望郷
【用語】
『ハル』
:17世紀の日本人。国籍は三度変わったものの、社会学分類では「日本人」とみなされる。まず徳川期日本の徳川家直轄領長崎にて出生。日本国籍に登録。当時の日本政府は明治以降と違い出生地主義だった。つまり日本列島で産まれたら日本人、という考え方。その後、ハルは父親の国外退去に伴い家族と共に海外へ移住。日本政府による民間人の帰国制限が開始された時期。ゆえに、ここで父親のポルトガル国籍へ移行。まだ未成年であり、本人の意思は問われなかった。その後、21歳で最終国籍のオランダ籍を取得。オランダ東インド会社の若手幹部社員との結婚に伴う帰化。そのまま老衰で亡くなるまでオランダ領インドネシア中心部で過ごした。血統的には極東アジア系とラテン系のハーフ。当時の長崎は混交地域なので前者は日本、大陸、朝鮮半島。後者はジェノバかナポリ、当時多民族で構成されていたハプスブルク帝国辺境はイタリア半島出身。どれか、ないし、ハイブリッド。母親は長崎の貿易商会を生家に持つ娘。父親はハプスブルク帝国東アジア貿易に携わる高級船員の男。当時の世界で有数の鉱山資源産出兼工業輸出国の日本。父母が理想的な関係であったのは言うまでもない。その愛娘は富豪の娘として幸福な成長期を過ごし、容貌を含めた才媛として名をはせた。しかし時代の転換期。ハプスブルク帝国の東アジア貿易縮小極東撤退に伴い、両親姉妹共々出国。もちろん豊かな家産を持って、であり生活の心配はなかった。その後21歳、美貌の絶頂期に結婚した相手が東アジア貿易絶頂期のオランダ人有力者。英蘭戦争でオランダが没落するのは半世紀ほど後。彼女夫婦の人生には無関係。夫が仕切るオランダ東インド会社の収益に占める日本の重要性。彼女が長崎近辺に残した親族友人を鑑みれば、最高のカップリング。70歳オーバーまで父母姉妹、ビジネスパートナーを兼ねた美丈夫の夫等々に囲まれて、皆の尊敬を集めながら、欧州の大貴族並みの生涯を最初から最期まで予定通りに過ごした。
……満足すべき生涯。
そんなハルが、唯一切望し、唯々絶望し続けた夢。
……日本に帰ること。
日本政府の管理貿易体制において海外から持ち込めるものは、情報だけ。フィリピンのスペイン軍要塞の構造や総督の経歴。欧州や北米の戦争。日本来迎予定のロシアやアメリカ艦隊の編成武装提督の経歴趣味志向政治背景に出発から帰国までのスケジュール。等々。なんでペリーが期日を過ぎて何時までも来ないのかと浦賀奉行が乱心するくらい。
……単なる金持ちなど、日本政府が気に留めるわけもない。
だからハルは帰れなかった。だけど諦められなかった。ただただ嘆き続けて、哭き続けた。
日本に残した親族友人たちに繰り返し繰り返し文を認め、オランダ商館経由で祖国との繋がりに縋る。あるいは、その為の結婚だったのかもしれない。
日本列島に産まれた。
東洋と西洋に生きた。
日本で死にたかった。
……とあるユダヤ人は記す。
「彼女は天国に産まれた人のなかでユダヤ人の想いが解る最初で最後の人だ」
こいしや、ゆきたや、みたや、みたや。
――――――ハル、洗礼名「Maddalena」(マダレナ/マッダレーナ、とも)
《望郷の詩》
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿(改め建築楽器)内/中央/青龍の貴族】
俺のターン。
その前に、相手を視る。
目の前だけ。
眼は口よりも饒舌だ。
黒瞳。
濡れた碧眼、チッ!
渇いた碧眼、(シャ~)。
なんぞ?
ドライアイ?
ちがう?
なんでネコ的威嚇音がひざうえから?
男の目は楽しくないな~。
・・・・・・・・・・・ってのもおかしいか。
ゲーム中、対戦相手の眼ほど楽しいモノはない。
――――――――――んが、たのしくない。
その事実から導き出される結論は?
決まってる。
海兵隊軍曹は対戦相手の眼をしていない。
コレは何の眼だ?
ちょうど目の前、仔猫たちが向ける先は
・・・・・・・・・・なんか、気づいちゃったよ。
やっべ。
――――――――――涙眼。
軍曹は故郷の子どもたちを思い出してるのかな。
うちの娘たちはコーカソイド系の外見だしね。
アイオワなら人口の八割が白人のはず。
想いねぇ。
日本列島無き跡の地球に遺された日本人を!
日本列島に遺された地球無き各人種を!
――――――――――もらい泣きしてくらぁ!
俺を泣かせてどうしようというのかうちの娘たちはモフらせないからな!
私物化上等。
名前が書いてあるくらい。
それを知ったときは退きました。
国際連合/軍/統治軍共通識別票。
アクセサリー型のドッグ・タグの登録データ。
うちの娘たち全員が四肢と頚につけてる奴。
俺が付けさせたそれに、俺の名前の項目がある。
国際連合管轄下の異世界人種/種族には、必ず責任者が設定されている。
普通は保護責任者。
後は管理責任者もある。
序列を付けて複数。
俺は誰から誰の権を委ねられたのやら。
保護は護るだけ。
管理は維持するだけ。
序列は持続するために。
やむを得ず発生した面倒ごとを処理する役割。
そして俺は、国際連合管轄下の指定された異世界人種/種族の国際連合が持つと当人に諾否解説無しに決めた全権を、委ねられたそうな。
ワンマン安全保障理事会
頭オカシイ。
いうまでもありませんね。
国際連合のフリーダムを、俺が。
なんでもあり、を文字通りにやれって
――――――――――設定は三佐に決まってる。
訊いてないけど怖いから。
保護者は良いんだけどな。
民間人の生殺与奪権って。
軍人の枠、越えてませんかね。
―――――――――――――――――私物化するのは、私物じゃないから。
と言うわけで、誰が許しても俺がモフるを許さない。
目の前に恩人がいても、その恩は俺の負債。
今回は踏み倒さないが、うちの娘たちには無関係。
眼にはいるのは仕方がない。
観るだけ観るだけ。
踊り子に触っちゃいけません。
気持ちは判るが解らない。
わかってたまるか
・・・・・・・・・・死にたくなったらどーしてくれる。
ヤバイ。
ヤバい。
やばい。
知らないわけではなかったが、他人事なので気に留めてなかった。
故郷より海外世紀末ライフが長かった、たぶん、なワイルドマッチョな軍人が、多世界共通アメリカン・ウェイな現合衆国大統領に従って、なお、うちの娘たちにケンタッキーの追憶を重ねて涙ぐむ。
昨年末から、未来永劫、元の故郷には帰れない。
在日だった外国人の気持ち、か。
日本に在る、ではなく、日本で在る、しかない。
地球が日本列島しかなくなれば、在もなんもない。
その感覚がわかるのは、日本列島に消えられた残留日本人だけだ
インドネシア国家戦略予備軍の爺さん。
元カノんとこの燻銀。
あの爺様、うちの娘に優しかったよな。
大人なら当たり前だよね、ってしか思わなかった。
非白人とは言えモンゴロイドじゃない。
非日本人に故郷を想ったのもあるのだろうか。
うちの娘たちがモフらせてあげたら、なにもかもどーでもよくなるだろうか。
【聖都/聖都市内/中央/大神宮内/巫女の胡坐/青龍の騎士団陣形中央/青龍の貴族前/跪くエルフっ娘】
あたしをみる眼。
あたしが視る眼。
あたしを観る眼。
範囲を絞って、確かめる
・・・・・・・・・・青龍の貴族、以外を無理やり意識。
彼の味方ではない二人。
当然、あたしをみる。
悪くない。
女を視てる眼じゃないわ。
――――――――――二人とも。
一人目。
相応しい戦場でも滅多にいない。
判りやすいのは、筋骨隆々たる変わり種。
青龍の貴族が視通しているのは、こちら。
二人目。
何処にでも居そうな、平凡な容姿。
解りにくいのは、殺る気が全く無い女。
彼が観てるのは不愉快ながら、こちら。
・・・・・・・・・・それは、まあ、敢えて、後回し、に頑張ってする。
屹立した筋肉騎士。
青龍の戦闘部族
――――――――――青龍っぽくは、ない。
まあ、いいけど。
馴染み易くはあるわね。
帝国軍に幾らでも居る。
上級騎士、ってところ。
諸王国時代なら武門貴族に少なくない。
黒髪黒瞳がこの部族を戦場に向かわせたのは、よく判る。
殺されそうに見えないものね。
殺しに来た訳じゃない、のも視てとれる。
青龍の貴族が自分の女、たちに近づけるのだから、当たり前。
それを事情を知らない、あたしにも解るように振る舞って
・・・・・・・・・・こちらに気を使ってる、訳ね。
たかが領民、されど青龍の貴族の女。
龍の影を踏まないように
――――――――――って訳でもない気配。
当たり前か。
力が強い奴の典型。
周りへの気遣いは、相手の力に左右されない。
あたしの備えにも気が付いてる。
気が付いてることを隠さない。
でも構える気はない
――――――――――ソレを態度で示してきている。
隠す素振りが、あたしの先制を促すから、かしら。
――――――――――斬り合う気はない、今は。
それが油断でないのは、眼で判る。
涙を流す時の動きじゃない。
瞳を覆う涙に近い水の色。
涙みたいな水薬、かしら。
乾く様子も見えないものね
人も耕地も無くなり海風山風に晒された聖都。
眼に何かを注して備えているのは、戦の準備じゃない。
普段の心得、それを青龍の貴族に観せてる。
・・・・・・・・・・こーいう作法、か。
身振り手振り。
仕草と態度。
配慮と洞察。
それを視る青龍の貴族の鷹揚な態度は、雄弁な応え。
戦わせる側。
戦う側。
二つの民族が培って来た積み重ね。
青龍の戦闘民族は青龍から与えられた使命とあらば、青龍すら殺すだろう。
そも青龍の貴族自身、普通に青龍を殺すものね。
青龍もそれ以外も見境無く、全く等しく殺すのが青龍
――――――――――油断出来ない。
あたしも、ソレを示して返す。
彼にあたえられた自由をもって、あたしは自由にカタナを振るう。
意思と意志の鍔迫り合い。
それは、決して邪魔にはならない
――――――――――斬る刻。
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿(改め建築楽器)内/中央/青龍の貴族】
うちの娘たちがモフらせてあげたら、なにもかもどーでもよくなるだろう。
・・・・・・・・・・・俺だけ?
子どもに猫を付ければワンチャン?
元々故郷なんかどーでもいいから?
失ってないから解らんこともある?
俺に彼らの喪失感について何が判るのかと
・・・・・・・・・・せやな。
知ってるフリで通せるのは昔ナンパしたかもしれない女まで
――――――――――かもしれん。
前後左右下を撫でまわして、深く溜め息を我慢
・・・・・・・・うちの娘たちに、気づかれないように。
大人はカッコいいのだ。
溜め息禁止。
笑顔のみ許可。
愚痴なんかもっての他。
だから恩師にも、大人で居てもらう。
うちの娘たちの眼が青い内赤い内緑の内白い内朱い内翠い内碧い内橙い内は!
泣いて良いのは、大人しかいない時だけ、たが、無理なら大人が手伝うしかない。
200万人オーバー、一時滞在者を含めれば300万オーバー
――――――――――ここは、目の前だけに絞ろう。
国際連合加盟国政治家学者活動家に軍人たち。
彼らの戦意が高いわけ。
異世界転移させられたら、誰だってこうなる。
元凶があるなら、異世界にしか在り得ない。
十万年が百万年かかろうと。
事件であれ事故であれ。
多世界すべてが関わっても。
落とし前を着けさせずにおけようか。
復讐は楽しい。
報復は嬉しい。
制裁こそ全て。
地球人類は仕返しする動物だから。
その溢れる衝動を制御する。
破壊的力を異世界に向ける。
同時になすのは発散結晶化。
政治のロジック。
――――――――――俺には縁遠いが。
仇が不死者なら最高てま、決して下げ終わらない溜飲を下げ続けるために、永久に殺し復活させて殺し続けてやるんだとか。
他人事のロジック。
・・・・・・・・・・ほんとーに、縁がありません。
自身の中にある衝動まで制御して、地球人類の歴史精製に使ってる、常任理事国指導者たちの感覚。
行動は知らん。
目的も聴かない。
思想だけ、教えられている。
いえ諾否を聴いてなお、それに左右されたりしませんが。
・・・・・・・・・・ソースは三佐。
俺に囁いてリトマス試験紙代わりにするのは、非常に不安。
赤が良いのか青が良いのか。
紫色で任意に選択させる手もある。
それなら自由に言い訳可能。
俺が色々工夫する間にも、地球人類の運命は決まっていく。
――――――――――エライ人たちの中で。
国際連合は地球人類の総意である、って国会で決議されたから仕方がないね。
取り敢えず、異世界転移の論理を手に入れて、世界を幾つか手に入れて、滅びた地球を再建できるかみてみよう、とか。
――――――――――多いおおいお~い。
そのていどで気が晴れるといーけど。
そこは三佐の管轄だから、任せておけばきっと。
・・・・・・・・・・・・・更に厄介を極めるだろうな、間違いない。
「また」緊急事態宣言だっよ(笑)。
いっそ奇数月は緊急事態ってことで(嗤)。
週二回マンボと交互にやればぁ?
以下、更新に関する言い訳。
たいへん貴重なたいけん。
「馬鹿が馬鹿をやっている真っ只中」
に居られる。
……「られる」はオカシイでしょうか?
ただ
「後世の学者がタイムマシンを欲しがるような」
シチュエーションなのは、間違いありません。
中世ヨーロッパの魔女狩り。
オランダのチューリップバブル。
19世紀日本の明治維新。
20世紀にやらかした合衆国の禁酒法。
20世紀後半ひ文化大革命。
……結構ありますね。
特徴は
「なんでコイツらこんな馬鹿なことをしでかしたんだ?」
って未だに解明されていないこと。
資料造りを研究と勘違いする自称学者以外なら、当時の人々に訊きたいことが山ほどあるでしょう。
本当に病気って信じてる?
そう信じる根拠はなに?
感染症対策って知ってる?
それを信じた理由はなに?
ワクチンの仕組み知ってる?
知らないことを調べないし、筋道立てて考えないし、頭が悪い奴の鳴き声に従うのはなんで?
……「なんで」でしょーね?
「後知恵で批判することは誰にでもできる」
などと申しますが、実際には
「先知恵で否定できないのは馬鹿だけだ」
が正しい。
失敗も成功も予見出来るモノ。
※頭が正常なら
思わぬ失敗。
予期せぬ成功。
……でくわしたことありますか?
わたしはありません。
失敗する前に覚悟は始めてます。
……完了とは言えないのですが。
成功しないことはやりません。
……それが多いとは申しませんが。
マーフィーの法則じゃありませんが、一寸先は眩しすぎ。
もちろん、馬鹿は馬鹿だからいいんです。
そりゃ徒労と無駄と巻き添えだけの一生でしょう。
なんでそれでも生きてるかと言えば、自覚出来ないから。
幸せな連中です。
見定めるべきは世の大半を占める馬鹿以外。
皆さんは、何を考えてるんでしょうか?
信じてない。
知ってる。
考えてる。
そしてマスクを付ける
……訳が判りません。
禁酒法の時代も、そうだったのでしょうか?
馬鹿が馬鹿なことを始めて、社会が大混乱……似てる?
タイムマシン求む!
いつ青タヌキが出てきても良いように、比較資料を集めておきましょう。
と言うわけで、まだまだ更新時間が乱れます。




