祭礼

パン屋がバンを焼く。

私は殺し殺される。

仕事というのは、そういうものだ。

釣り合わないのではないか、と？

ふむ。

パン屋は、なぜパン屋になった？同じ収入を得られる、釣り合う仕事がいくらでもあるのに。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――バンを焼くのが好きだからだ。

私はそう思う。

そう。

同じだ。

収入がよい仕事はいくらでもあった。今もある。

私は軍人になり、軍人で在り続ける。

大統領を目指したのは、軍の最高司令官になりたかったからだ。

これも君らに言わせれば、釣り合うまい。コストパフォーマンスで言えばな。

私は貧しくなかった。飢えていなかった。幸いに。

だから、好きな、得意な仕事を選んだ。

それだけだ。

世の中には偏見が多い。

軍人への偏見もその一つだ。

世のため人の為に皆が払うべき犠牲を引き受けた殉教者。

――――――――――――――――――――――――――――――軍人に、一番向かないパーソナリティーだ。

こんな募集要項では、クズと狂人しかあつまらん。

世の中に、特別などない。人も、職業も。

私の家、私の国では。

パン屋がバンを焼き、軍人が殺して殺される。

誇りも自負もある、お互いな。私はそれをひけらかす趣味はないが。

パン屋は死なない？職業上、ああ、わかる。

確かにそうだな。

軍人は死ぬ。職業に含まれる。

だから？

軍人が払う犠牲。パン屋が払う犠牲。

命と――――――――――ああ、パン屋に詳しくないが、何かの犠牲。

違うのかね？どう違う？

私は、軍人は命の使いどころを得られる。パン屋は得られないかもしれない。

われわれ軍人引け目を感じるべきかね？

われわれだけが得をしてごめんね。

――――――――――ああ、わかっている。君はこう言いたいんだろう？

命は、他のなによりも、大切だ。

私はこう言っているわけだ――――――――――勝手に決めるな。

【太守府/港湾都市北方海岸】

『殺すなら、殺される覚悟をもて』

俺が言ったんじゃないぞ。

いやいや勘弁していただきたい。銃を持たない敵に銃を渡したり、銃を捨てて相手の剣を借りたりする趣味はない。

覚悟？

覚悟、ね。俺の周りには無い発想だ。

俺は死にたくない。俺は生きたい。死ぬ？殺される？考えた事もない。

既に他人を殺してなおそれだ。

国際連合軍の規定としては、軍政官を威嚇した時点で対処可能。対処とは殺傷、傷で済む可能性は低い。だからまあ、法律は俺に殺せと求めているし、殺しても問題なしと言っている。

だが、それは法解釈の話に過ぎない。

俺の輝かしい、ではなく、恥ずべき、とも感じない、日常業務ではどうだったか？

ついカッとして殺させたチンピラが８人。

魔女っ子の家に押しかけたクズども。あれは犯罪者だが、脅威ではなかった。殺してから、犯罪者だとわかったくらいだ。

つまりは犯罪者だから殺した訳ではない。

俺が殺意を抱いた理由？俺にわかるものか。

わかるのは、よかったよかった、と言うことだけ。

次に殺させた略奪犯１１人。

脅威？あれが？あの状況で俺たちに指一本触れられやしない。

ならば予想外だったか？

まさか。俺が意図した示威行進。わざわざ暴動鎮圧中の街を呑気に練り歩く以上、不測の事態は当然だ。前夜のうちに対処を決めていたくらいだ。

曹長、佐藤、柴には命じていた。『殺せ』、と。

作戦の邪魔になる者は、特段の指示がなければ殺せ、と。

まあ、余裕があったので、その場で改めて指示出来た。

『撃て』、と。

僅か一週間ばかりで二回、１９人。

ここまでだいぶ殺している。三日に一度、一日２人以上のハイペース。

では最初の結論に変化があるか？

ない。まったくない。

俺が死ぬのは御免。俺が生きる意志満々。

他人の死にどう関わろうと、俺の生死に関連づけたりはしない。

「不思議なものですな」

インドネシアの老人。この老人は俺の対極だ。

『殺されたい』人。

敵に殺されたい。

戦場で殺されたい。

死とはそうでなくてはならない。

その為にこそ殺して殺して殺し続けて。半世紀以上繰り返し繰り返し繰り返し。

そしてまた戦場で、マダカナーと辺りを見回してる。

『死にたい』でもなく『生きたくない』でもない。

反語でも否定でもない『死にたくない』『生きたい』の真逆。

『殺されたい』

その老人はいつのまにか来ていた。

まだ打ち合わせあったかな？元カノが居る限りいつ現れてもおかしくないか。

元カノの部下、ってより、保護者だしな。

「撃つなら、撃たれる覚悟をもて」

老人が朗々たる声量で謡うように。聴いてたのか。だが、何故だろう。張りがあり、耳に響くのに、奇妙に空疎だ。

「何の意味があるのでしょうな？この羅列は」

言葉扱いしないのね。

意志、意見、感想、考え方、まあ、思想なんてレベルじゃないわな。

さて、意味か。

撃たれる側、撃つ側。撃たれた側にはどうか。

撃った側の覚悟がどうだってんだ？痛みが変わる？生死が変わる？結果が変わる？経過が変わる？気分が良くなる悪くなる？

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――有り得ない。

殺される側には痛み、恐怖、怒り、憎しみ、絶望があるだけだ・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この老人と同類以外は。

なにがどうあろうと、撃たれる側、殺される側には関係ない。

撃つ側の覚悟や心証には価値がない。

殺す側と殺される側に接点はない。

断絶？いや、それすらない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、ああ、そうか。

なら、この『覚悟』とやらは撃つ側に・・・・。

「撃たれるかもしれないんだから、撃つことを赦してください」

老人が笑った。

幼児の我儘を許容する大人の視線。

吐き気がする。

なんと醜い事でしょうか。対等な殺し合い、のフリ。

決闘じゃあるまいに。

勝ち目を意識し、撃つ側になる為に汲々とし、しかも殺しておいて。

『これは殺し合いだったのだから仕方ない』

仕方ないってところで内心察してるだろうが。

機会が均等に与えられていたとでも？

優劣がなかったとでも？

殺し合いであったとでも？

被害比が１対１０００でも殺し合いなのか。

１対１００００なら？

１０００００なら？

――――――――――――――――――――――――――――――殺し合いなものか。

優位と不利がある以上、一方的な殺戮だ。

俺は、俺と同じ制服をまとう老人を見た。

一方的な虐殺を誠実に実行した経験者。

様々な戦場で、常に殺される機会を得られなかった兵士。

常に殺す側に居続けて、これからも経験を生かしていく老人。

『殺される』ことに覚悟がなぜいるのか不思議そうに首をかしげる老人。

彼と俺。

『殺されたい』と『死にたくない』。

全く違う世界の俺たちは、同じ理解に至る。

『殺すなら、殺される覚悟をもて』

意味がありそうな無意味。

「つまり、言い訳ですな」

インドネシアの老人がカラカラと笑った。

自分の行いから目をそらし、幸せに生きるための、薄汚い自己弁護。

――――――――――――――――――――まったく素敵な言葉だ。

目の前に広がる死体の山。

その臓物より臭う言葉、いや、意味を持たないならノイズ。

――――――――――――――――――――――――――――――だが。

その汚らしい言葉。臆病で不誠実な雑音。

「嫌いではないな」

俺の言葉。老人は面白そうに俺に振り向いた。

「それを」

卑怯者の言い訳を。

「祈り、と言うらしい」

吐き気がするが、嫌いではない。

俺はそう思った。

【太守府/港湾都市北方海岸/青龍の貴族の前】

あたしの前。

まだ３日間。北の春、幸いにして涼しい。無造作に積み上げられ、集められた物はまだ臭わない。

ここは港街の壁外。

街の壁から離れてさらに街道から離れた浜辺。

４日前の暴動で生じた廃棄物の集積場所。

既に鳥や獣がたかりはじめている。意外に血肉の臭いが薄い。

ざっと、千人分。

死屍累々。

【太守府/港湾都市北方海岸/災害廃棄物集積地】

俺がなぜ老人と雑談しているかと言えば、暇だから、だけじゃなく、目の前の楽しからざる情景のせいだろう。

まあ、しばらくやる事がないのも確かだが。

それはそれとして港街の人口はざっくり５万人くらいらしい。

戸籍制度などない。

だが不動産登記があり、職人免状があり、雇い人の上限や平均値、荷役に必要な人数や日雇いの募集状況などなど。

船主たち、両替商ら参事会、盗賊ギルドならだいたいあたりがつけられる。

それぞれの情報を持ち寄って、今回初めて人口調査。

太守府でもやった方がいいな、こりゃ。

その数が５万人くらい。

目の前に広がり山盛りな幾千の死体。

――――――――――――――――――――――――――――――大惨事である。

十人に一人くらい死んだと考えたら、破滅的だ。

数字以上に説得力がある光景。

いや、軍人、『士官は数字だけ見てろ！』って教えられてるんだけどね？

人型の肉、という印象の、残骸の山。

残骸というには形を保っており、顔形に服装まで識別可能だ。

時折、半裸になっているが、中世的世界中では服は立派な財貨だから仕方ない。

気分が良くないのは感傷だろう。

いわゆる派遣適応訓練で動物の臓物、新鮮なものから腐敗したものまで体験した。

いまさら死体の山に、生理的な嫌悪など感じない。

大して時間もたっておらず、涼しい気候。

すなわち臭いもたいしてしない。

だが違和感がひどい。

ここは死体安置所等ではない。

あからさまな廃棄場所。

宗教的バイアスがかかっていない異世界では、葬儀、という概念が未分化だ。

地球の中世も、形式が守られたのは上流階級だけだが。

【太守府/港湾都市北方海岸/青龍の貴族の前】

あたしは青龍の貴族を背に、問われた事を考えた。

あたしたちの世界で大半を占める人間の農民たち。

誰かが死ねば、村人総出で片付ける。

死体は野山に晒して、獣に任せる。

流行病などで量が増え、獣が処理しきれなくならない限り、わざわざ埋めたりはしない。

親しかった者は嘆き、皆が残念がる。

老若男女問わず貴重な働き手の減少だから痛手だ。

畑と家は、生前から一人で使うわけがないから、変わらず。

僅かな私物は親しかった者で分ける。

特に決まった形がある訳じゃないが、こんなところか。

都市の住民ならどうか。

大半は農民と変わらない。

片付けるのが隣近所になるだけだ。貧民なら役人が捨てる場合も多い。

死体の始末だけが違う。

決まった場所に埋める。辺鄙でかつ誰の迷惑にもならない、決められた場所に。

流行病などで大量の死骸がでたら、燃料費をかけてでも燃やす。

獣や異臭の発生源になるからだ。

「とむらい、はないのか？」

と訊く青龍の貴族。あたしには、その言葉がわからない。

そう答えると、説明されて、やっとわかった。

「死者に祈ったりはしないわ」

祈りとは、神殿で巫女神官が恩寵を得るために行うこと。

もちろん、気休めに祈りの力を持たないものが、真似事をする。

それも自分や自分たち、生きている者の為にする事だ。

「あたしたちエルフは、親や子供を大切にするけど、嘆き悲しむ時間が長いくらいの差しかない」

悲しむあまり、命を絶ったり、体を壊したりする。

だから、決まった日数の間は独りになるのを禁止したりする。

でも、それは死者の為じゃない。

人間は都市でも農村でも、富裕な家なら、まさに一家として対応する。

まずは氏族の有力者、配下の者たちが集まる。

結束を確認して残った家族を慰めて、その集まりの運営に協力する。

それがその家の力に応じた日数続く。

それが終われば、死体は焼かれる。

出来るだけ派手に、死者や家族の私物とともに燃やす。

力の誇示の為だ。

その後、氏族の慣習にそった期間、暮らしを慎ましくして、死んだ者を懐かしむ・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・形をとる。

【太守府/港湾都市北方海岸/死体置き場】

俺はエルフっ子を背後に下げた。少し強引に。

ご老人は街に帰り、元カノはシスターズや俺が付いていないと危ないＣｏｌｏｒｆｕｌの護衛、曹長と部下たちは作戦地域外周の確認。

ここで兵士は俺と神父しかいない。うん、員数外だね。だが、現地の護衛がいるから特に心配はない。

エルフっ子の話でこの世界の死生観がわかった。

なら、あれは皆、個人的行動なわけだ。

顔が引きつるのを止められない。

【太守府/港湾都市北方海岸/青龍の貴族の前】

あたしは従いながら、前を、青龍の貴族の前を睨んだ。

あたしの腕に手を添える青龍の貴族。

剣は抜けない、今は。

だが、いつでも振り払える。

死体の山のそこかしこから、青龍の貴族を見る視線。

恨みに満ちた――――――――――――――――――――――目、目、目――――――――――――――――。

皆が死体の傍らに跪き、皆が青龍の貴族を見る。

睨む程の力はなく、意思も力もない視線。

まとわりつくような、濁った目。

あたしは不愉快だった。

なにが起きてるか、わかるから。

こいつらは死体の友人、家族、恋人ってところだろう。

４日前。

暴動と鎮圧、そのどちらかはしらないが、そこで大切な人を殺された。

だから、青龍の貴族を恨む。

青龍の使役する海龍。

それが港街の沖に現れた後、暴動が起きた。

だから、大切な人が死んだのは、青龍のせい・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・バカな話。

前後関係と因果関係を混同してる。

青龍はただ、来た。

来ただけ。

それに怯えて混乱し、混乱に乗じて略奪が起き、逃げ惑ううちに事故が起きた。

街を守る為に、有力者達が私兵を繰り出して、怪しくない奴以外を皆殺し。

死んで、殺され、行方不明。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・青龍は、なにもしていない。

八つ当たりじゃない。

いわれのない無礼。

でも、青龍の貴族は皆を制した。

常と変わらぬ平然とした視線。理解してなお何も感じていない表情。犬にほえられたくらいにも感じていない。

だが周りはそうもいかない・・・・・・あたしも含めて。

激昂した盗賊ギルドの愚連隊、頭目が護衛につけた連中は、歯軋りしている。

船主がつけた武装船員と両替商が手配した衛兵は、青龍の貴族に従いながら左右に広がり槍を構えた。

これからここを片付けるのに。追い払えば死体が増えそうね。

「ＨＥＹ！ＨＥＹ！ＨＥＹ！」

叫びだした青龍の道化！なぜ？ふらふらと踊るように前に出る。

一番近くで、男の死体に寄り添っている女に、無造作に近寄る。

流石に衛兵が動くが、青龍の貴族が身振りで止めた。

「ユア、ファミリー？彼氏？ブラザー？」

ちょっと！

その女、瞳に憎しみが浮かぶ。

「ＯＫ！ＯＫ！Ｐｌｅａｓｅ！」

ナイフを渡した。道化が女に。そして青龍の貴族を指差した！このバカ！！！

「ＡＨ――――――――――Ｆｉｇｈｔ！」

え？

ナイフを目の前に置かれた女は呆然。

「憎いデショ？アレ」

アレ？青龍の貴族をアレって！

「ＧＯ！ダワイ！バンザーイ！」

死体の山を、そこで呆然とする連中を、さっきまで青龍の貴族を恨んでいた奴らを見回した。

「サアッサァ！ミナサン！！ご一緒ニ！！！！」

煽るように踊る。

愚連隊がキレそうになっている。

強者への心酔が青龍に向かっている、しかも連中の女頭目が青龍の貴族にベタぼれ、っていうより、巷の目には愛人と映っている。

道化のふざけ方に、身内を侮辱されている気分なのだろう。

しかも、もともと耐える癖がない連中だし。

「ドーシマシター？？？？？？？？？？」

いつの間にか煽る踊りを止めて、見回す道化。

「――――――――――――――――――――――――――――――貴女の思いはその程度か」

深い、低い、周り一帯に通る声。誰？道化？

「ナイフをとれ、挑め、仇を討て！」

道化が女を引きずり起こした。いや、すでに表情は『道化』ではない。

「恨めしいのだろう？憎いのだろう？死んだ男を愛していたのだろう？」

あたしたち、青龍の貴族と護衛たち。

死体の山にて青龍を恨む皆。

交互に見回す道化。

「さあ！どうした！！自らの命を顧みるな！！！大切な人を失った元凶を殺せ！！！！殺したあとで自分が八つ裂きにされても本望だろう！！！！！愛していたなら、大切な人だったのなら、奪われたと思うなら！！！！！！殺ってみせろ！！！！！！！」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――道化は、そっと女を砂浜に立たせた。

女も、死体の山にへたり込んでいた連中もうなだれた。

「司令官閣下」

道化が仰々しく一礼。

「弔いを行う」

青龍の貴族が続けた。

「全員、下がれ」

【太守府/港湾都市北方城壁/見張り台】

わたくしと頭目さんが、あの娘を引き留めました。

それはご領主様の命令。共に死ぬならともかく、今回はお供しちゃダメ。

あの娘も我慢してくれました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・涙目なのは仕方ありませんね。

わたくしたちは港街の城壁から北の浜辺を見ます。

ご領主様が向かわれた先。

死体の山。

この距離ならば、はっきりわからないけれど。

なぜか殺し合った人たち。奪い合った人たち。青龍の船が訪れた、それだけで狂ってしまった人たち。

なにがなんだか、わかりません。

だから、わからないから、覚えておきます。

こんなことがおきるのだと。

あら、なにかしら、海の彼方から・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

【太守府/港湾都市北方海岸/高台】

俺は気が付かれないように、一息。

不特定多数から任意の一部を隔離して、象徴的に叩き潰す。

おなじ状態の群衆は自らを客観視して保身に入る。

集団的異常心理の解体手順。

まあ、普通は暴動鎮圧のレトリックなんだが。

神父がいきなり動いてビビったが、まあ、感謝だな。おかげで死体を増やさなくてすんだ。

空をみあげ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嫌な予感に立ちすくむ。

大変な轟音が近づいて「耳を塞げ！！！！！！！！！！」来た。

超低空を飛びすぎる巨大な影。

全長１５ｍ以上、全幅１０ｍ前後、全高５ｍ以上。

この高度で音速越えかよ？？？！！！！！！！！！！

フライパス！！！！！！！！！！じょーだんじゃね―――――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――！！！！！！！！！！

しかも、３機？飛びすぎて、急上昇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・急降下！！！！！！！！！！

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――爆音。

【太守府/港湾都市北方海岸/高台/青龍の貴族と同じ位置】

あたしは必死にしがみついた。

あっと言う間。

青龍の貴族から渡された、いやふぉん越しにもわかる、龍の咆哮。―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――全身を打ちのめすような『音』。

いつの間にか、固く閉じていたまぶた。

「帰るぞ」

あたしは、硬直をとき、恐る恐る、青龍の貴族から離れ・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ようとして、脚がもつれた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・普通に抱き抱えられたまま、辺りを見回す。

愚連隊、衛兵、船員、死体の周りから引き揚げた遺族。

皆、倒れ、足をつき、地に伏して、呻いている。

気絶している者もいる。

なんでもないようにしてるのは、青龍の二人だけ。

まぶたを閉じていてなお感じた閃光に目を向ける。

浜辺が燃え上がっていた。なにもかも原型を留めない、どころか形さえなくなり燃え尽きて、なお燃え上がる。

燃えているモノがない、炎。

【太守府/港湾都市北方城壁/見張り台】

わたしち、港街のみなさんも含めて、だれもかれもが無言でした。

城壁上に集まった、街中の人たちにも、見えたのでしょう。

帝国の飛竜なら、何度もみました。

炎を吹くところも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・人を喰らうところも。

わたしだけじゃりません。

見せしめ、ですから、参事さんやちいねえ様のお兄さん、頭目さんはもちろん、街のひとたちも、一度は帝国の竜を見たことがあるはずです。

いま、あっという間に、私たちを睥睨していった青龍の竜、いえ、龍？

あれは、違います。

何がどうとは言えませんが。

絶対に、絶対的に、違う。

それに、あれは、その、竜、何でしょうか。

龍とか竜という意味じゃなく、もっともっと禍々しい、恐ろしいもの・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ご主人様の、あの方の、中に隠れているなにか、いいえ、わたしが見えないだけで、いつもそこにある何か、なのかもしれません。

わたしは知りたい。

お優しいあの方の、恐ろしくて禍々しい、なにもかも知りたくて・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぅ。

反省、です。

身の程をわきまえないと。