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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第二章「東征/魔法戦争」

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フィンランド方式

【用語】


『オンカロ』:地球世界唯一の核廃棄物最終処分場。現在の技術では他の処分方法がないために、合衆国でも同種施設建設にシフトし始めていた。


『フィンランド議会』:10万年後の知的生命体にオンカロの利用方法をどのように伝達するか話し合っている議会。主要国言語と絵文字図解による継承が有力。「むしろ伝達しないで忘れられる方がよくないか?」という意見もある。「掘るなというと必ず掘る」知性体の特徴と「地下遺跡は伝承が原因で発覚する」という考古学的見地からもっともな意見。だが、「偶然見つかって被爆者が出たら責任問題」「警告を無視したなら無視したものの責任」ということになったらしい。フィンランドの責任感は10万年以上持続することが議会で決まった瞬間である。



はい。

文句言わない、文句言わない、私に言わない。



原子力政策がなにもかも、すべて、全て、総て、フィンランド方式に決まりました。



君たちの指導者が決めたんだから、文句はそっちにね。


いや、もちろん、私だってやりたかった。


いや、違う。

我が身がかわいくて、やらざるを得ない。


しっかたないな~~~~~~ほんと、こまっちゃう。



原子力政策未経験のド素人、しかも無知に無知な思考能力に難が有りすぎる、ボウフラもどきに、やらせるわけにいきませんからね。

おまえだ、おまえ。



だってねぇ。

人類史上、我がフィンランドだけが、原子力政策を実行したんだから仕方ない。


あのね。

そこ勘違い。

あんたら、失礼、皆さんがやったのは原子力政策じゃなくて原子力技術ね。

原子炉作り、廃棄、輸送他、小手先のお話は任せますよ。




はい!

大切なこと。

借りたら返す。

開けたら閉める。

出したら仕舞う。


人間の常識。ルール。当たり前。




だから、

『排水口の無いトイレ』

なんて、真っ当な批判受けちゃうんですよ?わかる?だーかーら!それ先送りだろ?

一時保管、って何時までだよ?


危ない汚染物質かき集めて一時なんて誰が納得すっか!!



ごまかしを手伝ってくれるBigBrotherはもういねーぞ?

始まりから終わりまで考えるのが『政策』だ!

そこまで考えたこと無いだろーが!



頭わりーんだよ!!!!!!!!!!



あ?



フィンランドは考えて実行した!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・同じ先送り?


おまえ等はオンカロ作ったのか?

たかが十万年にビビってだんまりキメてだたろ!!!!!!!!!!


だから馬鹿にされんだよ!


原子力って聞いただけで詐欺師扱いされんのは!!!!!お前らのせいだ!!!!!実際はそんな高度なもんじゃねーけどな!

良かったな!国連はお前らペテン師っポイ異常者にに見切りつけたぞ!!!




ここからが原子力世界の始まりだ!!!!!!!!!!






はい注目。


我々がやる事はただの焼き直し。ってより、成功例の真似です。

既に我がフィンランドで議会決議をへて真っ当に皆さんの同意を得た民主的で科学的な、原子力ロードマップの異世界バージョン。


原子力利用に必要なもの。



立地。



これだけ。

技術は完成してるからね。90年代以降の技術なら大丈夫。

以前のはダメだよ。


技術には鮮度があります。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あったりまえだ!!!

お前ら馬鹿が!

ガソリンスタンドの上に!花火大会会場誘致するから拗れるんだよ!


ヒューマンエラーも自爆立地も『原子力』の問題扱いじゃねーか!

馬鹿で恥知らずの殺人鬼と詐欺師と重過失致死犯が集まりゃ言われるわ!!!!!

「原子力は危険だ」ってな!


おめーらは金輪際「原子力」って言葉使うな!!!




はい。

立地に必要条件は三つ。



ひとつ。

最低十万年以上地震が無いと確認出来ている地盤。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?ない?

地質学者に訊きなさい。

ありふれてるから。

まあ、異世界に地球の常識は通じないかもしれないが。それはその時の事。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あんたの国にない?知ってる。

いや、大陸と海洋プレートの狭間にあるんだから、誰でもわかるって。

チャイナシンドロームで地球改造狙ってるかとおもったわ、マジで。

あ、過去形だった、ね。


異世界転移後の地殻は調査中。


だけど、下がどうあろうと表層が脆弱な地盤が原子力に使える訳がない。

惑星規模でなら適切な地盤があるから大丈夫。


向き不向きの話ね。



それとも、あれかな。

ゴビ砂漠で水力発電しないと死んじゃう病?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちがう!良かった。



ふたつ。

次の条件。

外洋海岸線から最低50km以上離れてる事。


地盤が強固でも水層伝達で破綻したら目も当てられない。何千km先でも地震が起きると、同じ海に面してる所が全部潰れる。

海洋国家の古典的常識。釈迦に説法だよね?


海禁止。

海禁止。

海禁止。


どうしてもってなら、原子力発電船ってアィディアもあるね。

コストが合うか知らんけど。


原子炉は水冷基本だから、内陸湖、大河、内海がベスト。

空冷もなくはない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・また?

人類の生存圏に現在は存在しない?つまりこの列島は海に面してばかりだよって?


知ってる。

だからね。



向き不向きの話してるって判るね?



候補地条件は大陸の話してるの。異世界の。

スマトラ地震覚えてる?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・良かった。


原子力技術者は、技術者の端くれは、海洋島嶼地域に原子炉企画しません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あんたも技術者?学者ね。



ミスター学者、クルベラ洞窟(世界一深い洞窟)で太陽発電する宗教とか?

向き不向きね。


わかる?



みっつ。

必要地域との交通。


まあ、廃棄場所なら優先順位は低い。

電需地域を建設適地に作る、という考え方もある。

これは安保理と国連総会の検討内容。


了解頂けたかな?




最後に。


今、 一番優先されるのはオンカロ。

放射性廃棄物最終処分場。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、一緒にしないでね。

最終、処分だから。


先送りじゃない。


危険性が無くなるのにが十万年。

なら、処分場も十万年以上稼働させる。

ただそれだけの施設。



我々フィンランド人は責任を理解していてね。

我々が出した廃棄物は我々が、最後まで、完全に始末する。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・時間がかかる?

なら時間をかけるまで。


十万が百万でもね。


なーに、単なる穴蔵。

立地選定を間違えなけりゃ、保守管理不要で十万年、最低でも、十万年、機能します。


仮に、不幸にして、人類が残っていなかった場合に備えて、図形メッセージを企画してるぐらいでね。


「危ないから掘るな/解禁十万年」

って。


まあ、今回は無理。

自前で処理できる場所がない。

のに廃棄物はいっぱい。


旧式で非適地にある原子力施設を早急に破棄しないといけない。


よそでやるしかない。

それが人類の総意。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無駄?

停止状態の原子炉も冷却は必要だね、確かに。

事故リスクも維持コストもかかる。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あのね。


だからって止めなかったら、破滅する。

油田ど真ん中でファイヤーダンスしてりゃ丸焼けになる。

永久に続けたら、必ずなる。



あれか、君はロシアンルーレットをオートマチックでやらないと死ぬ掟か。

なら黙って死ね。

枝と針金は向こう。

硯と墨、筆と半紙はあっち。


ほら、はやく、結果は同じだろ。



さて。

十万年後の為には、只今、すぐに、即時、始めないといけないんだよ。

いいですか――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!





原子力は安全です。





繰り返します。

原子力は、ライターと同じくらい安全です。

航空燃料の上で使わないライターくらい安全です。




バカとキ○ガイと詐欺師と犯罪者ではない人が扱えば安全です!



《国際原子力機関(International Atomic Energy Agency)/IAEA総会/日本武道館》




【太守府/港湾都市/埠頭中央/第一次隔離エリア中央】


俺は『開戦理由ってこれだけじゃないよな?』と空を仰いだ。

IAEA総会の配信動画から流れる罵詈讒謗・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・教育に良くない。


バカに馬鹿って言うのはいい。

だが、バカに死ねって言うのは如何なものか。

ミミズだってオケラだって人魚だって生きているんだ・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一緒にしてすいません。


ボリュームを下げて周りを見た。

数百m離れた神父はワザと対生物化学戦防護服を着て・・・・・・・・・


『エーンガッチョ!!』


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・謎ダンス?そんな装備で大丈夫か?


春先とはいえ、暑かろう。

だから装備してるのは神父だけ。

軍政標準装備だが、わざわざ奥から出したんか?

指揮軽装甲戦闘車の上でアピールダンス。

しかも隊内通信で『エンガチョ』コールまで流してる。


ネタの為なら全てを賭ける。

アメリカ魂ここにあり!




いや、そうじゃない。




春風、陽光、パシャパシャと潮騒が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、潮騒の一種だな。


砂浜で塩を採取するのに使うらし大釜に大樽。


樽に海水を満たしてその中にポチャン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・で済む訳ない。


俺たちだって、密閉された樽に閉じこめられたら窒息する。

完全エラ呼吸なら、海水が空気扱いかな?


まあ、そんなわけで定期的に海水を入れ替える。


入れ替え前の海水を海に排水したら隔離の意味が無いから、大釜で煮沸消毒。

まあ、抱きしめた俺と元カノが平気だから、毒性物質は無いだろう。


無いんじゃないかな。

無いといいな。



ドワーフが何人か居ればこの大作業が出来てしまうから、すごい。

大樽一杯の海水を樽から鍋に入れて沸かして捨てる。

もちろん、海から新しい海水を汲む。


豆タンクじみたゴツい体に大きなパワー。

掘削機なみの土木能力。


豆トラクター?っていうとポージング。


拍手すると何故か照れる元カノ。

お前じゃない。



そのまま腕をねじ上げられたドワーフ。

ねじ上げたのはエルフっ子。

組み手中にキメ顔するからだ。


ド突くのに銃床が必要なドワーフボディ、関節は弱点か。



{おねーさま!}

「誰がよ!いいから、ちゃっちゃと報告!」


さて、新顔は?


{絶好調です!おねーさま!}

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・仲が良くて良かった。


「バイタル変化なし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っーか、平常値わかんないし」


いまさらか。

まあ、元カノも同じ任務。

俺と元カノ、互いに観察しあうのも任務のうち。


「どーするよ!これ?」

あ、俺?


「数値記録、快不快問診、食欲有無、睡眠状態、それを遭遇前と後で比較」

だけでいい。


どうせ水棲人の発病兆候なんぞわからん。

痛いか痒いか空腹か満腹か眠られるか起きられるか。


それだけわかりゃ十分だ。


「ん」

元カノにも伝わったようだ。

「多くない?」


俺がやろうか?


「これ以上!女を増やすな!」


はい、はい。お茶飲んでますよ。

ほんとーは寝倒したいんだけどな。意識とは別に体が見栄を張ってしまうのだよ。


具体的に言うと、朝、目が覚める。

顔を洗ったところで『しまった!寝てりゃよかった』と気がつく。

寝直そうとして、純真な視線に気が付く。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しぶしぶあきらめる。


そして!お茶を楽しみながら、朝から動画鑑賞!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、決してサボっている訳じゃない。


本日の任務は『自分の24時間監視』なのだ。



なんだそりゃ?と言われるかもしれない。



国連軍規定。

新種発見、いや、新種接触時の規定行動だ。



新種生物とは即ち生体感染源。

接触は避ける。

避けられなかった場合は、接触者、接触した新種を一定期間隔離エリアで観察する。


自己診断を含み、体機能の変化を見逃さないように、通常業務は禁止。

暇つぶしは許可されるが、夢中になるモノはダメ。

同じ理由だな。


ほんのわずかな傾向を見逃せば、致命的な結果になりかねない。

退屈で退屈で、ちょっとした変化にも飢えるようにしないといけない。

だから動画も制限があるので、ニュースっぽいものの中からできるだけ笑えそうなものを探すのである。


他の過ごし方はないかって??


俺の場合、読書禁止・・・・・・・・・「空腹も忘れちゃうものね」・・・・・・・・・

映画禁止・・・・・・・・・・・・「夜昼無くなるから」・・・・・・・・・・・・

ゲーム禁止・・・・・・・・・「18禁ばっかり!!!どーゆー」


な!!プロテクトは!!!俺のパソコンチェックすな!お前は今カノか!ややこしいな元カノ!



『だんちょー!そんなことしてるから≪元≫になっちゃうんですよ!!彼氏のプライバシーをあさるなんて非常識です!!!!』

「え?」


驚くな元カノ!

呼んでないのに通信に割り込んできたマメシバ三尉、言ってやれ言ってやれ。

もちろん三尉も数百m先である。


『だんちょー!このハナコがだんちょーを立派な恋する乙女にしてみせます!司令官閣下がだんちょー無しに生きていけないくらい恋する乙女に!!!!!!!』


こぇーよ!!どんなクリーチャーだよ!!!この乙女チックサイコパス!!!!


『退けサタン!MEはYOUを見捨てます!しか――――――――――し!!!!!!!!!!主はYOUをCatch&Release!』


お、おう。


『Be fruitful Andmultiply, and Fill the Earth!!産めよ増やせよ地に満ちよ!』


ディスプレイの嫁が子を産むか!!!!神父!謎ゲーム入れたのはてめーか!俺の端末に介入出来るのは監察官だけだもんな!


『NO!NO!NO!コンジョー!!コンジョー!!!』


ってロリと人外モノ!妙な属性を!


『主はおっしゃる!全てを愛せよ!博愛は神の導きなり!』


お、おう。


『目覚めよ!覚醒の時――――――――――DA!!』

「アタシの男になにを吹き込んどるか!!!!!!!!!!」




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――さておき。


防疫期間である。

隔離が命じられるのは、人魚姫に直接触れた者。


料理・・・・・・・・ってか、イカ/クラーケンの腹から取り出して盛り付けたドワーフ料理人8名。

――――――――――――――――――――――――――――踊り食いが好い、とかなぜ思ったんだお前らは。

いや、団長こと元カノの逆鱗に触れずっと正座中。

ただし、エルフっ子との対戦中は別。

そして人魚をひっつかんで海中に飛び込んだ俺と元カノ。



短期間の隔離で激症性感染症の有無だけは確認できる。

確認されたらWHOの降臨だが。


長期潜伏型の感染症は諦めている。

ってか、短期隔離でも最低二週間は欲しいよね?


とはいえ、未知の病気なんか発病しないとわからない。

どうしようもない事は、放置。

常任理事国の政治家連中・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・軍人より腹が据わってやがる。


それが国際連合の考え方。



観察?隔離?そんなんじゃ異世界に攻め込んだ国連軍はどうしたんだって?一歩毎に新種と接触(戦闘)しながら立ち止まり隔離エリアと隔離期間を置いたのか?

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――もちろんだ。



戦闘中だからって、防疫をおろそかにはしない。

地球人類の為に戦っているのに、最悪の脅威をスルー?そんな本末転倒、有り得ない。


国連軍主力が異世界種族に接触する前に、1ヶ月以上の隔離期間を置いているに決まってるじゃないか!!!!!!!!!


そう!日本の異世界転移から3ヶ月。

開戦から2ヶ月。

今は4月に入ったばかりだね、地球換算で。


1ヶ月前に最大の会戦があり、国連軍の全面攻勢で1ヶ月間、追い回された帝国軍の主力が全滅

したのだが。


訳が分からない?大丈夫!だからこそ大丈夫!わからないうちはシベリア(南クリル)送りにはならないぞ!


え?よく聞こえなかったな?

――――――――――――――――――――――――――――――計算が、合わない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――気のせいだ――――――――――そうだろう?思わない?



『ふふふ』

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――全員何も気が付いておりません!!!


いつも通りの笑い声、な三佐である。

みんな隔離エリア外から普通に話しかけてくるよね。三佐に至っては太守府から動いていない筈だ。


魔女っ子が目を見開き、周りを見回す。

お嬢も。

皆に三佐の声が聴こえてる?


PtoPだって、指定グループ通信だって出来るのに、なぜにオープンチャンネル?

シスターズにも端末を付けさせているから、聴こえているんですが。

どこにいるか探しちゃってるんですが。


『いい事を教えてあげましょうか?』

「遠慮しておきます」

上司の言う、良い事が、俺にとって良いことなわけがない。

部下の拒絶を聴く上司もいない。

チッ!


『あなたたちの日常は記録されてるわよね』


おおむねは。

通信記録は常に保存されている。ヘルメットやベレーのカメラの映像も同じだ。データとしては隊内の通信サーバーから中継器を通して国際連合軍大陸西岸拠点の出島に送られ、そこからさらに本土に送られる。


『記録は私たちが管理している』

国連が、とも国連軍が、とも言わずに、私たちときたか。

膨大な記録データは歴史そのもの。

しかしそのデータは必要に応じて更新されるし、もちろん改鋳可能だ。


『隔離中の言動記録は消去されないのよ』


防疫対策のヒントがどこに隠れているかわからない。

だから決して消去されない。

だからどうだというのやら――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――嫌な予感が高まってきたぞ。



『消えない記録を残せるわよ』


そりゃレアですね。

そんなレアすぎるチャンスをなぜ俺に?

さあ、どうすれば正解だ??


隔離エリア外の歴史家、相変わらず少女っぽくて大学生に見えない、が目を見張っている。

つじつまが合わない、というより、つじつまを合わせると浮かんでくる真実を永久に残せる、と。

俺たちを、視線ひとつで消し炭すら残さないで消せる人間でも、その記録は消せない、わけだ。

なら、答えは簡単。


「これまでのことも、これからのことも、興味ありません」


はっきりきっぱり明確に。

歴史家が目を吊り上げる。まあ、彼女には何と引き換えにしてもほしいものだろうな。

元カノの視線で隔離エリア外のドワーフたちが道を塞いでいるが。


『なら何が?』


「目の前にあるものだけで十分ですよ」


何かをほしがるニートなんかいるもんか。働いてまで欲しいものなんかない。どうしても必要な物ならどうにでもなる。のんびりゆっくりだらだらと。それで充分満腹だ。


『・・・・・・・・プ・・ははははははははは!正しい!!正しい!!!私たちが守り従うべき大衆よ!!!!!』

大ウケである。この際クビにしてくれんかな。


「気に入ったのなら」

『ダメ♪』

「チッ」

やば!つい舌打ちしてしまった!!


『期待してるわ、臆病者♪』

うわー!真正面から罵るよこの人。

とはいえ、舌打ちの後だとパワハラネタにするのもまずいか。


「光栄の極み」

上空の哨戒気球、俺はそのカメラに敬礼して見せた。




【太守府/港湾都市/埠頭中央/第一次隔離エリア中央/青龍の貴族の、正面右】


わたし、わたし、わたし、わたわたしは・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・プシュ――――――――――――――――――――――――――――――――――。




【太守府/港湾都市/埠頭中央/第一次隔離エリア中央/青龍の貴族の、正面左】


――――――――――――――――――――――――――――――――――わたくしは、気を取り直します。頬の熱が退くまで、お顔を見上げることができませんけれど。

ご領主様からいただいた、ネックレスに手を添えて、落ち着くように言い聞かせます。

わたくし自身に。


そして、あの娘の手を引いて、抱きしめます。

笑顔過ぎて、殿方に見せられたものじゃありません。日向で目を細めるネコのような・・・・・

・・・・・・?気絶してるの???


【太守府/港湾都市/埠頭中央/第一次隔離エリア中央/青龍の貴族の、正面奥】


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――聞こえた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――あたしは力加減を忘れてしまった。


「お?」

「おちたの??」

「ここまでか」

「それよそれ」

「とどめにわしの斧を貸そうか」

「存外だらしがないのう」

「ほっとけば死ぬじゃろ」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――手伝いなさいよ!!!カツを入れるから!!!



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