義務を果たすな責任を果たせ。

「ふむ、死とはこんなものであったのか」

「～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～」

「呼吸は回復、河も花畑も回想もなく明るくも暗くもなし」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「予行演習には十分」

「うぅぅぅぅぅぅぅふぅ」

「悪阻(つわり)か」

「・・・・・・・・・・身に覚えでも？」

「ないな」

「――――――――――なんで平然と返せるのかは後で聴取しましょう」

「今なにを訊きたい」

「今のはなんですか」

「第七師団音頭だ」

「質問を変えます」

「どうした急に？」

「なにをしました」

「超信地旋回と管制同期」

「信地しか判りませんが」

「馬乗りか」

「嗜みます」

「問題なし」

「管制・画像測位データが一致しないと混乱するんです」

「回転運動を感じながら風景が動かないから酔った、と」

「車体だけ３６０度回頭させて砲塔を逆旋回することに何の意味があるんですか」

「砲口が固定されていただろう」

「貴男がそう言うならそうです」

「凄いだろうが」

「それだけです」

「システム９９％と１％の慣れで生み出す高等機動」

「左右の履帯(キャタピラ)を同時に逆転させるだけの無意味さはまさに芸ですね」

「カメイツジ」

「仮名ツジ！」

「学んだな」

「信地と聴いて馬しか浮かばない素人です」

「乗馬はプロか」

「貴男の馬(９０式戦車)ほどではありませんから念の為」

「狭場に入らせない戦車が同じ場所で旋回出来る必要などないからな」

「丈夫な石畳すら粉々で足場を崩しています」

「５０ｔオーバーが踊れば当たり前だろうな」

「東側戦車大国が無視するわけです」

「だから無視できなくなったのだな」

「つまりセールスポイント、ですか」

「要は技術力を誇示する西側に対抗」

「整備性を無視して買い手がありますか？」

「兵器を並べて喜ぶ輩を知らないとでも？」

「戦車を踊らせて胸を張る輩は知ってます」

「転移前はソレ」

「では今はなに」

「骨の化け物やら不死のナニやらを砕く時に便利ではある」

「今ソレは居ませんから今のことを説明して頂けますか？」

「素人に判りやすく玄人に解りにくく」

「―――――――――――――――――――――――動き始めた」

「ではまとう」

「 (しめころしかけて) (ごめんなさい)」

「気にするな」

「！」

【国際連合統治軍第１３集積地/聖都市内/中央暫定中立地帯/大神殿（改め建築楽器）内/中央/青龍の貴族】

俺が例外を知らないだけかもしれないが。

戦争(仕事)とは人生の間に挟まるハムのようなもの。

サンドイッチってのはパンを食べるのであって、具は全部オカズなんですよ皆さん！

そう！

ＵＮＥＳＣＯ調査員であることがチーズなら？

つまり！

女であることがクロワッサン。

大きく口を開けて待ってるのが子どもかな？

重要なのは銀シャリで在り、性別であり、人生です。

どーでもいいのは戦争とか判子押しとか突破戦闘等々。

とはいえ俺のとこの娘たちに手を出そうとたくらむ組織(ＵＮＥＳＣＯ)の一員とあっては、気軽に口説けないから慎重に口説くしかない。

俺の目の前で肢体を擦るライアン。

起き上がれて何よりです。

帝国女騎士が挟まってたパイプ椅子から曳き摺り出したのだが。

彼女(帝国女騎士)の気配りにも感謝して後日ゆっくり御話したい。

日本と異世界、互いの立ち位置が並ぶ頃に期待。

一緒に死ぬことにならなければね。

帝国女騎士は二十代初め。

最悪でも十年後には、十年もの悠久の時をこらえ抜けば、口説ける。

まあそれはそれで美味しそう。

今の時点で健康な生活習慣が見て取れる、異世界の上流階級。

肢体の衰えと引き換えに熟成された経験値を楽しめるであろう。

未来は現在の延長にしかない。

目の前の立ち居振る舞いを楽しむだけで、半世紀以内の口説き方がわかる。

いやほんとに十年前と今を見比べれば、そうなるよなー、って思うもんな。

女に限った話ではないかもしれんが、女に限って考えること。

一夜の楽しみは十年前から始めておくもの。

夜とは限らないが昼間からがむしろ好きだが。

こうして数次に渡る五ヶ年計画(ナンパ)を繰り返すからこそ、毎日の糧(女)に不自由しなかったのだよ。

過去形。

これまで人生をかけて積み重ねた数々の蓄積(女関係)。

それまで日本列島に置いて来ざるを得なかった。

だからこそ仕事(撤退戦)のついでにナンパするべき。

ここから始まる異世界五ヶ年計画(ナンパ)。

合間々に日々の雑務（戦争）。

だからといって、今日今この瞬間を諦めませんけどね。

十年後に備えるからといって、十年間餓えられる訳もない死んでしまいます。

【聖都/聖都市内/中央/大神宮内/巫女の胡坐/青龍の騎士団陣形中央/青龍の貴族前/跪くエルフっ娘】

あたしが彼に必要な自信は、ある。

もっともっともっと欲しがられるようになる。

でも、世界一の女だと自惚れるのは、とっても悔しいことに、無理。

この世で一番。

そう言い切れないなら、口が裂けても言えない。

―――――――あたしだけで満足して―――――――

うん。

無理。

我ながら

・・・・・・・・・・思い付くのが、図々しい。

ずっとずっと想っているけど、何様か、って話よね。

恥ずかしい。

彼はきっと、そんな女(あたし)を笑って玩具にするでしょう。

馬鹿な振る舞いで嫌われたりはしないけど、好きな男には格好つけたい。

――――――――――――――――――――いずれは、あたしだけで満たす為に。

だから、彼の剣にもなれるよう、そう考えると、ついつい斬りたくなる。

女としてだけなら、彼の大切な物を減らせない。

割り込んで成り代わってしまえばいい、いずれ。

でも、他の理由があれば

・・・・・・・・・・斬ってもいい、と、あたしが囁く。

【国際連合統治軍第１３集積地/聖都市内/中央暫定中立地帯/大神殿（改め建築楽器）内/中央/青龍の貴族】

普段の俺なら、女を抱き起こすポジションを譲らない。

もちろん女体を堪能する為じゃない。

服の上から始めるのは一向に構わないが。

堪能するなら時間と手間はじっくりたっぷりかけないとな。

ってーか、触るだけでナニが楽しい。

深い付き合いなら、極々極めて稀に偶に力一杯抱き締めて匂いを味わうだけで済ませても良いかな時間がないし、って時も否定しないよ血涙をのんで。

それでも見知らぬ女に触れる機会を逃さないのは、自然に親しくなる為。

肢体と心は不可分なので、縮めるべきは距離のこと。

仲良くなってから、とは敗北主義者の妄言に過ぎない。

処女童貞に妄想を付け加えただけで毒性化。

欲するを求められずに捨てられず、欲しないフリを続ければ？

犯罪者になるか犯罪者にするか、どちらかでしかない。

欲しがりましょう、勝つために！

これ見よがしに全力アピール！

前に進みたいのではなく進むんだよ簡単だから

――――――――――――――――とは常に繰り返す児童(小学生相当)生徒(中高生相当)教育。

日本では、だけどね。

うちの娘たち(異世界)は、それ以前。

距離感の掴みかたが、異世界だと、よくわからん。

うちの娘たちだけならゼロ距離どころかマイナスだし(めり込んでくる)。

うちの娘たち以外からは恐れて遠ざけ監視されてるし。

日本、ってか地球人類基準で当たれるライアンなら問題なし。

だから、こーいう機会は大切にしたい、したかった残念。

近しいから触れる。

確かに。

触るから近付ける。

これホント。

お見合いや政略結婚から生まれた円満な夫婦なんか珍しくもない。

仲良くなってから互いの性癖を全部知ることもある。

互いの性癖を全部知り尽くしたら仲良くなっていたこともある。

五分五分かな？

触ることが目的だと失敗するみたいだから、お勧めしないがね。

そもそもそれじやたり、まあいいが

・・・・・・・・・・お。

ライアンが軽く柔軟体操に入ったぞ。

肩に担がれ椅子ごと蹴倒され挟まって、無理な体勢が続いたからな。

手先足先腕脚首股腰、と動作確認している。

慣れてるのかな？

不測の事態、事件事故でダメージを受けることに。

観ている俺から診ても、異常はないな。

走れる屈める隠れられる。

ま、それは余談(仕事)だが。

肝心要

――――――――――つくづく勿体ないと観てとれる。

元々スポーツ・ウェアじゃない。

肢体のラインを強調することに余念がなく、為にサイズの余裕がない現代女性限定スーツ。

スーツに限らんけど。

かるーくストレッチする程度で想定以上のライン協調。

上げ底矯正偽装鯖読み自己満足がレディースの基本。

ならばこそ自分に嘘をつく必要がない美女が一層輝く。

天然。

養殖。

どちらも大好物。

どちらも俺次第。

が、愉しむ以前に楽しいのは本物。

観て愉し、魅せられ楽しい、視てたのしい。

近い未来の大いに有り得る可能性を計画すれば大変に眼福でよいと思います。

・・・・・・・・・・出会い以外は。

子どもたち。

僅かな機会も見逃さない俺を見習っていいんだよ？

担がれるわ。

椅子ごと蹴り倒されるわ。

椅子に嵌まってジタバタするわ。

知らん相手に呼び捨てられるわ。

ついてねーな、ライアン。

恵まれて産まれ不憫に終わる。

いやいやいやいや、終わらないようにして欲しい。

俺はしないけど。

今８人ほど幸せのウェイティングリストを抱え込んでますので。

子どもは道端に落ちてるから仕方がないね。

異世界じゃなくても結構落ちてるから勘弁していただきたい。

日本なら異世界とちがって隣近所に押し付け先があるけどな。

つまり異世界にはコネがないから仕方がないと言い切れる。

ライアンは大人なんだから自力で自分の周りの人に頼りなさい。

これがホントの絶対他力。

Ｇｏｏｄ Ｌｕｃｋ！！

・・・・・・・・・・軍人、おっと自衛官、いや国際連合軍だからいいのか、が幸運なんか呼んでどーするかという話。

普通の軍人、特に職業軍人に幸運を祈ったら、怒られるレベル。

いやいや簡単な話。

専門職、職人技術者学者に創作などなどなど、そんなプロフェッショナルを思い浮かべよう。

その行き方に幸運を祈ったら？

――――――――――侮辱でしかない。

まあ戦場、軍隊で幸運が流行る理由は、兵役って考え方のせいだけどな。

徴兵制はもちろん、志願制でも本質的に同じ。

嫌なことを嫌々しているさせられてる。

幸運にしか頼れまい。

志願したのに？

そりゃそーだ。

職業軍人と志願兵は似て非なるものもの。

家業、嗜好、向き不向きで為る職業とは違い、志願者は義務で動いている。

承認欲求、罪悪感、貧困など生得環境からの逃避。

個人的な理由じゃなくて、社会的な理由。

合衆国陸軍を御覧あれ。

嫌々やっている度合いで言えば、一律平均恨みっこなし、でも怨むよ畜生ふざけやがって、な徴兵制よりなお悪い。

質の悪さはどっちもどっち。

祈りたくもなり、祈られたくもなる

・・・・・・・・・・救われない底辺が縋るのが祈り。

まあ美女のライアンは民間人、じゃなくて侵略戦争してる国際連合の一機関、ＵＮＥＳＣＯの一員だけど美人だし。

不採用通知以外の幸運を祈っても失礼には当たらないと思います。

美女には幸福が似合うんですよ。

肢体が是非に観るべきレベルである、だけじゃなくても。

何か一つでも秀でたところがあると、不幸は似合わない。

ライアンの今日は人生で一二を争うツキのなさ。

酒を奢るべきレベル。

それ以外はしらんが。

深く知り合うのはこれから。

俺が生きてたらね。

――――――――――で、柔軟終わった？

そろそろいいかな？

邪魔だから最後まで着いてこなくていいよ？

後で連絡するから。

エルフっ娘の耳もそう。

途中までライアンを

――――――――――はて？

動きはじめた。