ジュネーヴ条約第4条
【用語】
『シスターズ』:エルフっ子、お嬢、魔女っ子の血縁がない姉妹同然の三人をひとまとめにした呼称。。頭目の愛娘を加えるときは「+1」とか「+α」などとつける。
ジュネーヴ条約第4条対象者
『Colorful』:奴隷商人に造られたハーフエルフの最高級愛玩奴隷たち。髪の色がいろいろなため、神父が全員あわせて「Colorful」と命名。一人一人の名前は髪の色に合わせて白・朱・翠・蒼・橙と主人公が名づけた。
性格
一番不器用で耳が短い、橙。
その橙をフォローすることが多い、碧。
一番背が高くシスターズと一番話す、翠。
事あると真っ先に前に出てくる、朱。
一番胸が大きくおっとりしている、白。
ジュネーヴ条約第4条実行者
「本条約条項に基づき保護されるものは『交戦国』または『占領国』の権力内に在り、双方に属さない者とする」
戦時における文民の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約
Geneva Convention relative to the Protection of Civilian Persons in Time of War of August 12, 1949
【三人娘】
「「「――――――――――え??????????」」」
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿(改め建築楽器)内/中央/青龍の貴族】
俺が聴いた三人と五人のびっくり声。
同時に三つのことが起きた。
そして一つのことが起きなかった。
俺は止まっていた。
俺の行動――――――――――それが起きなかったことだ。
だから。
あと三つ。
【聖都/聖都市内/中央/大神宮内/隊列先頭中央/青龍の貴族背後/一足飛びに届く距離/エルフっ娘】
やっぱり!!!!!!!!!!
――――――――――あたしは鼓動を圧し隠して、周りを読み直す。
また来た
――――――――――きゃ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って?????????
え?
うん。
つまり。
あの娘に危険はない。
妹分にも。
Colorfulにも。
つまり?
あたしの肢体は自由にしていい、ってこと。
あたしの気持ちはともかく、誰から見ても護るべきは一つ。
あたしはとっさに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・留められた。
彼、青龍の貴族に、力づくで。
あたしは、振りほどけない。
単なる腕力だけなら、どうにで出来るけど。
あたしに、振りほどける訳が無い。
強いられたことには、従ってしまうから。
あたしは右手で掴まれ、Colorfulは左手の平で制され。
あの娘と妹分は、ぴょんぴょん跳ねてる
――――――――――盾になろうとしているのよね?
でも、精一杯背伸びして跳ねても、彼、青龍の貴族、お腹くらいにしか届かないわよ?
彼、青龍の貴族は強いけれど、自分自身が死なないようには、する気がない。
色々なモノを背負って立っているくせに、それを特に気に留めない。
代わりは幾らでもいる、って公言し、彼自身が、一番彼を必要としていない。
常々、あたしたちに示している。
――――――――――護られていろ――――――――――
命じたりはしない。
望んだりはしない。
逆らってみろ、と笑ってる。
従えるのみ。
それでも全員が、彼の盾になろうしたわけだけれど。
それはもちろん、彼、青龍の貴族が許すわけがない。
自分の女、たち、が死ぬことを、肢体が傷つくことを、痛みで苦しむことを。
――――――――――そうね、嬉しいわ。
あたしたちの気持なんか、どーでもいいのよねほんとーに!
そんな貴男の気持ちは、あたし、たちの――――――――――
知ったことじゃない。
なんとしても思い知ってもらいます
――――――――――貴男の女!!!!!!!!!!
貴男、青龍の貴族、その後に死んでたまるもんですか!!!!!!!!!!
万が一にも置いて逝かれたら気合いで死ぬ!!!!!!!!!!
絶対ぜったいゼッタイいに!!!!!!!!!!
この気持ちは読み取ってるはずなのに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あたしの気持ちなんか、正面から否定されるに決まってる。
現に今、む、胸を掴まれてるし。
だから、制止はかいくぐるモノ、なのだけど。
上手くやれるかどうかは、また別として、望まれたとおりに抗って。
あたしは動けなかった。
あたしは見回しながら、耳を澄ませて、様子を窺って、反応も判断も保留。
あたしの動き、いえ、動かないのを察して、胸を掴んでいる彼の力が緩む。
これって、
――――――――――全部、一人残らず。
なにかしら???????????
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿(改め建築楽器)内/中央/青龍の貴族】
二つ目。
陸上自衛隊普通科小隊による大神殿内部への突入。
俺たち軍政部隊は増強分隊。
突入された側。
大神殿内部は俺たちの管轄下。
お間違えなきよう。
俺は後ろ手にエルフっ娘の胸ぐらを掴み、Colorfulを手のひらで制した。
女は顔を、子どもは体を
――――――――――つかみ場所。
しかる後にベッドやソファーや枕やクッションに叩き伏せます。
安物はダメだよ安物は。
慣れれば水平垂直方向に受け流させること余裕。
熟練の手腕を持てば派手な割にノーダメージも可能。
精神的インパクト重視の技なので。
屋内ならそんなかんじ。
屋外だと、手近な女にパス。
20~30代なら柔らかいからOK。
爺婆は、そっちが壊れるからダメ。
子どもに子どもをぶつける手もあるし、15歳以上ならいける。
女の子なら、クッション代わりになるだろう。
男の子の場合は素早く逃げるし、逃げられない奴は弱いからダメ。
くれぐれも屋外で、地面に人を叩き伏せたりしないように。
死にます。
1.5mくらいの位置からアスファルトに落とせば?
死にます。
力を入れなくても、力をこちらで受け流しても、自重だけで死ぬ。
だから屋外でクッションが無いし女がいない時は、抱きつぶすかね。
相手を勢いよく自分の体、胸か腕にたたきつける感じで衝撃を与える。
黙らせるとき、留めるとき。
止めるときに、聞かせるとき。
言葉なんか使っちゃ手遅れ。
お試しあれ。
もちろんそれは、素人さんへの対処法。
異世界転移前の自衛隊の主任務は、継戦能力一週間の仮想敵国に備えることじゃない。
そんなもんが相手なら、冷戦時代に積み重ねた組織と備蓄と経験でどーにでも。
素人さんが現実離れした妄想をたぎらせるなら、それはそれでいいんだが。
彼らが求める有事なんて、こないしね。
――――――――――特別職国家公務員は、暇ではないのだよ暇では。
自衛隊の主任務。
常時想定、PKO/PKF。
万一想定、災害派遣と難民収容。
対外戦争を想定しない、なんて、ふつーふつーのグローバルスタンダート。
人類の歴史は戦争の歴史だって?
寝言をぬかすな歴史を読め。
戦争とは最高の贅沢。
古今東西できる国家が、どれだけあったと思ってるやら。
比較的早く星を覆った地球人類。
その大半は、戦争なんかと縁がない。
殺し合い奪い合うのは、よほど余力が無いとできないからだ。
世界大戦なんか、ユーラシア大陸の西端東端に太平洋の点々諸島の話でしかない。
そこしか知らなけりゃ、それが世界なんだろうが。
人類の生活領域のほとんどには関係が無い。
当時の人類、その大半は関わってすらいない。
痛い目を見た人間たちが、その限られた視線の中で、個人的世界の終わりを見ただけだ。
客観というのは、人間の不得意分野。
何千万人が殺されたという時、多くのモノはそこで終る。
それが他の事例と比較してどうか、とは決して考えない。
第二次世界大戦の死亡者は当時の人類人口の、わずかにたったほんの多めに見積もって2.5%でしかない。
すくなく見積もると1~1.5%くらい。
日本の総人口に占める通常平時年間死亡者とほぼ同じ割合。
第一次世界大戦、参戦国、従軍者の日記に在る。
――――――――――僕らにとって、それは楽しく長いキャンプのようなもので、気が付いたら始まって、何事もなく終わった――――――――――
ついてないごく限られた者だけが地獄を見て、大半の人類にとって永久に、他人事だからこそ、恐ろしくも呪わしい。
その程度だ。
そんな局限された戦争だって、可能だった時代は半世紀。
人類を滅ぼすことの方が、戦争するより簡単な時代です。
異世界転移前。
21世紀。
西欧諸国の軍隊はこんなもの。
戦争してまで得られる物なんかないからね。
非先進国の軍隊もそんなモノ。
国内統制のために在り戦争する国力なんかない。
防衛であれ侵略であれ、対外戦争を想定して実行出来る国なんか、まあ、片手の指の数に届かない。
その対外戦争ってのも、全面戦争じゃないけどな。
冷戦時代。
合衆国とソ連は2.5戦略をとっていた。
欧州と中東で全面戦争しながら極東で全力衝突。
世界大戦ふたつと、局地戦争ひとつ。
基本単位=世界大戦。
公式にはね。
非公式には初手パイ投げ。
2.5戦略分の戦力があれば、2は核で消滅してさせて、0.5くらいは残るだろ。
って想定だったようだが。
※詳細は第257話<とある軍事国家の昔話/とある少女(+α)の反省会>
今は昔の物語。
マジだったのは半世紀前位まで。
いまでもできる対外戦争は、頑張って0.5、実際は0.2くらい。
朝鮮戦争レベルの全力局地戦。
まあ、一ヶ月持つか怪しい。
死にかけ失敗国家でぐだぐだゲリラ狩り。
そればっか、それすら息切れ中。
現実は非情である。
だから自衛隊も、デンマーク軍並みにPKO慣れしてるんですよ。
俺も。
PKO派遣訓練で習ったこと。
繰り返し繰り返し。
民間人の取扱い。
それが何処の所属であれ、武器を持たない全員へ。
話す前に怒鳴れ。
聞かせる前に威せ。
理解より安全。
納得より安心。
生きてさえいればできないことなど何もない。
軍民問わず、有事の一般原則ともいえるが。
そうした専門知識に照らしても、俺の個人的得意技は間違ってない。
むしろこれをPKO訓練に取り入れたいくらい。
訓練されてれば、命令で済む。
訓練されてなくても、経験があれば掴むだけで済む。
Colorfulは、従うことを訓練されている。
だから指図ですんだ。
エルフっ娘は戦場や事件事故の経験を積んできている。
だから掴めば伝わる。
特にエルフっ娘は武装してるからな。
とっさに剣、いやこれ刀?を抜かないでくれてよかったよかった。
鯉口三寸で切腹、なんてルールは歴史の上でも存在しないが。
戦う素振りを見せれば撃たれる殺される、それが国連スタンダート。
素振りが無くても殺される?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・必要が無ければ殺されないから、諦めてください。




