疎にして漏らさず/貴方の心は密告者。
【登場人物/一人称】
『わたし』
地球側呼称《魔女っ子/魔女っ娘/幼女/ちびっ娘》
現地側呼称《あの娘》
10歳/女性
:異世界人。赤い目をした魔法使い。太守府現地代表。ロングストレートのブロンドに赤い瞳、白い肌。身長は130cm以下。主に魔法使いローブを着る。お嬢やマメシバの着せ替え人形にされることが多い。
【用語】
『魔法』:異世界の赤い目をした人間が使う奇跡の力。遠距離の破壊、伝達、遠隔視、読心などが使える。魔法使いを帝国では組織的に養成しており、貴族に準ずるものとして扱われる。
『科学技術』:異世界ではすべて魔法として理解されている。ゆえに地球人は全て魔法使いとして見られる。
誰もが知っている。
青い竜の黒い瞳。
映らぬことはなし。
異世界種族にもそう感じる。
そうとしか思えない。
索敵機器。
盗聴盗撮。
ほぼ際限の無い記録。
地球人類にはこう教えておく。
それを誰かが視ているとは限らないが。
それは誰にも判らないから意味が在る。
それが誰かを監視して観せつけること。
恐怖は自主性により最大化できる。
ただ、それだけでいい。
殺して観せる必要はない。
自らが死ぬまで止まらない。
他人は誤魔化せるが己は視ている。
自粛する市民の様に。
過労死する社畜の様に。
順番を待つ死刑囚の様に。
人の造り方というのは異世界でも変わらないらしい。
――――――――――――――――――――今後十年、年10箇所以上で追実験のこと。
【異世界大陸北東部/帝国辺境領/回復予定領/割譲可能領/作戦周辺領/低要度・高危険度区域/斥候周回範囲/???】
「もっと観ても、よろしい?」
可愛らしく見上げる姿勢。
童女が向ける少女への視線。
知られていない、いつも通り。
凡百の童女幼女より抜きん出でいると自覚させられている。
だからこそ選ばれた。
邦で二番目に人々が多い港街。
滅ぼしかねないあの青龍の貴族から。
価値がある、だからこそ自分は所有されることが出来たのだ。
邦中がそう知っている。
一族がそう解っている。
自身がそう信じている。
世界最強の所有物に、怖いことなど何もない。
・・・・・・・・・・ょぅι゛ょコワイ。
もっと赤い瞳を観たいと。
怪しい彼女に求める裁可。
要は大人の中に居る子供。
自分が居続けたい場所を正確に理解している。
――――――――――其所での振る舞い型も。
持ち主に向かい許しを請うのは、大人の作法。
例えば、そう。
何かが、童女自身に何かを求めて来たら。
相手にしない。
彼女のことは持ち主が決めることだから。
自分が何をすべきなのかも、青龍の貴族の求めを予想すれば判る。
異世界、に限りはしないが、人と物には区別がない。
所有と親密の様な物/者だ。
童女の産まれは正直な世界。
建前として個人の尊重を名分にする世界とは、違う。
孤人が成り立つかどうか思いもよらず、自分や他人の持ち主を探す。
誰かの男。
誰かの女。
誰かの子供。
誰かの魔法使い。
一ヶ月ばかり前に自分の持ち主だった両親を見限り、新しい所有者を見出だした彼女は眼が利く。
だから当人を観ずに本人を視分けられる。
童女徒歩移動。
輿の上から桟橋を経て怪しい彼女の顎の下。
165と140位で身長差が25cm前後。
直接おねだり。
綺麗な赤い瞳をもっと楽しむ為には赤い瞳をした魔女の持ち主を従わせる必要がある。
「可愛い♪︎♪︎♪︎♪︎♪︎♪︎♪︎」
「姉御!!!!」
怪しさの意味を違えた彼女が抱き上げた姉御扱いの童女。
童女は慣れた風情で称賛を受けるも抱かれ慣れていない。
咄嗟にしがみついた怪しい彼女の首筋を締め付ける童女。
違う貴女じゃない!
――――――――――童女の立場。
貴女の意見が重要?
・・・・・・・・・・怪しい彼女。
童女を姉御と仰ぐ愚連隊が身を乗り出す。
御付きの執事が一歩前に出て、どうどう。
礼服ではないが物腰が執事に馴れている。
怪しい彼女と抱かれた童女。
いきり立つ童女の愚連隊。
その間に割って入った執事。
執事は仲裁することに慣れ切った風情。
怪しい彼女の人も無げな行動だが。
きっと初めてじゃないし最後でもない。
不審者から事案に発展させ事件に至る。
―――――――――直前、怪しい彼女は童女に贈り物。
赤い瞳を観せてあげた。
撫で回し柔らかさを愉しみ抱いたまま。
・・・・・・・・・・事案か事件か直前か?
怪しい彼女の連れ。
物腰執事ではない。
まんま魔女の方へ。
二人の視点を合わせる。
こちらはこちらで、見世物扱いに慣れ切っている様子。
まあ子供、の好奇に腹をたてる者も少ないが。
いや子供の概念がない異世界ならば、童女は幼い女か。
抱き上げられたからこそ、視点が並ぶ童女。
金髪碧眼の幼い童女。
フリルとリボンでドレスアップ
金髪碧眼の怪しい彼女。
旅装で一般的な革鎧に剣を佩く。
金髪に赤い瞳の魔法少女。
一見して一般的外出着なローブ。
良く観れば魔法少女だけ異質な格好。
異世界に魔法少女と言うカテゴリーは無いが。
身に纏うのは一般的な外套より薄手。
意識して観れば魔法使い風。
ゼロ距離で顔を寄せ会う三人娘。
全身を包む長いローブは男女に良くある。
服を仕立てる階級でもドレスアップは少ない
生産性優先の単純構造で刺繍や飾りを追加する。
だが魔法少女のローブは、違う。
丁寧に仕立てられた無地のローブ。
意味するところは富裕。
もちろんレベルが階級ごとに違うのだけど。
布一つ縫製一つの質で纏う者の価値が変わる。
だが怪しい彼女の連れは上下の差ではない。
ローブ《長衣》を良く観れば飾りが全く無い。
意味するところは偽装。
それは魔法使いが好む装い。
魔法は便利だ。
魔法は一人で使える。
魔法は即効性。
魔法一つで人が死ぬ。
帝国以前から、特殊な地位ではあった。
そういえば、冬が厳しくなかった気がする。
それが、奇跡。
その場ですぐに氷が融けて湯になり、沸騰。
それが、魔法。
奇跡とは違う。
巫女神官は皆で祈る。
誰かの責任ではない。
皆が望んで皆が得る。
得るも失うも同じこと。
誰かが余計に、はない。
皆の気の持ち方、それ次第。
だから誰もが気軽に接する。
神殿を訪ね、奉納し、憩い、愚痴り、感謝。
魔法使いには誰かが望む。
責任が一人に向かう。
魔法使い自身か頼んだ者。
結果がどうなっても。
結果が知られなくとも。
誰とされずとも魔法とは判る。
だから魔法使いは、周りと距離をとる。
気軽に何かを頼まれぬ様に。
誰の魔法と知られ難い様に。
己の意志だけで選べる様に。
だから魔法使いは全身をローブで覆う。
距離をとりたい。
探されたはくない。
世を棄てたくはない。
そんな立場ならば、目立ちたいとは思うまい。
だからこそ、視るものが居れば判る。
ローブは長衣でも特殊な品と。
そも、そんな目利きはそうそう居ないのだが。
女主人が革鎧の旅装なら、付き人は惹き立て役になる。
主人の性別を強調する為に、ゆったりとした装束。
体型を隠すための外套で肢体を覆って仕舞う。
使用人や付き人が、フードで顔形を観せないのも、よくある。
上流階級と、その付き人は容姿に優れるが。
旅程の最中、全員へ万端の備えは見込めない。
それなら主や、その家族だけを魅せるに徹する。
使用人、つまり調整出来ない舞台背景ならばいっそ単色。
そんな訳で付き人使用人がローブで統一。
あるある。
船旅をする者は上流階級以上。
魅せようとしない者を観たりしない。
付き人は上流階級ではないが。
上流階級の舞台装置なら取扱は同じ。
社交を避ければ瞳は見えない。
だからこそ、船旅中は問題なかった。
これまでは。
ここからは。
「行きましょう」
童女は赤い瞳を楽しみながら皆へ告げた。
童女に付き従う愚連隊の男女にも。
これは怪しい彼女の一行へも含む。
怪しい彼女たちを、童女がどうするのか。
連れて行く、の意味。
招く、ということだ。
例外なのか順当なのか。
異世界一般で、数少ないプロフェッショナルな旅人。
アマチュアの旅人なんか居やしない時代。
彼ら旅人が旅先で過ごすのは?
ファンタジー世界ではないので念のため。
そも総人口の九割以上が生まれ故郷で生涯を終える世界。
宿屋など、無い。
港街や街道街ならば、荷運び人足の宿舎になる倉庫に泊まれるかもしれないが。
隊商の下っ端辺りがまとめて放り込まれるのは良くあるので、一見でもいける。
それは宿屋ではない。
開放的な村や街なら、頼み込んで長や顔役の家に泊めてもらえるかもしれない。
閉鎖的な土地柄で幸運に恵まれたら、吊るされずに納屋に監禁してもらえるかも。
大抵は村外れで解放してもらえます。
それはまあ、例外だが。
商人は普通なら取引先の厄介になる。
その程度を頼み頼まれないなら、商いの相手とは見なされない。
行商の出入りが多い商会なら宿泊場所は必ず在る。
初めて訪れる街ならば参事会の施設か、数いる参事の私邸に泊まる。
参事会を主導する者以外に、平参事は沢山いるのだ。
太守領なら参事会を支配する五大家を含めて、200余りの参事がいる。
街に一人、いや、商人は人単位ではないので、最低一家はある。
こうした参事は地元の商売を盛り立てる為に真っ当な商人は助けてくれる。
まあ商いと関係が無い旅の好事家や芸人の類いをついでに扱う。
もちろん厄介になれる先への紹介状が手に入らなかった者を、だが。
だから、そんな支援を受けるのは、普通より下の零細商人。
逆に上流階級以上ならば?
知人の世話になるのが当たり前。
敢えて、それ以外ならば。
泊まらない。
家を買う。
部屋を借りる。
もちろん即金、即時換金可能な証券や貴金属含む、で支払う。
繁栄している港や街道ならば、すぐに適当な物件が無い場合もある。
それはそれこそ、家や部屋の仲介商会や地主が泊めてくれるだろう。
では怪しい彼女の心積もりは、どうだったのか。
余り考えず、丸投げだったようだが。
館を買えばいい
――――――――――とは、行かなかった。
太守領港街。
大陸有数の繁栄。
周りに集まる利益は莫大。
港街や周りに家や部屋など幾らでも在る。
大抵は使われていた。
繁栄の源たる交易が行われていたときは。
交易停止から二ヶ月半。
先行き不明となれば、経費削減は基本だ。
売家空き部屋ばかり。
再開の見込みは立ったが再開していない。
まだ買い戻しに躊躇う。
今ならば即日でも容易く部屋家が買える。
なんなら紹介もしてくれそうな童女。
新領主と、その女と親しい仲。
彼女の招きを断れる者は少ない。
港街の三大有力者。
盗賊ギルド頭目。
船主を仕切る五大家が一つ。
港街参事会代表。
もし童女の誘いに躊躇うことが出来るのなら?
余所の邦であれ、それに準ずる地位。
例えば
――――――――――帝国貴族とか
或いは
・・・・・・・・・・ド田舎者。
愚連隊60名余り。
魔法使い一人、後二人。
ホームグラウンド。
アウェイ。
一見すれば、魔法使い次第で決まる、暴力の均衡。
つまり考慮の必要はない。
判らないことを解らせるのは、悪いことではないが。
童女は死体を三つ造りたいとは思わない。
怪しい彼女は刺し違えたいとは思わない。
二人とも赤い瞳を視ている青い竜を意識していた。
すっかり良い陽気、故に染みる温度差です。
階層の違いなんでしょうね。
通勤時間帯。
オフィス街。
VS
昼間や夕方。
繁華街に図書館や公園など。
はい、違いはマスク率です。
新型(笑)コロナが風邪になって半年近く。
なんで行政規定で決まるのか(笑)。
……風邪扱いが既に大げさですが。
ことなかれ、は明治以降の欠陥だというのに。
誰かの跡を着いていけば安全だっていうなら、わたしだってそうします。
地雷源でわざわざ先頭を行きません(笑)。
実際には誰かの跡を着いていけば、ほとんど断崖から落ちるんですよね。
だいたい見下ろしてるから間違いありません(嗤)。
なぜか非難されますが。
別に困りませんけど。
下から言われても。
なぜなんでしょうか?
いや、非難は面白いから好いんですが。
なぜ自分の、或いは親しい人たちの、利益を謀らないのか?
周りに合わせることの不思議。
合わせなければ出し抜けるのに。
合わせたらヒドイ目に逢うのに。
マスクだらけの通勤電車に政府の要請を嗤いながらノーマスクで乗車しつづけても、何も起こらないんですよ?
パンデミック(笑)期間中にヒドイ風邪をひいても薬を飲んで食って寝て病院に行かなければ殺されませんでした。
むしろ小金をタダ取りしたり、便宜をちょろまかしたり、手間をはぶいたり、「頭が悪い虫ケラが生きてるのを見かける」以外は丸儲け。
人間とは不思議な物です。
自分の利害得失が理解出来ない、何故に?
いやそれが出来たら毛沢東もスターリンもヒトラーも生まれないのでしょうが。
世界が自分の利益だけで考える人々ばかりになれば、大勢の命が救われ人類が進化できるのに!
……みんなの為にという輩が皆を巻き込まずに殺されてれば、時間ぎ解決してくれますが。
わたしは自分の利害得失が判るので、せいぜい判らない輩を減らすことに努めてまいります。
そんな訳で更新が遅れるかもしれないというお知らせでした。




