To be, or not to be……Leap Before You Look!
【用語】
『魔法翻訳』
:地球人と異世界人の間のみで発生する自動翻訳機能。聞くことと読むことに対して認知内で互いの意図認識が瞬時に置換される。互いの文化に類似概念が無い場合や固有名詞に関しては単純な音で認識されるのみで、翻訳魔法が発動しない。置換も言葉で表現している範囲の表層的なモノであり、背景となる概念が伝わることはない。だが、この効果のおかげで転移してきた地球人と異世界人は意志疎通をはかることができる。ただしその翻訳は感覚的なモノであり、聴く者や読む者、話す者や書く者が抱く心象や感情、気分の影響を強く受ける。誰かが「ばか」と書いたときに、後刻その言葉を読んだ者に筆記者の抱くニュアンス、例えば、親愛・侮蔑・怒り・失望などなどが伝わる。さらに受け手の意識も影響する為に「とって」という依頼形が、聴いた相手が怖れを抱いている場合に「とれ」という命令形に聴こえたりもする。聴こえた瞬間、見えた瞬間に意識内で変換される為に、良かれ悪しかれ「聴こえたいように聞こえてしまう」危険性がある。
この効果は魔法ではないかと推測されることから「魔法翻訳」と名付けられたが、そういった魔法は異世界には存在しないらしい。
地球も異世界も様々な文化様々な言語が併存している。地球は主要言語が日本語、次いで英語。異世界は帝国公用語が主流。本来であれば言語という偶発性が高い合図をゼロから共有する為には、片言程度に至るにも年単位の時間が必要とされる。実際、地球上でまったく初めての文化が接触した場合は十数年、あるいは数十年経っても理解に達していないことが多い。
勝って当然、敗ければ貴重。
――――――――――帝国軍ドクトリンより――――――――――
帝国の根幹をなす騎竜民族に「自省」という思想は無い。実際に魔法翻訳が発動しないところから見て、その「概念」自体が存在しないことは証明されている。彼ら草原の民にとって失敗、あるいは敗北は死を意味している。当然、「失敗した者は死んでいる」ので「失敗を省みる」などということは原理的に不可能なのだ。それを自明として形成された彼らの文化に「反省」及び類似概念が生まれなかったことは必然といえる。
だからこそ「懲りる」「慎む」「躊躇う」と言った概念も発生しなかったわけだが。
そんな彼らに「成功は失敗の母」に近い概念を持ち込んだのは、例によって魔法使いたちである。中原の農耕社会から逃亡してきた魔法使いたちは、その発端からいっても失敗や悔恨に不自由しなかったものと推測される。
しかしあくまでも「持ち込んだ」だけでついぞ理解はされなかった。
「色盲の相手に赤色の概念を理解させようとした」かのように。
ただ騎竜民族は魔法使いの言葉を素直に取り入れる性質を持つに至っており、失敗や敗北を「必要品」であると解釈するに至った。
そしてこのことは、よりによって軍事に置いて顕著に表れるようになる。魔法使いが兵法書でも持ち込んだのか?戦いを重んじる騎竜民族が重要なジャンルであればこそ必要と考えたのか?それはUNESCOによる今後の研究で判明するだろう。
これが冒頭のドクトリン。
彼等、騎竜民族、つまりは帝国軍は隔絶した組織力、徹底して強化した魔法と竜で構成されている。地球で言えば中世欧州程度の技術に、付け足しの魔法からなる「帝国以外」が戦争相手。向かうところ敵なしで、常勝であったことは仕方がない。故に「敗北」は奇跡的な偶然が無いと起らないことになる。それが騎竜民族をして「敗北は貴重だ」という認識を抱かせるに至った。
彼らが何故か「需給バランス」と「市場原理」に精通しているからこそ、「手に入れにくい必需品」は貴重である、という考えに至るわけだ。ちなみに彼らが領民の命を塵芥扱いするのは「必需品だが有り余って勝手に増えるから」という認識による。
士官学校や軍事大学に相当する「帝国騎士学校」では日々「敗北以外在り得ない」設定で図上演習に取り組み「失敗」や「敗北」を養殖していることが確認されている。
そんな中、たとえ局地戦でしか在り得ないにしても、実戦で敗れることは「絶滅危惧種を拾った」ように歓迎される。少なくとも半世紀は圧倒的勝利しか知らない種族なので、狙ってできることでは無いのだから当然ではあるが。
手柄話など日常すぎて誰も聴かない話さない。なぜ敗北したのか?どのように敗北したのか?敗北の中でどう戦ったのか?それが園遊会や茶会で最上の話題とされる、が、当然、伝聞でしか聞けない。結果、敗戦経験があることは大きな名誉となり、その体験は様々な手法で記録されると同時に多くの者たちが競って聴取しに来ることとなる。
これは結局、「稀にしか起きない」敗北を経験している(しかも生きている)ということが長大な軍歴と無数の勝利の中にあるから、という事でもあるのだろうけれど。
その意味で今般の戦いにおいて敗北し捕虜となった将官から兵卒にいたる帝国軍関係者は、まるで境遇を恥じてはいない。むしろ率先して語り合って、敗北/失敗体験を切磋琢磨しているのは間違いない。
しかし。
それでもなお。
70年以上の共生を経て。
騎竜民族も魔法使いも互いに気が付いていない。
魔法翻訳は異世界文明と地球文明の間にだけ発生する。
故に、異世界文明間には「相互無理解」を判定する手段が無い。
色盲の相手に青色を識別させようとするかのように。
異世界人の間では、
「相手が自分の言葉を理解していない」
ということを確認できないのだ。
《軍事参謀委員会レポート(検閲削除)宛より》
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿(改め建築楽器)内/中央に侵攻中/青龍の貴族】
為すや?為さざるや?
俺の悩みは一人の悩みとしては小さなもの。
人類にとっても小さなもの。
子どもは小さいから相対的に大問題なのだ。
こんな時は、もっと苦労している人のことを思いうかべると気楽になる。
王族兄弟を両天秤にかけて、兄を堪能してから弟に乗り換えた、そんなたくましい女傑を母に持ち、グレたら女をあてがわれ、キレたら無関係の人を殺し、女には自殺されるわ正当な復讐者に狙われるわ、殺るか殺らんか悩んでもいいが、その間に無関係な人死にが多数でて、復讐者を返り討ちにするわ実母は毒死するわ、最期には義理の息子兼甥っ子の恋路まで気遣う優しい義父を殺してこと切れるという親友に、王族全滅直後の犯行現場で後を丸投げされたホレイショーほど大きな問題を抱えていない。
※ハムレットはだいたいこんな話。
うん。
ホレイショー君に比べたら俺の悩みなど如何ほどであろうか。
自分で対処する余地があるっていうのがね。
気楽に行こう気楽に。
眼の前にホレイショーいたら奢るわなぁ。
のむしかあるまいホレイショー。
つーか、良く逃げなかったよな。
友に持つならホレイショー。
ハムレットが友達って段階で詰んでる。
のんで解決するとは言ってない。
世の中にはこんなについてない人もいるんだよ。
女傑ガートルードさんとはぜひ一戦お願いしたい。
つまり手間と時間の話だね!
俺の任務が子守だといっても、これ以上時間を割くのは難しい。
幾ら誠実で真面目な陸上自衛官であり、謹厳実直な将校であっても、だ。
至らぬ点があろうと目指すべき高みに向かって日々努力している社会人であれど。
魔女っ娘以下うちの娘たちとは、一時も離れてないから物理的に。
ゆえに誠実さとか真面目さとか謹厳実直とか努力とかに縁が無いように最大限勤めている社会人ではないことこそ人間として正しいと公言できるっていうかしているけどまだ達成できていないの人として恥じております、な俺でも、24時間以上は働けない。
割いたことにして言いくるめても、この場合は仕方がない。
子どもを揶揄っても面白いだけだ。
それが悪いとは言わないが、それは日常でしかないわけで。
はんせいしてまーす。
過保護に見える、向きもあるとは思うが戦場なんだから仕方がない。
見える範囲で銃と剣がぶらついてるよ24時間。
戦場に子どもを連れてくるなっていうか、戦場から来たんだったか。
申し訳ないので黙秘します。
俺が子どもを、うちの娘も含めて、信用してないんだから仕方がない。
技能や人柄は信じているが、もう少しあざとくても良い。
大人を踏み台にした後は、男を踏み台にして強く大きく育ってほしい。
俺が駐留しているうちに、成るのは無理でも道筋位付けないとな。
むしろ侵略者の協力者って死亡フラグを立てまくってますが。
いや国際連合の方針で協力者の生命財産は地球の戦闘員より護られますが。
肢体と御金が無事ならいいってもんじゃないよね、って話も。
故郷から裏切り者扱いされかねない、っていうか、されるよね。
そんな立場な上、しかも子ども。
24時間一緒なのは動かせない。
つまり費やす時間は常にMAX。
生存能力を信じると、子どもはすぐ死ぬ。
死なせたことが無い俺が言うんだから間違いない。
死なせたことが有ったら大変なことになる、俺が。
死なせることが在り得る戦場は人生最大のピンチ。
俺が目を離しているところでは、何が起きてもどーにもならないしね。
というわけで手間を費やすしかないわけだが。
魔女っ娘が嬉しいこと。
・・・・・・・・・・・・・・嬉しいこと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・嬉しいこと?
【聖都/聖都市内/中央/大神宮内/隊列先頭中央/青龍の貴族の手が届かない距離/一足飛びに届く距離/エルフっ娘】
不愉快。
あたしは、あの娘が彼を見やすいように歩く。
あの娘が跳びだして、前に進んでしまったからだけど。
彼の手が届かないところに、あの娘がいるなんて、いつ以来かしら。
そして彼、青龍の貴族も、あの娘の気軽な仕草を楽しんでいる。
それはいい。
とっても歓迎。
あの娘が嬉しいのは、あたしも嬉しい。
あの娘に遅れを取っている。
その自覚はあるけれど。
他の女に追い抜かれて、楽しいわけないわ。
でも、まあ、それは、我慢できる。
うん。
できる。
耐えがたいのは、この女。
なーにを、気を使って見せてるのかしら!
あの娘と彼の視線を遮らないように、巧みに動く!
二人の瞳を各々見て、微笑みかけて、わざとらしく!
すっごく手馴れてる。
女に求められる男に、後から割り込むことに。
恩を着せて配慮を捧げて、遠慮させて好みに合わせて。
どんだけの女を泣かせてきたのかしらね。
もう。
でも。
ここで感情をあらわにしたら、ダメ。
どうせバレてるにしても、ダメ。
それで嫌われるわけじゃないし、むしろ悦ばれてるけれど。
繕ってると知られても。
誤魔化してるとみえみえでも。
見栄を張って、胸を張って、あの娘たちの前に立たないと。
彼、青龍の貴族に、魅せたい。
あたしを。
我慢。
がまん。
ガマン!
なんで、この女と過ごさなきゃならないのよ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・彼が仕組んだからだけど。
。
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿(改め建築楽器)内/中央に侵攻中/青龍の貴族】
俺の手間、か。
エルフっ娘を楽しませる国際連合統治軍作戦は順調順調。
ひとたび流れが決まれば多少のあれこれが在ろうと、目的は達成される。
ということは手を加えなくとも俺の目論見通りに行くな。
だからこそ、現地協力者へのフォローを考える余地がある。
魔女っ娘ならなんでも喜んでくれそうだが。
そこを超えてこそ大人の面子がある。
故に時間を割けないなら手間をかけるべき。
うむ。
理屈だな。
理屈は常に正しい。
理屈通りにいかなかったことは無い。
では?
俺が得意な事なんかいくらでもあるが。
それはつまり器用貧乏ってことではあるが。
子どもを喜ばせたことくらいはあるが。
ずばり!
素晴しい物を見せる。
旨いものを食わせる。
眠らせて起こさない。
子どもはこれで片付きます。
マジで。
エルフっ娘の機嫌を取るための、遠足。
これが、ちびっ娘ふたりとColorfulにもウケるのは計算済み。
魔女っ娘には特別追加、となれば不足。
素晴しい物を見せる、ってのがすでに埋まってる
なら、追加は別から。
寝かしつけるのは毎晩やってるし。
ルーチンワーク化してウケないと思う。
この娘たちみんな寝つきがいいしね。
失神する勢いでこと切れる。
眠るところに関しては、与えている感が無い。
それはたいへん面白くない。
俺が。
テナント募集の張り紙が裁判所の強制執行告知になっていた件。
さわやかな春風。
照り輝く緑の葉。
マスクをつけた人殺しども……台無しです。
自粛。
テナント募集。
強制執行。
今ココ。
他人事だけに、ムカつきます。
毎年のインフルエンザ犠牲者と比べてて、無も同然の不運な死者。
それを減らす名目で、どれだけの命を奪うつもりなんでしょうね。
以下、更新がずれまくる言い訳。
最近。
92歳の老人がご自宅で逝去。
普通は「大往生」と言います。
死後検査したらコロナ感染が判ったそうです。
なんで死後になったのかと言えば、行政の怠慢……ではなく。
な~んの症状も無かったからですね。
「微熱があった気がする」というどうでもいい話もあります。
同居の家族も気が付かないレベル。
それれが「新型コロナ」死亡者にカウントされるのも言わずもがな。
都市伝説ってレベルじゃねーぞ。
「病気」とはいったい……阿呆の頭の中に在り。
とはいえ、そろそろ幕引き時。
パニックに踊らされた馬鹿が、責任逃れに狂奔してますね。
「感染数も死者も変わらないのになぜ自粛を緩和するの?」
なんて言っちゃいけません。
「ろくに治験もしてない薬って人体実験かな?」
極々希に発病する人の冥福を祈りましょう。
「これが生物兵器っていうならインフルエンザも毎年誰かが造ってる?」
生物兵器なんてまともに研究する国があるもんですか。
効果に乏しく化学兵器に劣る。
効果が大きいと制御できない。
つーか、自然発生している病因を培養するのがせいぜい。
遺伝子工学にどんだけ夢盛ってるんだ。
軍事研究で生物兵器の成果が上がった例なんてありません。
バイオテロ対策すらオマケで、自然発生のパンデミック対策なら偶に役立つ。
……いえ、ここ百年ほどパンデミックなんか起きてませんけどね。
※スペイン風邪が最後の「パンデミック」
それ公衆衛生ってレベル。
ただ「パニックを引き起こしダメージを与える」という一点で見れば、生物兵器とは「情報戦」の素材としてのみ、有効なんでしょう。
……セルフ情報戦で自滅している国々の中にいると辛いです。
そんな馬鹿が必死になっているのに、水を注すべきじゃないのかもしれません。
注しますけど。
馬鹿は馬鹿にされるために産まれてきたんですから、全うさせてあげないと。
そんなわけで、週末も一生懸命出歩きます。
馬鹿を嗤うことで人の尊厳を守るために。
私は「人殺し」ではないので、マスクを付けません。
……プライベートでは、ですから言い訳になりませんか。
いましばらく、このスケジュールの乱れに御付き合いくださいますよう。
心よりお願い申し上げます。




