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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十九章「帰郷作戦」

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ご領主様が欲するママに!/eye contact.

【用語】


『十字軍』

:単に狂信者の群れと勘違いする向きが日本の歴史無知には多いが元々はローマ帝国崩壊に伴う経済サイクル破綻が生んだ武装難民。ローマ帝国は豊かな東方(当時の中東は緑の沃野)の産物を西欧の寒冷地帯に運び、西欧の厳しい気候で鍛えられた人々が生み出す労働力を使って東方支配や防御に充てていた。んが、ローマ帝国崩壊により東方の産物が西欧に届かなくなる。しかも気候変動も重なりローマの平和で増大した西欧の人口を養う方法が無くなってしまった。ローマ帝国時代に交易で賄われた物を得る為には奪いにいくしかない。だからこそ多くの大衆が十字軍に参加した。当時の西欧を救わねばならないカトリック教会にしても、成功すればよし、失敗しても余剰人口を始末できる。餓えて共倒れするより信仰の陶酔の中で安楽死……他に方法がなかった。

笑えるなら解決してみろと嗤われるだろう。


「戦争は正しさの押し付け合い」

……そんな遊びと思い違い出来るのは、自分で築いた訳でもない飽食暖衣に溺れた平和ボケ。


戦争とは人類史において「生活」に他ならない。


……「生活(戦争)反対」って、言ってみろ。




「神が望んでおられる!」

――――――――――氏名有無不詳。

クレルモン教会会議における傍聴人の叫び。


「聖書にはそんなこと書いて無い」

―――――――――神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世。

最初で最後の交渉によるエルサレム奪回者。


「破門」

―――――――――ローマ法王インノケンティウス3世。

勝手な行動に走った十字軍そのものを破門。




【異世界大陸北東部/帝国辺境領/回復予定領/割譲可能領/作戦周辺領/低要度・高危険度区域/斥候周回範囲/???】


一ヶ月半前の青龍出現。

直後の港街半壊。

住民の半分が殺された。

怪我人は最小限。

犠牲者がほとんど死亡。


生き残った上流階級は南岸の街区へ移動した。

――――――――――服屋と服市場も。


港街の上流階級は比較的、多くが生き延びた。

住居こそ壊滅した北岸の陸側に集中していたが。


ちょうど奴隷市場の東北側にある高級邸宅街。

河からも海からも離れた、やや高台にある地域。


河沿いから市壁門へ抜けられなかった暴徒ら。

大抵は東南に圧され河に落ちたが一部は東北へ。


奴隷市場がちょうど東北市壁の門内外に位置。

奴隷商人お抱えの傭兵たちがそれを阻止に出た。


上流階級の邸宅街が両者の衝突場所となった。

道を塞ぐ傭兵部隊に邸宅を抜ける避難民に暴徒。


いち早く邸宅の家人に使用人たちは逃げ出す。

傭兵部隊は邸宅に火を放つが上流階級は、無視。


指揮系統が明確で対処する相手が少なかった。

奴隷市場という資産を守る為に統一された部隊。


雑多な武装勢力部隊が混在していた鎮圧活動。

とりあえず皆殺し、選別して殺害、差の理由だ。


特に上流階級の中核となる人々は生き延びた。

青龍が出現した朝、幸い北岸に居なかったから。


大半が船工房の関係者だったからだ。

元々、朝一番に港湾地区に入る人々。

得意が決まっている人足や職人もだ。


決まった出勤先へ、朝早くから出る。

危機に際し何も考えず職場へ逃げた。

その結果は誰のせいでも無いだろう。


火事に出会(でくわ)した子供が燃え始めた自室へ逃げ込む様なモノ。

今回の惨劇では、たまたま安全地帯へ逃げ込んだのただが。

そこにたいした理由がないのも生きるか殺されるかと同じ。


生きても。

死んでも。

殺しても。

殺されても。


そこには誰の判断も関わっていない。

だから、責任を取りようがない。


その責めを力ずくで奪って君臨したのが、青龍の貴族だ。


刻に殺し。

刻に救い。

常に居る。

そは青龍。


港で生き残り、仮住まい明けは南岸へ向かった上流階級。


生き残った南岸に、我身を託したい。

同じことが起きない見込み無し。


わざとやっていないのだから、見積りすら無理。


別なキッカケで同じ結果は有る。

だから上流階級の判断は間違いない。


それを否定する者は誰もいない。

青龍への畏れ。

或いは信頼か。

いずれも絶対。

領民も青龍も認めているように。


その青龍の意志。

命令ではなく、読み取れる。

それは皆と一致。


港街の復興。

復興すべき姿とは?


港街は三つの区画から為る

港。

港の労働者を支える北岸。

港の取り引きを司る南岸。


どうなった?


港は無傷。

北岸は壊滅。

南岸は健在。


そして今は?


港の設備と人員は無傷に近い。

通常通りに動かして動かせない訳がない。

しかもそれが青龍の貴族、その意向とあれば是非も無し。


北岸は全て解体中。

無事な建物など無いが敢えて全て壊して均していく。

利害関係者を殺し尽くせたので、街造りが自由自在。

自然成立した以前の街並みよりも、機能的に出来る。

だが従来の機能すら、()()、果たすことが出来ない。


南岸には街自体、人や物に市場も集約されている。

もともと道や区画に余裕がある館や庭園公園街区。

南岸からの生き残りを収容しても、まだ余りある。


市場や店は造られ運営が再開していた。

もちろん規模は以前と比べるべくもない。

とはいえ人口が半減したので当面十分。


いずれ足りぬと思われて、また皆もそう思うのだろう

――――――――――ご領主様(青龍の貴族)が。


これらの配置、運用も、ご領主様(青龍の貴族)の意思であると言う

・・・・・・・・・・誰も否定していない。


商い再建まで一ヶ月の道程、よくも短期間で造れたが。

――――――――――これで殺されないで済む。


材料は在る。

方法も有る。

利益がある。

何故か誰も言い出さなかった。

・・・・・・・・・・考えようともしなかった。


何故か、と言わない。

解っていること。

何を、とは言わない。

判っていること。

誰が、とは言わずに、誰もが察する。

・・・・・・・・・・自らの責任において絶対者に従う。


――――――――――やれ――――――――――


怪しい彼女たちも、従っていることになるのだろうか?

・・・・・・・・・・それと知れば楽しむだろうが。


南岸に移った服屋。

もちろん市場の小商人。


数は激減している。

それは他の商人と同じ。


だから増やされる。

港街の人口は激減した。

それ以上に減った。


それが店や小商人たち。

暴動の中心に居た。


逆に消費者の人足職人。

暴動を避けられた。


街の顔役たち。

港の機能再建を命じられた。

ただ今すぐに。


そう、思っている。


港の機能を支える北岸が消滅。

今すぐ都市機能の再建が必要。


需要が在るのだから商いは増加する。


下地としては十二分だろう。

それを待つ時間はない。

自由にすれば争いだす。

また暴動には出来ない。

命令なのだから当然だろう。


材料が在るなら()()に料理すること。


ただし特権階級には、それを担うことが出来ない。

末端の出入りこそ多かれ、ノウハウ(料理方法と経験)がないからだ。

だから服屋を含む小商人を、造ることにしたのだ。


大商人。

大商会。

ギルド。

温存された特権階級。


山には裾野が拡がっている。


番頭。

手代。

奉公人。

特権階級の直轄傘下。


出世すれば多くの権益と強大な権力が手に入る。

出世しなければピークを過ぎたら弱くなるだけ。


傘下の彼らは最初、出世を目指す。

直に気が付いて、小金を貯めだす。

後は貯めた金額と能力嗜好に選る。


衰えた能力を貯めた金で補って暮らす。

良く在る生活

・・・・・・・・・・生活水準は落ちていくが、分相応。


能力が衰える前に貯めた金で商いを始める。

良く有る目標

――――――――――運と努力と能力次第って、博打。


大組織の看板を背負う者は、相応の自負を持つ。

潜在的には自分の力を信じているのだ。

顕在化はしないのだけれど。


だが出世コースからの脱落者、つまりは小商人の志望者は少なくない。

山には狭い山頂があり、登れば登るほどにスペースは減っていくのだ。

志望したくはなくとも、志望せざるを得ない者たちは増え続けている。


下り坂を避けたい動物としての欲求故。

――――――――――先が観えているからだ。


ただしそれは志望に留まる。

金も手間も、コストが係る。

市場は既に競争相手も居る。


よほどの好機が無ければ躊躇うだろう。

・・・・・・・・・・先が視えているからだ。


大半が良くある生活を選ぶ理由。

目標が良くあるに留まる理由。

今それが逆転した、理由。


特権階級が眼を付けた。

使い捨て可能な素材。

卓上のチップ。

――――――――――賭けは嗜み、掏って当然。


下っ端なので小商人のやり方を体験している。


実績。

人柄。

意欲。


そして何よりも伝手を把握できる彼らを使う。


融資。

品卸。

紹介。


需要先過多供給元過少の今だけ失敗は最小限。


眼を付けられたと気付く。

与えられる賭けの卓上。

皆に配られたカード。

・・・・・・・・・・賭けは必然、後に退けない。


こうして生み出された小商人。

それぞれに盛衰はあるが、置くとして。


その中には服屋も含まれてる。

服屋は品よりセンスを売る職人。

小商人増強の理屈は通じない。


だが小商人が増えれば服屋も必要となる。


服屋の元手(センス)に使われてる人々(チップ)

その出処に不足はない。

特権階級各家に一セット以上。


特権階級直属の各種服係。

外出担当。

部屋着担当。

下着担当。

園遊会担当。

女担当。

男担当。

子供担当。

主人担当。

執事担当。

メイド担当。

天気に季節に来客ごとに、などなど。


皆、街の服屋でセンスを磨いて認められ。

各々で売り込んで成り上がって、尚も常に競り合い。

後続に追われ続ける、いつかは落ちる。


もちろん、担当持ちが商いに回ることは、余りない。

落ち目を自覚して退くにしても、金が有るから悠々自適。

だが絶頂期に在る担当持ち、の直下ならば結構いる。


担当の人数。

その数倍。

非担当人数。


それは本人こそが一番、理解している。

・・・・・・・・・・もう売れないことを。


売れるだけのセンスは持つ。

他人に認めさせる力も在る。

上を追い落とす能力はない。


そこに今だけのスーパープライス!

――――――――――売れなくとも世に問える。


今までは確定。

これからは未定。

センスは未確定の中だけにある。


堪えて得られる可能性。

諦めて得られる可能性。

通常ならば前者が多数派だろう。


金がかからないからだ。

得たものは、そのまま。

諦めは損切りだが、損ではない。


元の服屋には戻れない。

客も店も人手に渡した。

特権階級に挑む為に必要だった。


―――――――戻りたくても戻れない――――――――


だから今、リスクをコストにする金と物を与えれば戻りだす。


既存の商圏が崩壊。

新しい客が増え。

既存の店が消え。

新しい市場が誕生。


他の商いと勝手は違えど成功条件の充実では、劣っていない。


それは実行された。

一ヶ月ほど前から。


特権階級は機会を与え。

融資や古着を提供して。


衣装担当未満が応えて。

服屋が沢山、生まれた。


それが南岸に集約されたのは、北岸が整地中だから。

――――――――――だけではない。


融資先を見張り易くしておきたい、特権階級の都合。

運と実力、その結果を見極められて取捨選択が進められ。

いずれ北岸の復興が始まれば、順次小商人は戻り送られる。


それは明日のことであり、今日ではない。

だから怪しい彼女たちも南岸に向かわなければならない。




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