綺麗は正義♪︎/歴史を知らずに済んだ子どもたち。
『フレンズ』
:太守領第二の街である港街の上流階級から、容姿と年齢でだけで選抜された少女童女幼女。占領軍司令官に肢体も心も捧げきっている妹を更正させるために特権階級の兄が選んだ即興の刺客にもなれなかった生贄。可愛い可愛い妹には及ばずながらその筋の意見を集めて選んだ選りすぐりの犠牲者。身元が確かで序列として逆らえない有力氏族から太守領随一の五大家最古参の財力人脈権力で脅して買って煽ってかき集め、代わりに差し出すことで妹の救出を謀る兄心は敢えなく空振り妹に大っ嫌い!!!!!!!!と粉砕されましたとさ……そして集められた少女童女幼女13名は自分を差し出した家族両親と縁を切り自分たちの庇護者を軍政司令官と見定めて活動開始。正しい行いは必ず報われる君たちの献身は彼に届く愛こそ全てと説くインドネシア国家戦略予備軍将校に煽られて暴走中。太守領特権階級の黙認と黒旗団の支持を得て盗賊ギルド頭目と手を結び、親を差し置き所属する有力氏族の支配権力を奪い、港街の体制を組み換えようとしている。
殺されるのは、とても容易いことです。
ただ敵を防げば宜しい。
《太守領港街に置ける戦い方実習》
【異世界大陸北東部/帝国辺境領/回復予定領/割譲可能領/作戦周辺領/低要度・高危険度区域/斥候周回範囲/???】
「やっぱり綺麗♪︎」
童女、大歓喜。
やっぱり、と比較に浮かぶのは、童女のトモダチ、魔女っ娘の瞳。
※第68話〈トモダチ〉より。
童女はフレンズ。
そう呼ばれる女は他にも居る。
でも、それには意味がない。
青龍の貴族に気に入られた。
そう判れば、それだけで善い。
彼女にも、たち、と言う意識はない。
ドレスは装飾過多に。
髪は飾らず。
肌と供に磨き上げる。
今、ここに居ないが、彼が必ず視ていると疑わない
その好みを常に意識。
一挙一動。
一挙手一投足
一喜一憂。
するのが、フレンズ。
今は桟橋の童女、十一歳。
その中で船大工を代々続ける氏族が一つ。
その造船所の内一つを差配する分家だった。
その後で複数の造船所を持つ本家も支配。
氏族は血統で決まるが、支配は血統内の力で決める。
差配する実務者は代わらない。
両親を含む権威者を吊るした。
童女が当主に為り最初の仕事。
権威とは、そこに在り続ければ、誰でも構わない。
港街の労働者を従える盗賊ギルド。
工房運営資金を融通している参事会。
船の建造修理補修点検を依頼する船主。
――――――――――皆の熱狂的大賛成。
港湾都市を半壊させ、全壊でも気に留めぬ新領主。
・・・・・・・・・・彼の命令、彼女、たちを守れ。
彼に気に留められたのなら、十分過ぎる。
彼の女たちと親しいならば、安全だろう。
彼からの寵愛あらば、先行き期待出来る。
利益に関心が無い青龍から便宜など期待してない。
――――――――――かかっているのは生か死か。
殺される前に弁明が出来るかも知れない。
殺される時に助からないとも言えない。
殺される際に方法を選べるかもしれない。
族滅上等の世界で、これは大変なアドバンテージ。
異世界でも極例外な氏族社会。
だから氏族同士は族滅を謀る。
ゆえに氏族が恐れるのはソレ。
一族が皆殺された跡に、青龍の貴族から気に入られた童女が独り生き残るなら?
男に気に入られた女。
女に気に入られた男。
血を伝えるのは容易。
他の誰がどうあれ氏族の血統を遺せれば、それは勝利だ。
それが氏族のロジック。
血縁に意味を見出だす少数派。
氏族は強欲だから続きがある。
最悪を避けた後は最善。
普通に、黒髪の赤子を氏族に加えたいな、などと目論む。
氏族の思惑を知らぬ童女。
黒髪の子を産むのは、まだ先。
・・・・・・・・・・数年くらい?
自然に、そう想っている。
だから魔女には含む処がない。
・・・・・・・・・・今は、まだ?
実際は童女自身に、氏族という自覚があるのやら。
氏族を支える総領娘。
例えば分家筋でも小なる氏族となる。
扱いは、変わらない。
その訓練が始まるのは十歳前後から。
完成は十五歳くらい。
個々の成熟具合で多少の幅があるが。
彼女たちは皆、同じ。
だがフレンズは始まる前に当主就任。
青龍の貴族に、遭遇。
彼の女たちとおともだち認定された。
この過程に氏族であることは何ら寄与していない。
必要無い物に縛り付けられる洗脳も受けていない。
それこそフレンズが両親を始末出来た理由だろう。
血が繋がっているだけで今これから保護しない相手など、使い終わったトイレットペーパー。
――――――――――親子信仰が無ければこんなもの。
フレンズは青龍に出会したおかげで色々な縛りが無いニュートラルな状態から始まった。
・・・・・・・・・・アクセルもブレーキも加減無し。
怪しくない彼女たちには歴史はない。
在るのは自分自身だけの個々の体験。
赤い瞳。
怪しい彼女の連れ、魔法使いの両の眼。
フレンズが観たことがあるのは、紅い瞳。
トモダチの眼。
だから童女は綺麗だと感じた。
だから皆は帝国だと疑った。
皆、フレンズに従う愚連隊。
港街の荒くれども。
盗賊ギルドの末端。
杯も受けられない半端者達。
青龍そのものである破壊と殺戮。
力そのモノに熱狂した明日無き輩。
青龍の貴族の虐殺に感動?
※第43話〈アフターパレード1984/AfterParade with Orwell〉より
勝手に奉仕活動?を始めた。
※第72話〈青龍の統治〉より
そんな愚連隊は命令無き世界で忖度に励む。
そもそも青龍は無価値な住民に命令しない。
そんな中で珍しく保護命令の対象フレンズ。
身綺麗に整えたチンピラや、肢体を磨いた酌婦たちが童女たちの元に集まったのも、無理もない。
童女の好悪反応が彼らの判断基準となる。
だから訳が判らなくとも、それには従う。
青龍の敵は帝国なのだから魔法使いは帝国なのだから敵わずまでも襲うべきなんではないかなぁ。
そう思っても身体は童女に従った。
判断を上回る反射の一例。
魔法の種類すら知らない彼ら。
魔法と言えば圧倒的な暴力。
魔法に敵うとは思っていない。
明日をも知れぬ輩には、どうでも良いこと。
童女にとっても、生死は意識の範囲外。
両者に共通するのは考えではなく感覚。
童女の反応は、とても変なのだけれど。
童女の側に、考える輩は一人もいない。
社会階層に依らず無知は生じる。
物を知っている者は、皆と違う判断を下す。
知らぬと知る者たちは、皆と違う者に従う。
説明しないと判らないなら、説明しても解らない。
この関係には、そんな述懐が生じる訳がない。
歴史はあれど、価値はなし。
この辺りの事情は太守領とて同じ。
帝国には在る物が色々ない。
なにしろ太守領成立が十年前。
旧王国滅亡も同じ頃合い。
それまでは帝国じゃなかった。
帝国が世界征服に乗り出して七十余年。
反帝国を諸王国が名乗って、数十年。
同時に神殿がシンボルにされた頃合い。
最期の神殿、大神殿が全滅したのは昨年来と最近だけど。
大神殿の攻囲戦が始まった五年前には最後の拠点だった。
既に神殿自体は滅ぼされ終わって、残骸を片付けただけ。
今、生きている異世界人。
長命種不老種不死種を除く大多数。
反、帝国。
――――――――――なぞと帝国に抗えるなにかは知らない。
辛うじて、そんなモノがあった、と聴いた。
そんなレベルがグローバルス・タンダード。
せいぜい反と称する残党狩り。
それを彼方の噂として時折、耳にする程度。
むしろ帝国内部の叛乱かと。
反帝国の主戦力として竜と戦った魔法使い。
そんな者を想像する訳がない。
ただ、帝国に属さない魔法使い、は局地的に知られている。
赤い瞳の赤子は神殿へ。
これは帝国以前の慣習。
赤い瞳の赤子は帝国へ。
これが帝国以後の法律。
ただし魔法使いには適用されない。
反帝国に踏み切らなかった魔法使いたち。
或いは助命と引き換えに投降した者たち。
彼らは既得権を許された上で護られた。
魔法使いであることが尊い故に。
――――――――――表向き。
それは告知する手間を省くプロパガンダ。
言わなきゃ判らない奴らには言っても解らない。
それが帝国、騎竜民族&魔法使いの流儀。
実際には魔法の多様性を維持するため。
魔法使いには様々な流派がありあった。
魔法とは技術だからだ。
環境や状況によるニーズの差。
個々資質や経験の違い。
それらは蓄積され共有されない。
魔法使いは職人の世界。
大量生産動員使用は帝国だけ。
長所短所に向き不向き。
魔法使いらは個別に継承した。
赤い瞳の赤子を引き取り。
或いは見込んだ者を弟子にして。
それを共有しようとしたのが帝国、の魔法使いたち。
だからこそ保護した。
抵抗離散されては本末転倒。
まずは温存して置く。
例え抽出に百年かけてでも。
どれだけ些末な知識でも。
例え間違っていたとしても。
千年先まで予定が組んである帝国。
彼らが、それを継承して発展させる。
それは少ない例外。
一派を成せる才能。
一派を為せる状況。
それを選べる決断。
そんな例外が太守領には居た。
魔女っ娘の父親のことだが。
だから魔法使いと帝国を別けて考える。
――――――――――特権階級は。
だから赤い瞳を観たときに、帝国だとは想わなかった、童女。
そして赤い瞳だから帝国と断定されないと思った怪しい彼女。
だから赤い瞳を観せられた瞬間に帝国ではないかと疑った皆。
さて、どうする?
皆は指導者である童女を視た。
指示ではなく反応を求めて。
怪しい彼女の連れは周りを視たまま。
命令されずとも動くに不自由なし。
怪しい彼女は楽しそうに何もしない。
そんな怪しい彼女に、童女が微笑む。
怪しさは感じなくなった様子。
親しみを持つ友人との共通点。
他人に親しみを感じる理由。
屈強な男たち、輿を担ぐ者の頭をペチペチ。
但し扇を使う。
なんでも独り以外の肌を触れたくないとか。
輿を下げ置く。
周りの女、メイドではない、屈強な女たち。
手を添え導く。
この為だけではなく盾役でもある酒場の女。
革鎧だけ纏う。
両脇の槍持ちは穂先を下げたまま力が入る。
敵意を観せぬ。
まあ出来るだけの努力を観せて意は伝わる。
と、期待する。
後ろを固める男たちは抜き身を握り込んだ。
斬り込み準備。
元々、船乗り用の片刃の短剣を肩に担ぐ姿。
周りを斬らぬ。
狭い桟橋の上で密集した身内を斬らない型。
路地裏の流儀。
左右に別れて童女の退路を確保してはいる。
一応の備えか。
そも左右両脇の桟橋に構える別動隊の投石。
構えを変えず。
臨機応変に身内の近くの敵を打てはしない。
実力を把握済。
中央の桟橋に居る本隊が殺られたら終わり。
或意味割切り。
遊兵に近いが海上封鎖が目的ならよかろう。
そんな配下ら。
フレンズの童女は皆を手で制した。
そして独り、まっすぐ、怪しい彼女へ。
トコトコと。




