優しさに包んで仕舞う。
【登場人物/三人称】
地球側呼称《曹長》
現地側呼称《騎士長》
?歳/男性
:国際連合軍/陸上自衛隊曹長。主人公の「俺」が困ったら、困ってなくても、まず頼る相手。
主人公の「俺」は着任以後、本土の友人知人を経由して曹長の家族に贈答をかかしていない。奥さんだと遠慮されてしまうので、娘に受け取らせる戦術を多用中。そのかいあってか主人公の「俺」は娘さんとはプライベートなメールをしあう関係。娘さんに曹長、お父さんの良いところを吹き込ん間接的に曹長の機嫌をとろうとしていることは間違いない。
生残者にとって、一番の苦痛は家族です。
ああ「生残」というのは「殺されてしかるべき状況で生き残った」という意味です。
日常的にはあり得ません。
事件事故なら「生存」「生存者」つまり「死んでしかるべき状況を生き延びる」ですから。
両者の差は存在否定/存在肯定の違いと言えましょう。
「人間」とは文字通り「人の間」に「存在」しています。
「殺される」というのは否定ですね。
過程は問いません。
いやむしろ肉体的な苦痛を伴う死は例外でしょう。
死というものは唐突で一瞬です。
苦痛を味わえるなら生きている証拠です。
そも殺す相手に手間暇をかけることが例外ですから。
手間暇かける価値を認めているなら殺しませんよ。
死なせてしまうことは有り得ますが、否定ではない。
生き残りの実例を挙げましょう。
対歩兵戦で殺されかけた兵士。
抗争で殺されかけた犯罪者。
犯人に殺されかけた警官。
こんなところで足りますか?
気が付いたら吹き飛ばされていた、とか。
警官との銃撃戦を生き延びていた、とか。
犯罪者を取り抑える時に刺された、とか。
それは「生き延びた」ですから違います。
では「生き残った」人々の実例に移りましょう。
家庭生活が崩壊します。
ああ復員軍人一般のことではありませんからね。
復員軍人全体であれば、家庭に問題どころかPTSDを患うことすら稀です。
そもそも前線に立つ軍人は少数派ですから。
ましてや死を意識することはもっと少ない。
殺した事実を認識することすら稀でしょう。
戦争というのは実務者にとってすら他人事なんですよ。
数時間の会戦で数十万人が殺されて当たり前だった第一次世界大戦。
従軍者から「ワクワクして戦争にいって何年間も敵の死体しか観なかった」とガッカリした手記が残っているくらいです。
太平洋戦争だって、辛苦を体験したは敗戦国側ですら末期の一部地域に居合わせた、極々一部の人々だけでしょう?
まあ戦争が他人事なのは古今東西普遍の原則。
だから戦争が始まると当事国から難民がでるんです。
他人の都合に巻き込まれたくはないですから。
国を護るために艱難辛苦に耐えようなんて極々例外。
では、余談はこのくらいで。
生き残った人は家族を憎みます。
具体的には妻、夫、子供ですね。
合衆国の復員兵士社会復帰プログラムを参照ください。
当然、憎み返されます。
必然的に互いに傷付けあって破綻。
友人知人とは共通の体験が無くても上手くやれる、むしろ必要とされます。
何故か?
そりゃそうでしょう。
家族から得られる物が無いからです。
正確には得られる以上に失う、+-ゼロ。
家族といっても先進国型家族ですが。
夫婦がいて子供がいる。
ここ1世紀ほどの間にゆっくりと、地球人類の二、三割に普及を終えたかな?っていう概念。
下げ留まらない成婚率。
天井知らずの離婚率。
先進国型家族特有の少子化
・・・・・・・・・・子供の忌避を考えると、人類史上の奇形だった訳ですけれど。
我々は不幸にしてソレを前提にせざるを得ません。
偶然で成立し、惰性で続く。
一世代を経れば真理になる。
そこに合理性はありません。
続けます。
つまり家族の構造的リスク。
余力が有るときには気がつかない。
あるいは無視できる。
何ごともなければコストで済みます。
しかし極限状態に至り、自分独りを支えるだけで精一杯になれば?
・・・・・・・・・負担に耐えられるわけがありません。
互いに支え合おう?
支える力が無い刻は押し潰されるだけです。
そもそも平時からして支え合っていたのか。
正常時においてさえ、互いが互いの負担なのでは?
成員、夫、妻、子供が、常に利益を得ていたのか?
得られるモノが失うモノより総じて少ないのでは?
事実を視ればでている結論。
――――――――――それが表面化します。
合衆国ではそれで失敗しました。
家族は強く、有益で、尊いもの。
団結して危機を乗り越えるべき。
・・・・・・・・・・上手くいけば殺し合わずに済む時も無くはない。
いくら信じても現実は変わりません。
地球は丸い。
リンゴは落ちる。
無から有は生じない。
我々は人命をファンタジーに委ねません。
今後三桁ほどの生残者が計画されております。
帰りを待ってしまっている家族から救うこと。
隔離して制限して、徐々に慣れさせ切り離す。
しかして家族が崩壊おめでとう!
―――――――と、スムーズに進めることが戦後処理の重要な課題です。
一例でも後処理に失敗すれば、一件でも最終的解決が発生すれば、大多数の「異世界人の死体はみたなぁ」の兵士たちのストレスになりますからね!
なーに、いずれ行われる過程の先行処理に過ぎません。
与党連合の西欧諸国に倣った公約にあるとおり
・・・・・・・・・・野党第一党の大家族主義は両極。
社会的矛盾の糊塗ではなく解消
――――――――――それこそが政治の役割です。
我々学者には絶対にできないことです。
・・・・・・・・・・・・御用学者なら政府審議会リストをあたってください。
別にファンタジーを否定しようっていうんじゃありません。
天動説を守りたい人たちを傷付けない。
地動説を滅ぼしたりしない様に誘導する。
少なからぬ教皇や枢機卿、異端審問官がやり遂げたことです。
「神が望まれている!」
千年もたてば最初からそう教えられている連中が
「信じるというのは怖いなぁ」
って笑ってくれますよ。
疑うこともなく、ね。
《日本国参議院国家基本政策委員会/戦勝処理計画分科会》
【国際連合統治軍第13集積地/駐屯地東外縁/海岸砂浜射撃場/水際から10m海上/青龍の貴族】
俺は理性に富んでいる。
ヤってはいけないとは思わない。
ヤれるかどうかはさて置くとして。
ヤらないという選択をするだけ。
普通の元カレや今ダンナならボコれば済む。
曹長にそれはないよね。
返り討ちに合うだけ。
不意討ちは気が進まん。
もちろん口説き落とした女が既婚か未婚か彼氏彼女持ちか気にしません。
ここ大切なことなのでアンダーライン。
世間には誤解して指輪外す女がいる。
俺に人妻属性は無いけれど。
人妻だから口説く訳じゃないし。
貴女が魅力的だから。
女だから。
だから、口説くだけ。
それに派生する現象はプラスにすれば好い。
これこそが、漢の魅せどころ。
未婚なら元カレが来る時がある。
既婚なら今ダンナが以下略。
みんな女のとこに行くのがさぁ。
ヒーローショーにピッタリ。
二人の門出にプレゼント。
なかなか出来ない希少な前技。
何回来てくれても良いが。
大抵は一回だけです。
そりゃ相手にも都合があるから仕方がないね。
なおカウンターを当てる時も一撃で決めよう。
もったいないが。
頸椎脊椎腰痛を狙えば簡単です。
連撃は殺意、いや害意を疑われるるから注意。
間が悪いってね。
警察を、あしらうのは簡単です。
協力的な市民か後ろめたい犯罪者しか知らん。
協力的な反乱者。
占領下活動の前提なら簡単です。
俺が受けたのは占領する側の訓練だけれども。
PKO派遣訓練。
侵略者としての基本教養ですよ。
それを逆算すれば尋問を受け流さなくていい。
簡単に誘導可能。
犯罪者も協力的な警察の理想郷。
国際連合平和維持活動にはつかえないわなぁ。
自白が証拠って。
世界に誇れるガラパゴス警察。
有罪率が高いのは冤罪救済率がゼロってこと。
なぜ他国と違う?
日本人が地球人なら有り得ない。
痴情の縺れで元カノや妻を相手に暴力未遂。
普通捕まります。
捕まるようにするのも簡単です。
女の前で格好付けたい陸自の自衛官が相手。
全員が病院送り。
そりゃ素人相手なら簡単です。
妻娘の前で伸されるとか、もう、ヤバいね。
涙なくして面会不可能。
付き添う身にもなって欲しいです。
他人を占有物扱いするからそんな目に遭う。
反省して新しい出逢いに励んで欲しい。
妻を口説き直すなら男を磨いてから。
娘に軽蔑されるのはどうしょうもない。
だから曹長の奥様に出会わなければ大丈夫!
日本だと夫婦同伴じゃないからね。
上司部下の妻に会う機会なんかない。
しかも写真で曹長の奥様はチェック済み。
万が一にも口説き終えてから気がついたりはない。
それは考え過ぎじゃない?
ナンパの成功率は1%に過ぎない?
うっかり口説いてもフラれるから?
あれは延べ1%だからね?
甘えと過信は事故の基。
百人口説いて一人落とせる、じゃない。
百回口説いて一回は落とせる、だから。
ああ、確率論だからね。
絶対口説きたい女は百回口説けば成功する。
そんなワケじゃないぞ。
確率論で言えば、千回口説いて十回落としても1%、だから。
ともあれ一回口説くより二回口説く方がチャンスは倍!
なんて素晴らしいことでしょうか♪︎
つまりは二回出会えば一回目の倍は危険があるってな?
なんと恐ろしいことなのでしょう!
普段なら糧に不自由の無い幸せな生涯を意味する普遍原理だというのに。
もちろん科学は両刃の剣。
それとわかっていれば味方を斬らずに済む。
人殺しの為に創造出された核兵器だって原子力事故で人死にだしてるやんけ
・・・・・・・・・・そんなことよりうちの娘たち!
【聖都南方/青龍の城郭/縄張り東海側/波打ち際から10m/青龍の女騎士団半円陣中央/青龍の貴族背中/エルフっ娘】
あたしが出るしかないか。
青龍の女騎士団。
Colorful。
もちろん、あたし。
妹分たちは勘違いしてるけど。
皆が抱える鬱憤不満。
それを表すのは様にならない。
あたしだけならあり。
彼は怒ってない
――――――――――だから二人は殺されてない。
というより、生きてるじゃない。
癇に障れば、彼が殺してるわよ。
あの娘が庇った時だって、そう。
殺す前、刹那に割って入れた刻。
彼が殺そうとする時は怒りを表す前。
怒りを感じ始めた刻には殺し終わるくらい。
彼の動作はゆっくりだから、流れが良く解るわ。
だから誰も殺さない。
今はね。
彼はね。
だから二人の命が危ない。
女が女を殺さない訳、ないわよねぇ?
その死を彼が惜しむのだからなおのこと。
色恋と恩義は無関係。




