貴男へ/to you.
【用語】
『互酬性』
:比較民俗学の基本概念。
古代~現代、全地球人類共通の規範。
※第221話<幕間:贈与論/Systematic love.>にも既出。
ひとつ。
「贈り物をしなければならない」
ふたつ。
「贈り物を拒んではならない」
みっつ。
「贈り物に返礼をしなければならない」
上記三点を尊守出来ない者は社会的にまったく無価値な者である。
……という原理。
世界中の民俗学者が限りなく続けたフィールドワーク、資料発掘、聞き取り調査の果てに「一切の例外が無かった」人類普遍の原理の一つ。
もちろん、
「万人共通の正義などない」
という迷言が無知蒙昧を証すように
「古今東西、人類普遍にして共通の価値」
というものは、とくに珍しくもない。
これはその中でも、よく知られた事例、その中の一つ。
関係の定義が無い。
――――――――――原因はコレです。
取引はない。
利害もない。
共感も、ない。
理解出来ない相手から、理由もなく生かされて、彼女らが不安にならない訳ないじゃないですか。
処方箋?
判りやすく定義すること。
患者にも。
周辺にも。
社会にも。
男女関係のことですけど。
普通でしょ?
性愛が無い恋愛は歪なだけ。
いつまでもいつまでも恋い焦がれる。
結ばれない限り解けない。
付き合わないと別れられない。
なんでもするって縋りつけない。
言うじゃないですか。
結婚して初めて離婚出来る、って。
それで精神が安定すれば、彼の姿が観えなくても、いずれいなくなっても、生きていけるようになります。
・・・・・・・・・・だから死ねるんですよ。
付き合ってると言えるのは
――――――――――別れられるからこそ、です。
《国際連合安全保障理事会/異世界同化計画/臨床医学試験資料より抜粋》
【異世界大陸北東部/国際連合軍占領地中央/国際連合統治軍拠点/占領軍司令部/浴場/青龍の貴族】
「なんてヒドイことしないんですか!!!!!!!!!!!」
俺の鼻先3cm。
湯中りかオメー。
マメシバだけど。
タオルでガードすればいいってモンじゃないほどイイもんです。
スレンダー寄りではある。
だから脱いだらスゴい方。
ギャップを意識してるな。
脱がずとも視える俺にも楽しめる。
元カノみたいに隠しようがないのも好い。
カタリベみたいに隠すモノが無いのも愉し。
目の前のマメシバに判る様に比較すると。
寄せたり上げたり普段はしてない。
素材がいいからだな。
そして今は普段じゃない。
我を忘れても反射的に寄せる。
魅せ方を心得ているのは、お見事。
離れていた時は観る。
近付いて来れば触る。
色と型と薫りも魅る。
マメシバでもね。
形は好いし。
肌が綺麗。
血色も良い。
外見がマメシバ。
眼がマジだ。
興奮してる。
いつも通り。
中身もマメシバ。
好きなことに向かない。
単純なんだよな。
男の話になると。
苦手が好物とか。
濡れた髪は特にそそる。
「聞いてますか!」
なんで訊いて貰えると思った。
聞くわけ無いじゃん。
聴こえるだけ。
喧しい。
言えば伝わる耳を貸す?
そんな夢観がち、じゃあるまいに。
他人は無視してされる者。
どうでも良いから当たり前。
相手が無視せずしない理由。
自分に価値があるからだ。
まあマメシバなら聴いてるが。
謎ロジックも面白い。
なんでヒドイことしないんですか、ね。
前も言ってたなコレ。
ってゆーか、文章が意味不明。
非難されてるのは、間違いない。
それ自体は、どーでもよかろう。
興味を惹かれるマメシバの肢体。
――――――――――だけではない。
マメシバと呼んでる女のこと。
思想は知ってる。
心情も判ってる。
言い分が解らん。
ナニを言わんとしているのか。
無視しない方が良さそうだ。
実利以前に興味があるし。
マメシバの謎が一つ解ける。
なんでヒドイことしないんですか。
なんて、とは?
――――――――――強調。
ヒドイこと、は?
・・・・・・・・・・まんまか。
しないんですか、と?
――――――――――怪しい。
ヒドイことをしなかった、のか?
・・・・・・・・・・構わんだろ。
善くもないが悪くもない。
だからするしないではないが。
面倒を生むことではない。
――――――――――生まれてる――――――――――
ここから導かれるマメシバの義憤。
そこか。
義憤。
他人事。
マメシバは誰かの為に怒っている。
うちの娘たち。
メイド五人衆。
そんなところ。
マメシバの方が解ってる面はある。
敢えて問おう。
「すればいいのか」
なにか知らん。
「したくないとでも?」
眼が怖いです。
「なんのことだか」
最初に戻そう。
「こんなにおっきくしてヤるきがないとかありえませんから!!!!!!!!!!!!!」
パンパン叩いて大燥ぎ。
元気で結構。
これだから処女は。
「関係無いじゃないですか今のところ!」
気にしてる。
聴こえてた。
言ってたか。
教えとこう。
「おい医者」
マメシバの感情より知性を励起するのは役割意識。
「お医者さんですけどナニか?!」
メンチ斬ってくるから眼先1cm。
「血管の拡大縮小は感情だけじゃない」
せっかくの胸元が観えなくなった。
「感情を排する理由なんかありません!」
こちらから圧し返すのは止めよう。
「だから、だ」
今後の為にロジックで判らせとく。
「はぁ~~~~~~~?」
想像もつくまいよ。
「ヤる気ならヤっている」
男であれ女であれ。
「????????????
――――――――――――――――――――!」
遅っそ。
「縮地!!!!!!!!!!」
なにそれ。
「危なかった?!?!?!?!?!」
別の意味で頭に血が登ったマメシバは、びっくり後退。
「いつの間にか距離を詰めて来たと思っていたら!!!!!!!」
逆だが接触してる自覚はあったのか。
「まさかヤられる過程だった?」
なぜに疑問符。
「ちゃうちゃうちゃいますから!!!!!!!!!!」
否定の否定の否定で一周360度。
「覚えてろよぉぉぉぉぉ!」
初期位置、湯船の端まで後退し終わったマメシバの遠吠え。
「とりあえずが終わったら一生朝昼晩に怨み言を聴かせてあげますからね!」
なぜ同棲が前提なのか通いなのか。
「結婚じゃないところが、たいちょー」
したいんかい。
「不合理で意味がないからこそ敢えて為すことに尊さを二人で生み出せるんですからね!」
・・・・・・・・・・したいの?
「します
――――――――――いつとかどことかまだ決まってないですけど御意見は訊きますから良いんですが他に候補は間違いなく絶対に証拠付きで居ますから何ですかその態度嘘じゃないですからね」
誰でも出来ることを疑ったりせんわい。
「結婚の話は後日にしてください!」
誰とするかが抜けてるのが、なんとも哀れを誘う。
「それより拡大縮小とヤる気の関係はそのあのあれ」
はいはい、処女童貞向けファンタジーで使われてるみたいですね。
「で、何がヒドイって?」
俺の追撃打ち切りに、不満なマメシバ。
「アレですアレ」
あ~、うちの娘たち。
一見すると死屍累々。
浴場の流しに陳列済。
只今入浴中。
出張帰り、帰りは言葉の綾として。
軍政任務の一部としての交渉帰り。
休みを一日挟むが雑務も多かった。
戦闘とか。
――――――――――対陸上自衛隊義勇兵。
戦闘とか。
――――――――――対合衆国海兵隊。
戦闘とか。
――――――――――対第七師団機甲部隊。
自衛官だから戦闘が仕事、ってのは知ってるが
・・・・・・・・・・多すぎやしませんかね。
ずっと後方地帯に居たから敵と出くわしませんでした。
解せぬ。
許せぬ。
今後の課題。
つまり本来の任務を超えた雑務が大量発生。
だから出張帰りの今日を半休にしても善し。
つまり疲れたから風呂入って寝るのである。
いつものいつもの日常茶飯事。
「そんなのおかしいよ!」
突っ伏している肢体。
うちの娘たちが八人。
お湯が流れる大理石。
溢れる温泉が湯船から溢れている。
冷えずに湯だらぬ最適配置。
動きはあるから生きている。
湯中りではない心配無用。
一度も湯船に浸かっていないから。
でも入浴は体力使うよな。
年寄りが風呂で死ぬのはいつもの。
子どもがへたるのも当然。
日本でもこんなもんだったからな。
「女八人潰して元気そうですね、たいちょー?」
子どもを洗ってあげるのは、慣れている。
「洗わせてましたよね?八人がかりで」
一対八で一度にいけんわ。
一緒に御風呂で流し合い。
一対三、一対五の組合せ。
俺だけが流してあげても良いんだが。
子どものプライドを舐めちゃいけない。
して貰ったら返したがるのは共通項。
人類共通、文化人類学を参照。
子どもが御手伝いしない、なんてウソ。
手伝わないのは親が何もしないから。
してる気になる役立たず、ってことだ。
他人な俺は当然、御礼されるタイプ。
御礼を受けないのは、喧嘩を売ること。
大人と子どもじゃ喧嘩にならないか。
だから尚、一層、悪く傷付けてしまう。
借りたら貸す。
奢るなら奢られる。
背中を流されたら流す。
そこは付き合ってあげるべき。
まあ八人がかりで背中を流されたら剥ける。
だから部分部分を分担することになるけど。
誰が何処をってところは、子どもたち任せ。
俺は全員だから考える必要もない。
先ず、洗われるのは俺。
洗う側が綺麗じゃないと洗えない。
うちの娘らは先行。
肢体を軽く流して待機。
続いて俺が後から浴場入り。
さらに先行シスターズ。
胴体と頭をお任せ。
背中はエルフっ娘。
腹胸は、ちびっ娘。
三人が納得したらColorful。
手腕足脚を五人懸かり。
どう観ても手が多すぎ。
色々分担して協力する。
交代交代なのがColorful。
痛くない程度に満遍なく綺麗にしてくれる。
自分でやった方が速いなんて言えるもんか。
介護される立場にゃ成りたくないって解る。
で、洗われ終わったら、洗うのが俺。
最初、ちびっ娘だけのつもりだった。
だか、そうとは言っておかなかった。
異世界でも当然順番待ちが発生した。
犬ネコ子どもは公平が好き。
そも、ちびっ娘は十歳十二歳。
背中と髪を洗ってあげる想定。
それも別に言わなかった訳だ。
すると全身委ねて隅々まで洗われる姿勢。
そも世話に成ってる娘たち。
衣食住、公私に渡ってます。
そも期待に応え悦ばせたい。
すると、おっきい娘たちも順番待ち。
どっかで知ってるパターン。
大人の肢体の方が洗い易い。
力を込めても、怪我しない。
素早く隅々まで洗ってあげます。
肌は掌で擦り。
窪みは指先で搔き。
尖りは指又でしごく。
まあ屋内基本で屋外は移動のみ、となれば日本の子どもと同じ様に汚れてないけど。
一人十分で充分。
〆て八人、結構かかる。
朝晩二回のルーティンワーク。
洗う俺は流れ作業だが、洗われる娘は大変だ。
気持ち良さそうではあるが。
肢体を一方的に振り回される。
裏表前後左右に上に下、力尽く。
へたばるのも無理ないわなぁ。
そのまま湯船に入れたら溺れる。
最初に力尽きた、ちびっ娘二人。
回復気味で両膝に乗せるくらい。
おっきい娘たちもしてやりたいが、我慢させる。
全員支えて浸からせたら、俺が湯だる。
だいたい後半のColorfulはへたったまま。
あ、シスターズから洗ってColorfulに至ります。
まあいいか。
「それで大変なことにされた娘たちが必死に顔を背けてるんですね」
ほう。
「愛する男にしか見せないけど愛する男にだけは観られたくない表情」
ほうほう。
「是非とも観てると判らせながらじっくり時間をかけて視て動けないのを良いことに身悶えする過程まで記録しておいて後で本人が冷静に為った頃合いで鑑賞会を一対一と一対多で開いて七転八倒させて来世までトラウマを遺すつもりですね」
思い付きもしねーよ!
その手があったとは!
カメラ個人用は何処?




