好意と言う拒絶/potlatch.
【解説】
『ポトラッチ』
:比較民族学や社会心理学でお馴染み、贈与救済援助一般。当たり前だが無償で理由無く財物行為便宜を与え与えられること……史上最凶の暴力。与えれば与えるほどに相手を否定することが出来る。対価返礼報恩を拒絶するのではなく、それが不可能な規模で与える。これに寄り相手を完全に叩き潰す。古今東西、未開社会から現代社会に至るまで確認されている。社会的動物である人間の本能が絶対に拒絶する状態。これを意図的に行うことを「ポトラッチ」と呼ぶ。
他人に理由を与えることなく与え続け拒絶の余地すら残さないなんて……人の心無いんか。
半世紀前までは「共産主義の間違いは怠け者が利益を得る為に働き者が居なくなることだ」などと真面目に教科書に書いていたらしい……これだから学が無い奴は。実際には共産主義を名乗る官僚主義が粉飾と虚構の果てに社会を食い潰しただけだが。科学的には「他者に与えられるまま働かなくても生きていける」状態に耐えられる人間はいない。……いたら病人。ニートは人間を超えないと至れないらしい(あきらめない!)。実際、観測できるニートは皆、病気です。しばしば生活保護や貧困救済に頼る人々が犯罪を含むテロリズムに走る理由が、コレ。恒常的救済を社会から受け続けていたら、そりゃ社会を破壊する側に廻るわ。解決策は人間の性質が解れば簡単に判るが以下略。
「与えられる」
って、辛くないですか?
・・・・・・・・・・与えるモノがないんですが。
「要らない」
って言われてる気がしませんか?
・・・・・・・・・・それはそうなんでしょうけど。
愉しまれ、てるはず。
でも、わたしだけじゃない。
要るとは、思います。
でも、必ずでもありません。
居なくなるんじゃなくて、最初から此処にはいらっしゃらない。
――――――――――何処かに居られるのか、それすら解りません。
何でも持っている貴男。
何処にでも征ける貴男。
何でも知っている貴男。
だから、わたし、ううん、皆が、見透かされていると知りながら、使って欲しいと願ってます。
【異世界大陸北東部/帝国辺境領/回復予定領/割譲可能領/作戦周辺領/低要度・高危険度区域/斥候周回範囲/???】
怪しい彼女。
街だった北岸の解体作業について。
――――――――――観れば判るが。
地上の建物は消滅。
全部瓦礫として運び出されたか。
瓦礫の山は低く、残っては、いない。
その瓦礫は新しく積み増されたもの。
どうやら地下室や土台などを掘り返し中。
街を基礎から造り直すつもりなのだろう。
両替商人。
解体作業に動員された人足について。
――――――――――観てれば判るが。
纏う物で視て取れる。
港街には幾らでもいた人足。
荷降ろし荷積みの力自慢たち。
当初、街解体の主力は彼ら。
海運停止中だけに安く雇えた。
彼らも生きる糧が得られた。
それを保証した青龍は、港湾機能を維持出来た。
帝国太守から巻き上げた資産だけを費やして。
青龍には財物を貯めるという発想は無いらしい。
船上から埠頭の間で、頭上直下に配慮する高所作業。
重量物を手脚だけではなく梃子やワイヤーで輸送。
巨木並みのマストを斧一つで倒し船体を鎚で砕けた。
街並みの解体には向いていないことはない。
そんな彼らは徐々に港に戻って行っている。
交易再開の呼び水となる帰邦領民。
十万人を降ろして街から村々へ送り出す。
そのシュミレーションをするため。
今の解体作業は農民たちが主体。
「税金は要らない」
そんな青龍の貴族が主張。
少なくとも今年は無税のようだ。
そう考えた農民たちの行動。
農村部を中心に十万人の働き盛りがいなかった。
労役から帰って来れなかったから。
青龍が海を塞いだからだが。
今年の春の作付は低調。
村々に残された女子供老人だけで行ったからだ。
例えどんな理由が有れど税は課せられるもの。
だから生活に必要なだけ植えようとは思えない。
その大前提が崩れた。
日本列島は豊かな土壌があり食糧自給に困らない。
国際的な価格競争やメニューに拘らなければ、だ。
そも中世社会の余剰生産で一億人分など賄えない。
異世界の人々は知らない。
だから青龍の貴族、その判断は当たり前。
異世界の農民には、それを疑い様がない。
食い扶持十万人が帰邦してなお、賄える。
それだけ太守領の土壌が豊かなため。
青龍の貴族が次に示した意思。
その十万人帰邦。
村々も受け入れ体制をとった。
特別なことじゃない。
元々、春先に起こる予定の事。
一冬居なかった者たち。
ただ、帰って来るだけだろう。
皆にそう知らせておく。
街道筋に帰邦者の通過に備え。
食糧を置き、話を通す。
港街には迎えを出して詰める。
村々単位で旅するため。
船旅は波や風の影響で変わる。
帰邦の順番が判らない。
だから、邦中の村々から、出迎え引率役が集まった。
ざっと数千人程度。
そんな彼らは、いつも通り街外で野宿していたのだか。
――――――――――港街の復興作業に加わり始めた。
建物の基礎や地下構造。
中世準拠なら深くはない。
掘り返して埋めるだけ。
むしろ農民向けの作業だ。
誘ってこそいないが、現場では歓迎される。
港の人足が港湾作業に戻ったのだから、需要はある。
街の復興作業に参加すれば報酬も得られる。
待つしかない村々代表たちは滞在物質に困ってない。
村の用で来たのたから、費用他は村が持つ。
だからといって用務中に働いていけないこともない。
むしろそれは面倒事への役得と見なされる。
だから街外の農民たちが参加するのは自然なこと
・・・・・・・・・・ではなかった。
彼らは無給で当然とした。
青龍の貴族、その用命と聴いたから。
だから労役扱いと考えた。
領主から命じられた役務は領民の無給が当然。
多くの場合、手弁当で済ませ経費すらない。
十万人の労役者とて生活物質以外支給はなし。
だから労役は逃亡者を防ぐことが肝になる。
自主的な労役など、有り得ない。
復興を取り仕切るのは港街の顔役ら。
彼らは労役と考えてない。
だから値切りはしても賃貸を支払う。
交渉の結果が繰り返され。
――――――――――生活物質のみ支給、で、まとまった。
技能が無い農民相手に高いのか。
人手不足を考えれば安いのか。
そのうちに、港街周辺、南の農村部から人々が集まりだした。
無税と十万人の帰邦。
無理な農作業から解放されたので、暇と人手は有るのだろう。
だが皆が無給で作業する。
十万人の帰邦には影響が無い。
青龍がやると言ったらからやる。
ならば何故か?
――――――――――事実として、北岸には農民たちが溢れている。
当り障りの無い会話。
判りきっていることだけを話す。
決して質問はしない。
互いの距離を保ちながら相性だけ合わせる。
利害得失だけでは、取引にならない。
生理的な好悪というのは重要なこと。
前線指揮官のそれが戦局を変えたり。
交渉担当の私質が戦争を起こしたり。
だからこそ自由に変えられるのだか。
変えられるから出来るとは言えない。
武官文官の分類が生まれ始めた、中世の技能。
怪しい彼女は考える。
知らないことを尋ねても良かったかな、と。
正解を知らないことを尋ねる。
応えが答えか判らない。
それを尋ねる愚か者。
拷問や尋問ではなしに。
そう思わせる方法もあったが。
まあ今更、馬鹿の振りをしても仕方がない。
両替商人は使える相手。
怪しい彼女も使える女。
互いに判りあった方が、不確定要素が少なくて済む。
だから判らせる。
良く観せる。
良く視ている
そう、解らせる。
両替商人も似たようなことを考えていた。
先ずは案内する者、される者。
現在地から目的地まで。
まっすぐ進めたら良いが、そうはいかない。
怪しい彼女が困るから?
ではなくて、彼女の為の世界では無いからだ。
それでよかったのだろう。
党幹部専用道路がまっすぐ伸びてた国よりは。
失脚と失踪がイコールな。
多くの社会は、そんなめに遇わない、安心だ。
今のところ異世界も同じ。
皇帝だって専用道路は持たずに空を飛んでる。
怪しい彼女も目だたない。
隔壁付き通路より遮蔽物になる一般人が良い。
では遮蔽物の道筋は如何。
大変好都合なことに多数が常に使われている。
道路や航路や航空路等々。
決めているのは自然条件に対する技術的制約。
そして最大多数の利便性。
ここで言う自然条件は河のこと。
海と見紛う大河ではない。
だが川でもないだろう。
広く深く流れは速い。
人や馬が歩いて渡るのは不可能。
だから北岸から南岸へと向かう場合、舟か船が必要になる。
豊かな都市のド真ん中。
皆が金を持っている。
金もある。
客も居る。
河を渡れば金になる。
だから渡せば金を払う。
需要がある。
造船所が多い。
船乗りも多い。
供給がある。
港に出れば港内を往き来する舟船は多い。
だが、港内船舟は、より価値が高い物者を運ぶ。
常に往き来する船舟に安く便乗は出来る。
だが港は港街の西端。
港街の大半から観て明らかに遠回り。
わざわざ陸路で回る時間と手間。
時間と手間を換金するは商いの倣い。
河の渡しが商いとして成り立つ由縁。
貨客兼用渡し舟。
貨物専用渡し船。
邦自体の物流路である大河。
そこを横切っては邪魔、それどころか戦の元。
事故の元じゃないから、念のため。
邪魔の可能性が有れば、剣を抜く。
寄り安くあがるならば、話し合い。
河の渡しにギルドが生まれ、交通整理。
・・・・・・・・・・何処の業界でも同じこと。
楽市楽座は経済発展の基本?
馬鹿言っちゃいけない。
あれは
「自由な商いを保証してやるギルド」
が出来た、それだけ。
そのギルドを織田家とかノブナガとか政府と呼ぶ。
既存のギルドが互助組織。
自然発生。
相互依存。
既得権益。
既存のギルド機能もある。
――――――――――分け前を要求する者が増えただけ。
武力強制。
・・・・・・・・・・刑罰と呼ばないと反逆者。
上意下達。
・・・・・・・・・・服従して観せないと以下略。
権益強奪。
・・・・・・・・・・納税と呼ばないと反逆者。
そりゃ街々を焼き討ちしないと通らない
――――――――――だから焼き討ち記録を更新した。
異世界でも帝国が気付いていれば、焼っていただろう。
そこまでやらなかったから、天下布武が出来たのかも。
異世界では江戸時代並にギルドや自治が残されている。
だから港街、河でも同じ。
航路が限られ。
隻数が限られ。
時間が限られる。
渡し船舟の現状レポート。
立派な常設産業と言えよう。
都市半壊時に被害は受けた。
だが半分以上は残っている。
つまり人口と需要と供給が減った訳だ。
半減した人口は消費の過半を担っていた。
半減以上に需要が落ちた理由はそこにある。
河船舟自体は、パニック中も河上に避難できた。
巻き込まれて沈んでも、半減まではしなかった。
積み荷が減ったほどに、船舟が減らない。
河船舟が余り気味になる。
その余剰を吸収したのが北岸の復興作業。
今は解体作業だが。
大量の瓦礫が運び出されている。
港まで運んで護岸工事に利用中。
その輸送を担い船舟は余らない。
今後、建設作業へ。
そうなれば建設資材の輸送転換。
復興が進めば北岸に人口が戻る。
そうなれば半壊前へ戻るだけだ。
太守領有数の都市。
その都市機能を担っている渡しギルド。
そのギルドを支えているのが復興事業。
その金を出しているのは、青龍の貴族。
怪しい彼女は視る。
街、の廃墟を破壊する人足たちを。
瓦礫が運ばれて行く先を。
人足たちが往復する流れを。
両替商人の向かう河渡し場を。
――――――――――色々な意味がありそうだ。
書くことは呼吸に等しく生きること。
……死にかけました。
殺されかけて無いから事故なんですが。
いつもなら新型(笑)コロナ対策を嗤っているところですが、それどころではなく。
今週の更新が一回になるかもしれません。
……目処はついてますが。
八年間で初めての事態ですが、対処を進めていますでご心配なく。
ではまた。
……続きますよ?




