文化侵略（ドワーフ料理）

戦場に娼婦と傭兵はつきものだ。

その程度の話を仕切れなければ軍人は務まらん。

娼婦に関しては戦場とは限らないが。

知らなければキャベツ畑でも観察したまえ。

性の商品化？

労働時間というものを知っているね。時間給、月給、年棒は知っているかな。

よろしい。

時間とは寿命だ。

寿命とは命だ。

命を削って金に換えている。

命の商品化だな。

何か不都合があるかね。

性の搾取？

深刻な問題だ。

労働の搾取と同じく、深刻だ。

搾取を防ぐために公正な市場と社会的管理に置くべきだ。

管理されなければあらゆる意味で搾取が行われるのは歴史にある通り。

ならば、合法化で法治社会に組み込み、商品化で公正な市場経済に組み込む、という過程を必要とするわけだ。

様々な意味で弱い人間が搾取されることは許さん。

故に、彼女たち、あるいは、彼らが法の埒外に置かれていることを赦さん。

答えになったかね？

アムネスティが提唱する「労働者として保護される売春」には軍の都合を超えて賛同する。

《インタビュー１８with合衆国大統領（女性/６５歳）》

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に１００ｍ】

俺が

「ＮＯ――――――――――ＯＵＴ！！！！！！！！！！！！！！リテイク！リターン！」

ゆっくりする間もなく、神父が大騒ぎ、まあ、いつもか。

燃え残り？不燃物？何曜日に出せばいいやら。

埠頭は広いが、俺たち軍政司令部は１００㎡くらいの範囲。

昼休みくらい静かにして欲しい。

仕事中はもっと静かにしてほしい。

顔をしかめた元カノがドワーフ達に親指を、下げた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――見ない見ない見ない。

【太守府/港湾都市/埠頭中央/青龍のテント前】

あたしたちが天幕を出ると焦げた道化が大騒ぎ。

ぐらさん、が無く、いつもより、真剣？

「Ｎｅｗカマー！作法がナッシング！！」

えぷろん、を指差している・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違った？

あたしはマメシバ卿にいつの間にか、着替えさせられた、給仕服、のようなドレスを確認。

紺色基調に、あたしたちお揃いの薄紅色の『えぷろん』はマメシバ卿の見立て。

スカートの水色リボンとも合ってる・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おかしくは、ない。

まあ、あたしは普段、防御優先で革の服ばかりだから、違和感、は、あるかな？

「メイド＆ミストレス！スレイブ？＆パワー！」

は？涙？

「ＯＫ！ＯＫ！ギャップ萌え！Ｖｅｒｙ！Ｖｅｒｙ！！Ｖｅｒｙ！！！

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――Ｎｉｃｅ！！！！！！！！！！」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうも。

「ダガＳＩ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ＫＡＳＩ！ダガシカシ！そのエプロン丈もカタチもＣｏｌｏｒもパーフェクツ！！！！！！キツケがホワィ？？？？？？？？？？」

他に付け方があるの？

「ＡＨ～～～～ＨＡ」

肩をすくめて両手を上に・・・・・・・・・・・・なんか、ムカつく。

「ＮＯＮＯＮＯＮＯ！抜刀ＮＯ！！？」

平手で挟む。あたしの剣を。

ふーむ、軽く振ったとはいえ、誰にでも出来る、ってんじゃないわね。

「ＭＥ！Ｔｅａｃｈ！！」

あたしたちが肯く。

「スカートにスパッツ！ノースリーブにシャツ！！ビキニにパレオ！！！タンクトップにジャケット！！！！」

はぁ。

あたしたち、妹たちに頭目はよくわからずにポカンとした。

「ＮＯＴ！アンダスタン！！！！！オトナハワカッテルフリＮＥ！！！！！」

あ、膝を突いた。両腕を突き上げた。

「エプロンの下に何着てますＫＡ――――――――――！！！！！！！！！！」

ドレス？

「ＧＩＲＬＳ！ザッツ！！エプロンはワンピース！！！」

あたし達を見回す。

「エプロンｉｓＯＮＥ！」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え゛え？ええええええ？？？？

えぷろん、だけ？？？

うぅん？だって、この丈、だけじゃなくて、上も、横からはみ出すし、背中ってか、後ろはなんにも無いじゃない！！！！！！！！！！

「イッツ作法！」

さ、作法！青龍の？？？道化が号泣してる？

「ＧＯ！Ｈａｒｒｙ！！ダワイ！！！レッツＨｅａｖｅｎ！ＡＨ――――――――――「れんこー！」チョョョョョ――――――――――」

パンっ！

「はい！みなさん！！」

マメシバ卿！

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、ドワーフ達が道化を柱に縛り上げて、ドワーフ達は立ち去った。

柱と共に。

「エプロンの正しい使い方は、まだ早いです！」

青龍風騎士服、緑色だけど、に身を固めたマメシバ卿が力説。

って、じゃあ？今のは？

「ちっちっちっ」

あたしたちを見て、握り拳。

「正しい使い方は、恋を進めれば自ずから悟ります」

ビシッ！！！！！

「今は、ただただ素振りあるのみ！！！」

「「「「はい」」」」

と、頭目？あなたなんで、のってるの？？え！あたしも？

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は、はい」

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に８０ｍ】

俺はゆっくりと向かった。

イカに。

つまり昼食である。

いまが戦闘中なら、交代で食うか、あるいは持ち場でかじる。

だが、今は事務作戦中。

特に決まったルールなどない。

しかしまあ、倉街で活動中の部下達はもちろん、作戦手伝い中の地元有志の皆さんも昼食だろう。

だから、皆で一斉に食事に入るのは自然で当然。

みんなで食べてもいいよね？

決して他意はない。

男女比を修正しようと考えた訳ではない。

シスターズ（３）、Ｃｏｌｏｒｆｕｌ（５）、頭目、元カノ、マメシバ三尉、歴史家・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・１２：１は如何なものか？

曹長に兵１０名、俺、神父に役人と坊さん。

よし１２：１５！

勝てる！闘いは数だよ！！

みんな集まれ！メッセージ！

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に１０ｍ】

わたし達は、ビックリ。

ドワーフさんのシェフさんが大皿に盛りつけをされました。

「これがメインじゃ」

こ、これが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見えません。

あぅあぅ。

背丈が足りないなんていえません・・・・・・・・・。

ドワーフさん達がたくさんいらっしゃいます。

「運ぶのはワシらがやる」

「お嬢さん達は切り分けをするとよいぞ」

「おおざっぱにワシが切るから、取り分けをな」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お名前を聞いたのですが、もう見分けが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すいません。

「団長の分はサンイがなさるから」

「恋敵に給仕は出来まいて」

「ワシは団長の味方じゃが」

「ちっこい身で勝負に出るは誉れぞ」

「まあ、団長は寛大じゃから」

「さっさと孕んでしまうことじゃな」

――――――――――あぅ――――――――――！！！！！！！！！！

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に６０ｍ】

俺は凍りついた。

指揮官には予想外な事態への対応能力が求められる。

予定通りの戦場なんてない、らしい、からだ。

どんな場面でも適切に対処できなくてはならない。

俺にはそれが出来る・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・場合が多い。

マジ。

例えば不意に戦闘になったら？曹長に任せる。

例えば急に予算が必要になったら？坊さんに任せる。

例えば異世界の謎に遭遇したら？まずエルフっ子たちに訊く。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

例えばビキニのカワイイ系１１人に囲まれたら！！！！！！！！！！どうする？？？？？？？？？？

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に６０ｍ/青龍の貴族背後】

あたしはドワーフを避けて、調理の場所にいったのは、あの娘たちだけ。

だから定位置、青龍の貴族の後ろ。

まあ、ドワーフは嫌いだけど、あの娘たちにはマメシバ卿が付いているから大丈夫。

一歩下がる。

そんな、あたしを含め、ひとりひとりに一礼する女たち。

皆が黒髪、黒い瞳、色づいた肌・・・・・・・・・・・・・・・青龍の女。

「お招きに預かります」

先頭は、あむねすてぃ、の商館主。

後ろに並ぶのは、礼儀正しい女たち・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あむねすてぃの商品。

「きゃは！」

「ぷぷ！」

「きまらな～い！」

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に６０ｍ】

俺は前線の崩壊に直面していた。

戦いは数！

それは間違っていない。

しかし！

相手に増援！

こちらの援軍未だなし！

むしろ幸いか？

全員揃っても彼我２３：１５！

勝てん！ならば援軍には撤退させた方が！

なぜだ！なぜこうなった！

「みんな来い、ってゆーからよ」

と元カノ。

不機嫌は後にしろ！５年くらい！

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に６０ｍ/青龍の貴族背後】

あたしが、というか、青龍の貴族が対面しているのは、そう、あむねすてぃの娼婦たち。

物腰は整っている。

「うちの娘たち、如何です？」

あたしに聞く？

「貴婦人の仕草ですね」

形だけなら。

「お召し物は、例がありませんが」

あたしの疑問に笑顔で見回す娼婦たち。

「だよね～」

「でも、訓練ってすごい」

「次、ドレス着よっか？」

「てか、エルフちゃ、さん、丁寧語やめよ？」

「あたしら階級もちじゃないし」

「なら年齢順」

「色っぽさ順？」

「じゃあ、エルフさんがボスだ！」

姦しい声が一斉に青龍の貴族を向いた。

「「「「「「「「「「あ」」」」」」」」」」

１１人がお辞儀。

あたし、そして頭目は、はっきりと判るように、青龍の貴族、その表情を見つめる。

（無反応も困るわね？）

と、頭目。

女に無反応なのは困る、けど、困らない、ような？

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に６０ｍ】

俺は腹をくくった。

アムネスティ支部長と世間話。なぜ？

「様になっていましょう」

いや、よくわからんが。俺に仕草判定言われても。

「現地の社交で同伴する仕事も可能なのですよ」

アムネスティすごいな。

新事業への飽くなきチャレンジ。

「まあ、口を開くともちませんが」

「言えてる～」

「わかるわ！」

「ＹＥＳ/ＮＯだけなら」

一斉に姦しい。

曹長達の到着は後１５分はかかる。

倉街にいるからな。

一斉に送った昼食の誘いに、アムネスティの女の子達が真っ先に来たのは当然だ。

近く、埠頭の一角で水遊びしていたのだから。

痛恨の作戦ミス。

まあ、それはいい、早く着いたのはいい。

だが水遊び、が問題だ。

なぜ、って事はない。

春とはいえ、今日は寒くはない。

寒くはないが、ビキニは無いだろビキニは！商売上の資質に恵まれた、うら若い、日本人の女たち。

・・・・・・・・・・・・・・・はい、ポーズとらない・・・・・・・・・・・・・・・・・・今は。

「あ、ガチだ」

え！アムネスティの視線が俺の背後。

この気配は・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Ｃｏｌｏｒｆｕｌ。

「おしあわせそうね～～～～～～前門の日本産若い女１１、後門の異世界少女５～～～～」

左に、おどろおどろしい声を出す、銃剣付きＭ-１４を構えた元カノ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

右に、無言になってしまった、エルフっ子と頭目。

俺、死んだ？

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に２０ｍ】

わたくしたちはドワーフ達の先頭。

いい香り。

やっぱり、ドワーフ料理は最高ですわ。

昔、西の山に食べに行きましたけど・・・

・・・・・・・・・・・・・・・本業にするドワーフがいないから、食べにいくしかないのよね・・・・

・・・・・・・・ウチの厨房に！って望む家は多いのに。

ご領主様も、コレを味わって頂ければ、この邦を気にいってくださる、といいなぁ。

大陸中央の豊かな邦は平原ばかり。

辺境、ドワーフのいる辺境でしか、この味は、味わえませんのよ？

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に６０ｍ】

俺の死線に気がついてないのか、どーでもいいのか。

「彼女達には個人営業は禁止しております。あくまでも労働者ですから」

アムネスティ支部長は続けた。

「必ずしも店舗が必要な訳じゃありませんが、売春には安全な、公のスペースは必須です」

堂々としてるな～さすがに売春合法化を打ち出した世界的人権団体。

「もしご協力いただけるのでしたら、即日営業が可能です」

俺の人権はどーでもいいのね。

「もちろん、経費はアムネスティが負担しますし、軍には民間人保護の形でお願いしますから、法的な疑義は生じません」

いや、そっち方向で気を使われても。

「ボス！いけんっいけん」

エルフっ子達に比べると、綺麗より可愛い感じの女が両手を上げた。

「なんですか、シュリさん」

「ビジネスとーくになってる」

アムネスティ支部長はハッとした。

「失礼いたしました、お招きの席で」

慌ててこちらに向き直って謝罪。

「かまわない」

俺は謝罪を流しながら、話を換えてくれた彼女に黙礼。

「ぶい」

にっこり擬音をつけてＶサイン。

こういう娘は嫌いじゃない。プライベートなら声をかけるところ・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・冷気！！！！！！！！！！

背中（Ｃｏｌｏｒｆｕｌ）と左（元カノ）、え！右手から！エルフっ子！お前もか！

はい、アムネスティガールズ！笑わない笑わない。

まじ、ヤバいから。

しまった！これがアレか！

街で女を引っ掛けていたら、姪っ子に見つかった的な！

え？

具体的だな？実体験かって？

今はそんなことはどうでもよろしい！！！

叔父さんはけっして遊び人じゃありません！！！！！！！

ってゆーか、違う、話を逸らしてないよ？

つまりなんで２３：１？

神父でいい！

いや、神父が！

いつものセクハラトークで彼女たちをどん引きさせてくれ！

「シュワキマセリー！シュワキマセリー！！」

きやがったーーー！！

は？なぜ十字架？

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に６０ｍ/青龍の貴族右】

あたしたちが待つ場所に、大皿を掲げたドワーフ達が拍子をとって、向かってくる。

まあ、いいけど。

先頭に道化。

帆柱にくくりつけられて。

鎖でぐるぐる。

なぜ謳ってるの？あ、こっち見た。

「イタガキ死すともＨＡＲＬＥＭハｆｏｒｅｖｅｒ！！」

は？

「セッシャ任せて先にイク！ＭＥハ石舞台！四天王寺最弱ＮＥ！Ｓｏｕｌ Ｂｒｏｔｈｅｒｓ！アーリントンでＳｈａｋｅ Ｈａｎｄｓ！！」

「ちゃちゃと運ぶ！」

マメシバ卿！ドワーフをどやしつけて。

「ＨＡＲＬＥＭ教徒は焼却です！」

「Ｎｅｘｔ ｏｎ Ａｉｒまでロンドンタワーをデッドロック！」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・道化は運ばれていった。

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に６０ｍ】

俺はアーリントン公園にかんけーない。

うん。

流れが変わったな。

よくやった。

合衆国海兵少尉（神父）、二階級特進はかたいね！

壮大なＢＧＭが流れそうだが、周りはドワーフのドラミング。

アムネスティガールズは楽しそうに踊っている。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌ、シスターズ＋１、元カノに頭目はポカーンと。

機は来たり！

「それか」

ドワーフのシェフ、っぽいのに水を向ける。ドワーフ達が我に帰り大皿を据えた。

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に６０ｍ/青龍の貴族右】

あたしは大皿を見て、青龍の貴族を見た。

また、大皿を見る。

透明な膜に囲われた水塊？

その中に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・少女？

切れ長の眼、柔らかな輪郭、青い瞳と黒、いや、緑がかった漆黒の長い髪？指先足先がヒレのような、水掻きのような・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・くびれと胸は女を思わせる。

青龍の貴族は落ち着いたもの。

あたしに振り向き

「これはなんだ？」

知らないわよ！！！！！！！！！！

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に６０ｍ】

俺も無茶ぶりだとは思った。

エルフっ子、お嬢、魔女っ子のシスターズは呆然。

頭目も呆然、頭目の子供ははしゃいでいる。

地元の名物じゃないらしい。

「女体盛りってどーいうことよ！！！」

俺に言うな！ドワーフはお前の部下だろ！

「女が絡めばあんたに決まってる！」

おい！！！

「あーなる～」

「だよね～」

「そんな顔」

こらこらこらこらこら！！なぜ納得か！！！アムネスティガールズ！！！！

そこ！！！涙目やめなさい！！シスターズ！！！

え？大丈夫？

俺を励まさなくていいから！！Ｃｏｌｏｒｆｕｌ！

おいドワーフ！この煮凝りはなんだ！

「このゼリーよせはなによ！！！！」

元カノ的にはそっちか。

ドワーフシェフがいい顔で笑った。

「では、早速」

話聞いてる？ちょ！おま！！その大剣！！！

思い切り振りかざし、ゼリーの真ん中の少女に！！！！！！！！！！

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に６０ｍ/青龍の貴族右】

あたしは耳を抑えた。

金属音。

ドワーフが呆然と大剣を見た。

弾き跳ばされて、つきたっている。

青龍の貴族が腕を伸ばしていた。

剣を弾いた・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それどころじゃない！！！！

【太守府/港湾都市/埠頭中央/イカ焼きから西に６０ｍ】

俺は慌てて大皿に駆け寄る。

レコン（合衆国軍長距離偵察）のスナイパーが撃たなきゃ、真っ二つだ。

いたんだな。そりゃそうか。

だが、切っ先が触れたのか、煮凝りが崩れた。

元カノが少女？を抱き上げて、俺が上着をかけた。

「ヤバい」

元カノの言うとおり。

ゴボゴボ音がする。

エラが、たぶん、エラみたいなものがヒクヒク。

元カノが少女を抱き上げて、俺が支えて走り出した。

【太守府/港湾都市/埠頭の端にむけて】

あたしたちも慌てて続いた。

「皿の上、煮凝りを回収！でっかい樽と真水！塩！そろえて混ぜるな！」

マメシバ卿が矢継ぎ早に指示。

「どっせい！！」

青龍の女将軍があの少女？を海に、いや、青龍の貴族と一緒に飛び込んだ。

あたしが、皆が埠頭から覗き込む。

少女？は海中で咳き込むように、そして、深呼吸？

立ち泳ぎする二人の青龍に抱きかかえられて、海中から辺りを見回している。

助かった、の？

あたしは、あたしたちは、へたり込んだ。