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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第三章「掃討戦/文化大虐殺」

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78/1003

心の壊し方/Recollection;10~11

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします


一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。

次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。

以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)


【登場人物/一人称】


『俺』

地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿》

現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様》

?歳/男性

:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。


『あたし』

地球側呼称《エルフっ子》

現地側呼称《ねえ様》

256歳/女性

:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳。長身(数値不明)。革を主体とした騎士服にブーツに剣が常備。軽装の革鎧や弓(短/長)は必要に応じて。


『わたし』

地球側呼称《魔女っ子》

現地側呼称《あの娘》

10歳/女性

:異世界人。赤い目をした魔法使い。太守府現地代表。ロングストレートのブロンドに赤い瞳、白い肌。身長は130cm以下。主に魔法使いローブを着る。


『わたくし』

地球側呼称《お嬢》

現地側呼称《妹分/ちいねえ様/お嬢様》

12歳/女性

:異世界人。大商人の愛娘。ロングウェーブのクリームブロンドに蒼い瞳、白い肌。身長は130cm以下。装飾の多いドレスが普段着。


【登場人物/三人称】


地球側呼称《元カノ/団長/だんちょー/一尉/一尉殿》

現地側呼称《青龍の女将軍/団長/主》

?歳/女性

:国際連合軍大尉/陸上自衛隊一尉。国際連合軍独立教導旅団「黒旗団」団長。『俺』の元カノ。



地球側呼称《頭目/お母さん》

現地側呼称《頭目》

?歳/女性

:太守府の有力都市、港街の裏を取り仕切る盗賊ギルドのボス。昔エルフと恋に落ち、ハーフエルフの愛娘がいる。赤毛のグラマラス美人。娘さんはお母さんに似ているらしいが、ちょっと耳がお父さん(故人)似。


【用語】


『シスターズ』:エルフっ子、お嬢、魔女っ子の血縁がない三姉妹をひとまとめにした呼称。


『Colorful』:ハーフエルフの最高級愛玩奴隷たち。髪の色がいろいろなために神父により命名。


『ハーフエルフ』:エルフと人間の間に生まれた混血種族。エルフに似た美しい容姿と不老、不妊、それ以外は人並みの種族。異世界全体として迫害される。



「根が遊牧民なんですよ」



だから滅ぼした王国の王城をそのまま使う。仇敵として追及した神殿も壊そうとは思いつかない。建物を、箱としか思っていないからだ。機能でしか見ていないからだ。

突き詰めたリアリズムはシンボルを認識できない。


「お墓までそのまんま残ってるんです」


遺伝学者や系譜学紋章学あたりの比較民俗学者が大喜び。


「血の根絶も彼らの考えかどうか」


征服地の王族貴族、その血統を根絶やしにする。征服戦争の常套手段。

しかし、略奪婚が基本文化にある彼らが『血を絶やす』意味合いをどう認識していたか。


「魔法使い」


そう。

大陸諸国で特殊な、尊重される地位を持っていた魔法使いがなぜ北方辺境の騎竜民族に合流したのか。

征服戦争の過程で、徐々に魔法使いは帝国寄りになっていった。

資料から確認する限り、反帝国諸国が魔法使い至上を掲げる帝国に対抗するうえで巫女神官を持ち上げ、魔法使いを迫害し始めたからだ。


実際に征服戦争末期。

帝国の圧勝が決定的になってなお、帝国と戦う戦列に諸国の魔法使いがいた記録がある。結局、戦場では奇跡や祈りより即効性のある魔法が必要だったからだが。


であれば帝国勃興以前。

『北方の蛮族』でしかない騎竜民族に合流した魔法使いたちは、何かの理由で大陸の定住民諸国にいられなくなったのだろう。



何をしでかしたのやら。



その彼らが何かの理由で持ち込んだ思想。

龍の民を至上とする選民思想。

魔法使いを至尊とする差別主義。

生得の権利と力。


・・・・・それは結局、根付かなかった。


征服戦争を起こした時点で、世界を制する力を持っている時点で、民族主義/国粋主義は破綻する。


当然だ。

総てを見下していたら征服などできはしない。

総てを否定したら征服に意味などない。


草原で生きる、力の原理。

そこに妄想が入り込む余地はない。

自分を何者と規定したところで、敵を殺せるわけがはない。

自分を誇ろうが、蔑もうが、敵は敵、味方は味方。

生死に何の影響もない。



絶頂期にある帝国。

その彼らが屈託もなく、地球人をスカウトする。

征服地の様々な技術を取り込み、必要に応じて改良し、国連軍の動きすら模倣する。


それはローマ帝国のようでもあり、モンゴル帝国のようでもある。

征する為にそうなったのか、そうであった為に征することができるのか。



「それがあるからこそ、旧体制の血を絶やすことは厳格に行われているのに、旧体制のモニュメントは全部残されてしまったんですね」



地球人さえ現れなければ、何も問題はなかった。


帝国軍撤退後。

あっというまに帝国の支配が消滅した理由。

わずか十年程度では、血を絶やしただけでは、別な世界があったことを忘れない。

この邦に、統治にかかわらないお飾りの、ゆえに憎まれも嫉まれもしない、王族がいたこと。

無意味であればこそ、誰もが好きな意味を与えられるということ。

それこそが象徴であることを。



「帝国は『心』の壊し方を知らなかった」



地球人は知っている。





【太守府/港湾都市/港湾地区/埠頭岸壁】


出会いがあって別れがある。俺の人生にも例外はない。さよならだけが人生


{イヤですイヤですイヤですイヤですイヤですイヤですイヤですイヤですイヤですイヤです}


まあまあ聞きなさい。


{イヤです}


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・聞いてくれませんでした。




俺は三佐との話を早々に切り上げ、帰還準備に取りかかったのだ。まあ、曹長と坊さんに命じただけだが。でまあ、現地の皆さんへの告知やらなんやらは、最上位者である俺の役目。


{おにーさま!}


現地のみなさんである人魚君。誰がキミの兄か?


{お嫌いにならないで!}


この有り様である。・・・・・・突き放せたら、楽なんだろうが。人魚である。結構つぶらな瞳である。水中である。

・・・・・・・どこに行こうというのかエラ呼吸で。


「潜水服を改造して溶存酸素ボンベつき陸上服を開発する計画が」


おい!人魚用陸上活動スーツなんて誰得だ!!




【太守府/港湾都市/港湾地区/埠頭岸壁/青龍の貴族の背後】


わたしには、人魚さんの言葉?はわかりません。ぴちゃぴちゃと、水が跳ねているように聴こえます。ただ、気持ちは伝わりました。

ご主人様と離れたく無いのですね。


わたしだったら・・・・うぅ。




【太守府/港湾都市/港湾地区/埠頭岸壁/魔女っ娘の横】



あの娘が気絶しそうになって、わたくしが・・・・・前に出る前に支えてくださるご領主様。そのまま、あの娘を片手で抱いてくださいます。

また、怖いことを考えてしまったのね。あの娘が恐れることは、ご領主様に捨てられることだけですけれど。


「強い娘だな」


・・・・・・・・・そう。

ご領主様は解ってくださいます。あの娘の強さを。自分以外の誰かの為、見ず知らずの誰かのためにだけ、に強くいられることを。

自分自身の事にはまるでダメダメなことを。


わたくしは、羨ましさを少し抑えることにしました。

少しの間だけ、ですけれど。


・・・・・・・こんな時に割り込めるのは一人だけ!まったくもう!!




【太守府/港湾都市/港湾地区/埠頭中央】


「お父さん、いっちゃやだ!」


あたしはとっさに髪が逆立ちそうになった。頭目、の娘が青龍の貴族にすがりついている。

誰が、お父さんよ!


街の連中は、この子を青龍の貴族の子供だと思っているけれど・・・中でもこの子がハーフエルフだと気がついている有力者は、母親をあたしだと思っている・・・・・・・それが不快なわけじゃ無いけれど。

どういうつもり?

あたしは頭目をにらんだ。



実の母親である頭目が、誤解を放置する理由は解る。



この子の安全の為。

ハーフエルフであることを隠し、露見しても守り、守れなければ逃げるため。


母親としてではなくても、保護者として側に居続けなくてはならない。

盗賊ギルドの頭目として、権力と暴力を持たなくてはならない。


過去にエルフと結ばれた、だけならともかく、ハーフエルフの子をなした、しかもその子を守っている。

それは大変な醜聞。

知られたら頭目の地位はおろか、命も無いだろう。


だから、周りの誤解を利用する。


この子は自分の子どもではなく、青龍の貴族の庶子。青龍の貴族が、愛人のエルフに産ませた子供。頭目は、主から庶子を預けられた家臣・・・・・を演じている。



青龍の貴族、その娘と思われていれば、ハーフエルフでも手出しされない。青龍にはそもそもハーフエルフへの禁忌がないし、この世界の誰も青龍の貴族が認めていることに異論は挟めない。


だから、それは、まあ、いいんだけど・・・・・・・・・・頭目を睨むと、青龍の貴族に見えやすいように目頭を抑えている。哀れを誘う、計算しつくされた『女』の仕草。

あたしに、ニヤリと笑いながら。


あざとい!!!!!!!!!!娘がまねしたらどうするのよ!!!!!!!!!!!!




【太守府/港湾都市/港湾地区/埠頭/シスターズの視線中央】


俺はいつの間にか子持ちにされていたが、如何ともしがたく。ここで『お前の父親じゃない』って言うことができるようなメンタルは持ち合わせていないわけで。


ってか、お母さん?絶対面白がってますよね?娘さんが本気にしたらどうするんですか?大きくなって、『あんたなんかお父さんじゃない!!』とか言われたら、俺、泣いちゃいますよ?


そりゃそうだ、とか返すメンタルないんで。




【太守府/港湾都市/港湾地区/埠頭中央】


あたしは動きが取れない。青龍の女将軍も歯軋りしていた。子供を盾にとる頭目のやり口は、いっそ関心してしまうくらい。


青龍の貴族にむけて、頭目が我が子を抱き上げる・・・・と自然に肢体が密着してしまう。

自然に・・・・・・・・・見えるだけだけど。

そして母子揃って上目遣い。


「お父様は大切なお役目があるのよ。笑顔でお見送りしないと」


頭目は、娘を抱きしめ、るついでに青龍の貴族に抱きついた。ますます肢体を密着。子供がいるから割り込めない!!!!


「お帰りを待ちましょうね?」


って!!どこに帰るって!!!ますます肢体を、いや、子供に見えないからって脚を絡めないでよ!!!!!




【太守府/港湾都市から太守府へ/主街道を離れた裏街道】


翌日。

俺は『可及的速やかに帰還せよ』を字義通り実行中である。


可及的速やかに帰還作戦を開始した。

なにしろ、夜明けと同時に出発したのだから間違いない。

もちろん、命令通り、太守府に向かっている。


その素早い行動の前に、いろいろあったような気がする。

人魚をなだめたり、働くお母さんにクラクラしたり、その娘さんの将来が心配になったり、元カノがキレかけたり、シスターズが静電気を食らった猫みたいに母子とにらみ合ったり。


まあいい。

長く続く人生経験の最初の一歩が俺に囁くのだ。

『関わってはならない』と。



俺たちに同行するのはシスターズ、Colorful、軍政部隊に元カノ以下黒旗団の一部。



頭目は同行しない。

港町の有力者であり盗賊ギルドのボス。そうそう地元を離れるわけにはいかないだろう。

出会いは太守府だった。ってか、俺たちが頭目を拉致したのだが。

働くお母さんを拉致・・・・エライ字面だな。


彼女が組織の本拠地を空けてはるばる太守府に遠征したのは、情勢を見極めるため。その時に俺たち謎の侵略者が到着するからだ。

まあ、それで拉致られてるんだから、成功したとは言いにくいが、大丈夫らしい。

むしろ本人は良かったと言っている。エルフっ子も、認めている。すごくしぶしぶと?だから、まあ、いいんだろう。

ここまでは。


それが終わったのに再建途中の町から離れ続けたら、組織の長として見識を疑われる。だから付いて来てもらうわけにはいかない。名残惜しいとかはあんまり思ってない。ほんとうだ。なぜかエルフっ子と元カノが繰り返し釘を刺していくのだが。

いや、実際、ちょっと無防備なところが、嬉しいこともあるが心配でもあるし・・・エルフっ子が大丈夫!!と力いっぱい太鼓判を押すのだから大丈夫なんだろう。


とはいえ、頭目。この働くお母さん。

『お任せください』

と、別れ際に、足元に跪かれたのはびっくりしたが。なにかわからないから、頷いておいた。集まっていた港街の顔役の皆さんもびっくり、は、してなかったから、自然な儀礼なんだろう。



人魚は港に置いてきた。

わんわん泣いていたが、水中で泣くとはこれ如何に?だが、まあすぐに解決。


俺か元カノが、毎朝通信して姿を見せる事で交渉妥結。


距離を克服した科学技術に乾杯!

3Dホログラフと実物の違いは、あまり理解されなかったようだ。ただ触れないだけで直接会うのと大差ない。

ホログラフに接触機能はないから当然だ。


もともと水中生活の人魚とは、触れあい難いしな。

俺と人魚の場合、俺が習慣のようにほっぺたをつついていただけだが。しかし、人魚には謎のこだわりがあったらしく、しばらく触れない事と引き換えに『絶対に捨てない』と約束。


野良人魚にはしない・・・ってのは、冗談にしても、仲間が居ない異境で寂しがるのはよくわかる。


人魚の事はまだまだ国連が調査中。

仲間の人魚も所在地不明。

どこに帰したらいいかもわからない。

とりあえず、3日間一緒に過ごした俺、元カノ、シスターズを信用しているのも、それ以外を怖がるのも妥当だろう。


それが揃って遠くに行くとなれば、まあ、直線で60km程度だが、ぐずるわな。


子供だし。年齢わかんないけど、メンタリティっていうか反応がね?


当面は港で黒旗団、ってより、マッチョじいさんが面倒をみてくれる。

あの爺さんなら、上の方針が急変しても、なんとかして人魚を守ってくれる。・・・ってのが、元カノの見立て。


黒旗団はASEAN兵にいたるまで、元カノの私兵っぽいからな。


「ほーら、アタシに頼って甘えなさい?」


・・・・・なんか、悔しいな、おい。



かくして俺は太守府を目指す。


うーん、まさに命令に従う軍人だね。軍人の鏡とまでは言わないよ?謙虚さって重要だよね。


「そりゃ、あたしだって三佐に会いたくないけどさ」


黙ってろ元カノ。


「だからって陸路、しかも大回りして行く?」


おいおい、その言い方じゃまるで、お母さんに怒られるのが嫌で寄り道している小学生じゃないか。


「そーじゃん」


余計な事に気がつかなきゃお互いにハッピーだろ?


「アタシのハッピーはあんたをモノにする事だし」


きこえな――――――――――い!きこえな――――――――――い?


かくして、出発。


軍政部隊が士官二名、下士官一名、歩兵十名に文官二名。

+軍属五名。現地協力者三名。

軽装甲機動車にトラック四台、斥候役の軍用バイク。偵察ユニットに哨戒気球。


アムネスティが、おねーちゃんたち十名にサポート要員十六名。

トラック四台、炊事車二台。


国際連合軍独立教導旅団『黒旗団』が士官二名、兵士十名(内ドワーフ八名)。

HMMWV二台に軍用バイク二台。


・・・・・・・・結構大行列じゃね?




【太守府/港湾都市から太守府へ/主街道を離れた裏街道/先行騎兵中央】


あたしの前に、あの娘を載せた青龍の貴族。あたしの後ろには青龍の女将軍。あたしと妹分が、その間。


三騎5人。


青龍の土竜はかなり後ろ。あの音、土竜特有の騒音が聴こえない、から問題なし。あたしには聴こえるけれど、村人が怯えるのはもっと後。


これなら目立たない。




【太守府/港湾都市から太守府へ/主街道を離れた裏街道/先行騎兵先頭】


俺はお嬢を支えてアンブル。

ちょっと早いだけだが、多少揺れて、魔女っ子が喜んでいる。ジェットコースターとか好きなタイプかな?戦争が終わったら・・・いかんいかん。帰れないフラグだ。


ちなみに、乗馬は軍政官必須スキル。

まあ、暴れ馬を御する必要はない。野生馬を捕まえろって訳でもない。

慣れた・・・・・・・・・・・・・・・現代地球基準でそう言えるか、無理はあるが

・・・・・・・・・・・・・・・訓練された馬に乗れる程度の腕があればいい。



国連軍の長距離浸透斥候なら、前線後方数百kmに空挺降下して敵地を徘徊する。馬だろうが、牛だろうが、動くもの全てに乗らなくてはならない可能性がある。

何処かにいるレコン、指揮系統不明ながら俺たち軍政部隊を支援している、合衆国軍長距離偵察兵たち、も似たような技術を身に付けているのだろう。


だが俺たち軍政官の乗馬は、政治的デモンストレーションに使うだけだ。だからこそ、危なげなく乗らないといけないのだが。


占領地の住民に対する権威の演出。


馬は持つのも維持するのも金がかかる。現代地球でも、そうだった。

まあ、地球の場合は需要が少ないから希少価値ってことだが。中世社会じゃ需要が多くて供給が追いつかない。

地球の中世準拠だと馬の価値は場所にもよるが、この大陸では高い。


俺たちが攻め込む前から、帝国の征服戦争中だったしね。

軍馬、荷馬、需要は天井知らずで消耗も多い。だからこそ、支配の象徴になる。


言うまでもなく、自動車は論外。


中世社会の度肝を抜く?それこそ支配の象徴じゃないかって?

そうはいかない。


地球ならどんな全力後進国のド辺境でも、自動車は受け入れてもらえるだろう。初めて見ても、知らなくても、概念はあるからだ。

文化文明とはそんなもの。

むしろ、そうした場所なら富強の象徴として、権威つけになる。


だが中世でそれをやればどうなるか。

図体がデカく、エンジンがウルサく、ガソリンがクサい・・・・・・化け物そのものだ。よほど頭がお花畑でもなければ、受け入れられない。


っていうか、全力逃走、パニックである。


現代地球でいえば、道をトリケラトプスがダッシュしてきたようなもの。トリケラトプスの方が強いけど、竜を知っている分、現地住民には受け入れやすいだろう。


受け入れる認識する以前。

そんなの当たり前だよね~?いきなり村に乗り付けてさ~~危害を加えないから大丈夫~~~って遠巻きにみている人々と交流~~~~ねーよ!!!

発展途上国と中世を一緒にすんな!!!!!!!





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい、俺です。




何故、俺たちが馬に乗り換えたのか?


最初、うっかり軽装甲戦闘車両で街道を前進。誰もいないな~~~~~~とのんびりしてたら、港近くの街で、大パニック。

今まで街道で、誰も居ないんじゃなくて、音だけで全力逃走してたのね皆さん。


自動車って概念自体が現地住民を傷付けれる。


いや、可能性じゃない。

護衛艦一隻、ただ現れただけで、邦一番の港街が半壊し数千人が死んだ。俺たちの存在自体が、異世界にとって暴力だ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――完全に、忘れてた。


俺の感覚が、ついていってない。


普段、シスターズやColorfulと一緒だからか。絶え間なく化け物扱いされ続けないと、自分自身がどれだけ恐ろしい代物か忘れてしまう。

・・・・・・・・・・・・・・・・どれだけ殺す事になるかわからない。

俺自身が、気がつかない間に、だ。



フリーズした俺を見て笑い転げる元カノが大変ムカついた。


わかってたなテメー。乗馬訓練時に軍政官訓練の教官達が言わなかったんだよ!

『バカでもわかる』って発想か?

『国連軍の戦闘車両が山ほど通過した後で軍政するから一台や二台の軍政部隊車両なんか問題外』って発想しかなかったのか?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・たぶん、後者だ。


俺がいる太守領みたいな、本格的戦闘も起こらない辺境。そんな作戦上の価値がない場所を占領して軍政なんぞするとは、そもそも思うまい。


つまり三佐が悪いんだな、うん。責任を負わされるのは俺だけどね、うん。



ともあれ、帰還作戦は1日順延。

俺は慌ててエルフっ子と相談。港に連絡して頭目に馬を調達してもらうという自爆っぷり。


頼られたそうにしていた元カノはむくれていたが・・・・・・・・・・・・めんどくさい奴だ。


馬の到着を待ち、隊列を再編成。

乗馬が出来るのは軍政部隊じゃ俺だけ。黒旗団は皆が乗れるが、全員が馬にのる必要はない。そんな事をしたら飼料まで自前で運ぶ羽目になる。


交通量が少ない裏街道には、馬用の宿はないからな。要は騎馬で先触れを出せばいい。怖がるのは仕方ないが、犠牲が出るほどの混乱は防げる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とまあ、全部、エルフっ子に丸投げした結論。


そしてついでに、俺が先頭を進む事にした。この点は、エルフっ子に反対されたが。先触れ無しに、確認すべき事があるのだ。


こうして、十二日目が始まったのだ。



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