観察者。

標本、８体。

彼女たちはセーフティーロックを受領した時から、２４時間装着しております。

もちろん着脱は個々の判断にゆだね、示唆を含めあらゆる意味で誘導はなし。

別に通信端末を配布し説明、連絡と安全確保は事足りると認識しています。

通信端末は単純にそれだけの機能ではありませんが、割愛しセーフティーロックの事例に絞りましょう。

非金属ではありますが物的アレルギー、接触摩擦への過敏症などの反応はなし。

ただ埋め込み式ではありませんから、なにがしかの事由により取り外す必要が生じる場合はあります。

身体洗浄時などなにがしかのやむを得ない理由がある時。

セーフティーロック四つは外す時があります。

といっても装着部位を確認操作する最低限度の時間のみ。

極めて短時間で再接続していることを確認済。

その場合でも一つだけ、首輪タイプのモノは外しません。

両上腕、両腿のセーフティーロックには無い柔軟性がありますから。

首輪型は装具を伸延することで、ゆるく首飾り状に変形。

外さずとも要件は満たせる。

とはいえ多少なりとも支障を感じるでしょう。

なおもって一時も外さない。

普段は首筋の肌から離れないように絞めています。

これも気道上の違和感は避けようがありません。

紛失を危惧するなら、装着部が頭骨外周以下のサイズになるよう調節するだけでこと足ります。

が、その様子は無し。

これを含め、セーフティーロックについてこちらから説明はしておりません。

しかし防水性が高く、石鹸や油、各種化学薬品の影響を受けないことも回答。

これは持続的装着について支障が無いか、といった趣旨の質問への対応です。

つまり装着する記録/監視装置のメンテナンスについて、装着者側からの配慮が得られるわけです。

これも予想外なことでした。

そもそも機能性維持や耐久性重視のセーフティーロック。

標本周辺技術で破壊は困難。

取り扱いなどを伝える必要はありません。

標本が主体的に首輪のメンテナンスを図るという発想もなく。

ましてや利便性を考慮した延伸機能を発見するという可能性も考慮せず。

故にこそ、単純に、標本の管理者から配布させただけです。

標本側からの取り扱い質問は彼女たちの主体的な物であり、以後も持続中。

メンテナンスフリーであることは伝達済みなのですが。

以後も、特段変化がありません。

標本個々にセーフティーロックを眺めて弄り、動作確認しかつ管理側に質問し、その情報を相互に共有する。

そもそも常に、というほどにセーフティーロックを手指で触り、時折外して観察しております。

セーフティーロックに録画機能はありません。

基準点が一番多い戦闘部隊内での位置計測誤差は１ｃｍ以内。

別の索敵系を動員して観測も可能ですが、軍事参謀委員会に禁止されているがゆえに以降は推測余地が増えますことを了解ください。

それでも手指に持っている、触れていることは身体電位の接続データで部位確認まで可能。

ほぼ目と鼻の先につまみあげて、目的推計が不可能な時間、しいて言えば空いた時間を費やして観察している様子が見てとれます。

その間、に限りませんが常時、バイタルデータに不安要素は無し。

時折心拍血流数が上がりますが、持続的なストレス数値は無し。

常時現地にいる軍医による管理下に在りますが、異常報告も無し。

監視装置に対する疑問/違和感/不信感を抱かれているがゆえに、と推定するのは困難です。

別配布の通信機による位置特定機能について特段忌避感もなく。

これが標本の主体的な関心事項ではないことは明らかでしょう。

一体であれば好奇心に突き動かされる性向をもっていた、だけなのかもしれません。

しかし、標本の審美眼や嗜好に訴えるにせよ、８体が同一行動に入るのは誤算でした。

結果として、両上腕、両腿のものにしても、装着していない時は常に観察しているので彼女たちによる紛失の可能性はありません。

高い装飾性を持ちながら、略奪の対象とならぬように発注。

貴金属としての印象を避け、細工に税を凝らし質感を重視。

注視しなければ日常的な装具と認識されるようにデザイン。

結果、両上腕、両腿のセーフティーロックを外すことがあっても、首筋のものは２４時間装着状態を維持する形になっております。

この成果は類例がないものです。

どれだけ観察されてもセーフティーロックの機能が発覚する可能性はありません。

行動結果から演繹されうる機能は位置特定機能だけです。

しかし標本８体は、管理部隊の中枢から１０～５ｍ以上離れることがありません。

セーフティーロックなしでも監視下、管理下に在ることを受容しております。

ただし、彼女たちがセーフティーロックを観察している時、もっとも精度の高いバイタルデータが取得可能なので結果については疑う余地がありません。

それは歓迎すべき様態ではありますが、懸念すべき点でもあります。

セーフティーロックは通常２～３器設置。

当然、慣れるまではストレスを感じるもの。

通常であれば、装着を示唆命令するものです。

で、あれば、同じ現地協力者において、特異な差が生まれるのはなぜか？

これを解析することで「単なる成功」ではなく、大きな成果が得られることでしょう。

【国際連合統治軍第１３集積地/聖都市内/中央/大神殿（改め建築楽器）内/中央に侵攻中/青龍の貴族】

俺周り。

シスターズ＆Ｃｏｌｏｒｆｕｌ。

うちの娘たちですね

大変可愛い。

俺たちの周り。

曹長以下軍政部隊隊員。

俺の部下たちですね。

頼りにしております。

俺の部隊の回り。

おねいさんず一個小隊

鉄壁のガーディアン。

相互理解が不足気味。

俺と。

それでも楽しいのは、未来に希望が溢れてるから。

いやいやわかってる。

彼女たちは俺を楽しませるために来たわけではない。

結果として楽しいのはお互いにとって幸いなこと。

であった、とするのが俺の腕の見せどころ。

まあ、おねいさんずと俺のことはどーにでもなるので、要点注目！

彼女たちが護るのは国際連合武力制裁活動現地協力者。

つまり此処では、お馴染みシスターズ＆Ｃｏｌｏｒｆｕｌたち。

この娘たちを保護する任を国際連合統治軍から下されて、いない方々。

まあ個別に命じられてない、ってだけだが。

全兵士は現地協力者の死守が義務だから。

別命あるまで

――――――――――殺せ、と言われるまで。

で、まあ、溢れる情熱で、命令無視も辞さない彼女たち。

実にイイ。

俺の命を狙ってる？

文字通り。

それはそれ、これはこれ。

おねいさんずと子どもたち。

俺と女性自衛官有志の皆さん。

護ってくれて有難や。

寄ってくれて有難や。

全員が戦闘職普通科隊員だけに、皆様２０代。

その引き締まったボディが、よくわかる。

戦闘装備の上からラインを極める、余裕余裕。

これこそ紳士の嗜み。

演習中だって、肢体をきつくする自殺装備は付けない。

広く軍隊が下着まで支給する理由がそこに在る。

補正ブラとかショーツとか、補正と称する粉飾偽装。

プライベートなら嫌いじゃないけどな。

料理の旨さは匠の巧さ。

素材を超えることはできない。

素材を極めることはできる。

否！

為さねばならぬ、為せぬのは、男と女の不覚也。

天然のタユンタユンに決して及びつかぬ別次元。

産地偽装のモドキ物を次元は違えど同じ極みへ。

キミは知るだろう。

ナイペッタンさんやら、スットンフラットさん。

胸や尻どころか全身偽造、いや補正する皆さま。

いずれバレるんだから、俺が剥いでもいいよね。

程よく天然ものと示し合わせてプレッシャーをかけるとなお愉しい

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・くない？

って、神父が言ってました。

俺はあまり知らないけどね？

偶然、意図せず、たまたまそうなることもある。

くわしくは、知らんけどね？

演習中に自殺装備を付けて搬送された阿保の娘は知ってますが。

いくら矯正補正捏造しても、男にはバレバレ。

つらく苦しい努力を、無駄と切り捨てたりしません。

それを暴くは愉悦愉悦の極み

――――――――――は、別な機会に。

今、おねいさんずは補正と称する偽装なし。

【聖都/聖都市内/中央/大神宮内/隊列先頭中央/青龍の貴族の手が届かない距離/一足飛びに届く距離/エルフっ娘】

あたしはふと、視線を感じた。

―――――――――――――殺意では、無い。

敵意ではあるけれど。

女の眼だ。

―――――――――――――あの女(帝国女騎士)。

構ってる暇は、無い。

今は。

普段なら、魅せ返してやるところだけれど。

でも、今さら何を見てるのかしら？

今日、あたしが身に纏うのは、普段使いの鎧じゃない。

もちろん、部屋着でもないけれど。

いつもとちがって、青龍風の遠出服。

護りを棄てて肢体に負担をかけない。

彼、青龍の貴族も気に入ってくれた。

携える刀に、違和感がないのはなぜかしら？

マメシバ卿に感謝、ね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・余計な仕掛けをしないように、念には念を入れてすっごく強く、お・ね・が・い、したのだけれど。

彼女は、魅せることを攻撃的にとらえすぎてる。

特定の相手に特定の時に特定の肢体を魅せることができる、って。

触らせるくらいの距離に近付けた相手にだけ、装いを解くことができる、って。

想い人以外を近づけない女にだけ、彼に身をゆだねられる、って。

らーっきーすけべ？

ちょっとよくわからないわね。

でも、マメシバ卿の審美眼は信用できる。

自分の好みじゃなくて、相手の好みを捉えるところ。

あたしの好みじゃなくて、彼の好みを表すところ。

服も鎧も、身に纏うものは、向かい合う相手があってのことだもの。

下手な仕立て屋は客の好みを形に変えて、自己満足を売りつける。

独りで姿見を眺めるなら、それでいいんでしょうけれど。

そんなおかしな女が、男だっている訳が無い。

でも、流石のマメシバ卿も、女の眼は意識しないでしょうね。

なーんか、さっきまでとちがって、あたしを直接見ているし。

視方にしても、挑発的でもなければ、観察する様子でもない。

なぜかしら？

女が女を見るときは、その女を視る男の視線。

―――――――――――――そこが重要なはずだけど。

大切なのは、彼が、あたしに向ける視線

―――――――――――――彼、青龍の貴族がどう見ているか。

あの女(帝国女騎士)が見ているのは、あたし、の、首筋？

―――――――――――――ああ、それは確かに重要ね。

あたしは、あの女(帝国女騎士)の眼を無視することにした。

彼に贈られた首飾り。

首輪に近い付け方ができる。

ゆったりと胸に垂らすこともできる。

鎧の時は、喉輪に隠れて魅せられない。

他の四つは、元々、彼以外に見せることはあり得ない。

魅せるべき相手に、毎日何度も、見られればいいのだけれど。

そう考えれば、彼以外に見せることができるは、初めてじゃないかしら？

あの娘。

妹分。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌ。

いつも首筋が見えている。

あの娘は、長衣の首筋を開くようになったわ。

彼に贈られてから、か。

みんな普段、こんな気分なのね。

彼の前にいるときは、ゆったりと胸の上に躍らせる。

魅て欲しいからだけど。

皆の前にいるときは、しっかりと首元に留めておく。

見せつけておくために。

あたしは、あの女(帝国女騎士)に目を向けない。

今は、とても危険な時なんだから。

ふんふん♪

一目でわかるでしょう？

あたしが、彼のものだって♪