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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十三章「未来予定図」

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幕間:帝国女騎士の観察日記

【用語】


『互酬性』

:比較民俗学の基本概念。

古代~現代、全地球人類共通の規範。

※第221話<幕間:贈与論/Systematic love.>にも既出。


ひとつ。

「贈り物をしなければならない」

ふたつ。

「贈り物を拒んではならない」

みっつ。

「贈り物に返礼をしなければならない」


上記三点を尊守出来ない者は社会的にまったく無価値な者である。

……という原理。

世界中の民俗学者が限りなく続けたフィールドワーク、資料発掘、聞き取り調査の果てに「一切の例外が無かった」人類普遍の原理の一つ。


もちろん、

「万人共通の正義などない」

という迷言が無知蒙昧を証すように

「古今東西、人類普遍にして共通の価値」

というものは、とくに珍しくもない。


これはその中でも、よく知られた事例、その中の一つ。




「剣を棄てれば、奴隷として生きる事を許す」

(武器をすて抵抗せず捕虜になれば、生命を保証します)


「帝国兵は跪け。それ以外は去れ。従わざるは死を」

(戦闘員は降伏、非戦闘員は退去してください。さもないと安全は保証できません)

※国際連合軍による降伏勧告テンプレート



貴族、騎士としての矜持である剣、武器。

罪人として剥奪される事はある。

戦場で奪われることはある。

虜となり飾剣一つになることもあるだろう。


自ら、すべて棄てろと強いられる事はない。

青龍以前は。


従属を強いる声は威圧感もなく淡々と響く命令。

敵から下される、下命。


それは史上初。


騎士、貴族という概念への奴隷宣告。



第13話<あなたのご子息は我々が殺害いたしました。>より一部修正。










彼女は困った

――――――――――なぜか口説かれているからだ。


自覚はある。

彼女は美しい。

そして若い。


そればかりか、女として魅力的だ。


鍛えられた肢体。

それが生む物腰。

自然な健やかさ。

それを示す仕草。


造形があってこそ、とはいえ、それだけでは人形と同じ。

鍛えられた観察力と気遣い、想像力こそが決定的。

騎士として十二分な社交性、趣味人としての機知に富む。


男に欲されるのは当たり前。


それは彼女が自分である限り、生涯抱くであろう、世界法則。

とはいえ、この状況は

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わからない。


彼女は考える。

そも、自分は何であるのか?

単純な常識で。



「美しい戦利品」


虜囚。

捕虜。

そう扱われるためには、その場その時に財貨が必要だ。


帝国軍以外では。


手形や証券などは通じない。

農夫上がりの民兵でもわかるような、単純な品物。


金貨。

銀貨。

宝飾品。

かさばらず、判り易く、それでいて解り難く。


金色銀色輝きは、馬鹿でも判るもの。

――――――――――取引の余地が生じる。


貴金属の含有率、品位。

宝飾品の相場に来歴。

それが解る者は少ない。

――――――――――取引に幅ができる。


捕虜になってからの駆け引き一つで資産を築く者すらあるのは、つまりそれ。

それらあれらを抜きにして、大切なことは、まず一つ。


身代金の宛がある

――――――――――そう示すため。


今ある財貨の程度によって、その背景となる資産を描き出す。

此処で殺して奪うよりも、もっと大きな大儲け。


資産と名声、伝手と権力は概ね等しい。

優しく丁寧に尊重し優遇すれば、金より貴重な金蔓にすらなる。


金の卵より、金の卵を産むガチョウ。

それを甘やかさない者がいるだろうか?

――――――――――と、考えさせる。


つまるところ財貨とは見せ金。

価値とは可能性だと考えるのは騎竜民族だけではない。


宛の多寡によっては賓客どころか、氏族の一員扱いすら受ける。

何もなければ奴隷に過ぎない。


財貨を示すのは、貴族騎士なら当然のこと。

気の利いた者なら兵ですら小金を用意する。


社交の場で、家伝の宝物をひけらかすのはこのためだ。

宝飾品の価値来歴を教えてやるより、相手が知っている方が売り込みやすい。

他国の使節や訪問者が居れば、騎士貴族の家宝博覧会。


雑兵として土に鍬込まれる大衆には、虚栄としか映らぬこと。

あるいは後世、なにも知ろうとしない者たちが嗤うであろうこと。


それこそが、殺し合いの下準備。


ここまでは何処でも同じこと。

ここからが帝国固有、彼女の都合。


帝国ならば、首一つより知見の方が価値を持つ。

敵に捕らわれ生還すれば、大きな手柄にもなろう。


そして売り込みどうするか。


生きて帰って、敵陣中を報告する為?

違う違う。


敵陣中を報告できるよう、生きて帰る為。


生きて帰らずとも生きてさえいれば、味方と連絡を取る手段など幾らでもある。

戦が終わるまで敵陣に滞在し、雑兵を買収して味方と連携していた騎士すらいる。


だからこそ、曖昧な金貨ではなく、身元が証せる宝飾品。

金が引き出せる、とそう思わせれば長く長く逗留できる。


なに、与えた元手は、敵を滅ぼせば何もかも回収できるではないか。


それが帝国の常識。

意外に知られていないのは、思い知らされた後で生き残る者がいないから。


ただ敢えて何も持たないこともある。

男であれ女であれ、肢体一つが金銀より値が張る少数派は、必ずいる。


男が多い戦場では、例外を除いて女だけしか買い手はつかない。

戦場なればこそ、ありふれた女でさえ価値をもつ。


だから使う

――――――――――財貨で購えない戦果を得るために。


せっかく女に産まれたのだ。


なら敵中に孤立できれば、大功を得て当然

――――――――――騎竜民族と、それに感化された帝国支配階級の常識。


財貨を持たないことで、戦利品になれる。

当然、高位高官に召し上げられる。


女、ではなく、敵の美しい女の捕虜。

それは地位だけでは贖えず、幸運が必要だ。

金で買える美しさは、たかの知れたこと。



そこでせいぜい抵抗してみせればいい。

屈伏させたと見える相手には油断する。


ただそれだけで人となりが解り、敵全体を知る伝手になる。

敵を知り、自分が知る味方の知識を組み合わせる。

それだけで竜から見下ろす位置を獲る。


強い者とは知る者だ。

弱い者とは知らない者。

知る者が知らぬ者を操るのは容易い。


価値がある肢体を奪わせれば、価値がある何かを返したくなる。

それは諸族共通、古今等しく、異端視される騎竜民族ですら例外ではない。

回を重ねれば、親しくなれば、強い者が弱い者を、取り込める。


故に当然、帝国は、新しい強敵に、常と変わらぬ態度で挑む。

――――――――――失敗。

物理的に近づけないのでは、手の打ちようがない。


だからと言って懲りないのが、帝国、騎竜民族なのだが。


青龍は捕虜の扱い方が異常に過ぎるのだ。

青龍の降伏勧告は、それだけおぞましい。


異世界に人という概念があれば「人間の尊厳を否定した」と言える。

地球人に判り易く例えれば、敗者を凌辱すること。


もちろん青龍は、帝国の様に捕虜の価値を知っている。


圧倒的な力で精鋭主力三十万を瞬殺され、数万の捕虜を取られた。

世界の変転についていけず、茫然としているところを捕らえられた者多数。


それが帝国に、青龍の習俗を悟る伝手の始まり。


金銀財貨には関心が無いだけに、常識的な捕虜の扱い方にも無頓着。

無頓着という言い方は、最近やっと帝国軍が気が付いたこと。


青龍は、悪気も他意もないらしい。


そこまで来ると赤龍も、ようやっと気が付いた。

悪気はない、どころか、青龍なりの敬意らしい。


帝国軍は侵略戦争という、実践比較民俗学の専門家。


ありえないほど奇異な習俗。

不合理極まりない迷信や幻想。

狂気に等しい思想や手法。


解らなくても、判ることはできる。


勝利のためなら何もかも投げ出すのが当たり前。

しかも相手の意図が判れば、まあ、堪えられないこともない。

なんとか、ぎりぎり、かろうじて。

そのあたり世界帝国は受容という習性を自然に身に着けていた。


だからこそ相手に合わせる寛大な気持ちで、帝国軍は降伏する。

そして彼女は、そんな不都合を味わうことが無かった。



聖都周辺の帝国軍は、武装解除なしに降伏した。

それが命令だったからだが、それなりの覚悟を決めていたのに。


国際連合統治軍は、彼らを全くそのまま捕虜にした。

徴集農民百万を虐殺しない前提で、聖都管理の必要要素として。

そんなことは、帝国軍の知ったことではないけれど。


彼女は実際、青龍に隔意は無い。

当初の覚悟が不要になれば、むしろ接して心地良い。


物理的接触が許されないことも、油断がならずに心躍る。


好奇心、敬意、獲物に対する狩猟民族の好意。

それはとりわけ、彼女だけの感想ではないが。


だからこそ、青龍の貴族に襲われる、千載一遇の好機に抜擢され、勇躍。


装備には気を使い、お気に入りながら華美は避ける。

お気に入りでない武具などもってはいないが。


宝飾品はもちろん、園遊会用の盛装や女を誇る衣裳は避けた。


こちらから売り込んでは、貸しにならない。

あくまでも取引ではなく、強奪させなければならない。

自由になる彼女が居れば、当然、そうなる。


唯の女ではない。

彼女だ。


経験不足は懸念材料。

何分、彼女が生まれたのは、帝国軍が世界最強になってから。

捕虜になる機会に恵まれた女など、まあ、いない。


だが過去の経験は蓄積されている。

騎士学校では男女とも攻防を兼ねて必修科目。

捕虜をとる機会は圧倒的に多いので、誘われた事ならある。


彼女は若いだけに、訓練教練軍務を日々重ね、社交界での経験は全くないが。

まあ、それこそ今、経験して練磨すればいい。


まずは相手に任せて見れば、自然と何もかも進む

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハズだった。


なのに、なぜか、この男、敵が、肢体を奪わない。

女が好きなのは、判る。



帝国軍司令官並びに幕僚たちが危惧していたような幼女性愛者ではないらしい。

わざわざ理屈をつけて、来訪した青龍の貴族を出迎えた帝国軍将官複数。

捕虜の領域まで来ることが判っていたので、標的を偵察した時。


帝国軍有数の将帥と軍師が顔を寄せあい「無理か」とは思った。


標的が女連れであったのは期待以上に好都合。

青龍は女であれ男であれ、領民であれ騎士貴族であれ、外部との接触を嫌う。

近付かない、誰も近づけないようにしている。


だからこそ、安全を図るため、と称して確認。

「御仁は女連れだが、接触が解禁されたのか?」

「彼だけが特別な例外であり、依然として彼以外との接触は厳禁」

だからこそ、青龍の回答は好機とされる。


彼ならばよい、ということ。


帝国軍上層部に大きな期待こそなかったが、それは仕方ない。

なにしろ連れている女がすべて規格外。


美しいというだけなら、審美眼が正常ということ。

――――――――――支障なし。

数が多いというのは、割り込む余地が多いということ。

――――――――――大変結構。


そこからがいただけない。


豊満な美女はエルフ。

――――――――――帝国人の好みではないが、まあ、美しさを判らなくもない。

彩りよくそろえた美少女たちはハーフエルフ。

――――――――――異世界全般の忌避感はあるが、趣味嗜好ならいいだろう。

もっとも寄り添って、常に直接可愛がられているのが

――――――――――肢体の凹凸さえ判然としない、幼女童女を堪能中。


その後半日、同行する過程で、その性癖をずっと観察した帝国軍将官たち

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無理かな、と考えたのむ致し方なし。


もっとも。

彼女はそうでもなかった。

自分の魅力を弁えていたからだ。


男好きを女に目覚めさせるくらい、当然。


性癖などというものは状況が造るものでしかない。

自然な本能に勝てる動物などいない。

――――――――――と考えていたわけではなく。


生来の気質であったろう。

そして、それは、まったく正解だった。


出会った男が、自分に魅了されるという、当然の現実。


それを彼女は当たり前に受け止める。

判り易いくらいにはっきりと。


青龍のペドフィリア、であっても例外なく。


隠そうとしても眼を見れば

――――――――――そも、性欲を隠そうともしていないし。


なのに。

どうして。

それなのに。


そこからが、行き詰ってしまった。

ありえないことに。


彼女は価値ある戦利品。

差し出すべき対価を持たない、女だ。

そうあるように示した。


間違いなく。


なのになぜか

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・奪われてない。


なら気後れしているかといえば、絶対に違う。

自分の女を振り回す様、彼女まで巻き込んでいる。

なら、彼女、自由に弄べる女に、何をするかと言えば。


堅陣の奥に護られている。

好みの旋律に気付かされた。

心地よい場所を連れ回される。

そして、女たちの嫉視を味わえる。


これ以上、いや、この調子なら、まだまだ与えられてしまいそうだ。


距離は近付いている。

敵を見る目ではないし、彼女も自然に誘いを返してしまっている。

距離が全く近付かない。

女たちの守りは無視しているくせに、隙を見せても触れてこない。


人前を気にするような類ではあるまい。


現に、これ見よがしに彼女の前で、自分の女を弄り倒している。

挑発としてこれ以上のものは無いが、挑発どまり。

女をその気にさせても、奪いに来ないのであれば無意味だろう。




一体全体、この男はなにを考えている??????????????




彼女は知らない。

まだ気づかない。


――――――――――与えられれば、返さずにはいられない。



マスク、付けてますか?

今日も暑いし明日も蒸し暑いようですが、マスクが無いから快適です。


さて

「新型コロナ対策を無視するのではなく、妨害し続けています」

な今日この頃。



そろそろ世界各地で

「新型コロナ対策は徒労だった」

という論文が出回り始めましたね。


いまさらか!

三カ月前に判明しとるわ!

……などというべきではないのでしょう。


専門知識が無くても、事実を組み合わせてつじつまを合わせれば、あら不思議。


「新型コロナ対策は馬鹿が思いつき阿呆が躍った有害無益なデマ」

などということは判るものです。

たかがその程度のことであれ、数字で検証して記録しておく。

それはとても良いことです。


もっとも穏便な反発は

「後知恵で批判すべきではない」

というところ。

三カ月以上前にわかって当たり前のことですが。

虫けら以外なら。


大方の人殺しどもは黙殺ですね。


自分は

「新型コロナ対策を無視するのではなく、妨害し続けています」

とアリバイ造りに励みます。


暑いから出かけたくはないのですけれど。

単純に街を歩くだけで目につく躯を見てきます。


「テナント募集」の真新しい看板。

薄汚れた「当分営業自粛します」の張り紙。

さてさて「裁判所管理物件につき」とあるアレはどうなったか。


「新型コロナ対策を無視するのではなく、妨害し続けています」

マスクをつけたみなさんを観察しながら、そのせいで生まれた屍を観察してまいります。


「デマとの戦い」

のために更新スケジュールが乱れることをお伝えしつつ、ご協力に感謝を。





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