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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第三章「掃討戦/文化大虐殺」

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幕間:善悪の彼岸

【登場人物/三人称】


地球側呼称《三佐》

現地側呼称《青龍の公女》

?歳/女性

:陸上自衛隊三佐、国際連合軍事参謀委員会参謀、WHO防疫部隊班長、他いろいろな肩書を持つ。日本の政権与党を支配する幹事長の娘で、父親と連携して戦争指導に暗躍している。



奴隷でいることは不幸ではない。とあるエルフがそれを証明している。

娼婦でいることは不幸ではない。アムネスティはソレを証明して見せる。

敗者でいることは不幸ではない。目の前にいくらでも証拠が歩いている。




不幸な人はいる。

とてもとても不幸な人がいる。


奴隷だからではなく。

娼婦だからでもなく。

敗けたからでもない。


彼女は嘆く力すら失ってしまった。


奪われ。

殴られ。

蔑まれ。


自分がなんで、とも思わなくなった。

自分はどこへ、とも思わなくなった。

自分は・・・・・・・・・・・・と感じなくなった。


既に壊れていたのだろう。

壊れた瞳はすでに見る、という機能を失っていた。

認識ができないという意味で、瞳はガラス玉と変わらない。


彼女が感覚を取り戻したのは、相当に先の話ではある。

彼女はその時、感覚を取り戻したときに、目の前にないものを認識した。

狂気のなせる業だろう。



彼女が半年後、晴れた日の午後見た白昼夢。



半年前の夕刻。

煌々とした投光器の暴力的な光。

道にしみこむべっとりとした血肉。

息をのみ、冷や汗が滴り、殺した吐息がざわめく宵の街。



べれー帽の青、騎士服の緑、その女性の黒い髪と瞳。


彼女を見つめる笑顔。

彼女を抱きしめる温かさ。

彼女を優しく包み込む柔らかな布と力強い手。


視界が無くなるまで、見つめていてくれた、黒い瞳。



後で、彼女は姉と再会した。

母は殺された・・・・・・自殺かもしれないが。そのあといろいろなことが起き、それが終わった日。

姉はその日のことを覚えていた。




【四季を通じてきくはなし/冬】


標的の時代的特徴を三つ把握しましょう。



一つ。街は基本的に城塞都市です。城塞都市を中心に、簡単な城壁市が地域的外郭となり、それらが基点となって村々を統治しています。村自体も居住地を柵で囲み、ある程度の防衛力を持ちます。ただし、形式化して機能しなくなっている場合があります。


二つ。戦時に置いて都市住民すべて、周辺村落農民の大半は近隣都市に籠もります。


三つ。この世界で意味のある人間関係は居住地に止まります。村人なら一村。市民なら一街区一城市。通信、交通、生産など外的制限によるものであり、例外を考慮する必要はありません。卑俗な表現ですと、あらゆる意味で、後腐れがありません。



ここでは城塞都市と城壁市を考えます。両方とも手順はほぼ同じです。




ファーストステップ。


集積と隔離。


音で威嚇します。

航空機/車両/空砲/音響兵器、大音響音楽など。

具体的な死傷者や目撃者も効果的ですね。

なんなら数村を破棄し、宣材として避難民を周辺に散らしてもかまいません。


この手順にかける時間は数日で十分です。

移動に、それ以上時間がかかる範囲は意味がありません。物理的に都市への避難が不可能だからです。


住民集積完了後、城壁外にて、こちらの存在をアピール。

封鎖にかかります。


これが隔離ですね。


散布地雷。自動銃座(冷戦期に東西ドイツ国境線で利用された機材の現代版)を城壁開口部に設置します。

なお、開口部は画像分析で自動判定されます。

集積中に哨戒気球で撮影した画像動画です。


避難民が集まる都市では、統治権力による出入り規制が生じます。当然、生活を圧迫される住民による規制回避が生じます。

すると、非公式な開口部が多用され、哨戒映像に映るのです。


封鎖を知らしめる為に、外部に避難民を残置し、明るい昼間に開口部封鎖線に追い込みましょう。

城市内の市民を外周観察に誘導するのを忘れずに。

市民は城壁を信頼していますから、音楽だけで十分です。


避難民が門前で爆砕し、地雷や自動機銃の威力を標的に理解させる。


これで封鎖完了です。


ここまでが三日間。



セカンドステップ。


殲滅。


これには火砲を使います。155mm以上が必要です。


石、土レンガなどの構造物は弾片効果を減じてしまいますから、斉射の前に標的を屋外に誘き出しましょう。

現地の住民には緊急召集を意味する鐘楼の音。それを、偵察ユニットで街中に響かせるのが容易であり効果的です。


焼夷弾による火災も有効ですが、戦果確認の障害にならぬように配慮しましょう。

斉射直前の消火弾を忘れずに。


時間帯は昼間。天候に注意を。標的への効率的砲撃に哨戒気球の画像解析を使います。


十分に標的が屋外に集まったところで砲撃開始。初弾斉射。弾種は榴弾を使います。

精密射撃ではありませんから、一斉でかまいません。


これは常に、ですが、城壁や門前への誤射に注意してください。標的をまとめる柵を壊してはいけません。

万一、誤射してしまった場合は、催涙ガスか嘔吐ガス弾を使い応急封鎖します。

しかる後に散布地雷で完全封鎖。


精密作業ですから、ミサイルかヘリ爆撃を事前準備のこと。


砲撃は一定間隔、数分から十分程度の間をあけます。標的が動き回り防護物から露出する間をとるわけです。

彼らにとって最初で最後の経験ですから、対処法が解りません。危険性を理解せず、闇雲に避難を始めます。その様子を管理しつつ適切な発射タイミングを狙いましょう。

慣れてくれば標的を含む群体を適切な弾着ポイントに誘導できます。これは野戦砲撃よりも高度な技術が必用であり、実戦での応用が可能です。


積極的に試してみてください。


一次砲撃後、一時間間をあけます。遮蔽物に遮られていた標的の再露出を待ちます。自我喪失状態の標的も、これだけ間をあければ防護物の遮蔽範囲から出てきます。


そして、二次砲撃。


この段階においては防護物について自得している標的が多数出てきます。かれらは再砲撃時にその遮蔽範囲に逃げ込もうとするでしょう。

それをさらに利用して効率の良い砲撃を行います。


なにより、中世都市特有の地下構造に留意します。

典型例で言えば、城/城館/神殿/邸宅が地下空間の有力候補です。よって、使用砲弾の3~4割は徹甲弾とします。

榴弾、徹甲弾、榴弾の交互斉射が良いでしょう。


榴弾で地下や遮蔽物に逃げ込ませ、徹甲弾で破壊し、露出した標的を榴弾で掃討します。標的を暴露すべく間隔を空けるようにしてください。


ここまでが三時間。



ファイナルステップ。


掃討。


標的が籠もる都市は素材構造的に、砲撃耐性が高い事は先述の通りです。よって、3時間程度では都市の形が残ってしまいます。

もちろん、モニュメントですから、形骸が残るのはかまいません。しかしながら、標的の残存は許容しません。


よって、最後はナバームを使います。


精密に隙間なく行うためにヘリ、爆撃機による投下攻撃。無論、遮蔽物は不燃性です。しかし、砲撃の衝撃により隙間が増加拡張しているために、熱死と酸欠窒息死が期待出来ます。


実例から言えば、ファイナルステップ後の生存標的が確認された事はありません。


これで三十分。



以後、三日間は哨戒気球でアーカイブデータを集めます。

封鎖機器は放置。


籠城不参加の標的、たまたま取り残された近親者他が廃墟に訪れるのはこの頃です。彼ら外部残存標的も、城壁内都市の確認には開口部を使わざるを得ません。


地雷はもちろん有効です。しかし地雷に守られた自動機銃の射角には制限があります。とはいえ、開口部を管制していれば標的を背後から、ないし地雷をくぐり抜けた標的が出てきた所を掃射できます。


弾薬の補充は十分にしておきましょう。


なお、作戦完了後、半月ほど後を目処に周辺住民の立ち入りを許可。


封鎖機器撤去はこの時に行います。地雷は爆破処理、自動機銃と防護地雷は回収します。


あとは周辺住民の自発性に任せるだけ。再建が必要なら彼らがしますし、必要無ければ放置するでしょう。残骸処分も含めて一任でかまいません。



最後に「よくある質問」を補足します。



Q:なぜ、主に砲撃なのか?最初からナバームではダメなのか?


A:コストパフォーマンスの問題です


まず効率の問題。

密閉性が高い構造物を残したまま、熱死酸欠を達成する。可能ですが、大量のナバームが必要です。爆撃散布投下、それ自体の燃料を加味すれば、コストが合いません。


煤煙は避けられず、広範囲の熱と合わせ戦果確認が困難です。ナバームを中心に据えた場合、三倍のコストと待機を含め倍の作戦時間が想定されます。


次に兵站の問題。

兵站物資は全て、米ソ正規軍の全面通常戦争を想定した在庫品です。砲弾砲身の在庫は有り余ってますが、燃料兵器は少なめ。

あらゆる手段を用意し続ける為に、余裕が多い手段から消費します。

さらに戦略方針から、燃料兵器の生産はナバーム以外が重視されています。つまり補充が限定されるのです。


Q:化学兵器を使わない理由。

「効率と兵站で言うならば、化学戦にすべきではないか」という指摘もあります。


A:戦略的な理由です。


確かに、化学戦を行うのは正しいように見えます。戦略目的、つまり非戦闘員の殺傷にこれほど向いている兵器もないでしょう。

糜爛性化学兵器ホスゲンオキシムは人類史上初の実戦使用がなされ、様々なデータが蓄積中。ホスゲンオキシムに限らず、BC兵器は有り余っています。

例えばセカンドステップ以後を化学兵器で行えば、三時間三十分が平均して三十分で済みました。


しかし、却下です。


ひとつ。

実戦部隊の不足。無差別使用ならともかく、完全なコントロールには練度の高い部隊が必要です。が、運用部隊の数がたりません。

プランAならばともかく、プランBにおいては力の完全な制御を、事実をもって知らしめる必要があります。


ふたつ。

宣伝効果と環境保全の両立が不可能であること。


神経ガスならば除染もたやすく、効果も十分。しかし、破壊と殺害のイメージがおとなしすぎます。恐怖とは『分かり易く』なければいけません。想像を超えてはいけません。理解出来る/しやすい事象で、規模の面で圧倒的な恐怖こそが大切です。


糜爛性ガスなら宣伝効果は最大ですが、環境汚染がひどく利用場所が限定されます。

都市の多くは水脈に面して、あるいは内包している。説明はそれだけで十分でしょう。恐怖は統制されなければなりません。

なにより、管理することが重要なのです。



そして最後に、作戦目的は一つではない、ということ。


一連の作業は標的の根絶だけではなく、戦術訓練を兼ねています。

プランBにおいて、戦闘休止期間は夏まで。実際、偵察報告はスケジュールの順調な消化、それを裏付けています。


再開後の戦闘、その中心が砲撃である事は理解出来るでしょう。


現状、特科砲兵の技術練度は十分。

しかし長期に渡る非戦闘期間。「練度維持に適度な刺激が必要である」と軍事参謀委員会は判断しております。

よって、機会を逃さずに、制圧砲撃、精密砲撃、歩兵普通科の支援行動、地雷散布に機銃配置などなど、実戦演習を繰り返して行うのです。


これは戦略上の必要である、と言えるでしょう。

よろしいですか?

はい。



では、実践でしてみましょう。


今回の標的は概算1500名、最大で5万名前後です。




【夏にきく冬の話】



娼館の一室に響く破壊音。群がっていた男たちが彼女の姉から引きはがされ、火花、雷の魔法を当てられながら壁際に並ばされた。その場で一人ひとり確認の上で射殺。


射殺という言葉を知ったのはそれから更に後だけど。


重量感がない、不思議な甲冑をまとった騎士たち。

姉は女魔法使いに渡された。すーっとする匂いの薬液で姉の体をぬぐい、傷に薬を塗っていたから薬法使いだったのかもしれない。


姉は茫然としていると刺激臭のある液体をかけられて、かろうじて反応できるようになった。

娼館の中を連れまわされた。姉は歩けないように腱を切られていたので、騎士の一人に背負われれながら。

言われるままに、妹たちの顔を確認していった。顔が腫れすぎて、誰が誰かわからないときは『それらしいものを全員選べ』と命じられた。


緑の服に青い兜の騎士たちは立ちふさがった、あるいは出くわした相手を殴り倒し引きずりあげ、姉に見せる。顔を確認し、姉が首を振るとそのまま射殺した。



そして、麻薬と娼婦の吹き溜まり、薄汚れた一街区。



通りの中央に姉と彼女と妹たちが集められた。周りには娼館の女将や用心棒が血まみれで這いつくばり、市長や参事たちがおびえながら集まっていた。



たぶん、おそらく、同じ間を取って、娼館と市の有力者が射殺されていき、五人目で止まった。



最後の妹が見つかったのだ。死体で。

青い帽子と緑の騎士服をまとった女性がなにかを命じた。


市の衛兵たちは無言でしたがい、市長や参事に目もくれず、娼館に居た者、その他に指定された連中を城壁外に引きずっていった。

千人を超える人数だったらしい。


連中は城壁際の空き地で手足を縛られ、調べられた。彼らはずっと立ち通しだった。衛兵が時々殴りつけ、眠らせず、休ませず、自ら立つ力が無くなれば木の柵からつるして小突き回された。

絶対に休息させないために。


時々、何人かが青い兜の騎士たちに連れ去られ、何人かが帰ってこない。


彼女の姉は見ていないが、後から聞いた話だと、立ちっぱなしの者の親族が嘆願に訪れ、そのまま列に加えられ、吊るされたという。



三日目には布告がなされたそうだ。


渇き死にした、しかけている人間は1034名。間違えて回収した娼婦を加えても、足りない、と。



誰が隠している?



市には猶予が与えられた。さらに三日後、2371名、市長や参事を含む、が突き出された。最初に集められている者たちはほとんど死んでいたが。

彼らの確認が終わると、全市民が命じられた。



殺せ。



市民は皆、城壁上に集まり、石を落とした。市内から集められた、生きている物を含む3405体に、大きなレンガや石を力いっぱい投げ落とす。

それほど時間はかからなかった。最後に肉塊に近い彼らに、煮えた脂が浴びせられて火をつけられた。


それらはすべて市民の手で行われた。






彼女は、すでに以前のことを断片的にしか覚えていない。健康を取り戻しても、記憶はおぼろげだ。だから、姉たち、同じ境遇の、みな女、に聞いた。


なぜ市民は殺されたのか。


「お父様も、兵も失った私たちは・・・・・・領民に・・・・・・彼らは私たちを捕えて売ったり・・・・した連中」

「勝者は敗者からすべてを奪う。連中は戦ってすらいないから権利がない・・・・・そう考えているのよ」

「私たちは、青龍から見て戦利品なの。それを勝手に売り買いして・・・・利用、した」

「青龍の資産を奪ったから、街の人間は敵とみなされた」



だから、その家族に至るまで、皆殺し。市民がかくまえば、それも敵。

青龍の敵。

敵は都市ごと破壊する。

彼女たち、赤龍であった彼女たちを回収した。なら、あとは、市ごと消しても不都合がない・・・・・・青龍には。


いや、都市を破壊している自覚はないかもしれない。ただ敵を殺すときに『そこにあった』だけなのかもしれない。



家族も、国も、何もかもを奪った侵略者。

青龍。

生き残った家族は皆、その侵略者の資産として保管されている。食事も衣服も住居も与えられ、外出もできる。傷を治療され、日がな一日、好きに過ごしている。

彼ら青龍は、彼女たちから昔の話を聴きたがる。

青龍が来る前、侵略される前の日々を。


何を食べていたのか?何を着ていたのか?何を楽しんでいたのか?本を読めるか?歌は?音楽は?


彼女は解った。

青龍は、欲しがっていない。

彼女たちは必要はない。

彼女たちの想い出が彼らの娯楽。


それだけ。


青龍。

あんなことが起きたのに隠しもしない。

なぜか彼女たちを気遣う。

いつも通り笑っている。



彼女、元帝国太守令嬢。

今は、青龍の戦利品。




【春】


「三佐殿」

「あそこで生き残った少年が、抜けない剣を抜いたりするのかしら」

「それじゃ勇者ですよ・・・パーティー率いて挑みかかってきそう」

「なら履帯の下にいないか確認しないとね」

「せめて気がついてあげましょうよ!」

「魔王は誰かしら」

「魔王軍があたしらなら、三佐のお父上が魔王。アメリカ大統領が悪の女将軍で安保理のメンツが四天王?・・・・・笑ってる場合ですか?」

「真剣な問題でもある?」

「後世の評価とかですね、良心の呵責とかですね、あ・・・えと・・・いろいろ?」

「後世ね」

「呵責はスルーですか」



合衆国で考えよう。


ソンミ村の虐殺を責めない人間はいないだろう。

東京の虐殺を責める人間はいないだろう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いつでも例外はあるけれど。



一つは予防ゲリラ戦として。

一つは戦略爆撃として。



意図的に計画的に実行された非戦闘員の虐殺。

なぜ、糾弾される?

なぜ、糾弾されない?



なぜ、否定されないのか。


それが有益だったからだ。

多くの人間にとって。

その戦争が必要だったからだ。

多くの人間にとって。



なぜ、否定されるのか。


それが有害だったからだ。

多くの人間にとって。

その戦争が愚行だったからだ。

多くの人間にとって。



事件そのものに意味はない。作戦そのものにも意味はない。

人々にとっての意味は、ない。

意味を与える理由が生じたのは、個々の戦争そのもの。



愚かな戦争を止める、妨害するためなら、どんなことにも意味を与えて利用する。

有益な戦争を推進し、利益を最大化するためなら、どのような意味も認識しない。



被害者がどうあったのか?

遺族がどうあるのか?

加害者がなぜ生じたのか?


考慮する価値はない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――どちらでもない大衆にとって。


反戦とは『戦争に反対する』という意味を持たない。

『不利益な戦争に反対する』という意味だ。



「大義を示して戦争を推進しようなんてするバカ・・・・ピュアなア・・・・が多いから」

「アホって言いかけましたよね?」



口実だけで理想を掲げ、本心で『損は嫌だ』という理由で動く大衆。

理想を否定して論破しようとするコミュニケーション障害の重篤患者。

交わるわけがない。


結果、社会は分裂し戦争遂行に失敗する。


「まあもっとも、合衆国が戦争に勝ったことがあるかどうか疑問だけど」


三等陸佐、彼女は笑う。呆れたように、困ったように。


「それに踏みつぶされたのはうちですけど」

「愚行と気が付くためになら、三百万人が殺されても価値があるわ」


それに気が付けずに、延々と無駄死にと浪費を繰り返している同盟国をみれば。もっとも、彼らの愚かさはとても便利で使い勝手がいいのだけど。

今までとても役に立った。

お礼を言ってもいいと、三佐は思っている。



戦勝とは敵を滅ぼすことではない。

戦場とは戦争の一要素に過ぎない。


その戦争から不利益しか生まれずに、それでも犬死と浪費を積み重ねると、倒錯が起こる。

目的を見失い、戦いを神聖化し、勝った勝ったと唱え続ける。

己に言い聞かせ、他人に怒鳴りつけ、否定の気配で狂乱する。


英霊のため、を口実に帝国が自滅したように。

正義のため、を口実に合衆国が自滅したように。



「そのあたり、うちの議員さんたちは心得ている」

本能的に大衆に迎合するポピュリスト。


だから大丈夫。

安全保障理事会承認の規定作業に戻りましょう。


「次の街はあれ」






選べ。

皆で死ぬか、皆を殺すか。



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