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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十八章「帰邦事業」

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帰るべき処/Card tower.

【用語】


『神殿音楽』

:聖都中央大神殿の構造が風や日照など自然現象を受けて奏でる音楽。海風陸風、温度湿度による構造材の伸長、おそらくは季節の変化を加味して演奏されており、帝国の大虐殺で無人化した後の解体中止となった半年前まで人が溢れていた遺跡で半永久的に奏でられ続ける仕掛。


『太守領/太守府』:帝国の行政区分をそのまま国連軍が引き継いだ呼び名。領地全体の呼び名と中枢が置かれる首府の呼び名。帝国ではおおむね直径120km程度を目安に社会的経済的につながりが深い地域で構成する。南北が森林、西は山脈、東は大海で大陸のほかの地域からは孤立している。ただし、穀倉地帯であり海路につながっているために領地としての価値は高い。10年前までは古い王国があり帝国に滅ぼされた。



たいちょーはU18から告白されたらどーしますか?


「叱ってやるね」


はぁ゛?


「そんなことで男が手に入るか!

告白など負け犬の定型でしかない。

相手に主導権を握らせるな!

自分の主導権を手放すな!

備えるべきは己であり備えさせては成らない。

畢竟、好意の表明とは好き合う者同士の睦言。

本末転倒、好き合う為の手段ではない!

自分の気持ちを伝えるような愚策を考えるほどに暇なら、相手の意思を勝ち得るように行動を繰り返すべし!」


はぁ。


「告白から始まる関係なんて童貞処女(少年少女)のフィクションだ」


叱られた娘たちは

・・・・・・・・・・どーでしたか。


「良い返事が来るぞ」


うわぁ。




【 異世界大陸北東部/占領地(太守領)中央/太守府/国際連合統治軍拠点(王城)/屋上ヘリポート】


俺の骨に響く曹長の声。


『クリア』


骨伝導イヤフォンマイクの動作。

身体を打つターボシャフト(ヘリコプターエンジン)音。

鼓膜に響くは娘どもの吐息。


いろんな経路で聴こえてくる。


戦場音楽とは良く言った。

こんなん実戦じゃないと判らん。

平和利用も出来そうだな。


スピーカーの上に載って音響を受けて耳に付けない(骨伝導)イヤフォンから音楽を流して耳元(鼓膜)に囁かれるとか好いかもしれない。


骨格。

身体。

鼓膜。


これぞまさしくステレオ効果。


音を耳だけで楽しむのはもったいない。

実戦仕様のシステムなら感じ分け可能。

慣れずとも砲煙弾雨の中で会話できる。


俺に可能なことは誰にでも。


聞けば異世界太守領では音楽が盛んとか。

Colorfulなんか歌舞音曲コンプリート。

シスターズは声や抑揚、話し方が音楽的。

聖都で集めた神殿音楽を軍用外部スピーカーへ。

全員分の装備と通信回線の容量は十分だ。

戦闘指揮仕様の通信機なら踊りながら楽しめる。

こーいうので良いんだよが通りそうだな。


街中(王城)とはいえ、普通にパーティー(園遊会)時に演奏付きだもんね。


迷惑にはならないかも。

郊外の城の方がいいか。

元カノ(黒旗団)が接収整備中の。


いや街中高度数十mをデカイ音のチヌークで飛び過ぎて何を今更ですが。


ローター音が終息中。

娘どもたちが愚図り中。

あやしながら考え中。


俺たちが乗ったチヌークは着地。


地に着いた、と言っていいんだろうか。

あるいは着陸と言うべきなんだろうか。

いま再び着いたのは地なのか陸なのか。


高い城の上は、どちらでも有りどちらでも無し。


地面ではない城の上。

城って言うより御城。

観た目シンデレラ城。


つまり示威より誇示を意図してんだろうな。


認知させても意識はさせない。

強制するより自制させる。

見張りを見守りと見分けない。


ミクロな治安対策なぞでなくマクロな社会政策。


観上げると調和していた。

都市全体のランドマーク。

御城に向かえば迷わない。


それ自体が生活に取り入れられるって凄い。


太守府自体が都市城郭。

太守府中央の王城は別。

城郭の内に在る別な城。


まさに別な。


都市の中に御城が一つ。

まあ平城なんだけど。

都市のど真ん中だから。


空から観降ろすと布陣が視える。


大都市は平地にしか造れない。

中にある王城も平城になる。


建築素材が未発達な中世準拠異世界。

鉄骨も鉄筋もコンクリートとか論外。


高い建物を築く方法はない。

土台から積み上げた城が高みの上限。


()()に平城に()()意味がある。


軍事的に考えるなら太守府は兵站の拠点。

軍事物質や部隊の集積と輸送の要。


それが戦略的な王城の役割。


軍事的に考えるなら王城は兵站司令部。

拠点を管制しな支配下に置く拠点。


なら城でなく城館でいい。


むしろその方が良かろ。

使い易く維持費も安い。

戦術的には不味いけど。


都市城郭自体で兵站拠点防衛。

都市城郭自体を支配拠点管制。


城郭は外から都市を守る。

王城は内から都市を征す。


兵站司令部兼警備本部が果たすべき役割。


常に都市からの攻撃を防ぎ。

がまた都市への攻撃に備える。


だから作戦上の縦深距離は最小限。


距離を置けば守り易いだけ。

距離を置けば攻め難いから。


だから作戦上の高低差を最大限に。


火力以前の時代ならそれ。

高みから都市を監視。


その為に都市中央で高い塔が五周に配置される。


都市内の何処でも観える。

都市内の何処からも観える。


それを索敵だけにしか使わないなんて無駄過ぎ。


街中から塔へ。

塔から塔へ。

塔から街中へ。


光通信(目視確認)による通信ネットワークとなる。


視界が狭い市街戦で、これは強い。

だから先ず持って、これを守る。

低い街から高い城内を隔離。


な?


その為に高い壁が全周を囲む。

市街を制しても王城はその上。

観えるは観せるで威嚇も可能。


城と城郭都市が全く別。


射撃は強く。

狙いは正確。

結果は一目。


城門前の広場。


平時は市場。

守勢は殺し間。

攻勢なら滑走路。


位置エネルギーを使い攻防一体。


王城を支配すれば王都を得る。

兵站拠点を制すれば軍を制す。

軍事力を支配すれば国を支配。


十年前までの、この邦の在り方だろう。


実に判りやすいから有効な体制だったんだろうな

――――――――――王国内部で完結している辺り。


戦闘員が百人も居れば百万人を支配出来るな。

・・・・・・・・・・城一つが首都一つ、それが邦一つ。


金を費やし生まない武力が最小限なんだな。

――――――――――これ、税金要らなくね?


誰が拵えたんだか。


究極の手抜き。

完全なエコロジー。

トランプタワーかって。


誰かが居るなら一杯のみたい。


なおトランプ・タワーじゃない。

それは平凡な不動産の名前。

トランプタワーは伝統芸能です。


そこに犯行声明を観る女も居ますが陰謀家には多世界種族全てが陰謀に観えると言うわけで陰謀家と陰謀の差はいったい。


いやまあ善いか。


誰の意図も無ければ自然現象ってことに為るから地球を失った怨み辛み怒りよりもしてやられた屈辱が叩き付けられそう。


ワンパック(52枚)で組まれたピラミッド(この邦)


まあ竜の火力と機動力を持つ外敵に瞬殺されましたが。

帝国が採ったのが有効なやり方だったのが判りやすい。


未だに造形が変わらぬ完成度。


王城さえ征すれば王国は墜ちたも同じ。

だから国が滅びても邦は無傷に等しい。


だから帝国太守も滅ぼした王国の手法を踏襲したわけだ。


王城を一撃して王城に居座わるって。

なにしろ外敵が無くなったわけだからな。

むしろ帝国みたいな世界帝国が見本にすべき。


治安維持(内戦予防)だけならコストパフォーマンス最高!


そんな訳で旧王国時代ままの王城。

居抜きで帝国太守が入る訳だよ。

そこに居座る国際連合統治軍。


貸し店舗か!


五周の塔は30mくらいの高さ。

細かい数字は興味がない。

俺が住んでる訳じゃないからな。


エレベーター無いんだよ。

なにもかも人力なのは当たり前。

滑車の荷運台はあります。


生活物質運ぶだけで日が暮れる。

参事会の有力者は大変だ。

俺が同居を決めた訳なんだけど。


譲って良かった高い建物。

てっぺんで暮らせとは言わない。

言ってないが大丈夫かな。


半ば位でも15mって、どうか。

四階で暮らすようなもん。

エレベーターなしで、ってなあ。


なお軍政司令部は二階にあるのに地上8mくらい。

一フロアの天井が高く構造材が分厚いから。


日本のマンションだと一フロアで4~5mくらい。

階層間に配線やらダクトやらが通っている。


異世界だと建材の関係で隙間がない。

柱木やら石やら漆喰やらの強度の問題。

縦軸を支える柱や壁が太く厚い理由。

手を叩いても忍者は出ないし曲者もな。


しかし王城のボーナスポイント!


温泉や井戸の水圧が高いから、二階まで運ばなくて良い!

・・・・・・・・・・二階までだけどね?


ちょっと風呂入りたいから、って言って下男の皆さんにバケツリレーさせなくて済みます。


――――――――――俺たちはだけどね?


ちょっと喉が乾いたな、って言って10m降りたらもう上がりたくならなくて済みます。


――――――――――俺たちもだけどね?


屋上も軍事施設だから地上から20m上。


軍政司令部は10m下。

降りなきゃいけない。

ヘリから屋上から。


地上玄関から昇る高さと変わらない。


だから屋上に着陸するんだと言えば人間として当然な反応ですよね。


・・・・・・・・・・上がるより降りる方が楽じゃん。


もちろん脚に負担がかかるのは下りだが。

消費エネルギーが多いのは上りです。


つまり健康な若者なら楽なのは下り。

怪我や病気や老齢なら楽なのは上り。


本来、屋上は飛竜の来る場所じゃないらしい。


広く造られていても風が強く流される。

より広い城郭内のスペースが飛竜の巣箱だったとか。

そこが今はヘリポートも兼ねてます。


普段は偵察ユニット(ラジコン飛行機)の格納庫兼発着台だが。


つまり飛竜と同じ理由で格納庫にはしなかった。

ヘリポートは屋上だけではない。


庭園や中庭付近、1~2ヶ月前まで飛竜が発着していた辺りは皆、ヘリポート。


本来の軍政部隊用だけならヘリの方が効率が良い。

とは言え、せいぜい二機が臨時で動員されるだけ。

格納庫は一晩以内の仮住まいでヘリポートは臨時。



平らで丈夫な地面。

障害物の無い空間。

立ち入らない習慣。


これ全部、貴重なことなんです。

チヌークの重量に耐えられたし。


まあ怪獣(飛竜)が踊れるくらいだ。


荷重を分散しない脚で踏み締め。

多々良を踏んでも崩れないとか。

車輪と違って生き物なんだよな。


魔法だか何だかはスゴいなぁ。


ともあれチヌークのローターは停止。

二機のチヌークに分乗した軍政部隊。

先行した一機から曹長たちは展開済。


先行機は曹長たちを降ろしてから上空支援中。


占領地は適地だからね。

王城は駐屯地だけどさ。

地球異世界雑居地とか。


監視だか攻撃だかのシステム配備が終わってるから、ではなく危険は感じてないんだよなエルフっ娘が。


だから安心したまま

――――――――――俺だけ油断。


やっと帰れた一休み

・・・・・・・・・・ではない。


俺が帰るのは日本だから!

アパートの一室だから!

貴女たちの処だから!


――――――――――油断も隙もないぜ。

やらせはせんぞ~。



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