君にも俺でも出来ること。
殺ったことがあれば誰でもわかる。
他人は人間じゃない。
人の形をした肉だ。
肉を砕くは簡単至極。
誰でもいつもしてること。
相手の目を見てはいけない。
相手の事を知ってはいけない。
相手の気持ちを察してはいけない。
人間とは心を共有した相手のこと。
肉を撃つことはできる。
誰にでも容易い。
自分の心を撃つことは
――――――――――自殺に等しい。
だ・か・ら.
見ろ。
私を殺す相手の眼を。
見せろ。
私が生きてきた日々を。
見て。
私は殺されることなど想わない。
相手の心を殺すため。
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿(改め建築楽器)内/中央/青龍の貴族】
俺の日常。
Woman Watching♪
まあ見て終る訳がない。
おねいさんず。
まだ他人である、と断言出来る。
気心知れた関係になるのは、これから。
ほんとーに、これから、ですよ?
大変残念。
大変楽しみ。
大変都合がいい。
初見の女は得意分野。
それに身内同然の関係だと、かえって厳しくする義務感に駆られる真面目人間もいるし。
そこに甘えて、それを歪める。
その愉しみは、いとをかし。
古典的娯楽だね!
それはともかく、知り合って間もなく好意的中立、くらいが良い塩梅。
バイアスがかかっている。
なのに、そのバイアスを当人だけが意識出来ない。
だがら自然に曲がって進む。
一番美味しいタイミング。
そしてなにより、俺が男で対峙するのが女、ってところが重要。
俺の得意・不得意を越えた話。
動物は同性にきびしいからね。
大人は大人にきびしいからな。
故に?
異性か子ども相手なら、手加減が期待出来る。
俺は大人だから、敵対するなら異性に限る。
これだけ材料が揃っていれば、いける。
おねいさんず。
本来の自衛隊組織ではなく、ボランティア。
軍事組織の規範と個々人の感性。
本来混じり会わない水と油。
子どもたちの存在で乳化。
マヨネーズのように美味しくなりまし、とさ。
そこに俺を一滴し。
――――――――――解乳化。
界面活性剤が切れ、個人の気持ちが剥き出しだ。
理屈は判る。
理由は解らん。
だから有り難く頂きます。
幸運とは?
起きた事、じゃない。
起きた時、だと思うのだよ。
なんでかしらんが天祐、我にあり!
いつもいつも、お世話になっております。
天祐が何処に居るか知らんけど。
不幸より幸福が、心持ち多い人生でした。
もっと幸福マシマシでいいんですよ?
殺されないだけってのは、ちょっと。
まあそれは、後々、話し合うとして。
昨日から持続していた彼女たちの公私混交。
それが別れた隙間の裂け目は大きくはない。
一呼吸、その隙間が埋まる前に、捩じ込む。
本来そこに填まるはずの義務にかわり、個々人一人一人の感想を。
かくして部隊は集団に変わる。
隊員の半分が戸惑う引き金は、絞れない
――――――――――――――絞りたくない、絞らない、まで持っていける。
・・・・・・・・・・くらいに印象操作多数派工作。
数は力、力は数、数はコネ。
みんな、で渡れば恐くない。
みんな、なんかチョロいチョロい。
みをな、という単位に成れる奴なら。
どんなことだってさせられる。
誘い出して踏み台にするか?
騙して揶揄い隠れ蓑?
怒らせ走らせ囮にしようか?
産まれてきてくれて、本当にありがとう。
土用波に乗るようなものである。
サーフィンが得意じゃなくても、死なない程度は出来る俺。
是非とも貴女に教えて欲しい。
また今度?
なお今回は緊急避難です念のため。
女子どもは踏んでも踏み台にはしない。
緊急事態だからこそ、自制が効く。
踏むだけ踏むだけ。
慣れてるから!
怪我させたことないから!
安心していい!
女子どもの取り扱い。
お姫様だっこ、お米様だっこ。
両方得意。
お姫様だっこは、抱く方にとって楽しい、男の娯楽。
子どもは同じ重さのお米様、ゆめゆめ粗略に扱えやせぬ百姓気質。
お米一粒に神様がたくさん
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三人以上。
だから女子どもは、あまり踏みたいわけでもない。
が、子どもが怪我するかもしれないなら別。
女なら、大人なんだから踏んでもいいかなって。
後日、菓子折り持って口説き、いやいや、友好的関係を回復にいかないと。
謝罪はしないけどね。
意地や面子なんかじゃなくて。
謝る男なんぞは、女から相手にされない。
男は黙って、贈り物。
断れないように段取りを組むのが得意。
形がないモノが最適。
災いを転じて福となす。
それは、生き延びてからにしよう。
ナンパの話ではなく、これが俺のシナリオ。
ナンパの話じゃないことが残念でたまらない。
ナンパの話なら、緊張をほぐす必要もない。
ナンパの話なら成否いずれにしてもノーダメージ。
ナンパじゃないのが残念至極。
チッ。
本来、考えてなすことですらない。
その程度のことなのにコレだよ。
仕掛けて、組んで、再計算。
命がかかっているから仕方ない。
世の中には失われてはいけない命の方が多いのだ。
いいか?
成算あり!
いざ征かん!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・心の準備ができてから?
【聖都/聖都市内/中央/大神宮内/巫女の胡坐/青龍の騎士団陣形中央/青龍の貴族の腕の中/エルフっ娘】
あたしは視た。
魅せつけられた。
敵味方が静止した頂点。
その機を掴んだ青龍の貴族。
彼は女たちを、一瞥した。
あたしたち、彼の女、たちではなく。
自分を、彼、青龍の貴族、独りを囲み牙を剥く青龍の女騎士団。
彼は一瞥しただけ。
でも、間違いなく、女を視た。
独り独り、順に視てると判らせて、繰り返さずに、一瞥だけ。
あたしの耳に響いたのは、女たちの呼吸音。
駆け寄って囲むまでの、張り詰めて殺した息。
女騎士たちが、包囲の完成で息を吐いた。
そして殺伐に備えてゆっくりと胸をみたす。
満たしきった、その刻。
彼が一瞥したのだ。
息を漏らす女。
息を乱す女。
周りに引き摺られて?
自ら気を散じて?
皆の崩れを支えるため?
誰も彼もが呼吸を乱した。
姿勢には微動しかしない。
だが陣形は霧と消えてしまった。
彼はいつもの表情。
青龍の女騎士団、その女騎士長、彼に銃を向けさせた女に笑みを向ける。
まるで挑発するように
――――――――――――――どうするの?
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿(改め建築楽器)内/中央/青龍の貴族】
俺の視界。
女、女、女。
実に良い眺めだ。
いつ以来であろうか一月半?
部下でもなければ上司でもない。
民間人でもなければ捕虜でもない。
俺には何一つ責任も権限もない。
すばらしい♪
つまり、大人!
心も肢体も丈夫です!
リスク管理もお任せできる!
割れ物注意はNo Thank You?
言わないだけ。
悟られないだけ。
見せないだけ。
保護者付なら、好きに遊んで弄れるんだけどな。
同じ護るでも意味が違う。
だから、女は有難い。
身に沁みます。
視ててなくても死なないじゃん!
自分で生きていけるだろうし?
文句があればかかって来なさい!
大人が相手なら、お互い様。
ましてや、地球人どうしなら。
被害者も加害者も無かろう。
俺は動かず見回す。
一人一人と眼を合せる。
いや、プロテクターで見えんけど。
でもだいじょーぶ。
動物は相対した相手の感覚器、目に注目するようにできている。
視られたければ視ることだ。
だから俺が見られてる件。
これでも女の視線にだけは鋭敏です。
常識はありますけどね。
世に言うアレ
―――――――――――――――――――――女が俺を見ているのではない、俺が女をみているのだ。
男も女も自意識過剰。
俺も貴様も貴女も同じ
――――――――――自分が期待するほど、世界は貴方に興味がない。
チラ見とガン見は大違い。
だから安心して手早く、街ゆく女を見極められる。
ガン見してチラ見される。
これこそ日常、普段通り。
見られるより見るが有利。
見るより見られるが優位。
優位を捨てて、有利を取ろう。
ナンパならね。
今だけは逆。
皆が皆、俺向き。
なら、なお好都合。
おねいさんずが、互いに互いを監視していない。
動きやすくなりましたよ。
良くも悪くも、あちら側が。
素人なら暴発を危惧するところ。
うちの娘たち以外、この場に居るのはプロフェッショナル。
考え無しに動いたりは出来ないが、考え過ぎて動けないことは有り得る。
考え過ぎると答えを外に求め始めるあたり、らしいっちゃらしい。
足先から頭まで、眼が全て外、自分たち以外に向く。
偵察。
斥候。
確認。
――――――――――軍隊は、これが大好き。
追い詰められない限り。
余裕がある限り。
限りが無くならない限り。
偵察の為に斥候を出し、斥候のたびに確認し、確認の為に偵察する。
強くて多くて優秀で、優位にある人たちは、相手の様子をみるのが大好きだ
・・・・・・・・・・俺たちの真逆。
No1も俺に注目。
俺に5割。
うちの部隊に2割。
うちの娘たちに2割。
自分の部隊は、ほとんど見てない
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さすがの自信満々。
俺みたいに、リソースすべてを彼女に集中出来てない。
No1のほうが、余裕がある、ってことだが。
全体を俯瞰してみることができる将校の鏡。
俺とは違う。
うちの部隊は曹長に一任、最初から最後まで俺には関係ない。
佐藤&芝は自由行動、最初から最後まで俺には関係ない。
うちの娘たちは全員が俺に一任されて関係ない。
だから好きにできる訳。
おねいさんず、その中で俺に好意的な視線
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まだか。
残念。
なら、親しみがある眼
――――――――――――――――――――――――――――よし。
あとは銃口を向けるのに、戸惑っている目
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いるいる♪
非言語コミュニケーションはむだではなかった。
※第534話〈未必の故意(悪気はなかった)。〉参照
人間は普段の行いが肝心です。
女に愛想よくしていると良いことがある。
それも非日常でなければ、ここまで短時間に距離を詰められなかっただろう。
射殺寸前の全力対応を選んだNo1に感謝だな。
日常が戻って来たら、からかうネタになるだろうし。




