第三幕(ending/deus ex machina)
【用語】
『デウス・エクス・マキナ』
:deus ex māchinā(ラテン語)。物語の構成上に設定された御都合主義……とは嘘である。
古代ギリシャにおいて演劇、しかも悲劇の定番。作中のガチ神が悲劇が悲劇に終わるのをぶち壊す。で、ガチ神が誰かと言えばギリシャ神話の神々だったりする。この神々は人間との距離が異常に近いどころか混合している。当時の人々からすれば「神々が隣に居て観ていたり見逃したりお節介してくる」というは常識だった。現代世界で言う芸能人が出たがりセレブみたいなもの。神々の実在を前提に説明するのはおかしい、と思う常識的な貴方は歴史学に向かない。学者の99%以上と同じようにたかだか百年ほどの常識を二千数百年前から千年以上続いた常識に捩じ込んで失敗する。ギリシャの神々が実在しない?……直接みたり話したりしたことがないからといって、セレブ芸能人の実在を否定したら精神疾患を疑われる。アリストテレスみたいに故郷を追われて逃げ回って生涯を終えます。
そーいう世界。
ましてや悲劇を許さんとばかりに跳び入り参加するのは極自然。だから観客は自然な展開に納得する。自分たち一人一人の卑小な人生に神々が割ってはいらなくても、これだけのドラマなら神々が来ない方がおかしい。しかも神々のお陰で鬱展開を阻止してハッピーエンド。気持ちよく帰宅できるとなれば、神々を出さなきゃブーイングである。神々にブーイングしたアリストテレスみたいに自殺するほどになれますどうなったとは言わないが。
突っつく。
なぞる。
啄む。
コミュニケーションには色々な方法がある。
だが宇宙人とでも確実に会話ができる方法は、唯一つ。
ラインメタル 120mm L44
/44口径120mm滑腔戦車砲。
《「何を言っているんだオマエは」第七師団師団長》
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/大神殿(改め建築楽器)/正面入口テラス部分/青龍の貴族】
幸いにして俺は、俺たちには気を紛らわせる方法がいくらでもある。
観るべき物が多くあり。
視るべき者が多少おり。
見たい相手が色々居て。
「戦争は終わりでいいですか?」
耳目を逸らす先にこまらないってのに大切なことを二回確認する姿勢は嫌いじゃないけど困ります。
疑問文にして回答を求めるスタイル。
これをスルーすると大変に不自然だよなぁ。
しかしながら敢えてという手もある。
不自然が多数派なら自然が異端。
――――――――――多数派工作は得意。
ギャラリーが馬鹿なら、それで騙せる。
馬鹿を騙せる形式を整えれば、責任者が騙されたことにしてくれる
・・・・・・・・・・可能性がある。
いやいや、甘い。
希望的観測じゃ騙されたことにしてはくれない。
天は自らを助く者だけに使い途を見いだす。
あらゆる手を尽くしてこその責任転嫁。
チョロいカモには俺の罪を背負う力はない。
神、天におわすからには、地にいらっしゃらない。
地べたの上には厄介者
・・・・・・・・・・埋めちまえば、ただの物。
では、サクッと
「・・・・・・・・・・戦争終結は安保理が決めますよ」
ばかよせやめろ合衆国海兵隊によるバンザイアタックって歴史的矛盾!
「此所で先程まで撃ち合っていた貴方方国連軍同士の戦争のことです」
それを無かったことにする雄弁な合意を高らかに謳い上げていたんだよ、無言で。
言葉にしないと伝わらないことがある?
ねーよ。
それはオマエが馬鹿だから。
コミュニケーション上どれほど言葉に意味が無いかなんて、定説通り越してる。
ライアンに至っては馬鹿じゃなくて宇宙人。
王様は裸だと言い放ちやがる
――――――――――これも改変不可能なデータとして記録されたな。
俺たち異世界大陸で活動中の、国際連合所属に限らない地球人。
一人一人が24時間身に付けている監視装置。
それは当然、記録装置を兼ねているわけだが。
WHOの防疫措置に使われるから改変不可能。
改竄偽装が可能だったらバイオハザード対策に使えない。
誰が、誰に。
どれくらい。
どのように。
接触したのかしないのか。
産業停止で有り余る通信回線を通して送信されて、同じ理由で有り余ってる記録容量に蓄えられてる、今ここも。
何も起こりませんでした、は、通じない。
だから誰もが言葉にしなかった。
――――――――――過去形になっていまいましたが。
何か起こったとは思いませんでした、はアリ。
内心の自由はまだ保たれている。
・・・・・・・・・・自白剤を投与されるまでは。
だからこそ自白剤は必須ではない。
だから、上手く上層部を誘導して現場で共犯関係を造ればクリアできたのだが、薬物無関係に正直って、大人とか子供とかいうレベルじゃねーぞ。
むしろ子どものほうが気を使う。
子どもの証言が疑わしいのは、周りを無視出来ないからだ。
それは気遣いであり、優しさだろう。
大人なら馬鹿を見分けて侮って、気を使う相手を選べる。むしろ踏み躙るべきを躙り抜くことも、ちゃんと出来る。
それが空気を読む、ということ。
子どもは空気に流される。それは仕方がない
・・・・・・・・・・大人が流されたら、馬鹿だが。
そしてライアンは空気を読めない
――――――――――コミュニケーション不全。
つまり異常者。
これ、どうする?
【聖都/聖都市内/中央/大神宮前/巫女の賢所/青龍の騎士団陣形中央//彼の背中/エルフっ娘】
あたしたちを含む全員が、その呼気に反応した。
彼。
ご主人様。
ご領主様。
我が君。
主。
将。
敵手。
耳を澄ませ。
眼を凝らし。
身を寄せて。
身を退いて。
射線を合わせ。
隊伍を組み。
兵を抑え。
土龍を構え。
――――――――――この女、ライアン。
ホント呆れた、呆れてる。
また生き残ったし。
一触即発、引き絞った弦に触るような真似を、よくもまあ。
放たれれなかったのは、幸運、っていうか彼の技量。
普通に考えたならば、銃弾を放たれて、当たり前よ。
彼、青龍の貴族、が留めたのだけれど。
弦や構えに触れられたからといって放ってしまう素人が、この場にはいないにしても。
――――――――――射手には愉快な訳がない。
ライアンには幾つもの筒先が向いているのに、更に増える。
彼は留めた、のであって、止めたわけじゃないから。
――――――――――だから、あたしも彼つつく。
危険がないことを知らせる為に。
あたしが聴いてると知らせる為に。
貴男を想ってると知らせる為に。
・・・・・・・・・・彼の耳を齧ったからといって、涙眼で視ることないじゃない湯殿や閨では皆でいつものことでしょう青龍の前で自分の立場を知らしめる機会はすくないけどさ。
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/大神殿(改め建築楽器)/正面入口テラス部分/青龍の貴族】
俺の耳には同時に聴こえた。
「惜しい」
擦過音。
爆発音。
装弾筒付翼安定徹甲弾。
装弾筒を含めれば戦車砲の口径と一致。
装弾筒は発射直後に発射装薬の全圧力を受けて四散。
弾体は空気抵抗を最小化する為に細い。
速度×質量=エネルギー。
劣化ウラン製の防弾は体積に比べて重い。
最高速度で最大質量を飛ばして重力を加えて落下。
着弾地点の構造を貫いて固い都市地盤の中でエネルギーは解放。
周りの地盤を砕きながら上方向、脆い破孔に向けて流れ出す。
それが石造りの建物を軽く弾き飛ばした。
超音速で通過した弾体の音。
後から考えれば、それかな、という程度。
空気抵抗を最小化するということは、音を小さくするということ。
当然、風もあった、程度。
運動エネルギーを全て受け止めた着弾地点はkmで数える先。
遠い花火くらいに感じるのは、慣れってやつだろう。
だから周りは平静だ。
麓の海兵が反射的に動きかけて留まり、食事を再開する仕草
・・・・・・・・・・だるまさんがころんだのかな?
海兵隊大尉が骨伝導マイクを指でコツコツしたのは有関係。
もちろん海兵隊軍曹は麓から見えやすく、直立不動。
海兵隊は指揮官の無事と現状維持命令を察しているわけだ。
一方、我が陸上自衛隊は
・・・・・・・・・・こんなもんだ。
うちの連中は気づくのが遅い。
しかも反応が戸惑い。
真っ先に曹長を見て、直立不動を確認。
それに困惑してるし。
続いて佐藤と芝を確かめる隊員たち。
魔女っ娘に摘まみ食いをねだっている二人。
うちの連中は釈然としないまま、うちの娘たちの手伝いに戻る。
燃料食材飲料の運搬は、まだまだつづくぞ。
おねいさんずはガチ反応。
遮蔽物の中で見えないのが幸い。
だが、おもいっきり悲鳴が聴こえた。
差し入れの御茶を溢したか御菓子を落としたか。
・・・・・・・・・・ガチャガチャ音が続く。
M14やSR―25Mを構える音だけなら普通だが、M72LAWを展開する音までしましたよコレ
――――――――――ホント物陰で良かった。
魔女っ娘がトコトコと軽食をもって大神殿内部へ。
佐藤と芝もフルーツの山を抱えて付いていく
・・・・・・・・・・食べればおちつくだろう。
そして所属不明のツジ参謀は
――――――――――怒っていた。
【聖都/聖都市内/中央/大神宮前/巫女の賢所/青龍の騎士団陣形中央//彼の背中/エルフっ娘】
あたしたちのように独りの感性に応じる身には、判らないわね。
軍として考えれば、むしろ普通なんでしょうけど。
あたし自身、兵を指図したことはあれど軍に従ったことなんかないし。
軍師ツジ卿、無言の叱責。
ムタグチ卿は勝手に土龍に放たせた、みたい。
あたしたちの前で相談できなかったにしろ、合図くらいは出来るわよね
――――――――――まったくツジ卿に悟らせることなく、一方的にやらかした、と。
「次は当てる」
――――――――――わざと外したんじゃないの?
此処に当てるつもりで狙ってた訳!
「ふざけないで!」
・・・・・・・・・・先に言われた。
っていうか、ツジ卿の怒りの理由がムタグチ卿には伝わってない。
どちらがどちらを指揮してるのやら、とにかく
「好き殺れ」
彼は、そう言い放った。
つまり、此処であれ何処であれ、土龍をムタグチ卿の思うがままに使えばいい。
土龍の周りを固めるツジ卿の騎士団にも好きに殺らせればいい。
どうなろうと責任は全部、彼独りが持ってやる――――――――――らしいけど、絶対に間違ってるのに、あたしは口を挟めない。
「ふざけんな」
――――――――――凄く低く、短剣を抜き放ったような、女声
――――――――――ツジ卿、が、彼へ!!!!!!!!!!!!
「勝手次第であろうと、コイツの責任は、この私だけがとります」
あんたは黙ってろ
――――――――あたしは彼に掴まれ、鯉口を納めた。
つい、啖呵を切るその舌を斬り捨てそうになったから。
反省しなきゃ
・・・・・・・・・・・・・・あたしの意思で斬ったら、駄目よね。
彼は許してくれるけど、あたし自身が赦せない。
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/大神殿(改め建築楽器)/正面入口テラス部分/青龍の貴族】
どうどうどう。
俺の得意の一つ。
カッとなった女を宥めること。
俺に殴りかかってくるなら良いけどね。
女は女に殴りかかります
――――――――――掴んで止めますが。
男も女に殴りかかります
・・・・・・・・・・カウンターを当てますが。
ボディーランゲージの応酬。
その最中、唯一の言語注意コミュニケーション。
軍隊あるある指揮権争奪戦。
「わかりました」
・・・・・・・・・・は?
ライアン?
ナニを判った解るわけねーだろオマエに?
「戦争が終わったら教えてください」
空気を読めない女、ライアン。
ティーカップをもったまま、焼き菓子を抱えて前へ。
そこは宴台的な、テラスの端。
皆からよく観える。
――――――――――いや引っ込めよ。
だがライアンの姿を見て、悲鳴を上げていたUNESCO調査員たちは静まりだした。
デモ隊状態からバラけて走り回りだしたのだが、なんだかな。
――――――――――大神殿粉砕不可避とみて、その瞬間を記録計測するために準備を始めたと知ったのは、後の話。
「次は当てる」
・・・・・・・・・・ツジ参謀の指揮権を優先した牟田口二尉が、彼女に掴みかかられてるのは、今目の前。
検査無しにコロナ認定だそうで(笑)。
いえ、今までと変わらないですけどね。
PCR検査の精度は「立証不可能」とは学会のレポートによる公式の事実。
……じゃ、なんでや検査にならない名称「検査」を続けてたのか?
感染を防げない。
発症も防げない。
それを売り付けてるメーカー。
それを買い付けてる厚生労働省。
皆さん正直に公言。
「射ちたかったら自己責任で」
文句の付けようがない(笑)。
売り手と買い手に無意味と公言された商品名「ワクチン」が出回っているんだから、お察し(嗤)。
でも、悪いことはありません。
「無症状感染」と称された健康な人々がコロナ対策で殺される危険が減るでしょう。
阿保は阿保なりに考えましたね。
自分たちの責任を誤魔化しながら、パニックを収束する手を着々と打っています。
自己保身の為なら国でも仲間でも殺す悪者は、使いようがなくもない。
……最初から産まれてこなけりゃ、コロナ対策も起きなかったのに。
コロナ馬鹿は善意に基づいてみんなで心中を推進しますから。
愚者より悪者の方がマシ。
……フィクションか歴史書で知るなら、救いがあるのに。
頑張れ阿保ども!
……今は。
負けるな阿保ども!
……今は。
わたしも応援のためにコロナ対策を無視して外出外食に励むぞ!
……報復は後でしてやる。
そんなわけでいろいろ時間が取られてしまいます。
更新スケジュール混乱に関するお知らせでした。




