから注意する必要はなかった。
そもそも両替商人は怪しい彼女が河中の少女を観て即跳び込むなんて考えなかったのだが。
もちろん出会す可能性も考えなかった。
だが出会したとして。
溺れてると考えたとして。
誰も動かなかったとしても。
両替商人なら、船乗り水夫に命じるだろう。
救え、と。
――――――――――自ら跳び込むなんて、思わない。
春先の冷水。
溶け出した山脈の雪が元。
河の水量も流れの速度も増している。
泳げるだけの少女が似たような背丈の少女を助け
・・・・・・・・・・られる訳がない。
溺れる者を救うのは簡単だ。
舟を寄せれば勝手に掴まる。
息が整えば引き揚げるだけ。
泳ぎが達者なら、掴んでやってもいい。
人ではなく荷物と考えれば容易いこと。
溺れるなら泳げない、背後に回るだけ。
後ろから手を封じて喫水線を確保する。
息が吸えれば大人しくなるし、出来る。
後は殴って舟を待てば良いだけのこと。
いきなり跳び込む
――――――――――無知の証。
両替商人が覚えておくこと。
怪しい彼女は泳ぎは知っている。
練習したのだろう。
怪しい彼女は河も海も知らない。
川か池、人工もの。
判っているだけで解っていない。
内陸部から先の上流階級には、よくあること。
必要の無い技能の習得。
希少な水を濫費する示威。
だけで良いのに海辺に来た。
慣らされているから怖れない、のは怖いこと。
この娘も大変な目に逢ってるな
・・・・・・・・・・などと思われている怪しい彼女。




