眼が開いた者。
【用語】
『相互依存』
:平和の作り方。第一次第二次世界大戦で確立された実例。植民地主義VS民族主義。ファシズムVS民主主義。などなどのファンタジーとは違って誰も儲からない戦争で皆が大損したのは何故かという話。第一次世界大戦はドイツ帝国の出現で欧州の貿易が停滞したから。第二次世界大戦はアメリカの保護貿易政策で世界の貿易が停滞したから。正常な物流を回復するためには軍事力で奪いにいくしかなかった、と……もちろんコストパフォーマンスが悪すぎで全員破産。だから自由貿易主義が創られた。自給自足を完全にするのは技術的経済的に不可能であり、達成したら人類世界から要らなくなるだけ。他国に依存すれば他国の経済が依存してくるということ。互いに必要としていれば戦争のしようがない。実際、経済制裁が機能したことなんか無い。よほど小さな国や地域相手でも失敗している。相手と切るべき取引が無いと制裁出来ず、取引を切ると制裁した側が先ず損害を被る。太平洋戦争前のABCD包囲網なぞスローガンで終わった辺り推して知るべし。本来必要が無い戦争が起きてしまったのは何故かといえば、イメージで行動してしまったから。だから二度と繰り返さないようにGATTからWTOが創られた。
七人のサムライよりも有象無象の百姓。
天才ってのはね。
役に立つ道具のことよ。
誰の役に立つか?
凡才の為に。
役に立つ。
だから天才。
何も出来ない皆が拍手喝采するのは使い途があるから。
何の価値もない皆が大枚を浴びせるのは、誠意の印よ。
皆、想ってるわ。
我々の側に産まれて来てくれて有り難う。
――――――――――有り得るのが難い貴重品。
すぐに無くなる消耗品。
大切に、大切に、目一杯、潰わないとね。
・・・・・・・・・・誰が費やすとは言わないけど。
讃える方が気楽よねぇ。
一瞬で消える前に全てを私に捧げてくれる。
――――――――――百姓であることを誇りなさいな。
無能な者が喰らうモノ。
何も出来ないから、何もしなくて済む。
・・・・・・・・・・しない出来ない、どちらでも。
【異世界大陸北東部/帝国辺境領/回復予定領/割譲可能領/作戦周辺領/低要度・高危険度区域/斥候周回範囲/???】
視る。
観る。
見る。
似て非なる、のではなく、似付かないモノ。
光の反射を眼が認知すること。
認知した刺激を解釈すること。
解釈を精査して認識すること。
さて正しい組み合わせは、どれだろうか。
老人に見える者物は少ない。
若者には絶対に及ばない。
解釈の正確さは知識の寡多。
認識の可否は才能だけだ。
だから選ぶのだ。
選らばれし者を
――――――――――選ばれた者が。
臣下に出来ることを主が為す必要は無い。
むしろ為してはいけない、無駄だから。
主は出来ないことが理想と言える。
為せなければ無駄が生じない。
だから怪しい彼女は観ているだけ。
要不要を分けて、不要であれば指先一つ動かさない。
それが特権階級の理想的な有り様。
本来なら観ることを委ねられるのだが、然にも非ず。
今だけは怪しい彼女が観なければ。
恵まれて産まれて来た怪しい彼女。
彼女にはツキがあるのは間違いない。
だから河の渡しが街の中央にある。
そこに向かって歩くだけで、港街中を歩くに等しい。
しかもそれと告げる必要もなく。
今は北岸だが帰りは南岸を視ることが出来るだろう。
青龍が支配する街。
青龍の喰らう方法。
さて、此処は街中。
いや、工事現場か。
廃墟と言うには整備されている。
現場と言うには街区がまるごと。
人の往来も激しい。
留まり働く者もだ。
怪しい彼女にも観える集団。
観えていたが視てなかった。
今は観える範囲で視ている。
人足ではない。
農夫婦でなく。
職人ではない。
作業していない。
移動していない。
留まりもしない。
ほんの数分前に観た連中のバージョン違い。
一人一人に注目すれば。
厚い布地を纏う。
刃物も打撃も通り難い様に。
顔と耳は開ける。
視やすく、聴きやすい様に。
片刃抜身を担ぐ。
斬撃まで一挙動で済む様に。
頚周りを覆う布が別造り。
頭という急所は布で守ってはいるのだが。
頭部は感覚器の集中部位。
顔耳を剥き出しても向きで感度が変わる。
関節とは何処でも急所だ。
神経や太い血管が集中して反射的に庇う。
狙うだけでも意味が有る。
だから布で巻く時に身体の布とは別扱い。
それ自体は防具としての布の服、あるある、なのだが。
なおマフラーの起源は鎧の喉輪です。
単に港街、あるいは怪しい彼女が観ているマフラーは。
・・・・・・・・・・青い。
青、蒼、靑、碧、水色と言うか、寒色青系統の色々だ。
――――――――――つまり単色がない。
単色は染めた直後の新しい布。
もちろん一般には出回らない。
雑色は流通を経た中古の布だ。
もちろん一般には出回らない。
普通なら色を合わせたりはしないから。
布切れを集めるなら強度や面積だけを視る。
それは利用者が独り〃で完結するため。
色を考慮するのは社会的アピールを狙う為。
纏う者を越えた役割を求めるなら布地。
それには余分な資金や手間を費やす必要だ。
必要な強度なら厚みや量で調整出来る。
必要な色は、それ以外を排し選ぶしかない。
選ぶこと自体に資金や手間を費やすか。
それを優先するなら個々の機能は二の次だ。
いずれも市井で入手出来る素材に過ぎない。
だから粗雑で弱いとは言えないけれど。
貴族や騎士、帝国軍の様に布地を選ばない。
いや、防具にはしても防具として選べない。
そんな集団が其処彼処。
目的を探しながら歩く。
最初に観たのは港の艀。
怪しい彼女を御出迎え。
数分前に観た奴隷市場。
一心不乱に集団戦訓練。
――――――――――それが青い基調の印を付けている。
怪しい彼女は、誰に訊かずともアタリはつけた。
これが面倒な輩なのだろう。
青龍の貴族に奉仕する者。
※第887話〈魔法とはいったい。〉より。
彼の意志を忖度は出来ない。
彼の嗜好を忖度している。
姿を観せつけるだけで良い。
皆が自ら振る舞い留める。
聴かれているから語らない。
語らないから結託できない。
観せているから気に留まる。
気に留まるから自重してる。
なるほど、己が己を縛る、そういう仕掛。
怪しい彼女は考える。
――――――――――今度やってみよう。
密偵を潜ませるより、効率がいい。
・・・・・・・・・・このくらいなら。
それ以上は無理だけど。
――――――――――奪われ無い恐怖。
領民たちを駆り立てるモノ。
だから色を示す。
姿勢で、印で。
だから必死に働く。
街で、港で。
だから血眼で見張る。
いつでもどこでも。
要らないと思い出されない様に。
怪しい彼女たちには出来ない。
家畜が居ないと喰えない。
獲物が居ないと奪えない。
領民たちを皆殺しに出来ない。
――――――――――青龍には出来るというのに!
観て聴いて。
視て訊いて。
判ること。
解ること。
・・・・・・・・・・ますます殺る気になって来た。
もちろん、そんな気配は噯にも出さないが。
それを読み取れるような相手も居ない様子。
見逃されているのかもしれないが同じこと。
ならばそれを生かさぬ手はない。
――――――――――いずれにしても闘い様はある。
勝敗を決めるのは強弱ではない。
そうこう
―――――――青龍を観上げる領民観察――――――
している内に、渡し場に着いた。
北岸解体作業に関係無い者が皆、この一ヶ所で渡るらしい。
それなりの人数が居る様に思えるのは、怪しい彼女だから。
以前の港街も似たような海上交易都市をも知らないからだ。
船が居らず舟で足りる辺り、それを示している。
積むのは最大でも乗用馬車程度。
馭者従者数人乗りのガブリオレ。
それも一台載せれば十分な程度。
渡しではあるか、どちらかと言えば休憩場所か。
激しく行き来する復興作業用渡し。
その中で舟や船乗りを休ませてる。
そんな場所の一つ、であるようだ。
ただ弛緩している様子はない。
怪しい彼女たちがやって来ると、すぐに反応した。
何人かの、だが過剰な人数が駆け寄って来る。
まるで帝国軍兵士の様な機敏さ。
ただし訓練による反射ではない。
自主的な行動というのは珍しい。
少なくとも怪しい彼女から視て。
さてどう解釈すべきことなのか。
渡し賃や心付けを稼ぎたいこともあるのだろうが。
退屈している、ということが大きいのだろう。
一定間隔で命じてでも休ませるのが青龍のルール。
いつの間にか王城内から外へ広がっている。
青龍の貴族が居を構える王城内の奉公人への命令。
倒れるまで働く、従来の習慣とは違い過ぎる。
もちろん、青龍の嗜好は絶対。
――――――――――気に留められていなくても。
気にしておけば、殺されないかもしれない。
殺されたくなければ、休む。
殺されたくなければ、働く。
全力を尽くした者にだけ、後悔は出来る。
・・・・・・・・・・殺されなかったということ。
気に触ってからでは存在すら出来ないのだから。
そんな事情、いや、感覚を怪しい彼女は知らない。
だから解るのは、街中を包む緊張感、あるいは怯え。
まるで敵味方定かならぬ者たちの中で孤立しているようだ。
(――――――――――この感覚、大好き♪︎)
それこそ敵中に少数で孤立するのとは別種の愉しさがある。
船乗りたちは、顔見知りの両替商人に駆け寄る。
怪しい彼女たち、というより、両替商人の一行。
なにしろ外来の客が来る港とは逆方向から来たのだ。
北岸の見通しの良さが何処からという演出に役立つ。
目論見通り、という訳で、両替商人も合わせる。
怪しい彼女たちは両替商人の付き人扱いだろう。
人が行き交う場所に屯する者たちは、情報屋を兼ねるのだが。
行きと帰り人数が違う。
短時間の判り易い変化。
だから偽装を疑わない。
良く知られた両替商人が新しい奉公人を連れていた、くらいの解釈。
見知らぬ場所の事情を掴む、一番確かな手法。
見知った場所にいるかのように振る舞うこと。
見せ付けることは両替商人の負担にならない。
それ自体が新しい顧客に対する、ちょっとしたサービスに過ぎない。
もちろん、情報の独占も兼ねる。
羽振りが良い余所者の存在。
既に金になっているが。
もっと金に出来る。
そして、顧客を大切にして取引が続けば?
――――――――――その間は争わずに済むじゃないか。
とりあえず、お爺ちゃんお婆ちゃんには引っ込んでいてほしい。
……いえ、Ai詐欺に引っ掛かる爺婆のことですが。
巷のAiに詐欺以外の意味は無いんですけどね。
わたし危急存亡の時にAiの概念程度も理解出来ない馬鹿がやらかしたトンでもに邪魔されているもので。
決して騙されたと認めないから最高のカモ。
……真の詐欺師は訴えられないとかなんとか。
そんな輩にカモられる馬鹿の支払いは此方に回ってくるあたり、どうなっているやら。
そんな馬鹿に脚を引っ張られている関係で、復帰に時間が……。
今週の更新は、一話のみとなります。




