地球の流儀
登場人物&設定
※必要のない方は読み飛ばしてください
※すでに描写されている範囲で簡単に記述します
※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします
一人称部分の視点変更時に最初の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの一人称を入れます。以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。
(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)
【登場人物/一人称】
『俺』
地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿》
現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様》
?歳/男性
:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。
『あたし』
地球側呼称《エルフっ子》
現地側呼称《ねえ様》
256歳/女性
:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。姉貴分。
『わたし』
地球側呼称《魔女っ子》
現地側呼称《あの娘》
10歳/女性
:異世界人。人間種。魔法使い。太守府現地代表。
『わたくし』
地球側呼称《お嬢》
現地側呼称《妹分/ちいねえ様》
12歳/女性
:異世界人。人間種。大商人の愛娘。
【登場人物/三人称】
地球側呼称《神父》
現地側呼称《道化》
?歳/男性
:合衆国海兵隊少尉。国連軍軍政監察官。カトリック神父。解放の神学を奉じる。
地球側呼称《曹長》
現地側呼称《騎士長》
?歳/男性
:国際連合軍/陸上自衛隊曹長。
地球側呼称《坊さん/係長》
現地側呼称《僧侶》
?歳/男性
:国際連合出向中地方公務員。得度した僧侶。浄土宗らしい。軍政司令部文官。
地球側呼称《元カノ/団長/だんちょー/一尉/一尉殿》
現地側呼称《青龍の女将軍/団長/主》
?歳/女性
:国際連合軍大尉/陸上自衛隊一尉。国際連合軍独立教導旅団団長。『俺』の元カノ。
地球側呼称《三尉/マメシバ/ハナコ》
現地側呼称《マメシバ卿》
?歳/女性
:陸上自衛隊三尉。国際連合軍独立教導旅団副官。キラキラネームの本名をかたくなに拒み「ハナコ」を自称している。上官の元カノが勝手に「マメシバ」とあだ名をつけて呼んでいる。
地球側呼称《頭目/お母さん》
現地側呼称《頭目》
?歳/女性
:太守府の有力都市、港街の裏を取り仕切る盗賊ギルドのボス。昔エルフと恋に落ち、ハーフエルフの愛娘がいる。
【用語】
『青龍』:地球人に対する異世界人の呼び名。国際連合旗を見て「青地に白抜きでかたどった《星をのみほす龍の意匠》」と認識されたために生まれた呼称らしい。
『赤龍』『帝国』:地球人と戦う異世界の世界帝国。飛龍と土竜の竜騎兵と魔法使いを組み合わせた征服国家。70年ほどかけてユーラシア大陸に匹敵する面積を持つ大陸の東半分を征服した。特段差別的な国家ではないが、エルフという種族を絶滅させる政策を進めている。
『太守府』:帝国の行政区分をそのまま国連軍が引き継いだ呼び名。領地全体の呼び名と中枢が置かれる首府の呼び名を兼ねる。帝国ではおおむね直径60km程度を目安に社会的経済的につながりが深い地域で構成する。南北が森林、西は山脈、東は大海で大陸のほかの地域からは孤立している。ただし、穀倉地帯であり海路につながっているために領地としての価値は高い。10年前までは古い王国があり帝国に滅ぼされた。
『参事会』:太守府を実質的に支配する大商人たちの集まり。
『港街』:太守府の最大貿易港。領内で首府に匹敵する価値を持つ。盗賊ギルド、貿易商(船主)、参事会がしのぎを削る。
『盗賊ギルド』:港町の利権を牛耳る最大勢力。ヤクザ。
『シスターズ』:エルフっ子、お嬢、魔女っ子の血縁がない三姉妹をひとまとめにした呼称。頭目の愛娘を加えるときは「+1」とか「+α」などとつける。
『Colorful』:ハーフエルフの最高級愛玩奴隷たち。髪の色がいろいろなために神父により命名。前領主(帝国太守)が奴隷商人に発注し、引渡し前に戦争開始。占領軍の太守資産接収に伴い軍政司令官に引き渡された。軍属として雇用契約を結んでいるので日本の労働法が適用される。
『ハーフエルフ』:エルフと人間の間に生まれた混血種族。エルフに似た美しい容姿と不老、不妊、それ以外は人並みの種族。異世界全体として迫害される。
『連合与党』:日本の政権与党連合。幹事長が全権を握っており、異世界政策が与党連合最大政党内の会議で決められていく。
現地を三地域に分けます。
占領地!
帝国領!
空白地!
法的には全部帝国領ではあるんですが、まあ。
難民を三種類に分けます。
戦災難民!
政治難民!
経済難民!
戦災は地球世界における一般的なものと同じです。
戦闘の余波で生地を失った、離れて帰還困難なケース。
政治は空白地に多いのです。
帝国撤退、我々放置で支配体制が不安定化し、政治的物理的衝突が生じて敗者が流浪する。
経済難民は二つ。
帝国は戦争国家であるために搾取や兵站労働力、ひいては竜の餌である領民の移動を禁じていました。
兵站維持のための搾取が生活困窮者を生んでも気に留めません。
帝国軍がいなくなっても物資が戻るわけでも生活基盤が修復されるわけでもない。
はい、流出。
現地は広大な統一国家として一つの経済圏を創っていました。
我々乱入。
バラバラ。
物流停止。
物資不足貨幣不足で経済混乱で困窮。
ハイ、流出。
まあ後者は多くはありません。社会が中世ですから生活必需品の自給率が高いです。
戦時下に流浪を強いられるほどに困窮するケースは少ない、と。
ゼロではないので一応。
わが軍が軍政を敷く占領地は管轄範囲。
実質的な帝国領はあちらさんにお任せ。
空白地はケースバイケースです。
で、我々の対策ですね。
ざっと、10万前後が確認されております。
難民ですよ。難民の数。
たった?まあ、たかが、ではあります。
我々の生産基盤からすれば、です。
しかしそれは、産業革命以後の我々だからです。
実質失業率が20%を超えても何一つ支障なく社会を運営でき、しかも生産物の破壊に社会の持てる力の半分は投入しなければならない我々の感覚。
人口過疎生産過少な中世社会での10万は、我々の感覚で一億人程度に見ていただければ脅威の種類がわかるでしょう。
もちろん、現地社会への干渉は禁止です。
原則です。
我々は我々の世界以外に責任を持てません。
これは倫理の問題です。
かくして問題はかの地の方々次第。
ああ、そう、ソマリアの海賊退治と理屈は同じかもしれません。
現地のみなさんの主体的で自主的な難民解消活動!
・・・・・・ちがいますよ。前例などありません。
我が国が海賊に漁民を襲われて困っている周辺国でなにをしたと?
兵器弾薬や船を買い与えたりしておりません。
誤解です。
我が国は、周辺友好国の漁業整備を支援したり、海上警察の装備を買い替えて差し上げただけです。
浮いた予算で現地漁民が何を買おうと関知しておりません。
払下げ兵器弾薬船舶燃料をだれが購入したかは他国のことです
あちらは国境の概念があいまいですから。
海賊に恨み骨髄な周辺国沿岸部住民のみなさんが狩り出しに狂奔したとして、彼らが国境を気づかず踏み越えてソマリア内の海賊たちの村を残らず焼き払ったとして、世界の果てのわが国に何の関係がありますか?
多少時間はかかりましたが、漁獲物の買取り支援でみなさん日常に戻られましたし。
予算?
人道的経費ですからODAで処理できます。
人道大国として宣伝にもなりました。
たまたま、偶然、我が国はじめ各国の商船が襲われなくなったのは、幸運でした。
国防予算で無駄金使って、旗振り回して周辺国の警戒反発を買うなんて間抜けな、イヤイヤ、不器用な隣人にお任せです。
旭日旗は大切です。
きちんとしまっておかないと。
根絶やしの手法が人道を踏み越えていたのは、他人事ながら、悲しい事でした。
個々に恨みを重ねていたので徹底してしまったんでしょうね。
わが国には関係ありませんが。
周辺国政府も最終的には流出兵器の大半を回収しましたし。
よかったよかった。
生産設備がなけりゃすぐに尽きるものです。
わが国には関係ありませんが。
視察しましたが、皆さん大喜びでしよ。
我が国の旗を振ってくださいましたし。
いやー国旗と思ってるのかどうかわかりませんが。
割高で魚を買いますから、まあ、良いカモ、いえ、お得意様扱いですね。
海賊の首を買い取るなんてデマがあったのは驚きましたが。
ああ、あれですか。
まあ。
そうですね。
おばあちゃんは誤解してたんですよ。
孫の仇が取れたとかなんとか。
お手持ちのAKは弾倉つけてませんでしたし。
いやいや、文鎮みたいなものでしょう。
え?
漁民が武器を持つのはお国柄です。
銃を空に乱射するのはお国柄ですよ。
海賊からの戦利品を並べてくれたのは、ほら、邪気のない自慢でしょう。
また海賊が出たら、ある意味で、お祭りするそうですよ。
要領がわかったとかで。
良い思い出ですね。
我が国は関係ありませんが。
首?映ってました!!??
いや、私は見てません。
ですよねー?
話を戻します。
その話はあとで。続けますよ。
今は、これからの正義のお話をしましょうよ。
眼がなぜ前についているか!それはつまり、あ、はい。
で、現地難民対策。
現地住民の自発的創意により自然発生的に進行しております。
帝国の行政単位を引き継いだ基盤都市、あるいは複数の行政単位の集合で対応。
まず可能な限り遠方で行います。
占領地においては現地代表に偵察情報を提示することも行われており、さらにこの情報が空白地域に二次三次波及することもあるようです。
もともと占領地での難民は少ないんですよ。
難民が出るような戦い方をしていませんから。
近代兵器の面制圧力と射程、戦闘進撃速度は荷造りのひまなぞ与えません。
気が付くことすらできないでしょう。
現地のみなさんが組織している難民対策用の人員は、軍籍経験者を中心として都市の困窮者、農村の力自慢などで確保。
ああ、軍籍といっても帝国軍じゃありません。
それは全部捕虜か撤退か処刑されてます。
元々占領地はここ10年ほどの間に帝国に併合された地域ですから、旧体制下の下級兵士で帝国に転職しなかった者がいるんです。
末期総力戦経験があると農民の大半が経験者だったりします。
現役の傭兵はみな帝国軍経験者ですから、生存していれば捕虜になっており不参加ですね。
衛兵などの常設武装勢力はもともとの治安維持任務がありますからほぼ動員されません。
これらの即製部隊は、大きすぎれば遠征に不向き、小さすぎれば作戦に不向き。
難民発生地と遠い場所では資金と指揮官クラスだけを用意。
発生地に近い都市に送りつけたりもしているようです。
彼らは数十から百名前後に編成されます。
手順はこうです。
難民確認。
出来るだけ人口過疎な地域で、衛生上の問題が生じないようにという配慮ですね。公衆衛生に関する広報活動は国連決議に抵触しません。
手持ちの資産を接収。
これは若い健康な女性などを含みます。
脅威となる健康な男性を処理。
戦闘直後ですから相場が下がっており、連れ帰ってもコストに合わないんです。
脅威度が低い、中高年や病人子供などを帝国領側、西に追い立てます。
脅威度というのは、周辺の通常村落を略奪する可能性が低い、という意味です。
あえて皆殺しにしないのは「近づくとこうなるぞ」という宣伝のためです。
接収資産は現金化し作戦遂行上の資金を補てんします。
死体を衛生上問題のない、しかし、目につく場所に吊るして案山子にすることもあるようです。
こうした現地住民の自発的努力により、難民の数は減少し帝国側に流入していることが確認されております。
動態把握は標識調査で行われておりますので確実です。
帝国領内で信号が途切れるのは、竜に食われてるのでしょうね。
え?
ああ、まだ人工衛星はありませんが、中継観測機を乗せた高空広域中継気球でカバーできています。
ちがいますか?
どうされました?
議場に戻る時間にはまだ間がありますから、お答えしますよ。
《東京都千代田区/連合与党最大政党党本部/常任幹事会》
【太守府/港湾都市/埠頭中央/青龍の土竜の上/青龍の貴族、正面】
あたしは眼を逸らしそうになり、耐えた。
「マ~メ~~シ~~~バ~~~~」
深き暗闇よりいずるもの。その名を嫉妬。
青龍の貴族とマメシバ卿。仲の良い兄妹みたい。
それにもの凄い暗くドロドロした情念をぶつける、青龍の女将軍。
「アタシの男と何をいちゃいちゃしとるか――――――――――!!!!!!!!!!」
「だんちょー!!一方的にふにふにされていただけです!!!だいたいハーレム属性持ちはがんちゅーにありませんから!!!!あとハナコってよんでください!!!!!」
そこなんだ。
「自慢か!自慢なの!なにもしなくても意中の男がよって来ると言ってるな!だいたいハーレム属性の何が悪い!」
凄い。
「悪いなんて言ってません!むしろモテ要素です!!一見平凡でも!いい女がそばに居ればいい男に決まってます!!!わたしは嫌ですけど」
短槍(M-14;1,118m+M-6銃剣;35cm=約130cm)を腕の延長のように伸ばし、薙ぎ、回す、青龍の女将軍。
「何もしなくても女がよって来るなら!!!!最高の男じゃないですか!!!!!
自分に自信がある女なら穫りに行きます!!!!!!わたしは自信たっぷりで、しかも行かないですけど」
無手で全てを躱して捌くマメシバ卿。
「そうよ!女を追い回すジャンクと違うから!やらせはしない!!!第一!自慢は否定しないな!!!!!」
剣舞。斬り、突き、薙ぎ、かわして、よけて、跳び退く。
「意中じゃなくても男はよってきますが!ギリかわして、わたしには毛先も触れさせません!!!」
なら、青龍の貴族には、思いっきり触らせてるじゃない・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほっぺだけど。
「よく言った!!宣戦受諾!!!殺し合いだ!!!!」
なぜ殺し合い。
それに今まで殺し合ってなかったの?その銃の先、本身の槍先よね?恋敵と敵が同じ?
「恋は戦争だ――――――――――」
あ、そうなんだ。
「違います違います!!!!スキンシップです!ペッティングじゃありません!」
短槍と化した銃に拳と脚が加わった。
凄い攻防に、集まってきたドワーフ達がやんややんや。
とめなさいよ!死ぬわよ!!
え?なにが?
あんたらの将軍と騎士が殺し合い!
フツーフツー?
黒旗団の日常!?
兵から騎士まで当たり前?
ケンカか決闘かじゃれあいで??死ぬのも含めて?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――そーな、の?
「マメシバ卿も、血の呪いに無関係」
そう考えて見ると、距離が近く、互いの体に遠慮なく触れてたけど・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・頭目、貴女、そっちから見すぎ。
「貴女が頬を触らせるのは、どんな男かしら?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
青龍の貴族とマメシバ卿。
寡黙と饒舌。
専断と周知。
対象的な二人。
「真逆にみえる男と女」
とはいえ、マメシバ卿には死んでほしくはないけど、と肩をすくめる頭目。青龍の女将軍は死んでもいいの?
「貴女と違って、悲しんでる男を慰めるのに躊躇はないの」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!
「それより、あの二人、も、あぶないと思わない?互いに男と女としては興味がないって言ってるけど」
「・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・親しいのは確かでしょうね」
「肉欲と情愛を区別出来るって言うなら」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・区別したい。
「そ」
肩を竦めなくても判るから!呆れてるのは!!
【太守府/港湾都市/埠頭中央/軍政司令部/指揮軽装甲戦闘車前】
俺は3Dディスプレイで御伽噺を読んでいた。
『白騎士物語』
漂泊の騎士がチンピラを懲らしめ、盗賊を捕らえ、悪代官を倒してお尋ね者になったかと思いきや、幽閉されていたお姫様を救い出し、黒幕の悪い宰相を倒して王国を救う。
そしてさっそうと去っていった。
ようは英雄譚。
どこにでもありそうな話。
ただ、帝国以前、大陸を一つの統一国家が覆い尽くす前の時代認識ではある。
話自体が古いのか、懐古趣味か。
全体の分量はそれなりだが、一節ごとに短くまとめられているし、話もキリが着いている。しかも構図は勧善懲悪。
大人も子供もたのしめそうだな。
とは言っても、識字率が低い時代。著作権もない。この作品も作者不詳だ。
だが、次々に書き写され、広く出回っている。
印刷技術もネットもない時代。
数少ない好事家が、必死に自らの手で、あるいは大金をかけて写本し、職人をあたって製本し、海を越えて広まる。
作者の名前すらわからなくなる遠い地に、遠い未来まで。
物書き冥利に尽きるね。
そして、異世界の俺たちがそれを読む。
最適のテキストとして。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――まあいい。
これを戯曲に仕上げて公演し、パトロンを掴んだ脚本家もいるらしい。
この領地の前領主は劇や音楽が嫌いで、太守府での公演は控えめだった。
禁止ではないあたり、互いに自主規制したのか。
だから、港街で劇や音楽会は開かれていた。
常駐の異端審問官達はむしろ歓迎していたとか。
ガス抜き扱い?
あるいは情報収集に使える社交場が欲しかった?
そのあたりは流石だ。
帝国の統治体制は俺たちに理解できる位に合理的。
まあ、学者に言わせれば
『モンゴル帝国と現代日本と優劣をつけないほうが良いぞ』
って話だが・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・モンゴルが優れてるのか?それとも?
まあ、こういう話は相対的だから救いがない。千年の積み重ねがある俺たちに。
ともあれ、深読みしなくても『白騎士物語』は政治色は無いしな。
第一、帝国が大陸沿海部を完全に征服したのは昨年・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・最近すぎだろ!
まあ実際は、唯一残っていた、帝国の魔法使いと敵対した巫女達の聖地が遂に堕ちたってだけ。
その都市国家を除けば、数年前に大陸征服は終わっていたようだが。
この土地も10年前まで王国があったわけだから、『白騎士物語』もあまり違和感が無く受け入れられるのだろう。
ってか、たいていのフィクションは帝国以前になりそうではある。
帝国自体が文化政策には感心がなかったようだ。
入れ替わりようがないわな。
でまあ、それを、みんなで読んでいる訳だが。
みんなってのは、魔法的にどんな言葉も読める地球人から俺、長生きな分多言語マスターなエルフっ子、港街故か何カ国語(国自体は帝国に滅ぼされてるが)が読める頭目。
そして傍らには長い昼休み・・・・・・
・・・・・・・・・昼餉はこれから・・・・
・・・・・・・・・・・なColorful。
白、朱、翠、蒼、橙の五人。
言っておくが、名前であり髪の色だ。
休み時間でも、なんとなく給仕してしまうのは、新入社員っぽいが。
労働基準法死守の俺としては困る。
休憩中は返事もしないくらいの気概が欲しい。
「好きに過ごせ」
「「「「「ありがとうごさいます!」」」」」
俺もやっと身についたよ。
『~~しても良いんだよ』じゃダメなんだ。命令しないとこちらに合わせてしまう。
『命令:自由行動』ってのも可笑しいけどな。・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・満面の笑顔でお辞儀して『好きにする』という命令を受け入れたキミたちは何をしておりますか?
「「「「「え?」」」」」
俺がおかしいのか????
すっごく不思議そうにされたよ!
キミたちなんでさっきと変わらないの?
いや、むしろ、さっきよりも近くね?
俺、じっくり見られてない?
カップの中を気にしなくていいから!お茶にお茶請けを取りに行かなくていいから!・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・オッケーわかった。
好きにしていい。
「ねえ」
ん?どうしたエルフっ子
「あれ、止めないの?」
なんで?元カノとハナコ三尉なら、腹が減れば・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。
「OK!!!!ME――――――――――にマカセナサーイHUuuuuuuu!」
「すぐ、終わる」
「そうね」
爆発音
【太守府/港湾都市/埠頭中央/青龍の土竜の上/青龍の貴族、正面】
あたしはイラつくような、楽しいような。
「どうしましょうね?」
と頭目。
「笑えば良いんじゃない」
ってか、笑ってるよね。貴女。
青龍の貴族は憮然としている。
あんたが悪い。
好きにしろって言ったんだから。
あたしだって、面白くはないけど、Colorfulの気持ちはわかる。
彼女たちが奴隷じゃなくても、市井の女ならむしろ、そうなる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――あの時。
港中が見つめる中。
彼女たちが気づいてもいないのに。
侮辱した者を殺した。
視線一つ。
眉一つ動かさずに。
何もせずに『死ね』と命じ、皆がその男を殺した。
Colorfulの一人一人が、受け取った。
彼女たちを侮辱することの意味を。
自分が青龍のモノなのだ、青龍の貴族、その装具なのだと。
何もかも委ねる喜び・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あたしには手に入らない。
「お互いに」
頭目にも。
あたしはソレが誇らしくもある。
だけど、何もかも委ねることに、妬ましくもあり・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・妬むのが、楽しくもあった。
【太守府/港湾都市/埠頭中央/軍政司令部/指揮軽装甲戦闘車前】
俺の役目なんだろうな。
この子たち、Colorful達を導くのは。
仕事を取り上げると泣きそうになるって、どんな社畜か。
俺が立派な、立派な・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・立派な労働者に!
残業を拒否し!!
有給を完全消化!!!
会社が潰れたら労働債権を申し立て未払い分どころか解雇予告分まで取り立て!!!!
しかるのちにギリギリまで失業保険を確保する立派な労働者に!!!!!
いつか!いつか!!生活保護にジョブチェンジ!!!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――労働三権の持ち込みは国連決議に触れない、か?
いや、軍属(Colorful)や司令部雇用者(王城/軍政拠点のメイドさん、執事さん、他の皆さん)は日本の労働基準法適用だし、ま、いいか。
うーん、そうなると、エルフっ子や頭目達は?シスターズも?現地協力者ってのは曖昧だな。
報酬なんて考えたら喧嘩売ってるようなモンだしな。
必要なのはお礼?感謝?
うーん。
しかし、いいように利用してるよね?いまさら?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――よし!先送り。




