第二幕(good news, bad news.)
【用語】
『牟田口二尉』
:実名である。これで陸上自衛隊幹部士官として居られる辺り、全国の牟田口さんに謝罪するレベル。ごめんなさい。偉大なる大英帝国軍人、ジェネラル・ムタグチとは無関係。搭乗、いや、登場当初は「スケルトンのスカスカボディに現代兵器は有効か?」というテーマに対する回答を引っ提げて登場。「120mm戦車砲VS肉球」などの名勝負を繰り広げるごとに第七師団師団長に様々な感想を抱かせていた……きっと師団長は寂しがっていない。中隊を率いていたらいつの間にか小隊を率いている辺りで、お察し。ただC-5M スーパーギャラクシーやC-17 グローブマスターIII等に整備部隊ごと積まれて休みなく異世界大陸を東奔西走する仮名ツジ参謀に同行しているので、必要とされてはいる。誰にとはいわないが。最前線が休戦状態な中、待機し続ける第七師団からみて、左遷じゃないとはいえないが左遷とも言えない。
「時刻特定。±範囲固定」
「範囲内ドッグ・タグ座標変化追跡。前後記録と比較。不自然な挙動を洗い出せ」
「駐屯地内では指揮所要員のみ」
「外」
「グローブマスター周辺展開中の整備部隊中49名該当」
「より南は」
「現状なし」
「再確認中」
「捕虜収容所」
「圏内感アリ」
「確認します」
「集積物以外はドッグ・タグで精密確認可能だな?」
「画像チェックなら大雑把に確認可能性アリ」
「集積地は以南、不要」
「タグを付れ、すぐに感覚を文書化させろ、いや、先入観を与えるな自覚を、近場に居るタグ無しも含めて問え。考えさせるな即答させろ。タグ無しなら即射殺して見せしめにしていい」
「正式尋問は後、衛生科は準備のみ」
「特科施設科指揮所以外は全員出撃」
「急げ」
「聖都なんかほっとけ!」
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央暫定中立地帯/大神殿(改め建築楽器)/正面入口テラス部分/青龍の貴族】
俺は酔わない体質に感謝。
珍しいことだよ?
豊かな水源に恵まれ続けた希少派民族。
それなのに雰囲気以外は酔わない自分。
酒に酔わない酔えないのが地球人類の大半。
地球の80%が飲用水が無い地域。
―――――――――――大型動物は木の根や草の根より水分接種がヘタだから。
残りの99%がそのまま飲めない地域。
―――――――――すべての生物は水分を求め、水には生態系が構築される。
ほぼ全てで水量が安定しない地域。
―――――――――集団生活を前提としないのであれば要らないけどね。
だからこその酒。
アルコール消毒による水の飲用化と保存の為に、工夫されて普及した。
日本だったら、水が良いから酒造り。
日本以外だと、水が悪いから酒造り。
いや悪いじゃなくて、それが普通か。
水に付加価値を付ける為の酒じゃない。
異世界の大半もそうですが、むしろ手を付けずに飲める水があれば、それこそ最上の逸品!
酒が必需品から嗜好品になることができたのは豊かさ故。
それ以前は酒に対する耐性が水分確保の必須条件だった。
酒がのめない、ということは致命的欠点となる人類世界。
文字通りワインは命の水。
だからこそ遺伝的な下戸は淘汰されるし、因子が発現すれば死病となる。
酒豪がステータスとなる合理的な理由。
大酒のみの家系は、渇きに耐性が強い。
酒がのめないことが遺伝病である世界。
今ちょうどその世界の神殿上ですけどね。
うちの娘たち、ちびっ娘ふたり含む、もワインのボトルを平気で空けます。
ま、いいんですけどね。
太守領は水に恵まれてますけどね。
王城なんか、そのまま飲める水がありますよ。
ちびっ娘ふたりは社会階層でいう上流の上の特権階級。
産まれた時から飲める水で洗顔から入浴までしているそうです。
お揃いですね、ってニコニコされました。
特権じゃないと判ると、スゴイスゴイされました。
いやホントに凄いツキに恵まれてますよ、俺たちは。
少なくとも俺のせいじゃないと判ってくれたのやら?
千年の時代差があってなお地球全体でそうなってなかったなんて、恥ずかしくて言えませんよホントに。
俺以外の地球人類に、もっと頑張ってほしかった。
そうすれば人類ってスゴイだろ、ってドヤ顔できたのに。
うちの娘たちがスルーしてくれたら一番だけどね。
地球人類の象徴あつかいは平にご容赦!
俺はともかく、それなりには凄いんですけど、うちの娘たちの期待ほどではない。
期待が高すぎるのを咎める訳にはいかない。
そーいうのは子どもが自分で悟るべき。
偉大なる成果の礎が叡智とは限らない、と。
それで妥協できれば楽だろうし、自ら至ろうとするなら楽しいだろう。
俺は俺で尊敬され感心され自慢することに集中集中。
俺の、カッコよさを示さないといけない。
味わうことに集中できないのは残念無念。
酒を舌で転がしながら、俺は考えを弄ぶ。
スイッチが何か解った。
捻るか。
押すか。
倒すか。
どうやって使うんだろうね?
【聖都/聖都市内/中央/大神宮前/巫女の賢所/青龍の騎士団陣形中央/彼の背中/エルフっ娘】
あたしが視る。
あの娘が返す。
妹分が頷いた。
―――――――どこかの誰かに観せる様―――――――
彼は水のように酒を楽しむ。
だから控える必要はないのだけれど、今の酒は肴、ううん道具に過ぎない。
あたし、あの娘、妹分は酒を造らないから悔しくないわ。
あたしたちが捧げるモノを、彼は道具になんかしないけど。
西の山から主に捧げられたドワーフ酒。
お茶と酒は器が命、と妹分が用意した硝子杯。
最高の酒を最高の器で。
同じ饗を受けた賓客に仕草表情で演じてもらう。
ミラー卿が一息に乾して落差に驚いてる。
気に入ったみたいね。
ツジ卿はそれを見てから一口。
舌で味わうから、吹き出しそうになって、堪え切った。
ツジ卿が放り出しかけた盃を取り上げ一気にいったムタグチ卿。
・・・・・・・・・・・・・気勢を上げて大喜び、って、それ。
思わず意識を街外れに向ける。
土龍の群れに動きなし。
観ているのは一緒な麓の騎士団。
どちらも併せて冷静だ。
口当たりが良くて、跳びきり強い酒。
青龍に軽い酒は禁じられているから、おかしくはない。
常に同じく盃を彼の口元に付け注ぐのが、あたし。
普段通りだから酒量に作為が無いように、観せる。
誰もが観ている時処だからこそ口移しにしたいけど。
彼の遊びに集中してほしいから、我慢してみせよう。
こーいう時に内心を見透かされてるのは、便利よね。
邪魔をしない女は評価されるけど、知られないと、ね。
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央暫定中立地帯/大神殿(改め建築楽器)/正面入口テラス部分/青龍の貴族】
俺たちは奴らが内側を守ろうとして、そこに居る。
つまりは此処が異世界遺産な大神殿の中枢。
中心じゃなくて、中枢、って奴らに判るのかねぇ。
だが、納得しやすい。
地球人類同士の友軍相撃を防ぐ必要性に目覚めたらUNESCO調査員じゃない。
うちの可愛らしい娘たちを保護すべきなんて感じるUNESCO調査員じゃない。
異世界文化遺産のために自他の命で鼎を量るようなUNESCO調査員じゃない。
なら、大神殿を守って居るんだろうな。
・・・・・・・・・・何から?
海兵隊、
――――――――――いや、外部から!
なら、俺と判り合った海兵隊諸君に倣うべき。
海兵隊は主にUNESCO調査員に正対する。
俺も警戒と猜疑と不信の眼を向けてみる。
UNESCO調査員の背中に向けて。
座ってるし麓だし踏み越えて行ける。
大神殿に行きたかったら踏んで、いや、踏み越えていけ、か。
こちらに背中。
あちらにお腹。
まるで俺たちを守る義勇兵じゃないボランティア。
おかしい。
いつもか。
あやしい。
60年代型原子炉並みの信頼性
・・・・・・・・・・な~~んだ、平常運転じゃないか。
いつも心に色眼鏡。
コイツらとは判り合えないのが人間の証明。
解らないモノを判ることが知性の証明。
判らないと解るのが判ることの証明。
敵を知り味方を知っても良くて五分五分
・・・・・・・・・・何が言いたかったんだアレ。
まあ馬鹿なことを語り継いだのは弟子だけど。
正しくはコレ
―――――――敵には知られず敵を知るべし、だいたい勝てる。
解り合えないのは当たり前だが、判り合えないのは敵に他ならない。
つまり俺たちに今は背を向けて防御壁になっているUNESCO調査員たちが敵。
うちの娘たちを比喩でも赦さんが解剖を企んだレベルじゃなくても思い付いた時点でパブリックエネミー。
ならば奴らは何をしているのか?
何かを守りたい、らしい、奴らの癖に
――――――――――だからこその、人間の鎖。
異世界種族も巻き込んで、身を持って盾とする。
その意気や良し!
有り得ざることを概念化する外道どもであっても、認めるところは認める
――――――――――殺す値打ちは無くもない。
なるほど、安全保障理事会が造り上げただけのことはある。
壊せない。
守れない。
絶やせない。
つまり奴らには、何も出来ない。
思い付く。
気が付く。
考え付く。
特定の誰かにしか出来ないこと。
調べる。
考える。
理解する。
それを誰よりも得意とする。
広く。
深く。
高く。
一番、肝心要、始まりに不可欠な連中
・・・・・・・・・・だけだからなにもできない。
うちの娘たちに余計な邪念を抱いたから殺すにしても、殺さなくても害はない。
UNESCO調査団執行部隊、ここでは合衆国海兵隊、が居なけれは、虚像に等しい。
今の様を観ればわかる。
コイツらには心意気がある。
なのに何故か心意気しかない。
利用されるだけで何もできない。
悪意も善意も。
害意も好意も。
敵意もなんでも。
無きに等しい
・・・・・・・・・・・・・すぐ撃たなくても良かった、かもしれない。
自らを盾にして稼げる時間は?
片付けを入れたら何十分?
それで何処まで果たせるのか?
無いよりマシだがもっとマシな方法はあるだろう。
知見。
所見。
識見。
それを委ねられているなら?
いくらでも、ソレを守るに足る力を
――――――――――借り出せる。
嘘。
大げさ。
紛らわしい。
仕掛けは簡単だ。
・・・・・・・・・・なのに我が身を盾にする?
我が身以下の値打ちしかない、とアピールするようなものだ。
守りたいモノの価値を下げる。
ついでに己が値も併せて暴落。
逆効果。
単なる自殺の方がマシ
――――――――――守る邪魔にはならないからな。
だから、いきなり、戦車砲弾を撃ち込まれた。
こいつらに知性の他に知恵があれば、こまめに売り込んでるだろうに。
自分が守りたいだけの相手を。
守れる権力を持つ者たちへ。
そうしたくなるように。
そんな知恵があれば先んじて殺さなきゃいかんが
・・・・・・・・・・うちの娘たちに手をだそうなんて思い付かせた俺の不覚。
まったく頭が良い馬鹿で良かったな。
頭がが良けだけなら先んじて取り込んだか。
興味の持たれかた次第で十分な土嚢代わりに
・・・・・・・・・・今は誤魔化して、後日バリケードに仕立てよう。
そう考えると、なんか、今回のは不自然、だな。
オなんとかウィルスが流行ってるそうですね。
風邪の季節だからわかります。
来院するついでに発覚して軟禁からの医療崩壊。
風邪の症状が出ると安心できます。
オなんとかじゃないのは間違いない。
コロナモドキなら病気になりませんからね。
「コロナで発症する」
とは
「雨乞いで雨が降る」
と意味同じ。
いえ、
「雨乞いの後に雨が降った」
※前後関係と因果関係の混同。
に比べれば
「病人からコロナが出た」
※共通項と因果の跳躍。
はレベルが違いますか?
ただオなんとかと違って風邪は病気。
インフルエンザなんか確実に発症する平均的な殺人ウィルス。
なら安心してる場合か!って話ですが。
コロナ対策に殺されるより、ウィルスに殺された方がましです。
「キツネ憑きになり殴り続けたら憑きモノは堕ちたけど死にました」
……末代までの恥。
隔離(嗤)に付き合ってあげるほど、優しくはありません。
風邪には治療薬なんかありませんが、対症療法ならありますし。
ああ、コロナも治療薬が無いんでしたっけ(笑)。
治療薬のあるウィルス性疾患がどれほど有り得ると思ってやがるのか……。
ただ皆さんは御自愛ください。
殺されない程度に殴られる方がいい。
……そんな環境にいる方々を否定するわけではありませんから。
「わたしは殴らなかった」
と言えれば十分ではないかと。




