表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第三章「掃討戦/文化大虐殺」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/1003

兆し/planC

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします


一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。

次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。

以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)


【登場人物/一人称】


『俺』

地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿》

現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様》

?歳/男性

:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。


『あたし』

地球側呼称《エルフっ子》

現地側呼称《ねえ様》

256歳/女性

:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳。長身(数値不明)。革を主体とした騎士服にブーツに剣が常備。軽装の革鎧や弓(短/長)は必要に応じて。


『わたし』

地球側呼称《魔女っ子》

現地側呼称《あの娘》

10歳/女性

:異世界人。赤い目をした魔法使い。太守府現地代表。ロングストレートのブロンドに赤い瞳、白い肌。身長は130cm以下。主に魔法使いローブを着る。



【登場人物/三人称】


地球側呼称《神父》

現地側呼称《道化》

?歳/男性

:合衆国海兵隊少尉。国連軍軍政監察官。カトリック神父。解放の神学を奉じる。アフリカ系アメリカ人。


地球側呼称《曹長》

現地側呼称《騎士長》

?歳/男性

:国際連合軍/陸上自衛隊曹長。


地球側呼称《坊さん/係長》

現地側呼称《僧侶》

?歳/男性

:国際連合出向中地方公務員。得度した僧侶。浄土宗らしい。軍政司令部文官。


地球側呼称《三尉/マメシバ/ハナコ》

現地側呼称《マメシバ卿》

?歳/女性

:陸上自衛隊三尉。国際連合軍独立教導旅団副官。キラキラネームの本名をかたくなに拒み「ハナコ」を自称している。上官の元カノが勝手に「マメシバ」とあだ名をつけて呼んでいる。


地球側呼称《三佐》

現地側呼称《青龍の公女》

?歳/女性

:陸上自衛隊三佐、国際連合軍事参謀委員会参謀、WHO防疫部隊班長、他いろいろな肩書を持つ。日本の政権与党を支配する幹事長の娘で、父親と連携して戦争指導に暗躍している。


地球側呼称《マッチョ爺さん/インドネシアの老人》

現地側呼称《副長/黒副/おじいさん》

?歳/男性

:インドネシア国家戦略予備軍特務軍曹。国際連合軍少尉。国際連合軍独立教導旅団副長。




知られても問題がない。ならなぜ隠すのか。



まったくその通りじゃ。ワシは有権者を信じておる。


裁かれぬ。

怒られぬ。

責められぬ


ならば公然と奪い殺し壊せばよい・・・・・道理じゃな。


はっはっはっ!


サービスじゃよ、サービス。

わしら議員はな、サービス業じゃ。

こんなおいぼれに、楽しい楽しい権力を与える為に、暑くても寒くても、雨の日も風の日も、投票所に行ってくれるんじゃぞ?


通り一遍の礼じゃ気が済まぬ。

出来る限り応えたくなるのが人情じゃろ?


だからワシら政治家は有権者の、ありとあらゆる望みに応えるんじゃよ。

皆が何を望んどるか、ワシらはよーく解る。


「知らなかったことにしておきたい」


人情じゃろ。


「知らなかった」

「知らせなかった」


ワシらとキミら、阿吽の呼吸じゃ。

役者と客がそろうてこその舞台じゃろ。


ほう?ばれたらどーする?



芝居の出来は役者の責めじゃよ。

吊るされるまでがお勤めじゃ。


まったくその通りじゃろ?わしは有権者を愛しておる。



《インタビュー88with参議院議員/外交防衛委員会委員長》




【太守府/港湾都市/港湾地区/埠頭中央】


あたしが埠頭に入ると、ごてごてした奴らが来た。


「おお!エルフ!」

「勝負かエルフ!」

「八つ当たりかエルフ!」

「想い人にヤっってもらえたかエ――――――――――!!!!!!!!!!」



だ・ま・れ



「おお!完全にキマっとるなエルフ!」

「声もでんな?ナイフで喉を裂くよりも良いか?生け捕りかエルフ!」

「それよそれ!エルフ!」


あたしはドワーフを締め落として、蹴り一つ。むせてるから平気でしょう。

後は無視。


同類が死にかけてもドワーフたちは気にしない。

あたしはエルフって通り名じゃないけど、やっぱりドワーフは気にしない。


エルフは一人しかいないんだから。

間違いないから。

問題ない。


っていうのが奴らの発想・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あたしも奴らの通り名を呼んであげない。


それは、あたしの常識では失礼なのだけど、奴らドワーフは気にしてない。

ふん。




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/中央庭園/執務室改め「エルフっ子肖像権問題対策本部」】


俺は魔女っ子に見せた。

まずは問題の度合いを確認。


執務机の上に表示された空間ディスプレイ。魔女っ子の小さい手に従いエルフっ子の画像が次々入れ替わる。

うーん、この子もパソコンの使い方覚えたね。子供はこういうのが早いな~。



エルフっ子画像一覧、これがネット上に流出してしまったのだが。もちろん、R-15的な画像は載っていない。あくまで資料写真に過ぎない。ドレス姿などもなく普段の革鎧や騎乗服姿、机で頬杖を突いたり窓からのぞき込んだり、食事をしているところ。

つまりは俺が、曹長が、軍政司令部スタッフの視線に合わせて設置されているカメラの画像だ。



本来は指揮管制用のシステムで、国連軍兵士/文官他、異世界大陸で活動する者は皆これをつけている。設置場所は兵士のヘルメットやベレー帽。

俺なんかは肩章にもついている。


広角レンズを使い周辺の状況を動画撮影、部隊指揮所/車両のサーバーに送られ、そこから確認可能。

兵士の位置、兵士が見ているモノ、そしてドックタグについているバイタルチェッカーと合わせて指揮官は完全に兵士一人一人を把握できる。


ECMがない世界じゃ電子機器は無敵だ。



もちろん、戦闘相手は概ね撮影できるので、兵器や戦術を解析する資料になる。偵察部隊など行って見て帰ってくるだけで足りるくらいだ。

特殊な敵、竜や魔法使い、魔法騎士などのデータは最優先で解析される。



そして・・・・・まあ、これが本命じゃないかと思うが、軍規の維持に役立つのは言うまでもない。

なにしろ、戦場にいる間は常に監視されているんも同然だ。

カメラを外せるのは駐屯地の中だけ。バイタルチェッカーは入浴中でもないとはずせないけどね。


戦場につきもののあれやこれや、接触禁止の現地人との不適切な関係接触。

軍事参謀委員会が『人類最大の脅威』とみなしているパンデミック要素。


兵士一人一人の視線を常に追えるわけもない。指揮中に指揮官が見るのは位置とバイタルだけだ。

だが、後から確認はできる。


例えば『難民の救助許可申請を却下した後、帰還時間に遅れた偵察中隊が何をしていたのか』とか。勝手に難民を救助していたのが解り、全員銃殺にされたわけだが。

・・・・・・・・・・・意気揚々と難民と一緒に帰還したのだから、検証する必要はなかったかもしれない。いや、難民の全数把握に役立った、か。おかげで一人残らず処分できたわけだし。


データはすべて前線部隊指揮所/車両から基地、から拠点、から出島、そして本土に送られている。

前線でデータを消す方法はない。

ヘルメットのカメラを壊せば自白剤付きの尋問が待っている。軍法会議に自白剤って司法的におかしい?その通り。


あらゆる軍規違反は軍法の前に『防疫規定』の対象になる。


すなわちWHO防疫部隊、三佐の職分。

例えば現地の男性女性と国連軍兵士が不適切な関係を持ったら、パンデミックの危険が生じる。血液や体液は特に要注意。

勝手に任務を拡大解釈し、ドラゴン退治に向かってしまうような『一人関東軍』は野生生物と危険な接触をしていることになる。

大規模バイオハザード対策なのだから裁判や刑事司法の問題ではない。

黙秘権など考慮されない。


結果として防疫上の問題がなっった場合、尋問結果が所属部隊や軍事参謀委員会に提供されたとしても何も問題ない。

そうだろう?

WHO防疫部隊には医師としての資格を持っている人間が多いが、これは診療ではない。よって守秘義務など生じない。


提供された情報に基づいて軍籍剥奪から銃殺まで様々な結果になるだろう。

・・・・・・もしかしたら、手間のかかる軍法会議を省略する為に、疫学的な判断に政治的な判断が加わっている可能性もある。

そもそも、WHO防疫部隊の指揮官が『あの』三佐だからな。パワハラや横車、職権乱用や越権行為の専門家。

親父が国際連合の黒幕ってところで、ソレを疑わないわけがない。




利用用途は他にもある。


異世界大陸のデータ収集。言語、文化、習慣などなど。


例えば。


建物の形。

地球の建造物や、異世界内他地域の似た様な役目の建物と比較。

柱の形、窓の配置、壁紙の色、煉瓦の素材、石組か木組か?模様は?階数は?用途は?法則性があるかないか?

デザインに似ているところはないか。

地球の中世か?近世か?古代か?現代建築に通じている物があるか?西欧か?東欧か?南欧か?北欧か?

大陸の南と北、沿岸部と内陸部で差があるか?それは気候風土に合わせただけか文化的な物か?


人々の仕草。

兵士に対する所作。士官に対する所作。将官に対する所作。

占領前後で変化するか?来訪だけではどうか?虐殺直後ではどうか?戦闘を見聞きできるかできないか?

帝国関係者と領民ではどう違う?

領民の中でも有力者と農奴では?

恐怖、服属、安堵、喜悦・・・・・そのあらわれ方に違いはないか。

どんな違いがあるか?


服飾、料理、作物、植物、動物に昆虫。

兵士一人一人が見る物を個人的体験で済ませることなく、蓄積比較検証する。

もちろん、十万を超える兵士の、前線にいる間の映像だけで莫大な量だ。こうした異世界解析について国際連合は全て丸投げしている。


日本人、あるいは日本列島に居住している人々全員に。

なにしろ、休業中の労働可能人口がやたらと多い・・・・・・・うらやましい。


ネットは暇つぶしの王様である。

いま日本で一番注目される情報が異世界情報なのは言うまでもない。

ざっと、9千万の就労可能人口の半分が暇してるとして、その一割が熱心に異世界情報を見ているとしたら?

解析担当450万人。

専門知識を持つ素人も多いし、マニアも学者もいる。

彼らの分析を批評という名で検証する素人には不自由しない。


まあ、どうしても軽いネタ

『竜』

『魔法』

『戦争』

が中心になるのは当然だから文化解析はディープマニアの領域ではある。そして、上記以外の人気ジャンルが

『異世界種族』

つまりは、エルフやドワーフ、獣人、などなどになるわけだ。



で、その方々が、うちのエルフっ子に食いついた。

大漁である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、美少女だから注目されるのは解るが。初投稿でいきなりメガヒットするきっかけが解らん。




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/中央庭園/執務室改め「えるふっこしょうぞうけんもんだいたいさくほんぶ」/青龍の貴族の前】


わたしは、せつなくなりました。

胸が締め付けられるような、苦しくて、でも、嬉しくて。


ねえ様が、ご主人様を見つめる。

その瞳、仕草、温かさを焼き付けたような・・・・・・・・青龍の世界が操る時の断片。


すごく、素敵です。

ねえ様、幸せなんですね。

嬉しいです。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・かないません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも。




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/中央庭園/執務室改め「エルフっ子肖像権問題対策本部」】


俺は意外になれている。女に怒鳴りつけられることに。意外じゃない?

決して趣味ではないが、なぜか、怒るのである。親しい相手ほど怒るのである。


個人的な嗜好では、女性に優しくされる方が好きなんだがな?



「閣下はバカですか!!!!!!!」


直球だなおい!マメシバ!!


「ウチの両親と同じくらい馬鹿で阿呆で非常識です!!!!!!!!!!!!!!!」


いいのかそれ!

娘に絶対拒否されるキラキラネームつけるのは、そりゃバカだろうけどさ!!


「よーく見てください。よーく見てください」


俺も画像をスクロールしてみる。

動画無し、音声なし、様々なエルフ画像の一つに過ぎない。

数は少ないが、エルフ自体はいくつかあるんだよな。みんな美少女美少年だし。これ、黒旗団の副長か?元カノに言っとくか。


「ね?」


お、おう。

ドヤ顔デフォなマメシバ三尉。改めてエルフっ子と他のエルフの画像を比べてみる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、そうかな?注目もされるかな?


身びいき・・・・エルフっ子が一番かわいく見える。

ウチのエルフっ子が一番だ!的な。

うーん、俺は娘ができたら溺愛するタイプかもわからん。



「恋する乙女は世界イチィィィィィィィィィィィィィィィィィィ

――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「VRyeeeeeeeeeeeeeeiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii」


うわ――――――――――うわ――――――――――ひくわ!

こいつら、神父とマメシバ三尉って仲良かったっけ??


「ハーレム主義者は敵です!」

「ザッツ異教徒!!」


はいはい。

対消滅してくれないかね。


ともあれ、エルフっ子。勝手に写真がネットにだされたら、いい気分はしないだろう。あくまで『異世界で見かけたかわいい娘』扱いだが。

眼線が入っているとはいえ、女の子だし。



「大変な問題ですよ!!取り繕った愛想笑いなら気にしないでしょうけど!すっごく個人的な笑顔が混ざってるじゃないですか!!特定個人向けの表情ですよこれ!!!!」


なぜか吠えるマメシバ三尉。まあ、魔女っ子も頷いているから良しとしよう。

つまりレアデータが混じっている、と・・・・・・マニアの反応は解らん。


「恋する女の子の表情は古今東西たった一人の相手にしか見せちゃいけないんです!!逆ハーを創っていても一人一人に向ける笑顔は違うんです!」

「YEAH――――――――――!!!!!!!!!!恋する乙女のエロっぽさはForeverコンプリート!!」


お、おう。

そのルールなに?ギャクハーってなんだ?


「You!YOU!Understand?」


えーと。


「OH――――――――――!!!!OK!OK!TeachME!Imagination!!」

「いいですか!この変態神父がこの写真を見て何をしたか想像してみてください!!」


OH――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!


俺は、ワイセツな存在の神父を殴り倒し、事態の深刻さを確認。

次の段階に移った。

つまり対処。




【太守府/港湾都市/港湾地区/埠頭中央】


あたしは先に一礼。

ドワーフに、じゃなく、青龍のおじいさん。

褐色で巌のような笑顔。

いつもの、笑顔・・・・・・・・・・・・・・・・武人、騎士、戦士。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・帝国の異端審問長官を思い出させる。


青龍は他部族をまとめている強大な帝国。『青龍の旗』以外にそれぞれ部族の旗があり、青龍の貴族は太陽の紋章。おじいさんは赤と白を上下にあしらった紋章をつけている。

まあ、圧倒的少数の竜の民が支配する赤龍とは違い、青龍は太陽の民が多数で主流みたい。そして赤龍のように部族種族間で支配被支配の関係がない。


まあ赤龍の場合、

『竜の民と魔法使い以外はモノである』

って姿勢だけど。


青龍の貴族が率いる騎士は、全員が太陽の民。

青龍の女将軍が率いるのは、おじいさんの部族やほか多くの部族、それに大陸の人間、ドワーフやエルフと獣人。


指揮ははっきりしているけれど、互いに遠慮しているのではと思うほど、相手を立てている。青龍の軍総てを指揮しているのは、星の紋章を持つ部族の女性だったわね。

・・・・・・・・・まあ、青龍の貴族と女将軍は誰に対しても傍若無人。部族種族の違いは尊重するが、貴族とそれ以外は厳然と別れているのか。

もとっも、青龍の女将軍を見ると、支配下の民、いまは配下の兵士だけど、に甘えてもたれているようにも見える。

帝国貴族であれば領民や兵士に隙を見せない、見せたら殺すだろう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・支配の在り方も違うらしい。


「訓練中でしてな」


あたしが質問しないうちに答え。

青龍の女将軍が、青龍の貴族とじゃれている間に、指揮を任されているおじいさん。


黒旗団は船降ろしの最中。

青龍ではあっても、おじいさんと同じ肌色が多い、騎士達が『ふぉーくりふと』という名のゴーレムに命じて箱を運ばせる。


ゴーレムに乗った騎士たちが、拍車を細かくあてないと動かない。『ふぉーくりふと』はあまり頭が良くないのかな?馬か牛なみなら上等か。

その傍ら、ドワーフ達が『一度にいくつ持ち上げられるか』賭けて潰れている。


ゴーレムはドワーフより力持ち、か。


でも、褐色のおじいさんが説明したのは、あたしが注目したのは、そこじゃない。埠頭の一角。青い布地を付けた連中。

盗賊ギルドのチンピラども。


あたしの向けた関心が、気づかれた。



ドワーフじゃなくて、人間が教えている。槍を持たせて並ばせて

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・軍の槍隊、の訓練、よね。


十数人規模の隊形、街の道幅を想定してる?奥ではそろって一斉に、瓦礫を海に向かって投げている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・投石兵?


いいのかしら。


「暇を使い、牙を磨く」


あたしにおじいさんが見せる。チンピラから、別な『なにか』に変わり始めている連中。

連中は余暇を酒場や娼窟ではなく、ここで訓練して過ごしているらしい・・・・命令じゃなく、自主的に。


「問題ありません」


じゃあ、青龍の貴族は知っているのね。


「棍棒とワイヤーで、百万やそこらは殺せますからな」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・武器の質?そうじゃなくて。


「武装させて、良いのですか?」


あたしは直接聞いた。武器を与え、しかも、戦い方を教えている。連中の実力と場所に合わせた方法を。

今は治安維持まで担っているけれど、連中は領民。

支配下の民を武装させる支配者などいない。


「危険はありませんよ」


青龍のおじいさんは、青龍の貴族より、察しが良い。まあ、青龍に心酔しているから大丈夫、なのかな?


「・・・・・・・・・・気になりますか」


最初からわかっていながら、はぐらかしてたのね。思ったより人が悪いわ。


「お詫びを」


一礼。


「小娘扱いでけっこうです」


あたしは切り返した。少なくとも、あたしは教わる側だ。


「案じ召されるな」


おじいさんは左胸を抑えて目礼。あたしは、すっかり面食らう。


「必ずや、我らは行き着きましょう」


何処へ、と問う前に。強い眼光を走らせ、あたしを見た。我ら、には、あたしも含まれているように、聴こえた。


「正しき世界へ、我らが、新しき人類へ」


あたしに頷いた姿は、堂に入った貴族の物腰。つまり、あたしたちの世界、大陸の流儀。ただし


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それは、姫に対す

る礼儀では」


なのだけれど。おじいさんは、少し考えて、悪戯っぽく笑った。


「王妃への礼、と間違えましたな」



??????????――――――――――!!!!!!!!!!




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/中央庭園/執務室改め「エルフっ子肖像権問題対策本部」】


俺は既に軍事参謀委員会に苦情を入れていた。


街頭風景に人物が映りこんだというのならともかく、バストショットの個人画像をアップするのは敵対行動である。

国連軍の作戦行動を阻害する危険性のある現地住民への侵害行為は直ちに中止されたし。


とまあ、理屈をこねくり回したのだが。


「軍事参謀委員会は『敵対行動であるかなしか判断できるのは当事者の実である。データ削除申請は本人、もしくは配偶者からのみ受付』と言っていてな」


典型的なお役所仕事。


エルフっ子は外出中。めったに一人で出て行かないんだから、大切な用かもしれない。割り込んでいいものか?帰宅するまで待つべきか?

さて?

と困っている俺をしり目に、マメシバ三尉と復元神父は、オーバーアクションで肩をすくめた。


「なら大尉殿がさっさと申請して終わりじゃないですか?」

「YAREYAREDAZE!」


・・・・・・・・・・・・・・嫌な予感しかしないぞ――――――――――――――――――――。


「内縁でも配偶者で通りますよ。国連軍は国際基準準拠ですから・・・・・・いたたたたた」

「真面目に考えろ!」


俺はマメシバ三尉をヘッドロックしながら神父をにらむ。


「OH!OK!OK!やっちゃ・・・・Don’t shoot!Don’t shoot!」


神父はネタをひっこめた。



「上官を頼られては?」


いつのまにか坊さんである。仕事は・・・・・まあ、大丈夫だから来たんだろうな。


「権力とは?」


意に添わぬ行動を相手に強制すること。相手が望んで従うなら権威と呼ぶ。

・・・・・・・・・・・・禅問答?坊さんは禅宗じゃないが、宗論みたいな流れ??


「権力を持ち、権力をふるうのが好きで、国際連合トップに直結している人」


あ――――――――――――――――――――その人、知ってる~~~~~~。

で、その、上官殿に何かをお願いすると・・・・・・・・・・・何されるか。

俺が。

――――――――――――――――――だいたいわかる。



「犠牲を払う価値があるか、それは閣下が決めることかと」


エルフっ子のため、ってより、俺自身の責任の取り方か。


三佐に連絡を。

という前に、戸口から。



「閣下。三佐より命令が・・・・口頭で伝達せよ、と」


曹長?

チッ。気づかれたか!

直通すると、俺が居留守を駆使して確認を遅らせることに。



「可及的速やかに帰還すべし」



罠か!ワナなのか!!

ついでに解雇してくれるとか言われたら、絶対に罠だが。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ニートにジョブチェンジ。

いける?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ