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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第二章「東征/魔法戦争」

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55/1003

青龍の流儀

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします


一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。

次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。

以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)


【登場人物/一人称】


『俺』

地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿》

現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様》

?歳/男性

:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。


『あたし』

地球側呼称《エルフっ子》

現地側呼称《ねえ様》

256歳/女性

:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。姉貴分。


【登場人物/三人称】


地球側呼称《元カノ/団長/だんちょー/一尉/一尉殿》

現地側呼称《青龍の女将軍/団長/主》

?歳/女性

:国際連合軍大尉/陸上自衛隊一尉。国際連合軍独立教導旅団団長。『俺』の元カノ。人類初の多世界複合部隊「黒旗団」指揮官。


地球側呼称《三尉/マメシバ/ハナコ》

現地側呼称《マメシバ卿》

?歳/女性

:陸上自衛隊三尉。国際連合軍独立教導旅団副官。キラキラネームの本名をかたくなに拒み「ハナコ」を自称している。上官の元カノが勝手に「マメシバ」とあだ名をつけて呼んでいる。


地球側呼称《頭目/お母さん》

現地側呼称《頭目》

?歳/女性

:太守府の有力都市、港街の裏を取り仕切る盗賊ギルドのボス。昔エルフと恋に落ち、ハーフエルフの愛娘がいる。


地球側呼称《三佐》

現地側呼称《青龍の公女》

?歳/女性

:陸上自衛隊三佐、国際連合軍事参謀委員会参謀、WHO防疫部隊班長、他いろいろな肩書を持つ。日本の政権与党を支配する幹事長の娘で、父親と連携して戦争指導に暗躍している。


地球側呼称《マッチョ爺さん/インドネシアの老人》

現地側呼称《副長/黒副/おじいさん》

?歳/男性

:インドネシア国家戦略予備軍特務軍曹。国際連合軍少尉。国際連合軍独立教導旅団副長。真面目で善良で人類愛と正義感に満ち満ちた高潔な老人。


【用語】


『魔法』:異世界の赤い目をした人間が使う奇跡の力。


『科学技術』:異世界ではすべて魔法として理解されている。


『国際連合軍事参謀委員会』:国際連合における参謀本部。


『シスターズ』:エルフっ子、お嬢、魔女っ子の血縁がない三姉妹をひとまとめにした呼称。


『Colorful』:ハーフエルフの最高級愛玩奴隷たち。髪の色がいろいろなために神父により命名。奴隷としてエルフや人間を掛け合わせて競走馬のように生産された少女。広範囲で販売されるために多言語の読み書き会話ができる。


『ハーフエルフ』:エルフと人間の間に生まれた混血種族。エルフに似た美しい容姿と不老、不妊、それ以外は人並みの種族。異世界全体として迫害される。



強者の論理。



力に意味はないが、強者には論理がある。



弱者からは見える。



強者の論理。

弱者の論理。

強者を装う弱者の詭弁。



何もかも見える。



強者自身には見えない。意識すらされない。彼らにとってそれは存在しない。



強いからだ。

誰も相対していないから。

力を意識する必要がないからこそ強者なのだ。


あたしは、あたしたちは、彼の眼に映っていない。

彼は、そして彼らは、あたしの眼に気が付かない。

あたしと、あたしたちと、彼と、彼ら、その間には。



深淵と。空白と。断絶があるけれど。



だからこそ、彼は、あたし、あたしたちを呼ぶ。

―――――――――――――――――――――――それはなにか?と訊くために。


理解できないし、勘違いばかりしているけれど、――――――――――それは何か?と訊いてくる。


だから、あたしが彼に応える。

だから、あたしは誇ってもいい。

下からしか見えないものがあるのだと、見上げることで気が付いた。





あなたはこういうものよ。






【太守府/港湾都市/埠頭中央/軍政司令部/指揮軽装甲戦闘車前】


俺が例によって検証作戦実行者。


認めよう。


この、勝手に決められた、データ抽出最適地に展開している国連軍の中で、俺が一番暇だからだ。

暇そうなドワーフ達他を抱えて時々趣味の殺し合いをしている元カノは?

部隊として既に色々作戦中。


そもそも『魔法翻訳』の違和感に最初に気がついたのが、元カノその人。

おそるべき女のカン。


そして多言語がごちゃ混ぜになり、民族人種横断な黒旗団の編成を利用してデータ抽出には最初から噛んでいる。



しかしながら、俺は俺で軍政統治という任務が・・・・・・・・・・・

・・・・・前線を遙か離れた孤立地域、別に無くても構わない資源、戦略的戦術的に意味もなく・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?何しにきたんだっけ・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・な任務を抱えている俺である。



多分(控えめな表現)、俺自身よりColorfulの方が価値が高い。


国連軍的に。


でまあ、価値判断はさて置き。

俺の抱えている軍政任務は、頼もしい部下達が進行中・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しかも、普通より、順調に進んでいる。

その事は、軍事参謀委員会に隠せない。


普通一週間はかかる初期準備が三日で終わる勢いである。



ノルマはギリギリ果たさない・・・・・・次のノルマが上がるから。

ノルマは時々達成する・・・・・上司の胃壁を守るため。

『申し訳ありません!』

『がんばります!』

この二つをを繰り返して終わるサラリーマン人生!!

※あなたの健康のために早めに終わらせましょう


『よろしい。では占領してきて』

(しないなら、させて見せようby三佐)


・・・・・・・・しくじった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

上司に転がされてるじゃねーか!!

好き放題か!!

恐るべし!!



ソンナジョウシニワタシハナリタイ・・・・・いかんいかん。

道を見失うな!



だいたいあの人(三佐)変だし。

気が付いたらレールに乗せられてるって!こわ!!

いやいやいや。


気のせいだ。気のせいだ。気のせいだから。


気を取り直そう。



軍政の始まりは資産接収。

まあ、既存の統治体制を数値把握することなわけなんだが。


資産接収、とは言うが、大半はスキャン業務という端末操作。

手間と時間以外必要ないが、そこが一番省略できないのが世の常で。

そこを考慮した国連軍により、高校生のバイトでも可能なほどにシステム化されている。

されてはいる。


ならばどこに高校生がいるのかと言えば、いるわけがない。

家内制手工業すら先の先。

中世において、


・単純動作の訓練が行き届いている

・器械的動作を仕込まれている

・思考停止で反復動作ができる


そんなモンがいるわけないのである。

学習とは訓練であり、思考を低減させて反復動作の効率を上げる過程。

いや~学習指導要領とはよく言ったね!


システム化されていない中世社会。

文明化された器械的人間はすぐに死ぬ。



異世界との物理接触を避ける防疫体制の関係上、人手不足が日常な国連軍。

システム化前提な、あらゆる装備にすべての体制。

それを支えるあらゆることが、異世界には向いていない。


だから現地作業員の動員は限定的な効果しかない。

任せることは、そもそも不可能な地域だってあるくらいだ。



その貴重な例外が、ここ。


っていうか、この港では、何故か大商人本人やその従業員などが率先してくれてるからなんだが。

バラバラな中世的教育程度の中で、最高レベルの、普通に俺より教養高い人たちが指揮を執る。

しかも、この世界で一番システム化(器械化)された帳簿整理に経験が深い従業員の方々が作業してくれちゃってんだから。



ある意味で、これから近代を切り開くであろう方々。

機械が社会と名付けられ、労働者という歯車が生まれる未来。

異世界を俯瞰してみて次の時代の萌芽たる皆さんすべてが一挙に集結!


だからな~そりゃ、仕事も進むわ。

有難くないが感謝はする。




【太守府/港湾都市/埠頭中央/青龍の土竜の上/青龍の貴族、正面】


あたしも気がついたが、頭目が指差した。


「これはお役目の数字ですか?」


青龍の貴族が頷いた。

あたしたちがみても構わない、のね。



青龍の世界が見える水鏡。


これも好きに使わせてくれるし、相変わらず、隠すって気がない・・・・・・・・・・・・


(私たちを信用して、る?)


囁く頭目・・・・・・・・・・・・・・・・・・違うわよ。

多分、相手にしていない、脅威だと思って、いない。


なんで嬉しそうかな?頭目は?


「よくやっている」

「もったいない御言葉」


頬を染めて一礼する頭目。

いや、染めないでよ。


今のは倉街の帳簿確認への評価でしょう?

やってるのは主に船主とその手代、両替商に番頭達じゃない。


盗賊ギルドは関係ないよね?

第一!


「すべてご領主様の采配でごさいます」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ここできたか。



まあ、船主達が必死なのは、青龍の貴族が出港許可を約束したから。

船出できるかどうかは、彼らにとっての生命線。

海は青龍の支配下。


今年の初めに青龍が攻め寄せてから、3ヶ月も港で留め置かれた商船団を、やっと出せる・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・青龍の資産接収が終わったら。


必死になるわよ。

青龍の貴族は、超然としてる割に、人使いが上手い・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って感じが、しないのよね。


なぜ?


(面白がってるんじゃない?私たちが必死なのを)


頭目!




【太守府/港湾都市/埠頭中央/軍政司令部/指揮軽装甲戦闘車前】


俺たちの作業、日々の進捗はリアルタイムにアップされてるからバレバレである。


現地協力者の奇跡的ラインナップの質量で、めでたく俺はいらない子なのである。

『おまえやれ』っていわれるよね?


それは。


そして『やれ』と言われた内容は軍事参謀委員会肝いりの作戦。

最優先であったりする。


しかもご大層に、軍政実務に支障がある場合は、相応の支援を確約されている。

逃げ道を塞いで、地雷を敷設してこめかみに銃口を突きつけられているようなもの。

どうにも口先でごまかせない。


しかも、さっさとしないと、呼んでない支援が届くという、戦史に残る奇跡が起きる。

かも、じゃなくて、起きる。

タイムカウントが始まっている。



つまりこの場合、三佐が来る、って事だ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いかんいかん。

眩暈がした。


しかも、検証作戦実行者に俺が特に指定されているから三佐が来たら、重要作戦を押し付けて腹で笑う訳にはいかない。

っていうより、まず絶対に鼻で笑われる。

俺が。



Colorfulやシスターズ、頭目達をあえて全員を一度に集めるだろう。

俺も。

俺だけ中に放り込まれる。


その上、集まるときは全員に自由に着飾らせる。

女が、女の子が、フリーハンドを手に入れたら何をするのか?

多世界共通だとわかったよ!!

新発見なのに、驚きがない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・5+3+2・・・・絶対に元カノたちも加わってくるな。


『愉しそうね』


っていう三佐の嗤いが目に見える。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・我ながら、そうなったら、自分を正視出来ない。



なにこれ!!

美少女率高!!!

年齢低く!!!!!

軍法会議待ったなし!!


ちがうんだ!!!

男女比おかしいのは部下(司令官監察官込み男ばっかり15名)が作業中で有視界にいないだけだから!!!!!



昔の人は言いました。


『女は遠くに大勢いるか、側に一人いるのが一番いい』


※出典不明・・・・・・・誰か言ってたと思うんだけどな?????


全部揃えば男女比、あれ、3対2?

いや、おかしくない。




【太守府/港湾都市/埠頭中央/青龍の土竜の上/青龍の貴族、正面】


あたしたちは青龍の貴族に言われるまま。

『白騎士物語』を読む。


原典、っていうか、この邦、今は太守府と呼ばれる、あたしたちの言葉で書かれた物。

それをColorfulがそれぞれ別の言葉に訳した物。


それぞれの印象を、ただ言えばいい、らしい。


青龍は何をしたいのかしら?


一話目は、白騎士の登場。街で暴漢から人助けをする、ってだけなんだけど。




【太守府/港湾都市/埠頭中央/軍政司令部/指揮軽装甲戦闘車前】


俺たちはテキストを読み進む。

まあ、先ずは、出だしだけ様子見で。


ここでしくじったら、先の予定を考え直さなければ。


作業計画。


第一段階。

A(原典)を地球人が読み込む。

※作者不詳で何が原典ってこともないが、翻訳の元ネタを原典と呼称。


第二段階。

AをB(翻訳者)が文章、音読で別言語に変換する。これをa-xとする。ここではColorful達に合わせてxは5種類。

貴重なマルチリンガル、Colorfulは愛玩奴隷の謎教養で複数言語が使えるが、まあ、最初はこんなもので。


第三段階。

a-xを地球人/現地人が読解視聴する。

『魔法翻訳』は『地球人/地球言語=現地人/現地言語』の間でしか起こらない。

地球人は『魔法翻訳』で理解する。

マルチリンガルな現地人は直接文字で理解する。



その印象を比較する。


言語による差異はあろうが、Aとaは同じ内容である筈だ。


地球人はコレを『魔法翻訳』なしで、直接認識は出来ない。

未だに異世界言語の解析は端緒についたばかりだから。

そこが現地人の役割。


現地人だけが感じる差異(α)。つまり言語の差。

地球人が感じる差異(β)。つまり『魔法翻訳』による差。


αとβを比べれば訳者の意識により『魔法翻訳』がねじ曲げた部分が判る・・・・・・・・・といいな。



定量化して解析出来るかどうかは、可能性のみの話だが。

かくしてテキストに選ばれた『白騎士物語』つまりAを読んでいく。




【太守府/港湾都市/埠頭中央/青龍の土竜の上/青龍の貴族、正面】


あたしは読み比べた。


まあ、差はある。


第一話だから、白騎士自体の描写が多い。


白騎士とはどんな人物か?

無口であまりセリフはない、何も言わずにやるべきことをやるタイプ。

人を助けても礼を求めず。

誰に対しても礼儀正しい。

・・・・・・・・意外に人と距離をとるタイプかな?



あたしは、青龍の貴族に目がいってしまった。



そもそも『漂泊の騎士』だから出身や経歴が不明。

常識外に強い。

まあ、主人公だし。



・・・・・・・・目の前に、似た様なのがいるわね。

ちょっと待って。


不言実行。

慇懃無礼。

正体不明。

無欲で常識外に強くて、まあ、結果として、女の子を救っている???


これって・・・・・ううん。

こっちは、軍を率いて・・・・いないことはないけどあんまり連れてないわね。

たった十五人だし。


第一、女の子を守る、て言っていいのかしら。


あの娘を利用した市民を街ごと消そうとしたり。

あの娘を侮辱したチンピラを素手で引き裂いたり。

Colorfulたちを侮辱したものを殺させたり。

頭目親子を護ったり・・・・・言っていいのか。


間違い、ではないわね。

絶対に子供が憧れるような話じゃないけど。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あとあと。そーいうことは、あたしと関係ない!!



違いを見つけるのよね。

ちがうところちがうところ・・・・・・・まあ、感想も言えって言われてるけど・・・・・どうしよう?

あとあと!



暴漢を倒す場面で、原典と翻訳版で違い。

倒す手段が、素手だったり剣だったり。


コレはたぶん、剣に対する意識の差。


剣を抜く事に重い意味を見いだす大陸中央の言葉。

抜刀自体が日常的な南の言葉。


原典では蹴りなんだけど、北の辺境で長く平和だった土地柄かな。



本当に静かだったものね・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10年前の、あの日まで。




【太守府/港湾都市/埠頭中央/軍政司令部/指揮軽装甲戦闘車前】


俺はそれぞれ二回読んだ。


活字じゃないから、かさばる割に、字数が少ないのだよ。

Colorfulが3Dディスプレイに手書きで入力しているんだけどね。


いずれは仮想キーボードに音声入力・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちがう。



これ、恋愛小説だったか?



A(原典)は英雄譚、その序章。


一言で言えば


『白騎士カッコイー』。



Colorfulの白が翻訳したaは・・・・・・・・・・・・


『白騎士様素敵』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・恋愛もの?



Colorfulの橙が翻訳したaは・・・・・・・・・・・・


『白騎士様抱いて』

・・・・・・・・・・・・・・・・・官能小説?



Colorfulたちの翻訳は概ね恋愛ものにまとめて良いだろう。


R-15か18かは差があるが。


いや、原典?は子供でもオッケーな内容だったハズでは?




【太守府/港湾都市/埠頭中央/青龍の土竜の上/青龍の貴族、正面】


あたしは読み終わって、違いを書き出した。印象は後回し。


まあ、この言葉で読むのは初めてだけど、よく知ってる話だから理解はたやすい。

面白くもあったから、青龍の貴族、その期待に答えられたかな?


「これも」


と青龍に渡される、これは、か、み?すごく光沢があってなめらかで、真っ白!

そこに書かれているのは流麗な書体で・・・・・・・


ん?青龍の言葉?




【太守府/港湾都市/埠頭中央/軍政司令部/指揮軽装甲戦闘車前】


俺が考え込んでいると、元カノが現れた。


「聞いてよ聞いてよ!」


変わらんな~~中学生のころから全く変わらん。ぶんぶん腕を振り回すところが。変わったのはバストサイズだけか?


「スタングレネード使うんだよ!」


インドネシアの謎老人やるな!


「ヒドいでしょう?」


銃剣でバトる女ほど酷くない。


「今までは肘を固められるくらいだったのに!」


懲りろよ。

ってか、やっぱ強いのか?マッチョ爺さん。


「強い強い。荒くれは拳から入らないとわかんないからね」


自慢そうで何より。ドワーフ殴るときは銃床でも使うんか。


「耳は?」


俺の最初の一言である。おわかり頂けただろうか?


「とっさに互いの耳を塞いで目蓋に気合いを」


やっぱマメシバと仲いーんだな。


「なんであんたは口数が多いのよ!」


話跳ぶな!ほんと変わんねーな!!


「アタシと話す時よりアイツと話す時のほうがよく話すってどういうこと????!!!」


え~お前が聞くの~。




【太守府/港湾都市/埠頭中央/青龍の土竜の上/青龍の貴族、正面】


あたしは、青龍の言う『魔法翻訳』の意味を理解してるつもりだった、けど、でも・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・無口で、なによりも行動で、決断して、圧倒的に強くて・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・遙か彼方から突然、訪れる。


白騎士?

じゃなくて?


印象、言わなきゃダメかな??本人に???




【太守府/港湾都市/埠頭中央/軍政司令部/指揮軽装甲戦闘車前】


俺が思い付いたのは当然だろう。

ちょうどいいから。黙らせるのに。


俺は元カノを巻き込むことにして手元のテキストを押し付ける。


「読め」


・・・・・・・・・・・元カノにスイッチがはいった。。

違う違う。

頬を染めてうるうるしない。

エルフっ子、頭目がフリーズ中?


「テキストを、読め」


俺は、わざわざ、元カノに伝え直す。

嫁じゃないから。

いや、顔を伏せて泣いたふりしない!地味に効くから!


「チッ」


おめーはよ!!!!『読め』と『嫁』とかわかりにくいよ!!


「まかせな!」


と腕まくり。おっとこまえー。


「胸を叩くのは痛いから無理なのよ~~」


俺は何も言ってないが。

ともあれ、コイツはこの問題の先駆者だ。


「読め」


プリントしたテキストを読ませてどう反応するか。


しかし、エルフっ子どうした。

Colorfulに描き写させた日本語版を食い入るように読んでるな?


『魔法翻訳』の影響が日本語にどう影響するか調べる為に作らせたんだが。


地球人の言語が現地人にどう聞こえて読まれているか?

現地人の言語が地球人にどう聞こえて読まれているか?

ばかりだったが、書かれる言語と書く主体をシャッフルしたらどうなるか。


『白騎士物語』第一話だけを昨夜のうちに日本語訳。

俺が。

それにも『魔法翻訳』の影響があるはずだが、もちろん俺自身にはわからない。


それをColorfulに3Dディスプレイで『なぞらせた』わけだが。


Colorfulは日本語が書けない。

だが、『魔法翻訳』で意味は解る。

ひらがなカタカナ漢字、日本語を形だけなぞらせることで


『Colorfulが書いた』


形を作らせた。これで俺が受けたバイアスは上書きされている。


これで、『魔法翻訳』が発動する『異世界=地球間の翻訳』の形ができた。

『魔法翻訳』の原理が想定されているとおり『行為主体の意思が翻訳結果に影響する』ならば?

ただの日本文になにがしかの意味が付加されるはず。

行為主体ってのは、つまりは、『書いた人/話してる』だから。


・・・・・・まあ『書いた』ではなく『描いた』じゃだめかもしれないか。



でもない?

エルフっ子?何を見比べてる?俺ポーズとった方がいい?

ディスプレイに何か出してるのかな?

ネットサーフィンぐらいいいけどね。


軍事参謀委員会の検閲付きデータだから大したものはないかもだけど。


『白騎士』のテキストじゃないのか?


「思いつき?」

呆れたのか感嘆したのかよくわからない表情で聞いてくる元カノ。


うむ。


まだ現地語翻訳ソフトなんぞ夢以前だからな。


「この発想はなかった」


うんうん。

比較する事で俺達の言葉が現地にどう聞こえてるか解析・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・の糸口になればいいな、と。


ビリっ!!!


なにしてんのキミぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!




【太守府/港湾都市/埠頭中央/青龍の土竜の上/青龍の貴族、正面】


あたしの前で青龍の女将軍が紙を破いた。

あたしが見ているものと、同じだもの。


見なくてもわかる。


青龍の貴族は、いつも通り、落ち着いたもの。


わかっていると言わんばかり。

でも、わかっている訳がない。

これも、いつも通り。


この人は、いつもいつも勘違いしている。


「他人のラブレターを読む感じ?」

「意味はわからんが、それを破くのか」


青龍の貴族と女将軍、二人の会話。

青龍の女将軍があたし、そして頭目を見るのは牽制の証し。


慌てて駆け寄ってきたColorfulには一瞥もしない。


眼中に、ない?

それとも、脅しつける気がない?


彼女なりの正々堂々、かな?




【太守府/港湾都市/埠頭中央/軍政司令部/指揮軽装甲戦闘車前】


俺はとりあえず、オウム返しに近い。


自動応答的な?


「あんたは読むな」


って、Colorfulの描いた、『白騎士物語』日本語版?

エルフっ子や頭目も頷いている。


みんなわかってるね。


目の前に正気を踏み外した人を見つけたら、逆らってはいけません。

そうだね~そうだね~と落ち着かせ、様子を見ましょう。

落ち着かない、もしくは正気が戻らない場合は早急に専門医に。


メディック!メディ~ック!


「はーい!」


マメシバ三尉、あ、そういや衛生兵ってか、軍医だね。

テレパスかよ!!!


「閣下!目で呼んだじゃないですか」


メンタルいけんの?まあ、戦場に派遣されてノータッチはないか。


「ん?どうしましたか~」


医者っぽいけど、違う違う。なぜ俺を診察する。

そっちそっち。

きみの上官!錯乱してるのは元カノだから!!!




【太守府/港湾都市/埠頭中央/青龍の土竜の上/青龍の貴族、正面】


あたしは、うーん、どうしようかな?

アタシが初めて見ている『魔法翻訳』とやらによる『白騎士物語』、コレを青龍の貴族が読んで良いかどうか。

青龍のニホン語とやらを読めないあたしが読み取れる内容・・・・決めるのは、当人よね。


でも『魔法翻訳』の効果は書いた(この場合は『描いた』)本人にはわからない・・・・・・みたい。


だから・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・あたしは、Colorfulみんなを集めた。


一応、説明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・半信半疑、ね。


「貴女たち同士で確認してもらって、いいかしら」


育種家に生み出された彼女たち。

生まれたときから一緒、(男女とも母体になるエルフが多くないから)多分血も繋がってるし、姉妹みたいなもの。


なら、あたしみたいな赤の他人よりマシでしょう。


Colorfulそれぞれに、自分が描いたもの以外を読んでもらう。

高い歓声。


まあ、ね。わかるわ。


そして、Colorfulたちが互いに内容を教えあう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・沈黙。


高い悲鳴。


青龍の貴族がColorfulに向ける視線がトドメ。


え!なんで??????????頭目は落ち着いて、あたしの肩をたたいた。


「奴隷の禁忌に触れた・・・・・・ううん。ハーフエルフの禁忌と言ってもいいかも」


あ!!

Colorful達は肩を落として震えている。

気が付いてたなら言ってよ!!

あたしが内心で八つ当たりをしている間に、頭目がColorful達の前に立つ。


パンっ!!!!!!!!!!


「聞きなさい」


手を打って注目を集める頭目。

Colorful達はうつむいているが、耳は頭目に向いている。


「わかっていますね」


Colorfulみんなの耳がうなだれた。

奴隷の規範が赦さないこと。

ハーフエルフに赦されないこと。


「貴女たちの主を御覧なさい」


皆、伏し目がち。

涙目で震えている。

青龍の貴族が女将軍を押さえつけたまま、振り返る。


「お聞かせください」


頭目が脇に下がり、Colorfulたちを青龍の貴族と相対させる。

みな、地に伏して赦しを請わんばかり。

でも、青龍の貴族。その視線がとどめている。


「この娘たちが想う事を赦されますか」



頭目が見ている。

青龍の女将軍も。

背後から、いつの間にか、あたしの大切な妹たちも。



「見ろ」


青龍の貴族は命令する。Colorful達は力を振り絞って、彼の眼を見た。



「命じる」



笑い出した青龍の貴族。




俺が手に負えぬほどに想うがままに振る舞え。

俺が思いつかぬほど想うがままに過ごせ。

俺に逆らって破ってみせろ。

俺が躾て縛ってやろう。




静かに、強く、あたしたちを貫く声。

Colorfulたちに、ううん、あたしたちすべてに。



命令。



青龍の女将軍も、マメシバ卿も笑い出した。

当たり前にすぎて『何を今更』と言うように。



青龍の、支配者の、強者の論理。




『好きにすればいい!好きにはさせないがな!!』









【???】


Colorfulたちが描いた『白騎士物語』。


一話目。


貧しい娘を護り暴漢をたたき伏せる漂泊の騎士。

皆に見捨てられていた娘。

娘は白騎士に護られながら、白騎士の力になり、白騎士の為に死ぬ。


それは原典通り。



だが、それを読む者には、恋文に見えた。




奴隷にも。ハーフエルフにも。この世界が決して赦さぬこと。




異世界には、彼等には、気が付きもしないこと。



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