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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十八章「帰邦事業」

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807/1003

もう飛ばされてるから!

【用語】


『僕』

地球側呼称/現地側呼称《若い参事、船主代表》

?歳/男性

:太守府参事会有力参事。貿易商人、船主の代表。年若く野心的。妹がいて妻の代わりに補佐役となっている。昔は相当な札付きであったようだが、今は特定の相手以外には紳士的。


『参事会』

:太守府を実質的に支配する大商人たちの集まり。五大家と呼ばれる5人が中心メンバー。他に太守領各地の都市町や全体の職能ギルドに資産家地主などの富裕層氏族が平参事として会を構成。合議制の組織であり、強弱優勢劣勢はあれど決まった体制はない実力の世界。大家とみなされる特権氏族がやや曖昧な系列氏族の参事たちをまとめてはいる。声の大きさ、数の暴力、その場の駆け引き好き嫌い、参事会の動きや方向性は誰にも決定権はない。帝国支配の旧王国時代から参事の顔触れも中心の大家も入れ替わることが多く、不動の最古参は一家でありそれが、お嬢の氏族で五大家筆頭。地球人襲来以降の混乱で議長を務めていた最有力氏族が混乱し無力化。他二家は行動を控え、最有力氏族を取り込み五大家末席に在った若い参事が主導権を握っている。



ケダモノ(自然物)


それは合理的なモノですな。

本能と言われるモノには理性以外がない。

それを狂気とも呼びますが。


動物は同種生物殺傷への、本講の主題からすれば、人殺しへの禁忌を人間は持ちえません。


何故なら必要ないからです。

社会的動物であるから必要か?

理屈になっておりませんね。


秩序の維持に刑法なんて要らないんですよ。

―――――――――法律以前に社会はあったでしょう?


例えば異世界に殺人罪はありません。

無くても社会は維持できます。

むしろ効率的に運営出来ております。


ああ、別に異世界だけではありませんよ。

人類史のほぼ全て、現代先進と称する人類の少数派、そこ以外では、です。


何故か?

殺人はめったに起こらないからです。

刑罰がなくとも警察がいなくても、です。

何故か?

殺されない人間には自衛力があります。

殺されてはならない人間には抑止力が働きます。


自分を守る力がある。

他人に守られる価値がある。

大抵の人はそうです。


殺されるのは自活する能力がなく、誰からも必要とされない少数派。


人間は社会的な動物だと言います。

要らない人間が減ることの意味は?

社会から観れば良い効果でしょう。


殺人罪が無い方が社会や組織は繁栄するんですよ。

・・・・・・・・・むしろ()()()がいないと社会の大半が維持できません。


これが現代先進国以外のロジック。

殺人罪?

犯罪?

警察?

要は豊かさ故に行われ得る御遊戯。


殺人への禁忌感。


人を殺したことが無いからこそ維持されている感情。

それは千年以上かけて現代先進国だけに定着したモノ。

現代地球人類の過半数にすら無関係な感覚なのです。


「人を殺してはいけません」

地球人類に説き続けるのは宗教家です。

何故か?


多くの場合、教祖直々の主張の中に殺人の禁忌がありますからね。

様々な、性や食物、組織に関するタブーと違って後付けではないでしょう。


つまり

「人を殺してはいけません」

は社会的必要性や必然的合理性ではない。


ある個人の私的趣味嗜好です。


必然性の無い不合理な感性を理屈以前に主張しえるからこそ宗教なのでしょう。


超自然的な何かへの確信

――――――――――宗教の定義。



だから現代まで()()()()()()()のは説き()()()()()()()ことから()()()()()()()


人殺しがなくなっていたら、殺人の禁忌を説く必要はありませんから。

メリットがない個人的趣味嗜好を広めるのは難しい、ということです。


では。


現代でソレが、曲がりなりにも、定着した理由。

まず豊かさ。

何も生み出せない者を抱え込める生産性の高さ。

ある必要性。

過剰生産を維持するために消費だけを増やす為。


だからこそ。

何でも良いから人間が必要。

何も生み出さない者が最適。


人を殺してはいけません。


宗教家の趣味嗜好とは別に、皆さんそのように受け入れた。


故に皆さん信仰を、お持ちだ。


無神論?

神の否定は肯定でしかない。

神が居ないなら否定も出来ませんよ。


無宗教?

単なる無知の告白に過ぎません。

人間の死体を生ゴミ扱い出来ますか。


貴方が統治する世界。

神を否定も肯定もし得ない。

親友の死を嘆いても弔わない。


そーいう異世界です。


《国際連合統治軍軍政官講習より》





【異世界大陸東南部/空の上(高度3000m)/青龍の水飛竜(海上自衛隊US-1)/若い参事】


僕は地図と観比べる。


諸王国時代、地図は秘密であったという。

くだらないことだが。


地名と地形、旅程を白紙へ記入しただけ。

文字で書いた、だけ。


方向と目安しか判らない、それが地図だ。

十年前までは、だが。


今それを観たら、備忘録か控え書きだな。

旅程行軍の参考程度。


測量は最大規模でも城や堤の普請場のみ。

国の形は誰も知らん。


目印になる地形以外、住民旅人の聴取り。

それが地図、だった。


そんなモノを基に戦をしていたのだから。

知らぬを隠していた。

いや、それでも知っているつもりだった。


城館の奥に門外不出。

同じ物を作れたが、それは死に値う大罪。

商人は口伝で伝える。


軍兵には、住民が案内に付かねばならぬ。

それでも意味はある。

領地を俯瞰して思い浮かべる基にならば。


出来る才能があれば。

それが騎士貴族、王族の才であり視点だ。

だから秘書となった。


何もなければ蕎麦粥にも首が掛かるもの。

それが諸王国の時代。


かつてそんな時代がありました、ということでしかない。


今、僕が観ている地図は違う。


竜から見渡した風景の絵図面。

それを基に主地形を定期測量。


河川の氾濫、山津波に地震他。

こと有れば先ず測量隊が来る。

次第によっては竜と同時にだ。


地図は改まる毎に公示される。

誤り疑問の指摘に追加は報奨。

地図作りで家業が成せるほど。


領地を脅かされる恐れはない。

地図は領地を生かす為に使う。

人を物を知見を、動かす為に。


それが帝国の地図だ。


弱い者。

無能者。

貧乏人。


隠さねば生きてはいけまい。

・・・・・・・・・・強く有能な金持ちにはなれんが。


強者。

知者。

富裕。


隠さなければ由り良くなる(帝国)

――――――――――選り良い者(青龍)に滅ぼされるまでは。


して観ると、青龍は隠す処が無いらしい。

訊けば答えるのは、いつものことだか。

外を見比べても別に構わないらしい。


むしろ陸地が観えるように飛んでくれている、ようだ。

――――――――――有り難いことに申し出ずとも。


青龍は、そういう処がある。

気遣い、ではないだろう。

気前の良さ、と言うべきだ。


持たざる者への施しが、知らざる者への見聞きとなる。

・・・・・・・・・・財物に無関心、知識に貪欲。


此処は飛竜の腹の下。

或いは腹の中、なのか。

まるで倉が飛んでいる様。


飛んでいるのは間違いない。


轟音。

振動。

景色。


船乗りか船に慣れた一族でなければ酔っていただろう。


しかし、青龍とは竜が好きらしい。

様々な竜、或いは巨獣を使役する。

魔法を使うより、仕えさせ従えて。


ご領主様も、そう。

あまり殺さない。

殺させない。

周りが勝手に死ぬ。


自ら挽き裂いたのは、自分の女に絡まれた刻だけだ、

――――――――――実に、らしい。


青龍が奉仕させている種族。


(ファルコン)雀蜂(ホーネット)土竜に飛竜(車両に航空機)空海月(哨戒気球)煙獣(着色ガス)使い魔(偵察ユニット)、そして船では拵えられ得ぬほどに巨大な海竜。


大きな生き物というのは、在り溢れたモノ。


人里を離れれば。

人目には付かない。

他人から聴かされる。


好事家ならば命に換えても視に行くだろう。


そうはさせないが。

青龍を煩わせれば。

僕らも皆殺しだな。


青龍が何処で獣たちを集めたか気にはなる。


蓋をしておくべきだ。

帝国の竜産地と同じ。

飼い慣らせるなんて。


竜だって帝国以前は誰も知らなかったしな。


僕の世代では当たり前だがな。

青龍の竜も、そうなる。

初めての種類が何種類いる?


僕が知っているのも、観聞きした範囲。

・・・・・・・・・・そしてこれ。


港の海に降りて来た。

水鳥ならぬ水飛竜か。

海竜は泳いでるしな。


そしてそのまま腹の中へ放り込まれた。


轟音。

滑走。

飛翔。


引き受けた商談先までひとっ飛び。


帝国の竜伝令か。

商談でそれかよ。

当たり前にまあ。


青龍の貴族は何も説明しなかった。


当たり前だから。

ひとっ飛びが。

解る訳ないだろ。


商談先に向かっていると判ったのは僥倖に過ぎない。

・・・・・・・・・・我ながらツキかあったな。


何が必要か話すことすら最小限で。

どうやるのかは、丸投げ。

その手段には勝手に放り込む辺り。


そんなやり方ばかりしていたら大きな問題になるぞ

――――――――――僕以外には対処出来まい。


魔女なら巧く伝えられる。

エルフなら理解出来よう。

お嬢様に一言いっておく。


三人娘が居なかったら、邦が滅んでいたかもしれない。


だから、もあるか。

好みだけだろうが。

ついでということ。


気に入った女を口説き堕とし愉しむついでに、仲介役。


見知らぬ土地では女を口説く。

行商人の基本にして初歩。

女商人なら男をモノにするが。


青龍、いや、青龍の貴族は僕らを滅ぼしたくないのか?


青龍の公女(三佐)は違う。

眼には好奇心。

標本を視る好事家の瞳。


青龍の騎士たちも。

目には憐れみ。

締められる鶏を観る瞳。


青龍の貴族はどうか。

領地も財貨も支配すら疎んでいる。

それでもこなしてはいるが。

なるべく手を出さないようにして。

それをこなしているだけだ。

女たちを愛していればよいものを

――――――――――なぜ、こなす?


これは考える余地がある。


「悪巧み♪︎」


隣に来てしまった妹が視界を塞ぐ。


「察しみせろ」

「御断り

・・・・・・・・・・お兄様にお任せします

なにもかも」


我が家の総領娘。


妹が産んだ子が氏族の直系となる。

末席とはいえ、五大家たる我が家。

傍流のみならず連なる氏族も多い。


その支配を担う。


血統の証明は産んだ女にしか出来ない。

氏族の証しは女たちの先決事項だ。

一族に属せるかどうかで人生が変わる。


だからこそ証しが翻ることは稀だが。

――――――――――無くはない。


妹の子から当主が決まる

妹が、自分の子ではない、と言えば終わり。

妹ならば言い出しかねん。


それと知られているから意味を持つ。

・・・・・・・・・・胆力がある。


本来の総領娘。

箱入り娘となる。

護るべき存在。


一族の最期の独りは彼女でなくてはならない。


総領娘さえ生き残れば再起の目がある。

総領娘でさえあれば他氏族の庇護も得やすい。

総領娘ということ自体が価値を持てる。


だからこそ閉じ込めておくべき、は利の当然。


新たな支配者に差し出すならともかく。

五大家大先輩の意志はともかくとして。

お嬢様自身が捧げているのはともかく。


氏族の最も大切な者を無条件に差し出した。


その評価は高い。

服従するなら徹底的に

誰もが尊敬する。


だか、我が家の場合は、真逆。


総領娘たる妹を商談に連れ回す当主。

いくら妹が商いに長けていても。

むしろだからこそ留守を任せるべき。


まったく、その通り。


一歩間違わなくても邦ごと滅ぼす青龍。

ご領主様の眼が届かないかもしれない。

遠隔地で見知らぬ強者に囲まれた商談。


連れて行く気は無かった。


勝手に付いて来たが。

前当主、父に任せて。

現当主、僕に訊ねず。


強いて蹴り出さなかった。


理由は付く。

妹は邦を出たことがなかった。

総領娘だからな。

我が家を引き継ぐならマズイ。

商いは顔で決まる。

会ったことが、在るか無いか。

悪印象でも無いよりマシ。

そのためになら最高の機会だ。


青龍の力を借りられる。


最短期間。

最重要取引先。

最遠地域。


最優先顧客の為に商談。


まだまだ任せられはしない。

今は。

これから任せる為に必要だ。


「御断りします」


・・・・・・・・・・。


「お兄様()()が当主。一族として()()()いたします。当主の為ならば。命じられずとも。立派な跡取りを沢山()()()()()()()()()()御当主様(お兄様)()()()に」



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