夢に向かって踏み外す/I shall return.
【用語】
『軍政部隊』
:「俺」が率いる増強分隊。司令官(俺)、監察官(神父)の二人の将校と下士官一人、兵十名(選抜歩兵2名、衛生兵一名)。独立した作戦単位として活動する為に軽装甲機動車と3 1/2tトラック各ニ台、KLX250(軍用バイク)二台、偵察ユニット四機と機動ユニット、各種支援装備が配備されている。
チヌークは指定支援部隊なので別部隊。
それでいい。
それでもいい。
どれがいい?
【大陸北東部/太守領中央/太守府/王城内郭/飛竜台/青龍の貴族が臣下ら/城仕え衆先頭右】
あたくし。
執事長さん。
「「お帰りなさいませ」」
御城と城仕えを預けられた二人。
声を揃えて深々と一礼。
聴こえねど伝わる青龍が不思議。
「今、帰った」
――――――――――今、微笑まれ、ましたか?
もちろん御顔が観える姿勢ではありません。
もちろん抑揚が聴こえる静寂もありません。
もちろん只今初めてのことではありません。
青龍の方々に轟音は付き物。
竜殺しの咆哮。
土竜が地響き。
飛竜の風斬り。
今日この刻こそ常の常。
上空の飛竜が翼音は皆、方々の肢体を打つ。
理と合わせれば声に意味は有りますまい。
されど搔き消されても心配は御座いません。
地に拡がる都市に知らしむ主が動向。
それは常に耳を衝く轟音を伴うもの。
耳を澄ませず耳を塞ぐのが街住まい。
音で知る者、確かめる者。
知らぬ彼ら、知らされる我ら。
申し上げる者と受ける方。
轟音の最中、声でのやり取りに。
・・・・・・・・・・何故か不自由が起こりません。
青龍の方々は耳が敏い方ばかり。
――――――――――よもやとすれば魔法でしょうか。
あたくし共の常に抑えた御挨拶。
・・・・・・・・・・青龍の方々には伝わるものに。
王城の上に翼を休める青龍の飛竜。
降り立つ主を翼下に隠す青龍の飛竜。
ご領主様が使役するのは二頭在り。
ただ一頭の風切り音とて声を圧する。
ならばと言えど叫ぶメイドもなく。
常ならば音が鎮まるのを待つものに。
耳元に囁くに相応しい段取にあり。
まだ為しておらずば声は届かぬもの。
それでなお申し上げるのが御挨拶。
翼音に竜殺しの音など無きかの様に。
発した我が身にとて聴こえぬ言葉。
それでなお申し上げるに躊躇いなく。
ご領主様や青龍の方々には伝わっております。
・・・・・・・・・・魔法でしょうか?
あたくしたち領民の間では聴こえず伝わらず。
――――――――――青龍の方々同士は聴こえるだけ。
此が魔法であるならば領民と青龍の間に通す。
・・・・・・・・・・支配の形でしょうか?
聴こえない。
伝わる。
伝わらない。
聴こえる。
何故かそうなっておりますに気付く。
伝わる言葉。
伝える言葉。
御側に仕えている者にだけ解ること。
聴こえていない、あたくしども。
聴いておられぬ、青龍の皆様方。
御外に待つ方々に、どう判ることか。
この場に立ち会えない者たち。
この場に立ち会わない者たち。
青龍から隠れる者は、青龍を畏れる余り、あたくしどもには気付かない。
ご領主様を観る、青龍の瞳。
先ずはそれ。
ご領主様に敵することが出来るのは、青龍。
青龍を観る以外の全てが目。
次はこれを。
ご領主様を害することが出来るのは、帝国。
あたくしの瞳に映る、御姿。
覚られますわ。
ご領主様の癇に障れるのは、あたくしたち。
御伝えする機会は、この後。
今は御覧くださいませ。
御挨拶は長の役割。
掌脚となる城仕え。
皆は努めに備える。
先に降りた青龍の騎士様方。
皆と数えるは僭越に過ぎましょうが。
たかがメイドに御座いますれば。
御出迎えを別に為す訳に参りません。
あたくしたちでは盾にも成れず。
青龍の方々が内。
ご領主様の臣下。
より役に立つ方々。
領民の城仕え。
あたくしたち。
役に立ちたい身共。
序列は在れど区分けは同じ。
ご領主様に仕える者。
序列に従い前に立つ青龍の騎士様方。
半ばに分かれ中央にて儀仗。
兜の中は観えません。
視線の先は仕草で解りますわ。
ご領主様へ背を預け。
飛竜に護られ。
強い、ご領主様。
より強い飛竜様。
御二方に支えられた背後以外。
竜殺しを踊らせます。
筒先は一番近い、あたくしたちから。
殺されない様に命じてくださいますのに。
殺さない様には命じようと思いもよらず。
常に挑まれることを常と視なされる。
青龍の騎士様方は、それに向かい立つ。
青龍の貴族様方は、それを受け愉しむ。
気分は察しております。
意志が無いことも含め。
殺す必要が無いことに戸惑っておられますわ。
気負わずに、気遣う。
一応は殺されることも在りましょう。
必ずと殺されることは有りますまい。
気に留める様なことではありません。
放たれ無ければ。
放たれ足るなら。
殺さぬ様にとされ、なお殺されるなら?
あたくしが殺される様に振る舞った、ということ。
考えても
備えても。
詮無いこと
明日の天気と同じですわ。
そして今日の天気は予定通り。
メイドは左手側に整列。
執事は右手側に整列。
あたくし。
城仕えの女たちが差配役。
ご領主様から観て左側。
荷降ろしの邪魔にならぬ立位置。
お客様が在れば迎える配置でもあります。
執事長さん。
城仕えの男たちが差配役。
ご領主様から観て右側。
後続の荷降ろしに備える立位置。
荷役が居れば右手に持つ荷を引き継ぐ為。
もちろん荷役が居るとは限りません。
現に只今後に続くは、お嬢様方に御座います。
本来なら家宰、奉公人全ての差配役、に当たる方は
・・・・・・・・・・さて置くと致しましょう。
あたくしたちが向き直ると一斉に礼。
間を空けて顔をあげるのは三呼吸。
翼音の最中に号令は通りませぬ故に。
あたくしたちが観ていない刻。
あたくしたち以外の皆が観る。
あたくしたちが観ている刻。
あたくしたち以外が観ない。
主を誰が観ているか。
主が誰を観ているか。
使用人の備え、好く出来ました
―――――――あたくしの背中を軽く打つ、ご領主様。
皆に観せ付けて頂ける配慮。
城仕えの者たちは、不安を沈めております。
御仕えすれど青龍の方々は誰も必要に非ず。
在ろうが無かろうがどちらでもかまわない。
要らぬと解る者たちへ配慮。
認めることは所有の形。
選ぶことこそ支配の形。
等しいことこそ争う形。
観ている、と、独りに示す。
それを皆に観せる。
お前たちにも、と。
観えてはおられる。
執事長さんの肩も叩く必要は、有りましたでしょうか。
【異世界大陸北東部/占領地中央/太守府/国際連合統治軍拠点/屋上ヘリポート】
俺は帰って来た!
――――――――――んじゃなくて。
ノリで格好付けてしまった。
好いけど良くない反省しよう。
三佐が聞いてる、嗤ってる。
そこが貴男の帰る場所でしょ志願御苦労交代要員を造らなく済んだわ、とかなんとか俺の発言記録付きでこの人事配置は当人の強い希望によりやむ無く継続させたものです
・・・・・・・・・・昔々、仕事もないアフリカ深奥に十年以上配属された全日空の社員がいたよね。
このままだと俺は辞表を未着扱いのまま異世界配属のまま週末には都内からジャンクフードを楽しむ三佐の映像通信をサボると殺される任務扱いにされる人生になる可能性を否定出来ないだけ。
まだ負け終わってない。
勝利に繋げる永い道。
永いはダメだろ。
せめて長い。
いや、判ってるんですよ、解ってはね?
ただいまじゃないよね、ただいまじゃ。
いや、いま参りました、の意味だった?
そう言い張れば押し通せるかもしれん。
お帰りなさいの後じゃなければ、だがな。
ここは王城、軍政基地。
俺は自衛官、軍政司令。
自宅は日本列島の東京。
つまりは職場に帰ってどうするヤバいヤバいヤバい。
何処のワーカホリックなのか。
判ってる。
解ってる。
正しく言うなら?
ただいま戻りました。
そう!
戻るが正解!
営業先から職場に戻った時の経験は無いけどこんなもんだろ。
しかし失敗。
ただいまと返してしまった。
返して、って処がミソ。
先手を取られてしまったよ。
お帰りなさい。
ただいま。
これはセットだ様式美。
これを無視するのは如何。
これに気付かないとかどうよ。
より重要なことに気をとられてチヌークから降りる刻、うちの娘たちしか気にしてなかったからな。
いや引き剥がす必要はないけどね。
素早く。
ねっとり。
名残惜しく。
断腸の想いに身を引き絞る様に背中と膝から離れるんだな。
爪をたてないあたり、近所の犬ネコ子どもよりマシです。
その辺りは頼もしくもあり、甘やかし方が足りなくもあり。
もう少し、お互いの遠慮を無くして置かないと遺憾です。
俺が帰国する時に困る。
一生モノの御付き合い。
しっかり者は特に好い。
子どもの頃を知ってる相手とは孫の代まで玩んであげられるんだよ御婆ちゃんは小さい頃むっちゃ甘えたがりでね。
もう逃げられないぞ♪︎
――――――――――君の黒歴史に乾杯!
だからチヌークの扉が開かれた。
俺が自力で開く余地がなかった。
重いから手を使うのはいやだが。
出入り口を潜ると、そこはもうベルリン迷彩だった。
まあ、居るわな。
プロテクター姿。
先に待つのは先行した二号機のから降りた、うちの部下。
――――――――――当然、此方には背中。
指揮官は兵士じゃないけど部下の背中を視ないといけません。
指揮官の背中を観たい兵士なんか居ないし、なんなら撃つわ。
常識に溢るる将校は、部下の殺意を生まない様に背後で子守。
着陸地点制圧と先行警戒。
ルーティンワーク兼訓練。
制圧済みの王城だからこそ、油断を戒め型を叩き込める。
――――――――――って曹長が言ってた。
良いこと言うな。
こういうので善いんだよこういうので。
んで、都市迷彩のさらに先があるとか。
執事さんメイドさんが揃い踏みしてる。
・・・・・・・・・・とは思わんわな。
一軒家くらいなら、わかる。
ちょっと出迎えておこうかな、ってね。
10m以内なら、まあ、挨拶の範囲だ。
俺だって、玄関先や門前に出るだろう。
城一つになると、わからん。
迎えに出るか出ないか、ではなく。
こうして迎えが集まったこと。
俺だったらエンジン音をスルーだ。
ただ使える様に維持するだけで大変な広域大施設。
その雑務を中断すれば皺寄せもあるだろうに。
何もなくとも歩くだけで大変で、しかも屋上だよ。
わざわざ登ってまで皆さんが集まるとは思わんわな。
もちろん口を出す謂れは無い。
異世界文化不干渉原則。
次回からやらんでいいよ、なんて言えば今回の否定。
それは失礼過ぎるだろ。
最初から想定していれば、苦労をかけないで済んだんだが。
そして先手を打たれずに済んだんだが。
出会い頭の一発。
――――――――お帰りなさいませ――――――――
なんか集まってるな、と思った後には答えさせられた。
恐るべし魔法翻訳。
言われたことが解るから言うべきことが判ってしまう。
いつもの。
……って切り出し久しぶり。
何故に今週も更新スケジュールが遅れるのか?
……って言い訳になります。
梅雨入り前の最期の週末が晴れそうだからではないですが、知ってるから良いって皆さんにはスルーで。
さて梅雨です。
なってから梅雨入りとされ。
終わってから梅雨明けとされ。
降り始めてから言い出す天気予報(笑)。
不幸が起きてからやって来る霊感商法と同じ(笑)。
結論先に在りきで責任だけは絶対とらない霞ヶ関の発表よりマシ(嗤)。
暖かいわ。
雨は振るわ。
マスクしてると皮膚病になりますね。
三年前からわたしには関係無い?
いや、マスク率が高いと悪臭が酷いんですよ。
本人も周りも気付かないんでしょうが。
わたしはもちろん逃げ出しますけど。
新型(笑)コロナ(笑)対策の効果。
歩く汚物の発生(嗤)。
マスクが何の為に在るのか考えないからこうなる。
……マスクにかぎらず、何も考えて、いや考える能力がないか。
「手指の消毒」やら「テーブルの洗浄」やら仕出かしている輩ですね。
潔癖症の人はゴミや汚れにさわれないからゴミ屋敷や汚部屋を作ってしまうのだとか。
今年の馬鹿発見器ネタ。
不衛生(って意味知ってる?笑)イタズラ。
耳に入った時に思ったのは
「無知なることは幸いである」
ということ。
「ノロウイルスが海産物を汚染するプロセスを調べたら、騒いでいる連中は霞を喰って死ぬんだろうなぁ」
等と残念至極。
と言うわけで、連中は臭いです。
マスクと親和性が高いですから。
しかも街中を出歩くし。
満員電車の中でマスクとか、頭が可笑しい。
歩く汚物が立ち止まるな!
そんな連中にオマエは臭いと知ら示す為に、奉仕の精神でイヤイヤ外出し人混みに出ないといけないんですよ。
……やだなぁ。
そんなボランティア活動中には執筆効率が遅れるので更新スケジュールが遅れるという話でした。




