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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十八章「帰邦事業」

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コーカス・レース/Fury said to a mouse.

【用語】


『再現性』

:同じ物で同じ手順を踏めば同じ過程を経て同じ結果が出る。ただし「完全に等しい」再現は不可能なので差異の分だけ誤差が出なくてはならない。誤差が無ければ観測か結果のいずれかが間違っている。

科学法則の一つ。



出会い頭に全力で殴り付けること。


殺した相手とは付き合う価値がない。

生き残った相手には従える価値がある。


殴り返されたら付き合う意味がある。

殺されたら従う意味が生まれる。




異世界大陸東南部(太守領南2500Km)/国際連合軍大規模集積地「出島1」/竜の巣(格納庫)/青龍の水飛竜(海上自衛隊US-1)横下/若い参事】


僕は知っている。

――――――――――だから聴く以上に解る。


あんな(毒ガス)が夜中に街中を舐め摂とれた。

大都市の。


同じことが起きたところ。

幸いにして自宅じゃない。


あんな(毒ガス)が広大な都市全体に揺蕩(たゆた)えた。

莫大な人数。


不幸にして近場ではある。


太守領でもありましたよ!

・・・・・・・・・・と言うわけにはいかない。


飽く迄も(あくまでも)、知るだけ。

体験した訳じゃない。

させられてたまるか。


太守領で二回。

・・・・・・・・・・妹が振り向いた。

バカ女とは違う計算された仕草。


妹よ。

兄に代わって集中しなさい。

よく聞かないと殺される。


ツイてた。


町中で召喚された刻。

遠くから観て、去った痕に触れた。

地下都市が呑まれた刻。

報告を読み聴きし、証言を集めた。


生きてた。


ここ大港湾都市で三度目か。

――――――――――妹が振り返った。

バカが居なくとも馬鹿は起きる。


妹。

今、お前が聞くべきことを。

青龍は僕らを助けないぞ。


せめて殺意を持って殺されたい。

――――――――――――――――――――――――――――――無理か。


青龍が使役する獣。


煙獣。

・・・・・・・・・・本来はこういう使い方なんだろう。


最初の刻に死者は出なかった。

青龍が手当てしていたからな。


※第114話〈視線/化学戦考察〉より。


単なるバカ相手だからだろう。

町が半壊した程度で済むとは。


但し、その刻、僕も煙獣の気配を嗅いだ。

・・・・・・・・・・思い出したくもない。


あの痛みは軽いモノ。

煙獣が去った残り香。

敢えて殺さぬように。


学んだことはソレじゃない。


バカが居れば巻き添えが出る。

それが他人とは限らない。

良い経験で済んだこと。


二回目は、そうはいかなかった。

―――――――――青龍の貴族、その癇に障ったから。


ドワーフたちが住む地下層。

太守領の西、内陸の山塊郡。

西の山で何が起こされたか。


そもそも僕には知りようがない。


幸いにして巻き添えにはならなかった。

バカが居なかったからだろう。

だから死者が出る。


強者(青龍)の機嫌を損ねし哀れな弱者(死体)


観えない地下で起きたこと。

排他的ではないが距離があるドワーフ。

その中内で起こされた惨劇。


部外者から訊ねられるもんか。


いつ起きたと知らされた。

青龍の貴族が殺ったとも。

何が為されたと判らない。


恥ずかしながら、皆と同じように。


それを知ってた女を知っている。

そいつは僕が尋ねれば何でも答える。

それを教えたそうに寄るくらい。


まあ来なくても目を離せないんだが。


バカだし。

参事会議長だし。

何をしたかったか解らないし。

※第111話〈DRONE WARS/ラジコン戦争〉~第115話〈帝国の統治〉まで。


そんな女が青龍の貴族、その目に入る場所にうろうろ。


それが太守府の実態である。

癇に触れば邦が滅ぼされる。

でなくとも街ごと殺される。


軟禁した方が良いんじゃないか。


初見でタメ口を叩いた刻は殴り伏せた。

※第116話〈継承者〉より。


祖父が失脚したのと同じ間違いを、よくまあ。

※第20話〈インターセプト〉より


それを誤りと認識出来ないのがアレだ。

それじゃ手遅れ以後に気が付けた祖父以下だ。

それって代々、悪化してんじゃねーか。


なんで五大家筆頭になれたんだ、あの家系?

能力の有り無しっていうより、向き不向き。


換金できないとは言わないが。

使えるのは僕くらいだろうな。

だから暗黙のうちに押し付け。


他氏族にしても死なれちゃ困る。


五大家の一つが内部分裂。

()()青龍の支配下で。

それが周りへ与える混乱。

参事会(他の四家)の責任だろう。

だから暗闘に押込だんだ。


内紛を続けているのは周知の事実。


他の四家は知らんぷり。

目に余れば叩き潰す。

介入は知られぬ範囲で。


皆で気が付かないことにすれば、責任も生じない。


いずれは他家に吸収されるだろうが。

草刈り場にして終えば誰もが争い合う。

穏便に分け合えば余計な費えが生じない。


実質的な力を失った五大家元筆頭。


遊び金くらいは与える。

遊ぶ暇はないが。

名誉職としての新議長。

青龍向け責任頚。

だから使うのは僕だけ。


内紛を続ける一族、自称の実力者に値は付かない。

――――――――――その当主だったから出来ること。


太守領のドワーフ。

参事会新議長(バカ女)(氏族)

その伝手は、まだ通じる。


太守領では採掘から精錬はおろか細工や加工まで、ドワーフたちが西の山で行う。


これまでも。

今も。

これからも。


金具の得方、扱い方。


他所のやり方とは違ってる。

太守領の鍛冶屋は手入れまで。


ドワーフが全て行う。

金属採掘精錬設計に加工。

人手が入るのは売り買い以降。


他所のドワーフは精錬まで。

加工細工の大半は人手に拠る。


ドワーフは素材創りに集中。


最高の素材さえ在れば後は人。

その方が大量に造れるから。


だから少ないドワーフ作は、実用鑑賞含めて高値を呼ぶ。

太守領では、そもドワーフ以外は誰もが相手にしないが。


そこに区別はない。

常日頃に使われる金具がドワーフ謹製。

それは意味がある。

佳く切れ深く掘れ易く砕けば良く実る。

太守領の豊かさだ。

むしろ武具防具より鎌鍬鋤の方が多い。


広さ当たりの収穫量。

北の寒さを差し引き。

土地の豊かさを加え。

道具の質も加えよう。


それが僕らの扱える小麦。


その積み出し先で起こされた悲劇。

詳細を聴きながら理解が先回り。


太守領と大港湾都市。

遠隔地の共通点。

青龍が所有すること。


僕は照らし合わせる体験有。

バカ女から聴き出した話も。


恐怖を判るだけでなく、解るってどうよ?


かつての五大家筆頭。

鋼材商い最大手。

ドワーフたちの盟友。


それが太守府参事会前議長の家柄だった。

青龍に喧嘩を売りそうになって没落したが。

前議長を辞めさせた後を引き継いだ孫娘。


没落開始真っ最中一族の惣領娘で在ってしまった。

・・・・・・・・・・僕の昔馴染み。


世襲されるのは伝手と顔。

代々続く馴染みの相手。

幼い刻から知り合う間柄。


参事会は世襲ではないんだがな。

その祖父、がやらかした。


誰にでも大失敗はある!

――――――――――それはそうだろう。


明日が在るならなんとか為る。


どんな危機さえ一から始めるより楽。

商いが頓挫しても、だいたい当代までは続く。


(氏族)が転んだら、その代までは立て直せるからな。


そう知っているからこそ氏族から見放された。

新当主(バカ女)に資質が無いのは判られ切ってる。



博打(投機)は貧乏人がしてしまうこと。

金持ちがするのは八百長(投資)だけだ。


元五大家筆頭氏族は内紛、四分五裂。


うちに蹴り出されてきた名ばかり当主(バカ女)

なんでうちに、って話ではあるが。

蹴り戻すと死ぬから仕方がない。


僕の執務室で遊んでいる。


なんで執務室に、って話もあるが。

曲がりなりにも五大家筆頭当主。

僕と妹以外、皆遠慮する。


しかも本人は全く遠慮出来ない、悪気はないが。


騒ぐ彷徨く、邪魔ばかり。

殺さぬ程度に無視するか縛るか。


やっていいのは僕ばかり。

妹は触れるのも避けて完全無視。


そんなバカ女を正面から取り扱う唯一の勢力。


商戦の中心、太守府から遥か遠い西の山。

浮き世離れしたドワーフたちは義理堅い。

金や人の世に疎くても困らないからだろ。


人がドワーフの技量を必要としているが。

ドワーフは人の世を必要とはしていない。

だからドワーフたちはバカ女を当主扱い。


ならば引き取ってほしいが。


だから西の山の内情をバカ女だけは訊ける。

無神経で図々しいのも慣れられているから。

僕もバカ女にモノを尋ねるのは慣れている。


バカ女の知識。


知識は共有することになる。

知ってるだけに意味はない。


認識は共有しようがない。

判断力に差がありすぎる。


僕の認識。


太守領のドワーフたち。

幾つかの氏族に別れていた。

そう今は独りの頭を戴いている。


青龍の貴族に叩き伏せられたからだ。


突然、青龍の貴族は西の山へ遠征。

帝国に優遇され排他的なドワーフ。

青龍は帝国を駆逐した、ついでに。


陣を構えたドワーフ戦士たちと園遊会。

―――――――――訳が判らないので密偵に尋ね直し。


奇襲は掛けずとも迎え討つ姿勢のドワーフ。

奇襲どころか真っ直ぐ堂々と征く青龍の貴族。


縄張りを護る者たち。

縄張りを認めぬモノ。

場所の所有と世界の私物化。


なんで酒を酌み交わす?


その刻、現れたのが煙獣。

山塊内中を網羅する地下都市。

その最奥で開けられた箱。


瞬く間に一山を制して昇った。


青龍の貴族を見張っていた麓の密偵たちも驚いたそうな。

・・・・・・・・・・訊いてるこっちが驚いたが。


山の各所から吹き上げる煙。

呆然とする麓のドワーフたち。

冷ややかに杯を干す青龍の貴族。


(青龍の貴族)の女たちは困惑していたらしいが。


青龍の貴族。

ドワーフの戦士長。

二人は解り合った、らしい。


ドワーフの地下都市が煙獣に蹂躙される最中。

――――――――――わかんねーよ!


ドワーフの戦士長が西の山の主権を握った。

ドワーフの戦士長が青龍の貴族に忠誠を誓った。

ドワーフの戦士長が西の山の長老を皆殺し。


わざわざ太守領の王城の王の間で皆に見せ付けて一から十まで()()()()()

※第193話〈頭上の刀/The Sword of Damocles.〉より


それが事実なのではあるが。

であるならば、大港湾でも斯く為ったのか?


僕の背後で微笑んでいる

――――――――――青龍の女。


僕までを見据える皆々様。

――――――――――生き残り。


僕らは、いつでも傍観者。

・・・・・・・・・・・斯く在りし。



童話「裸の王様」は誰でも知るでしょう。

それなのに何故()()()とやらは「()鹿()にしか観えない」布を必死に死んで殺してまで()()()()()のか?


それが不思議でなりません。

ので「()()()()()()()」を冷やかして参ります。

()()()の数を数えれば、観ている数が判るので。



結果、週末、雨と花粉の中を彷徨く嵌めになり、執筆が遅れてしまうんですね。




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