相互確証破壊
【用語】
『ロバート・ストレンジ・マクナマラ』
:合衆国の政治家(ケネディ~ジョンソン政権の国防相)。軍事戦略家(第二次世界大戦欧州~太平洋の軍再編成計画に参画)。経済人(フォード社の再建~世界銀行総裁まで)。
「頭の良い人間」の類型。
「目的と手段」の優先序列が明確で「規律と序列」に忠実で「助言と批判」が等しい。
学問の殿堂であった頃のハーバードで学び、勲章に成り下がる前のMBAを取得し、母校で教鞭をとる。世界大戦中はB‐17からB‐29への転換と戦略空軍創設へ尽力。
ただし対日無差別爆撃は戦後復興コストから見て有害無益と大反対。カーチス・ルメイ将軍とやりあい軍を追われる。
その後フォード社へ転身。
大型車生産計画失敗、すぐに小型車のシリーズ化に成功。
社を再建する。
政界入りしたあとは冷戦下の戦争指導に集中。
ベトナム戦争では不介入か大戦力を投じた短期決戦を志向。正規軍一個師団を投入し、成果があがらないことを確認。
ペンタゴン官僚の報告書の信憑性に疑問符がつき、前線行脚開始。
撤退計画を策定中に大統領が殺されたり、トンキン湾で魚雷が発射されたりで失敗。
激化する戦局にたいして、大戦力を一気に投じ前線を整理し、撤退する計画を策定。
都度都度テロ攻撃で米軍が被害を受け、ことごとく失敗。
ペンタゴン官僚から上げられてくる報告書の信憑性が否定され、常に直接前線を見て回る羽目に陥る。
最後はジョンソン大統領に首をかけて撤退を上申、辞職に至る。
つまるところ「頭が良い」とはこういうことか。
人命を含むあらゆる要素をコストとして割り切ることが出来た。
だからこそ失われた命や面子、こだわりなどを無視してしまった。
いや、認識出来ないし、それがあらゆる人々に伝わらなかった。
故に、実験し確認するところまで成功する。
だが
「『なんの成果も得られない』という素晴らしい成果が得られた」
という段階で解離が生じる。
売ってみたから大型車が時代遅れだと判った。
なら小型車を売れば良い
――――――――――納得した者ばかりではあるまい。
戦死させたからこそ、戦場では勝てないと判った。
なら軍隊ではなく外交で戦争に勝てば良い
――――――――――部下を死地に送った将軍たちが、納得しなかった。
だから
「実験結果に基づき方針を真逆にする」
のに失敗したのだ。
「そんな馬鹿なことをする人間がいるものか」
頭の良い人間が失敗する前に、しばしば口にする言葉。
馬鹿には全てがバカに見えるように。
盗賊には全てがドロボウ見えるように。
頭が良い人間も自分を基準に考えるものだ。
自分に判る程度のことは、相手も判っているに違いない。
百人に一人くらいはいる馬鹿を、人間と誤解して。
馬鹿の声は人間の千倍は大きいとは、思いもしない。
相手が対等の思考力と打算があるのは当然、と考える。
故にこそ、馬鹿に負けるのではなく、馬鹿に巻き込まれてしまう。
何も持っていないし手に入れる見込みがない者。
何もかも持っているしこれからも手に入れる者。
どちらが大きな被害をこうむるか?
皆様、想像された通り。
――――――――――Serenìsima Repùblica de Venexia,
ヴェネツィア共和国、千年の外交を批評した言葉。
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿(改め建築楽器)内/中央/青龍の貴族】
俺はつくづく思いしる。
昔の偉い人は良いことを言った
――――――――――話せば解る。
殺された?
友軍であれなんであれ、俺たちは撃っていい。
通告無き戦闘動作は反乱とみなされる
――――――――――鎮圧の対象。
ましてや攻撃動作を向けられたら、反撃。
勝てば脱出、負けたら撤退。
おねいさんずの突入手順。
露骨におかしい、俺でもわかる。
本来なら閃光弾か煙幕弾を投じて内部を攪乱、標的を無力化/抵抗力を最小化。
現代戦装備を相手にする時は閃光弾。
煙幕だとブロテクターの視認欺瞞機能で隠れられるからね。
いやまあSFあるあるの光学迷彩じゃなくて、単なる低視認塗装だけれど。
元々プロテクターをまとっていれば、赤外線なんかの放射は常に最小限。
そんな中、互いの視界を奪っても、良くて互角、になる訳ない。
ブロテクター装備の標的なら、正規軍。
正規軍は常に隊形を組んでいる。
散開していてさえ、いや、むしろ、散開中が一番に厳重。
行軍中はもちろん、休息中はなお一層。
敵襲を警戒して即応体勢。
IFFはお互い様。
※IFF/identification friend or foe:敵味方識別装置。正しくは「味方識別装置」であって、「味方以外は全部敵」というシステム。
特定周波、敵の対人レーダーだけを潰すのは別な話。
煙幕弾の電波撹乱効果込みで、視界が無くても集音装置は使える。
両方視界を失えば、初動が少ない襲われた側に有利。
受け手は回避動作を加味しても、味方の位置関係が把握しやすい。
その分、盲撃ちでも同士討ちになる確率が低い。
どーせ即応の弾幕なんか、狙い撃ちなんかしないんだから。
だから煙幕弾より閃光弾。
それなら襲撃側だけ視界は残る。
もちろん一瞬のことだけれど、その一瞬が突入の瞬間。
これは大きい。
いかに最新装備でも、瞬間的閃光には追いつけない。
プロテクターのフェイスガードは、常に許容量以上の音や光を排除している。
砲爆撃の轟音、その最中に置いてさえ静かに会話ができるよう。
ノイズ、と言うには大きく殺人的なそれだけをカット。
通信機を介さない肉声や、忍者の忍び音だけを拾い上げる。
だがそれは電子的補正、その都度だ。
処理速度を超えれば、ブラックアウト。
閃光弾の光と音は、プロテクター内部の兵士に影響しない。
つまりその瞬間は、外部が見えずに聴こえない。
故に一瞬、一瞬以上は、目がくらみ耳が塞がる。
大まかな形と方向性しかわからない。突入側ならタイミングも、音や光の種類すらわかっている。
事前に調整すれば、どんな音光もフィルタリング可能。
調整可能なのは、音と光を出す側だけだ。
だからこそ襲撃する側が一方的なアドバンテージを得られる
――――――――――が、しない。
おねいさんずは、本来のセオリーを無視。
攻撃の優位を棄てて、人間の盾で支える構え。
まあ判る。
よーく解る
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・子どもたちが、居るからだ。
最初から、俺に射線銃口が重ならないのも、それだ。
俺の周りの娘たちが、どんな動きをするか知らないから。
子どもたちより抜き出た俺の頭だけ狙って直撃を避ける手もあるが。
頭骨による跳弾や弾片が跳ぶかもしれない。
亜音速のそれは、銃弾自体より危険。
弾頭弾片がひしゃげる分、人体に引っかかりやすい。
直進貫通しやすい通常弾より、不安定な軌道。
欠けたナイフで体内をえぐり抜く感じ。
体組織の破損が大きく、体内に飛散した破片は回収困難。
ひしゃげた弾頭や脆くなった弾片が、人体衝突の衝撃でさらに砕けるから。
体内で散弾が破裂した感じ。
いや、もっと治療し難い。
大きさ形状が部位まちまちの破片を、取り出さないとならない。
体を切り刻んで裂いて抉って、過程で生まれる山のような欠損を充填する。
普通、何ヶ月もかかる。
何ヶ月も何度も繰り返す。
で、治らない。
マシになるだけ。
実戦の常識として教えられること
――――――――――跳弾は最悪、撃たれる方がマシ。
マメシバの多世界複合医療なら、一度で治せるらしいが。
治癒魔法と移動魔法の術者を、リアルタイム検査機器オペレーターと組合せ。
患者は必要に応じて麻酔し、化学薬品で血圧他を操作。
それは何処でも使えるわけじゃない。
だから危険は侵さない。
おねいさんずは、子どもの危険を看過しない。
例え自らが弾幕に身をさらして、金属バット滅多打ちにされようと。
肢体で盾になる構え、ってことは?
【聖都/聖都市内/中央/大神宮内/巫女の胡坐/青龍の騎士団陣形中央/青龍の貴族の側背/エルフっ娘】
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あたしは彼の掌のことを意識しないように、いつもの革鎧じゃないから直接つかまれてるのだけれど、そーいう場合じゃないのに力が抜けちゃうのは、彼の判断なわけでいくさばでこれってわけわかんない。
――――――――――ちがうちがう――――――――――
あたしのどこかでは、冷静な声が響く。
柄を握りなおして、心を鎮める、ように努力!
これは普段と違うんだから。
たぶん。
彼、青龍の貴族が女を弄って見せているのは、常の姿を見せつける為。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それが常、っていうのは、彼の女、その一人、としては複雑だけど。
まあそれは明日考えましょう。
常と扱われるのが、あたしだったのは誇ってもいいこと。
女の中で、あたしが一番、強いからでしょうけれど。
なら、もっと頼りにしてくれないかしら。
その効果は?
騎士は将を見る。
将は騎士に見せる
常ならぬ時であればこそ、常に等しく振る舞う。
そこまでは青龍も、あたしが知る常識も同じなの。
――――――――――そこまでは。
常識?
人が同じ旗を掲げて殺し合うなんてありふれている。
あたしみたいに人の世を歩いていれば、驚くこともなくなるくらい。
けど、常ならないにもほどがあるわよね?
彼、青龍の貴族の騎士たち。
彼の同輩、青龍の女騎士団。
青龍対青龍。
互いに殺気立ち、殺す構えを組み立てていく。
殺し合いになったら、一瞬で終る。
だから、あたしの中で、今起きてることが噛み合わない。
青龍が他の何かを襲う時は、狩り。
戦いにならない。
帝国は、まだ理解してないけれど。
――――――――――青龍の敵は青龍――――――――――
彼らは互いに殺し合うには強すぎる。
間違いなく、お互い生き残れない。
青龍以外の理屈なら、ここで殺し合ったりしないわよね。
戦い合えば確実に、敵も味方も滅んで消える。
もし、生きていたいと思うなら、戦うわけがない。
戦うことが手段であるならば、そうなるわね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。
青龍なら戦う。
何かが欲しいから戦ってるわけじゃない。
敵も味方も誰一人生き残らなくても戦う。
己が生き残る為に戦ってるわけじゃない。
あたしには解らないけれど、それだけは判る。
一緒に死ぬなら、それでいいわよね。
でも、殺し合いになってないし。
それが解せない、判らない。
まだ?なだけ?
指揮は全て騎士長に委ねていても、兵が従うのは彼の意。
最初から、騎士長も騎士たちも、あたしたち皆そう。
あたしたちは、余分だけどね。
それはいつものこと。
ましてや青龍が青龍を殺すのであれば。
殺し返すのではなく先に殺すのであれば。
どちらが叛徒か定かならぬ時であれば。
殺せと命じることができるのは、彼だけだ。
――――――――――皆が彼を見ている。
視界の端で。
背中の気配で。
陣形の揺らぎで。
向かい合う双方が、彼一人を見ている。
殺すべき敵以外、彼だけを見ている味方。
殺すべき相手以外、彼だけを見ている敵。
なんで殺し合いそうな双方が見てるのよ。
そも、あたしたち、なんで生きてるのかしら?
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿(改め建築楽器)中央/青龍の貴族】
俺には十分。
知るべきことも。
知ることができることも。
どちらにしても、たいしてないが。
とりあえず、今は、この娘たちをひっぺがさないでいいとしよう。
VSおねいさんず。
トリガーには指がしっかりかかっている。
銃口は向いている。
なぜか俺、じゃなくて、俺たち軍政部隊へ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺たちの方向へ、だ。
おねいさんずと俺の部下。
銃口を真っすぐ向けるのがこちら。
銃口を向け返しているのがあちら。
おねいさんずの銃口が、やや下を向いている。
上に向けていると、長時間保持するときに辛いから。
射撃即応姿勢。
つまり射撃姿勢じゃない。
1分前まで敵は俺だけだったのに、今は敵扱いじゃない。
おねいさんず指揮官が、友軍将校同士の通信を切っていない
――――――――――今まで通り、俺が的なら自分たちの指揮命令を傍受させやしない。
そして、一番の女スナイパーてあるNo1が、指揮に集中している
――――――――――攻撃対象が明確なら、下士官に任せて狙撃にまわるだろう。
おねいさんずは士官下士官が多い。
突入指揮、前線指揮を任せる人材に不自由はない。
可能な限り調べておいた彼女たちの個人データでは、そんな感じ。
もちろん概略や推測、同僚隊員の推測も混じっているが。
俺が狙われ始めてから一日経っている。
それだけ時間をかけた調べたんだから信頼していい。
容姿や性格、嫌いなモノを把握しようとすれば、自然と経歴が目に入り、技能のアタリが付くものだ。
その個人情報を踏まえてコナをかければ、興味を惹けるし怒らせることすら可能。
おねいさんずNo1は最大戦力の狙撃兵。
この少人数戦闘で、事前事後以外は指揮なんかしてる場合じゃない。
突入のイニシァティブを握っているんだから、打ち合わせなんかいらない。
それでも直接指揮を執らなけりゃ内ないってことは、十分な擦り合わせが
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とっさの行動か?
だから、指揮、いや、状況把握と即応を優先した。
だから、狙撃を捨てて、一歩引いて様子を視てる、のか。
こりゃマジだ。
無要不急の外出に忙しく、投稿が遅れてしまいました。
ウィルス以前に「病気」って概念をググレカスな阿呆が感染拡大やらなんやら吹かしてるので、致し方なく。
以下言い訳ですが。
ウイルスって増殖するときに人体を蝕むんですよね。
ってことは、8~9割以上が無症状なウィルスは増殖力が弱い。
ってことは、数が増えないウィルスは病性だけじゃなくて感染力も弱い。
ってことは、「昨年秋から新型コロナウィルスは発生していた」って説は正しい。
検証する必要のない、論理的帰結です。
ってことは、今日判明した感染者がいつ感染したかといえば、昨年からかな。
ってことは、感染者の周りで感染者が見つかるのも、当たり前のこと。
ってことは、生活空間が同じなら同じ常在菌を共有しますわな。
ま、定期的に感染チェックしない限り「いつ感染したのか」なんて確認できませんけどね。
ゆえにこそ、論理的に特定できるんですが。
ゆえにこそ、馬鹿には見えないのですが。
ゆえにこそ、コロナ対策で人が殺されていく。
これ、選挙が終わって馬鹿どもが吊るされる心配がなくなるまで、馬鹿が生き残る為だけに人が殺され続けますね、経済的に。
では、人殺しを少しでも阻止すべく、明日も明後日も街をうろついてまいります。
夏の正しい暑さを描写する。
そんな糧にはなりましょう。
それはそれとして、本作創造ご協力へ感謝を。
そして指導ご鞭撻お待ちしております。




