前説/皆さま拍手でお迎えください。
【用語】
『ジャミング』
:電子戦の一形態。電波に干渉することで電波を使う兵器を利用不可能にすることが目的。電波妨害が基本であり特定波長を妨害するスポットと全域を妨害するバラージに分かれる。スポットは回避されやすく「相手の利用波長を追跡する」と言う後だしなので、技術力に大差がない限り必ず先行逃げ切りされて失敗する。相手の電子戦能力に負荷をかけることしか出来ない。故に全域を力尽くで封殺するバラージが主流。ただし隙間を空けると意味がないので敵味方に余程の技術格差がない限り無差別電波兵器利用不可になる。故にこそ最先端技術をぶつけ合う先進国同士の全面戦争を想定した場合、電波兵器が使えなくなりコスト青天井な有線有視界含むレーザー熱源追跡画像識別等の射ちっぱなし自立兵器が主力になるが先進国同士だとそもそも戦争に利益が生まれないからバカ高い兵器で殴り合う訳が無かったりする。後進国や地域の民兵崩れが相手なら、半世紀前の装備で十分だったりむしろコストパフォーマンスから最新兵器は使えば使うほど負けだったりします。
魔法翻訳は受け手と発し手の間で意訳する。
言う。
聞く。
書く。
読む。
だが印刷者の意図は影響しない。
でなければ翻訳出来なくなる。
それは引用者の意図も同じ。
語源あっての言い回しや単語は数多い。
それは故事成語に限らない。
名言喩え慣用句に比喩例え。
それを発したのは最初の人。
原意を辿れなければ意味が通じなくなる。
実際に通じない例は多いが。
魔法翻訳は翻訳だから。
その言語について翻訳家並。
だから間違った言い回しがバレる。
異世界種族には地球史上の正しい起源。
地球人類には異世界文化の正しい理解。
種族も人類も知らぬことを教える魔法。
それは、さて置こう。
――――――――――問題――――――――――
歴史的文書の、筆者の意図。
それを、知ることが出来る。
異世界人に読ませて訳せば。
魔法が原意を伝えてくれる。
異世界と地球史上の互換性がない場合は、意味を持たない音になる、だからすぐにわかる。
ならば、問題。
神が居ない世界で何故、神殿と言う言葉があり地球の聖句を訳すと神/主/救世主が意訳されるのか?
「死海写本の写真」
「うちの娘たちへ」
「教皇儀典室から」
「一番地球文化に慣れている異世界人たちに読ませたら、何処の誰の意図が読めるのかしらね」
「落書きだったら、どうすんでしょうね
・・・・・・・・・・世界中の聖典原書の画像」
【国際連合軍第13集積地/領民集積区画/軍政部隊閲兵隊形中央/青龍の貴族】
俺を指差す指二本。
何で二本なんだよ。
キメポーズの神父。
・・・・・・・・・・は、気にすまい、敢えて。
しかも俺に向いてる眼がたくさん。
流石に観えてるのは前側だけだろうけどな。
ざっと500人分なら1000の瞳ですか。
しかも全体が静まり返って意識を向けてる。
異世界住民、軍政地域の皆さん、だけじゃなくて。
うちの娘たち、は、いつもか。
うちの部下 たち、も同じく。
おねいさんず、も、嬉しいな♪︎
俺を視てる聴いてる畏れてる。
・・・・・・・・・・最後のは如何なものか。
俺VS全員って、どゆこと?
トークライブに有り得ない。
聴衆と演者の距離感隔絶感。
上空を行き交う偵察ユニットや背後の自動機関砲の動きに注意。
・・・・・・・・・・中継かよ。
誰かが注目させてるのかも。
視線を向けなくともエルフっ娘で判る。
この娘の肢体が僅かに緊張するからな。
どちらの方から照準されているのやら。
索敵情報を統合すれば眼を向けなくても視える。
俺がエルフっ娘を視てるとは判るだろう。
エルフっ娘が周りを聴いてるとは解るまい。
俺がエルフっ娘から周りを知るとは尚のこと。
むしろ友軍の方を畏れるべし。
――――――――――地球人を殺すのは地球人類。
エルフっ娘のことだからね。
俺でも判るように敢えて反応してるのかもしれない。
魔女っ娘の立ち位置に注意。
俺の視線は記録されてるからな。
・・・・・・・・・・後から意味付けされかねん。
索敵情報は視覚的に表示されている。
俺の目の前、仮想モニター。
隊員たちのフェイスモニターほどじゃない。
戦闘装備プロテクター。
フェイスガード裏側全面がディスプレイ。
光情報は一方通行。
内側から外は視えるが、外側から中は観えない。
兵士の視界を遮らない。
その視界、視線の周り、遮らない索敵情報。
アイコンタクト一つで操作。
俯瞰情報から統合情報まで表示可能。
他人や個々の索敵器機。
別な位置に立つ兵や飛び交うユニットの一つ。
その眼から視える。
それだけじゃない。
複数索敵器機情報の統合も可能。
観客か視聴者目線。
全方位データで全景をリアルタイム再構成。
視えない物はない。
指揮官や司令部が許す範囲だけだけどね。
観せない物ばかり。
基本的に許す範囲しか観せないから。
情報は判断の邪魔。
知ることが少なければ少ないほど良い。
判断が速くなる。
人間の認知能力は機械に決して届かない。
・・・・・・・・・・ってことになってます。
嘘を付くには虚偽を述べないこと。
害するためには益すること。
操るということは教えるってこと。
情報機器本来のスペックが活かせる環境故の贅沢。
日本列島全体のハードウェア。
地球人類最大のスペック。
稼働率ほぼゼロ。
通信容量から情報処理能力まで侵略戦争に全フリ。
しかもジャミングが無い世界はいいね。
電子戦が当然なら有線コントロールが中心。
まったく無いからこそ文字通り紐無し。
ドローンと称するラジコンが軍事利用出来るのは、第二次世界大戦前半レベル。
ジャミング一つでワイヤレス兵器は全滅。
スタンドアローン兵器は値が張り不確実。
有線と有視界戦闘に回帰してしまってる。
先進国軍同士の戦争なら、だが。
異世界大陸上空に浮遊する哨戒気球。
元々衛星が潰された後を想定した装備。
測位、観測、レーザーで通信中継、等々。
戦争用の装備だから使われずに山ほどあった。
第二次世界大戦レベルの武装勢力。
実際に戦う相手はこの程度だった。
異世界転移前、自衛隊の想定です。
そら戦争用装備なんか余るわな、異世界転移までは。
まあ、異世界は更に千年近くまえだけど。
異世界転移前だって戦争はなくなってたけど。
非先進国の自称軍隊相手じゃ戦争以前だったけど。
対等な殺し合いっていうのは少数例、ってか対等なら殺し合わない死んでしまう。
殺すならともかく。
人間は一方的に殺す。
失敗は余り多くはない。
ただ殺られたくない殺し合いにも備えて積み重ねた技術と装備の数々が先進国軍。
俺たちを観察している世界大戦仕様の索敵機器。
誰にも邪魔されずに大活躍しております。
スペックの大半は味方に向いてる。
後進国ってーか、国家以前の武力紛争では大活躍したオモチャ、ではなく先端技術。
俺たちの監視だけじゃもったいない。
どうせ記録もとってんだろ。
さっきの神父のパフォーマンスとか。
監視索敵データを組み合わせれば再現して楽しめるんじゃないか。
ただの娯楽じゃ終わらないな。
そうしないと。
だから楽しんでもいられない。
そう出来るな。
娯楽じゃないとは言わないが。
そも作戦がね。
楽しんでないとも思わんけど。
それが目的だ。
皆の間は十分だろうか?
・・・・・・・・・・もう少し、か。
本日の主役を撫で撫で。
魔女っ娘である。
主役って貧乏籤だよね。
俺の配役ですが。
いつもより余計に撫で回しております。
主催者以外の観客は?
――――――――――衆目は一致。
俺に。
まあ、仕方ない。
好都合。
魔女っ娘は後で。
演出。
神父がアピール。
そりゃ咳ひとつ上がらない沈黙のなかで大音響BGM必須なパフォーマンスを繰り広げられたらなぁ。
ただ全員、何かが起きてることは、判る。
四方が壁。
音は反響。
広い広場。
音は拡散。
そんな中で、深く広く染み透る、高い声。
マイクなし。
スピーカーなし。
音響効果設定も、なし。
スゲー響く、良い声。
うちの娘たちも、胆を抜かれている。
音響防御付兵装の隊員には判らない。
俺やNo1、No2の正服組は解る。
――――――――――いや、違うか。
他の誰より、俺たちに保護されない、うちの娘たちではない異世界住民に、響いてる。
自然な聴力。
事前に無知。
慣れた肉声。
将校に大声は必須とは言う。
間違いだ。
大声じゃない。
唄声が必要なんだ。
「GungHo!GungHo!GungHo!GungHo!」
誰も答えない。
その意味がない。
だが応えてる。
リズムを与えてる。
異世界の住民だけに伝わる。
俺は動かない。
皆を動かさない為に。
奴が動かすに任せておく。
聞いてる俺たちは予測がつく。
うちの娘たちや隊員たちは音響防御。
聴かされてる異世界住民は黙したまま。
だからこそ。
声や行動で発散出来ない。
否が応でも集中させる。
意味がないから考えない。
故にむしろ集中させる。
そこでこそ。
【異世界種族非公式呼称「聖都」/元徴集民街区/青龍の騎士団馬揃え/最前列/エルフっ娘】
あたしは悔しさを噛み殺す。
――――――――――祭礼――――――――――
聖都で繰り返されたまつりごと。
巫女神官が奇跡を起こす。
その刻。
人を心を集めた儀式。
帝国が繰り返したまつりごと。
魔法使いたちが魔力を籠める。
その刻。
士気を練る魔法陣。
いにしえの王たちが続けたまつりご|青龍の道化と《・》。
人が人々を統べる。
邦を国になす力。
そこ。
――――――――――彼が造った舞台。
それ。
――――――――――彼に従えられた皆。
そう。
――――――――――彼へ集まる人々。
太守領の領民。
その要となる連中。
青龍を視ることは出来ない。
それはとても大きすぎるから。
彼らは彼を視るようにされた。
あたしたちがそうあるように。
女と男ではないけれど。
民と主がそうあるように。
それは善い。
此処までは。
――――――――――後ひとつ、留められそうも、ない。
彼が求める。
あの娘は応える。
賛成しない。
反対は出来ない。
だから、これは八つ当たり。
許された。
赦さない。
既にダメ。
次はない。
要を担うのが青龍の道化
・・・・・・・・・うん、とっても、腹が立つ。




