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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第二章「東征/魔法戦争」

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貴種流離譚

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします


一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。

次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。

以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)


【登場人物/一人称】


『俺』

地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿》

現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様》

?歳/男性

:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。


『あたし』

地球側呼称《エルフっ子》

現地側呼称《ねえ様》

256歳/女性

:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳。長身(数値不明)。


『わたし』

地球側呼称《魔女っ子》

現地側呼称《あの娘》

10歳/女性

:異世界人。赤い目をした魔法使い。太守府現地代表。ロングストレートのブロンドに赤い瞳、白い肌。身長は130cm以下。主に魔法使いローブを着る。


『僕』

地球側呼称/現地側呼称《若い参事、船主代表》

?歳/男性

:太守府参事会有力参事。貿易商人、船主の代表。年若く野心的。妹がいて妻の代わりに補佐役となっている。



【登場人物/三人称】


地球側呼称《坊さん/係長》

現地側呼称《僧侶》

?歳/男性

:国際連合出向中地方公務員。得度した僧侶。浄土宗らしい。軍政司令部文官。


地球側呼称《官僚/財務官僚/役人》

現地側呼称《役人》

?歳/男性

:財務省官僚。高級官僚の一族に属するらしいが、異世界転移後の官僚機構一斉粛清で大半を失った。殺された者もいると信じている。


【用語】


『参事会』:太守府を実質的に支配する大商人たちの集まり。五大家と呼ばれる5人が中心メンバー。


『港街』:太守府の最大貿易港。領内で首府に匹敵する価値を持つ。盗賊ギルド、貿易商(船主)、参事会がしのぎを削る。


『盗賊ギルド』:港町の利権を牛耳る最大勢力。ヤクザ。


『シスターズ』:エルフっ子、お嬢、魔女っ子の血縁がない三姉妹をひとまとめにした呼称。



尊き人は『一目』でわかる。




貴種幻想、というモノがある。人という種族の中に、尊い、貴い、重んずべき、特殊な人がいる

――――――――――という期待。


ある運命、ある才能、ある使命、ある信仰、ある――――――――――――――――――――血統が、一番わかりやすく、一番人気である。



曰わく、王族は人々の中に混ざっていてもわかる。


――――――――――――――――――――ある特有の家系的特徴が、肖像や硬貨で流布されているから、容姿で気が付くんじゃないか?

――――――――――――――――――――そもそも、本当の重要人物がたった独りでいるわけが無く、隠してるつもりでも周囲の特別扱いが浮き出させているだけでは?



曰わく、王族は一声でわかる。


――――――――――一音節に含まれる膨大な情報。発音、抑揚、癖、訛り、慣れ。

これだけで年齢、性別、出身、階級生い立ちにアタリがつく。

――――――――――――――――――――ならば?



曰わく、聖人にはオーラ/雰囲気/気配がある。

――――――――――古来から連綿と続く御落胤詐欺。

まあ、実際の貴族、王族そのものが絡むケースもあるのだが。



つまり『尊き人』とは状況に合わせた見た目で決まる。それらしい容姿。それらしい物腰。それらしい言葉遣い。そして演出とサポート。

――――――――――――――――――――――――――――――なるほど納得。



尊き人は『一目でわかる』のだ。




「貴種を否定したいのか肯定したいのか、話の主旨がわかりませんが」

「OH――――――――――!!MissカタリベGirl!」

「Girlってなんですか!そんな歳じゃないですから!夏には投票できますから!!」

「OK!OK!!Gal!MEの話をマジにしましたかー?」

「ええ!!!!しますとも!!!!!!」





【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/王の間/壁際】


僕は、いや、皆が圧倒された。

真紅。

白金。

深緑。


――――――――――瞳、――――――――――髪、――――――――――背。


中央の瞳は紅く輝き、繊細な金髪が白衣に金糸を彩ったローブに融け込み、背後にたつ濃緑の征服者に包まれている。


青龍の貴族。

赤目の魔女。

進む二人、いや、ひとツガイ。圧倒されて皆が沈黙した。


二人を中央へ誘導する妹は、緊張で蒼白だ。

場慣れしているアイツでもここまで押されるとは・・・・・倒れないといいが。魔女の落差が激しすぎる。控室付近では小娘のように青龍の貴族に抱き上げられ、抱きしめ返して甘えていたのに。

今、はどうだ。

青龍の貴族はただでさえ違和感そのもの、二人がそろうと異世界の様だ。



式典の進行役たる僕としては困った事ではある。皆が凍り付き、目くばせで動かない。まあ、それでも2人の歩みを塞ぐバカはいないが。


だが、感心もしていた。


魔女――――――――――世界の外から向けられた眼差し。

なにもみていない、紅い瞳。それを艶のある白い肌と服、金髪と金糸が浮き立たせる。

色の対比が強い。

背後から、すべてを包み込む暗い深い緑も含めて、強烈だ。


会場、そして庭園を満たす紳士淑女。彼らは贅を尽くした色とりどり、と見せておきながら、互いの序列をわきまえた調和を演ずる。

良くも悪くも、当たり障りがない。それが園遊会だ。


だからこそ、異端が目立つ。

青龍の貴族に背を抱かれた魔女は、世界を切り抜いたように『そこにある』のだ。


背後の緑、青龍の貴族がまとう騎士装束は緑色。それに何もかも委ねて身を沈めている魔女。

精緻な人形のような、異世界。



そのズレた感覚が皆を惹きつけ、遠ざける。



僕は伝説が頭をよぎった。

魔法で生まれた生き人形。創り出した魔法使いが、指先すら触れられず、正視も出来ず、自らと二人、城館を炎で焼き尽くした・・・・。

その焼け跡からは、魔法使いの遺骸しか見つからなかったという・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・事実を含む伝説。



魔女は元々、特異な容姿だったが・・・・・・・・・ここまで化けるとは。



昨日までの魔女は・・・・・・ただの子供・・・・・・・・・に見えた。青龍の貴族に愛でられる立場で『ただの子ども』というのもおかしな話だが。



以前は『子供』ですらなかった。


青龍来訪前。

僕が見かけた魔女は人形だ。


高価な玩具。

良く出来た細工物。

好事家たち垂涎の逸品。


髪、肌、瞳、声・・・・・・どれも讃えるに苦労しない部分々。



それが集まると、値段が見え透いていて、僕は敬遠していた。だれが『静寂な諦め』を具現化したような代物を売る気になるものか。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?


――――――――――――――――――――――――――――――視線?視線!!こちらに向けた!!!!青龍の貴族!!!!!魔女の、人形、扱いが、魔女への視線がバレた???


青龍には、思うことが罪、いや、敵だ。僕は挽き裂かれる。

部屋全体が、青龍の貴族、その間合いだ。


目を伏せた。

どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/王の間/中央/魔女っ子の背後】


俺は視線をさまよわせる。

OK!状況を整理しよう。


この何かよくわからん式典だか宴会だかパーティーには大きな意味がある。よくわからんが、投げてはいけないのは解る。

そしてこの謎の祝祭だかレセプションだか立食パーティーみたな代物には段取りがある。段取りを外さないほうがいい、らしい。


最期に。

――――――――――――――――――――――――――――――俺はその段取りを知らない。



現地の習俗は遺憾ながら国連軍の誰も知らない。だからやりたがっていた若い参事に投げた。


手順としては現地代表である魔女っ子を外すわけにはいかない。現地住民に何を渡すにしても、書類上は現地代表を通さないといけないからだ。

現地との接触を最小化したい国連軍事参謀委員会の命令。まあ、防疫だの文化摩擦の低減だのが目的だろう。


そして魔女っ子に現地代表を押し付けたのが俺。

すいません。

そして式典の主役にしたのも俺。

反省してます。

緊張感に耐えかねた魔女っ子をフリーズさせたのも俺。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。


よし!転進!!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・落ち着こう。

非常に立派な身なりのおじさんおばさんお嬢さんにお兄ちゃんに子供たちまでが凝視している中で、撤退など論外である。敵前逃亡は銃殺だ。

なんか静かなのが怖い。人が集まりパーティーチックな環境で、なぜ静寂??


よし!援軍要請!!

言っておくがF-16ではない。式典をまかされてくれた親切な人、若い参事!!

いた!!


アイコ―――――――――ンタクト!!


俺の目線、を、避ける視線。

きみぃぃィィィィィィ!!!!!!!!!!フォー○が熟睡?いや、ジェ○イじゃないし超常現象信じてないけどさ!式典の段取りを考えてシナリオを書き今唯一頼りにできるハズな若い参事が!!!!!!!!!!


ア――――――――――――イコンタクト!


式典の段取りを知ってる魔女っ子がフリーズしたんだって!!緊張しすぎ!!!俺は最初から段取り知らないし!!!!さっきまでこっち見てたよね?


『エリ、エリ、レマ、サバクタニ 』

(我が神、我が神、なぜ我を見捨てたもうた!)


神父!わざわざPtoPでネタふってんじゃね――――――――――部隊通信網無駄遣い!!!!!!!!!!




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/王の間/壁際】


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・僕は気が付いた。

気が付ける。

生きてる。

つまり、殺されない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今は。



青龍の貴族が僕を殺すなら、僕が気が付く訳がない。殺意と殺害に間が無いのが、青龍、青龍の貴族・・・・・・・・・・・・殺される側が、気が付く訳がない。


僕も、まだまだ切り替えが上手くいかない。青龍の貴族、その前で破滅するやつを嗤えないな。


――――――――――だが、危険だ――――――――――――――――――――僕も。

魔女を侮蔑すればもちろん、感嘆しても殺されるかもしれない。青龍の貴族が、自分の魔女に色目を使った(と判断した)相手をどう扱うか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・八つ裂きじゃ済むまい。


僕に、そういう趣味はないから、感嘆の意味は違うのだが・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マズい!!!青龍の貴族の趣味。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――その否定はもっとマズい!!!!


僕は慎重に目を伏せたまま、立ち位置を変える。皆を見回せるが、青龍の貴族、その視界に入らない位置に。



ご領主様の女に手を出そうとして処刑、でも間抜けなのだ。

ご領主様の幼女に手を出そうとして処刑・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんな誤解!!断じて認められん!!!!!!!!!!




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/王の間/中央/魔女っ子の背後】


名前を忘れた、いや、顔は覚えて、るよ?うん、そのキミだ、若い参事、フォローしてくれないかな・・・・・・・・・・・・・・・・視線は斜め下45°


俯角安定ってどうなのか?


あ、隠れた??????????


落ち着け。落ち着け、俺。国連軍大尉は慌てない。

戦場じゃよくある事だ。よく知らないけど。


敵中孤立、援軍未達、暗中模索―――――――――――そうか。

戦力が来ないなら、創ればいいじゃないか。




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/王の間/中央/青龍の貴族の側面】


あたしは、あの娘がガチガチに固まって・・・・・意識がない?・・・・・いる様子をハラハラしながら見ていた。

心配か?と言われればそうではないのだけれど、青龍の貴族が心配だった。何をしでかすかわからない。

彼は常に突拍子もないことを始めるから・・・・あたしたちも、それが決して嫌ではないけれど、巻き込まれるし。


そしてその時は、唐突に訪れた。


式典会場の中央。

来客にちょうど囲まれる場所につく前。

そこまで青龍の貴族を誘導してきた女・・・・・若い参事の連れが、二人の立ち位置を確認しようとしたのだろうけど、あの娘と青龍の貴族に振り返る一瞬前。


青龍の貴族が、女の肩に手を触れた。硬直し、とっさに姿勢を崩す女に、周囲が釣られた。




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/王の間/壁際】


僕はとっさに目を覆いそうになった。いや、目を離していたがゆえに、妹を助けられなかったのだ。視線を戻したときにはすべてが始まっていた。


跪いた妹。


そして・・・・・・・・・・会場中の紳士淑女、船主、仲買商、穀物商、両替商、職人親方に盗賊ギルド主要組織の代表・・・・・・・・・。



みんなが一斉に跪いた。



見下ろす青龍の貴族に、青龍の貴族に背を預ける魔女に、二人に。

妹に続き、皆が跪いた。




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/王の間/中央/魔女っ子の背後】


俺は愛される侵略者を目指して・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・は、まあ、いなかったが、失敗したな・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと。


いや、現地住民を徴発する権利はあるんだけどね。もちろん、報酬は支払う。額は、いわゆるコンパニオン扱いはマズいか?まずいな。後ほどエルフっ子と要相談。


俺は空を見上げて反省。

いや、迎賓館のレセプション会場は、庭に面しており明かり取りも多いのだよ。ってか、照明技術未発達なら当たり前か。

まあ、青空は答えてくれないけど。


やっと人波から抜け出して見えた若い参事。まあ、みんなが跪いたから、立ちっぱなしの彼や、エルフっ子やお嬢たちが目立つんだけどね。


手招きする前に、若い参事は歩み寄ってきてくれた。

妹さんの傍らに立ち、跪いた。魔女っ子の前、大丈夫か魔女っ子??

俺が肩ををつつくと、魔女っ子は手を差し出した・・・・?反射的に、かな??

早く終わらせないと。




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/王の間/中央/魔女っ子の正面】


僕は思わず押し戴いた。見なくともわかる。魔女が僕に渡したのは、青龍の出航許可証。予定では、一人ひとりの船主が、青龍の貴族に後見された魔女から受け取るはずだった・・・・・・・・のだが。

僕が、恐る恐る視線を上げると、青龍の貴族と目が合う。



・・・・・・・・・・・・やられた。



段取りを聞いているのか?聞いていないのか?わからない、どちらかというと関心を持っていないように見えた青龍の貴族だが、聞いて、把握して、無視するつもりだったんだ。



青龍の貴族に後見された魔女。

魔女に恵賜される僕。

僕から与えられる船主達。



僕は、太守府参事会の有力参事にして五大家の一つは、その地元で、青龍の支配体制に組み込まれた。


太守府で一、二を争う街。その支配階級全員。

皆が証人だ。

同時に追随者でもある。

僕と盗賊ギルド頭目が組み込まれている以上、港街は青龍の最大拠点になる。


前太守、帝国貴族、いや、さかのぼれば王国が滅ぼされた直後の帝国占領軍にすら、なかった。

命令も脅迫もなしに、皆が進んで首を垂れるなど。



・・・・・・・・どうころんでも、僕は頭を抑えられるらしい。




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/王の間/中央/魔女っ子の背後】


俺は若い参事が引き継いでくれたシナリオ感謝しつつ、魔女っ子と一緒に立会い中。まだ固まってるのか、俺の手に食い込むくらい握りしめている。

いや、早く、楽にしてあげたいが、若い参事に最後まで押し付けたので、お茶を飲みに行くのも、ねえ?


若い参事が船主一人一人の名前を呼ぶ。

立ち上がり、若い参事から受け取り、俺に跪く。IFF起動キーを両手で捧げて押し戴き、立ち上がって礼をして下がる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・これ、人数分繰り返すの???


当たり前ではあるが、こうした場所は初めてだ。予備知識も訓練もない。

軍政官訓練キャンプでは、地元との社交は最小限にするように言われていたからな・・・・・。


駐在武官候補だの、留学予定だの、海上自衛隊ならレセプションの教育くらい受けたのかな?俺は関係ないけど。


やっぱり、立ち会わないといけないよな。やることもないから、さりげなく周りを見回すしかない。

とはいえ、興味がないわけでもない。ベレー帽のカメラが人々の衣装や会場の様子を記録している。後で専門家のレポートが届くだろうし、国連のアーカイブに蓄積されていくのだろう。


こうして、周りの現地有力者諸兄を見回すと、今朝のやりとりを思い出された。





昨日のF-16、俺たちが発病した場合、港ごと、港街ごと、消毒するために用意されていた代物。

誰が用意したのかといえば、太守府駐留の女性/??歳/特別職国家公務員/三佐さんのリクエストなのだが。


利用申請をした編隊待機で終わり、余っているから、緊急長距離進攻精密攻撃訓練、長いよ!、を兼ねて転用許可が出た。


―――――――――――長距離ね。

次は、なにを狙ってるのか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・別なタイミングでもう一度申請したら、アタリがつくか。



まあ、俺たちには元から支援部隊が割り振られてはいるから、航空支援要請やら砲撃要請は織り込み済みなのだが。

でもF-16はないわー。普通はガンシップくらいだよ。チヌーク改造型の。



三佐が用意しているであろう戦力、その利用を思い立ったのは、まあ、文官二人だ。



俺の思いつきじゃない。

あんなインパクトは想像せずに、軽く申請したのも、却下を想定していたからだ。

火炎放射器があるんだから『自分で焼け』と言われると思うじゃん?

なんでこうなるのか。



なんでかは知らんが、経緯は知っている。


役人が遺体の山を見て、吐きながら、衛生上の配慮に警鐘を鳴らした。

坊さんは同意をしつつ、宗教的使命感にかられ、当時、俺と一緒に隔離圏内のエルフっ子に宗教的文化的禁忌に触れないかどうか尋ねていた。


まあ、現代地球的仏教だから、他宗教に配慮するのはわかるし、国連決議的にも、ありがたい気遣いだよ、うん。

まあ、地球には死体を保存する文化もあるからね?火葬が禁忌とか。

焼き尽くすとそのあたりが問題になるかもしれないし。


そこしくじると、司令官の、俺の頭が跳ぶ。銃弾で。



なんで坊さんがエルフっ子に質問したと、俺が知っているかというと、

俺経由で聞いたからだ。

坊さんに言われて俺がエルフっ子に聞いた。



何故、俺経由?

軍政文官には地元住民との接触許可がある。



兵士より自由裁量は広く、現地協力者に職務上の相談は自由に出来る。

兵士の場合は部隊データリンク、つまりヘルメット、プロテクター内蔵カメラ/レコーダーの記録範囲のみ、事前に許可された内容のみ接触可能。

軍政文官はそうした制限がない。



隔離中とはいえ、エルフっ子の直通通信チャンネルは空いていたんだが。そう訊くと、少し、表情に出さないから多分、坊さんに呆れられた。大いに呆れられたのではないと思う。


『地元の皆さん、特に、あの子たちは、司令官以外には気を許していません』


――――――――――――――――――――びっくりした。

シスターズは、まあ、一番、まあ、俺に懐いている、とは思う。

じゃなきゃ、一緒に川の字になって寝ない。川・・・・・河?いやいやいや。多少いびつな形でも川の字です。線が多すぎる気もしますが。


さておき。

地元のみなさんの心象?

気を許すも許さないも、街では、怖いもの扱いですが!俺!!


『街のみなさんは、私たちを見てもくれませんよ。まあ、司令官の肉奴隷と自称してらっしゃる』


なにしてらっしゃるのか元カノは!坊さんも合わせなくていいから!アイツの悪ふざけはスルーしてください!!


『彼女はある意味で親しまれています。地元にも、というより、大陸中に知られた騎士団の団長ですから』



そうらしい。

黒旗団は元々現地の、荒くれ傭兵団ってだけじゃなく、帝国一、つまり地元を含めて世界に知られた、世界最強の部隊だ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・た?

今はどうか知らないが。


ドワーフの印象が強すぎて。


つい、黒旗団配属ASEAN部隊を忘れ・・・・・・・・・・・・・・・・・インドネシアの老人を思い出すと、最強かもしれない。

近代兵器と魔法を組み合わせてるもんな。



『ただ、地元の本音が聞ける立場じゃありません』


まあ、そうか。ニコニコ銃剣と親しんでるし無理もない。


『我々、つまり、司令官以外の軍政チームに至っては、住民の皆さんに目もあわせていただけません』


フェイスガード基本の兵士はまあ、鬼かなにかと扱われ、顔がでていない時は一応、見られるてるが。


『モノ扱い、と言って悪ければ、竜を見る感覚かと』


深刻だなそれは。

坊さんや役人、曹長を意図的に『見る』のはシスターズだけだという。


『それはもちろん、かわいそうなくらいに緊張して』


たまたま目に入った、や、意識して気合いを入れて見る、は自然に話をしながら『見る』と意味が違うのは、まあ、わかる。


なぜそんなに怖がられるかな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


初日にヘリの爆音で脅したからかな?

初日に虐殺しかけたらかな?

二日目に街中でチンピラを皆殺しにしたからかな?

四日目に街を半壊させたからかな?

そう言えば暴動鎮圧も命令したよね?

五日目に火事場泥棒達を殺したし、昨日はF-16が三機編隊で低空音速爆撃


・・・・・・・・・・・全部、俺??



~~~~~~~~~~~~る~~る~~~~~~る~~~~~~。



『まあ、こんなものですよ』


やった!!

って!!!そうなの!!!!国連軍ヤバくない??????

愛される侵略者を目指してたんじゃないの??????????


『打ち合わせの関係で、参事さん、頭目さん、両替商さんは見てくださるようになりましたが、気合いを入れて』


頭目も?


『自分から目を、合わせるどころか、目だけは視界に入れないようにされてました――――――――――昨日までは』


うーん、?、昨日までは?


『ええ、隔離終了後、私たちを見るようになりましたね。まだまだ、距離はありますが』


何があったかしらないが、良かった良かった。


『良かったですね。あの子たちが貴方のそばにいやすくなります』


は?


『娶られましたか』


??????????――――――――――ちょ!!!!


『お釈迦様は一夫一妻などとはいわれません』


わざわざ言わなかったんじゃないかな!!!!!!




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/中央庭園/寝台】


あれ?あら?わたし、いつの間にか?し、式典!お役目!!


「わたし、わたせ」

「ご苦労」


ご主人様の優しいまなざし。役目を果たせた、のでしょうか。でも、ご主人様が微笑んでくださるなら、それは大丈夫なんですね。


わたしに感覚が戻ってきました。


柔らかな寝台、肌を包むなめらかな織物の感触・・・・・・・わたし、ふと、ご主人様の背後、椅子に、わたしが先ほどまで身にまとっていた衣装が見えました。

・・・・・・・・・・・・・・ご主人様と、二人っきり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい????


え!

わわ!!

だ、大丈夫です!

わからいあですけど・・・あぅあぅ・・・がんばります!



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