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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十八章「帰邦事業」

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生死不定/Why is a raven like a writing-desk ?

【用語】


地球側呼称《元カノ/団長/だんちょー/一尉/一尉殿》

現地側呼称《青龍の女将軍/団長/主》

?歳/女性

:国際連合軍大尉/陸上自衛隊一尉。国際連合軍独立教導旅団団長。『俺』の元カノ。インドネシア軍ベテラン兵士の副長(褐色)、筋金入りの傭兵エルフ(白ローブ)。黒副、白副の二枚看板に支えられ、ドワーフやエルフに異世界人と地球人類が同じ戦列を組む、初の多世界複合部隊「黒旗団」指揮官。

地球人類と異世界種族を直接的に殺した人数では最多。



地球側呼称《三尉/マメシバ/ハナコ》

現地側呼称《マメシバ卿》

?歳/女性

:陸上自衛隊医官/三尉。国際連合軍独立教導旅団副官。

ほとんど死傷者がいない国際連合武力制裁活動における実戦緊急医療の最多経験者。治癒魔法と現代医学複合施術のパイオニアにして、異世界人への治療を目的とした医療行為のスペシャリスト。

地球人類と異世界種族の双方に治療を目的としない薬物投与が日常的。



地球側呼称《マッチョ爺さん/インドネシアの老人》

現地側呼称《副長/黒副/おじいさん》

?歳/男性

:インドネシア国家戦略予備軍特務軍曹。国際連合軍少尉。国際連合軍独立教導旅団副長。真面目で善良で人類愛と正義感に満ち満ちた高潔な老人。

旅団には現地職制の副団長が同格としてあり、白を基調とした魔法使いローブのエルフが努めている。区別の為に肌が褐色な彼が現地兵士に「黒副」と呼ばれている。

存命中の知的生命体の中で地球人類殺害数は最多。


異世界転移前からの人間愛に満々た戦歴は第35話〈素晴らしき哉!人生!!〉()()()()を参照。




「なにも悪いことをしていないのに」

と言う人が居ますな。


言われたこともありますが、可笑しな言い回しです。


「空がこんなに青いのに」

と言っても殺されましょう。

だからどうした、そうですね。


正義の味方には、まったく関係ありません。


神に赦しを請うているのか。

だからといって、納得もなし。

「何もしない人生でした」


殺されるべきです、しかし、殺される刻に言うのかと。


善いことをしたのなら誇らしく殺されましょう。

善いことの為に殺されるなら、それ自体が誉れ。


何も悪いことをしていない?


ただ呼吸していただけですか。

殺す意義すらありませんな。

だから生かしては置けません。


初めての悪いことが、正しき我らの無駄手間とは!


腹を斬ることも、頚を括ることも、悪いことも出来なかったんですな。



付言:国際連合軍に置いて異世界種族と常時同行している部隊の中で最も違和感を感じ合わないのは非先進国出身者であると確認されている。残念ながら異世界転移後は非先進国出身者は地球人類の極少数派となってしまった。本レポートは非先進国出身者、並びに非先進国出身者を良く知る経験者の意見を元に抽出した国際連合軍独立教導旅団副団長をサンプリングした。次回は同旅団団長をヒアリングする。


《国際連合信託統治理事会/異世界文化暫定諮問委員会/多世界比較/地球人類ヒアリング:死生観》




異世界大陸東南部(太守領南2500Km)/国際連合軍大規模集積地「出島1」/竜の巣(格納庫)/青龍の水飛竜(海上自衛隊US-1)横下/若い参事】


皆さん僕を視るのは止めて欲しい。

――――――――――何も出ないぞ無駄なこと。


知らんと言うのに。

言ってないか。

妹に言え。


僕は素知らぬ振りを皆へ示してる。

――――――――――頑張るべきは次期当主()


知ってるフリの最中。

皆の注目を集める僕。

妹もある意味で注目。


僕の姿勢を追えば皆から意識される。

・・・・・・・・・・・・・オレ()の言うことが聴けんとは言わない、言わないだけか。


その妹が素振りを示す。

自分は兄の傀儡です、と。

僕に従う気は無い様子。

従うなと言っても、無視。


兄妹(きょうだい)なんてこんなものか。

――――――――――僕に勝てると思うなよ?


僕の芝居。

妹の韜晦。

皆の疑い。


三竦みで誰が勝つ?

――――――――――船主の一人が答えた。


僕へ。


訊いたのは妹。

答えたのは皆さん。

独り勝ちかよ、妹よ。


大陸有数の商人たちを向こうに回してこれ。


僕も駆け引きが得意なんだがな。

妹より優っているのは経験だけか。

よし、オレ()の敗けだ。

絶対に家は押しつ、譲ってやるぞ。

悔しいので集中して気を逸らす。


()()質問への回答。


「船は全て在る」

・・・・・・・・・・・・つまり、大陸中の商船は、一隻残らず無事である、と。


結論から。

驚きだな。

悪くない。


一応、そうしておこう。


応えが答えとは限らない。

真実と事実が別なように。

皆が確かめた限りでそれ。


ならば当てにして置く。

――――――――――今はな。


知ってる()()()正直(当てに為らん)は常に一揃いだ。

だが有り得るから錯誤ではないだろう。

僕に都合が良い目が出ていたなら要確認。


出目の良し悪しなんか勝負には関係ないが

・・・・・・・・・・善かった。


金に生らない死人は御免。

死で稼げてもそれっきり。


逆の結果でも可笑しくなかったんだからな。


金に成る上に生きてるか。

生きてりゃ更に金に為る。


沈められたのは軍船だけだった訳。

――――――――――前太守みたいにな。


※第13話〈あなたのご子息は我々が殺害いたしました。〉より。


幾ら消えても、誰一人、困らない。

・・・・・・・・・・死体は、これ以上死なないし。


不幸中の幸い。

良かった良かった。

皆が喜ぶ珍しい知らせ。


殺されたのは軍船軍人で済んだ。


不謹慎ではあるが。

喪わないで済んだ。

それだけだからな。


喜ぶ理由もないから無視が妥当。


商船は軍船とは違う。

帝国時代には、たが。

常に揃っている海軍。


諸王国時代のように海運の転用じゃない。


保有自体に経費が嵩む船。

商いに使えば莫大な利益。

戦争という不定期の商い。


常は荷客を運び、戦が起きたら呼び集める。


それが一番、儲かる。

むしろそれ以外ない。

経費を賄う為ならば。


勝った後でないと決裁出来ないのが戦争だ。


経費は常に掛かる。

戦には数が要る。

負けたらどうする。


頭があれば不定期後払い賭博の為に、活用出来る財貨を死蔵しない。


したんだが。

帝国だけが。

やり遂げた。


まあ頭がまともで自分の儲けが目的なら、世界征服なんかしないか。


実際に儲からない。

常に備える軍ってなに。


常備軍という愚行。

帝国から生まれた言葉。


戦争の為の最適解。

何の為の戦争なんだか。

手段と目的の転倒。


戦争による戦争の為の戦争とは何ぞや。


帝国。

帝政。

帝国軍。


戦争を続けない限り成り立たない辺り。


商売仇でもないが港の場所をとる帝国海軍。

邪魔ではあるが、ただそれだけ。

ともあれそれで助かったのが、僕ら海運商。

海軍兼用なら今頃皆殺しだろう。

青龍の面前に曳き摺り出されずに、済んだ。


いやむしろ、帝国が済んだのか。

だから船は生き残った、らしい。

太守領、僕らの船と同じように。


あの日の僕ら。


前太守が慌ただしい。

それしか気が付かなかった。


帝国は魔法で通じているからな。

商人は帝国要人を視てるからな。


何かが起きたことは、誰でも気付く。


朝に帝国内部で警鐘が鳴れば。

昼には街路の小僧すら気が付く。


夕方には町々村々に伝わり初める。

それが普通ならば港は一歩、速い。


日一日のことなら早く伝わる訳じゃない。


魔法に比べるまでもないが。

近い範囲ならば早馬の方が船より早く着く。


速いのは、船乗り海運商人の耳敏さ。


大量の商品を扱う。

僅かな値動きで利幅が乱高下。


船は長く留まれず。

船着き予定と相場を合わせる。


値を決めさせる為。

事実が判らねば嘘をつけない。


帝国の傍に商人有。

その呼吸は船長も知っている。


出港前に確かめる。

船主がそう命じるまでもない。


何か起きたと知る。

船は全て港に留まって待った。


何が起きたと探る。

海に危険があるとだけは判る。


帝国が商船の出港停止を命じる前に。

軍船を出す邪魔になる、という理由。

それは人足貨客を黙らせるに好都合。


元々、春先から海は不穏だった。


穏やかな海から帰らぬ船。

海辺から消える人々。

水平線に浮かぶ巨大な影。

流れる噂と怯える声。

内陸から海へ向かう痕跡。


帝国軍は海を知らない、知る気もない。


だから素人らしく対応した。

船乗り、漁民、沿岸住民。

彼らが恐れるなら何か居る。


訳が判らない何かに備えて主力は割かない。


予定通り、内陸西方への転進は継続。

沿岸部新領土の統治部隊を格上げ。

警備威嚇編成から警戒線持久編成へ。


沿岸部の要所を拠点化し少ない部隊を集中配置。


監視哨を設け。

通報に懸賞を付け。

軍船飛竜は温存して。


所在不明の敵を誘い込んで早期に開戦させるため。


脅威に備えるほど間抜けじゃない。

脅威が在るなら潰すべし。

防戦の準備なんぞしたくなかろう。

敵かもしれない先制一択。

帝国軍というのは勘定高い連中だ。

無駄無き理屈通りの戦争。


戦争自体が利益を度外視しているのはさて置いて。


それは敵だった。

青龍だからな。

そりゃ敵だよな。


誘い込まれたのやら、気にも留めなかったのやら。


青龍が来た。

赤龍が受けた。

皆は巻き添えか。


僕ら(太守領)では何も起きなかったが。


何かが起きる、と知っていた。

何かが起きた、と知っていた。

何が起きたのか知らなかった。


だいたいそんなところ。

・・・・・・・・・・太守領では意識だけ。


太守領でも青龍の帝国狩りは来たが。

王城を探して行き過ぎただけ。

ご領主様が太守領を得る、一ヶ月前。


※第13話〈あなたのご子息は我々が殺害いたしました。〉から第14話〈地球人襲来!〉まで。


他の地域ではどうだったか?

――――――――――興味深いね、コレ。


昼に航海。

夜は停泊。

朝に青龍。


大陸沿岸部で商船は留まった。


狩られたのは帝国海軍。

牽き潰されたのは漁船。

太守領でも起きたこと。


大陸沿岸部全てかそうだった。

――――――――――と、今、知った。


一つ一つの港を回らない。

青龍はそれほど暇に非ず。


つまり、船は皆、無事だ。

とは言え、それは結果論。


偶々、青龍の前に船団が停泊していたら?

偶々、帝国軍が移動の為に商船を徴用したら?

偶々、青龍の勘に触る馬鹿が傍にいたら?


最悪、大陸の船、その半分が無かったことにされていただろう。


何故なら青龍が南北大港湾に上がって来たからだ。

常に大陸中から商船の半数が停泊している港へと。


あの日、ちょうど皆が何かに備えた日。

何かが起きたと沿岸部全体が様子視。


そのナニかは此処、今ある南北大港湾で起きていた。


なんで今、在るのか解らん。

青龍は海竜を使役している。

港以外に用はなかったハズ。


前に船があれば踏み潰して気が付かなかったろう。


僕らはツイてる!

・・・・・・・・・・事実だろうな?


船主以外も否定はしない。

裏書は取れた。


嘘ではないと判れば十分。

事実は後回し。


僕は前に立つ妹を視やる。

皆に観せる為。


それを誤解するほど落ちぶれていないか。


訊かせる相手は僕じゃない。

だからといって従いやしない。

とは言えだから逆らいもしない。


妹が頷き、話は続く。

・・・・・・・・・・僕に向かって頷くのが如才ない。



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