生贄/Recruit.
【用語】
『Recruit』
:補充兵の募兵活動。軍隊、もしくは国策に置いて損耗した兵士を補充増強する為に徴用募集すること。軍事用語。「Re(再び、繰り返し)」で始まるように、本来は「新兵を募る」といった意味はない。が、死傷、人命や人体損耗を意味する語意を嫌って、日本では「新たな兵を募る」という誤訳がなされた。まあ義勇兵を意味するボランティアが「奉仕活動」と誤訳されたのと同じコース。それが転じて新入社員募集という意味になったのは360度回転して正しい意味になったともいえる。
なお本編中の国際連合では多くの現地協力者やだけではなく、現地雇用軍属や志願兵や拉致った、ではなく徴用兵などなどの参加を実現し多世界連合軍で異世界侵略を推進しています。
侵略開始から半年もたっていませんが、国家主義や民族主義などなど生まれる前の世界ではフツーフツー。
実際の歴史で秀吉の朝鮮戦争を見れば解る通り。あのときも日本人(って意識が無かったわけだけど、日本列島出身者)多数が明国側に付いたりしていました。もちろん「報酬がいいから」「有利な方に」とかそんな理由であり、雇った側も「君たち強いね。いくら?」ぐらいの感覚。
史実と本編との相違は読んでみてください。
良いことが起きれば?
――――――――――祈りのおかげで起ったのです。
悪いことが起きれば?
――――――――――祈りのおかげでこの程度で済みました。
何も起こらなければ?
――――――――――祈りのおかげで無事なのです。
そうして「祈り」に莫大なコストをかけ、祈らない事への不安を煽られ、それに見合う安心は得られないからこそコストを注ぎこんでいく。
何も得られないからこそ、売れ続ける。
何か得られたら、売れなくなるだろう。
美容。
健康。
安全。
まったくいい商売だ。
もちろんこれは宗教ではない。
見分けようとする向きも少ないが。
祈りとは?
神とは?
宗教とは?
考えたりしない。
だからこそ、何度でも使える。
使われてることに気がつかずに。
「あれかカルトだ怖いなぁ。もちろん自分のは違うが」
詐欺師のテンプレートなのか、カウンセリングの基本なのか。
いずれにせよこのようなロジックで我慢が出来るのは、病人か異常者だ。
あるいは「人としての知性を取りこぼしてしまった虫けら」といえば妥当かな。
ところで。
「祈り」は「マスク」でもいいし、「自粛要請」でも構わないと考えないかね?
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿入り口正面/青龍の貴族】
たとえそれがどのような犠牲を生じたとしても、俺のせいじゃありません。
UNESCOのせいであって、それで利益を得るのは人類全体、俺もですが。
悪党の上前を撥ねる者は悪党ではなく、人殺しの利益を得る者は殺意を持ない。
共同責任は無責任。
実に良い言葉だと思います。
俺と俺の内輪が被害にあわなければ。
俺たち太守府軍政部隊。
この地に構えた第13集積地駐屯部隊。
同じく国際連合統治軍。
が、集積地全体からすれば一部でしかない聖都内。
その作戦行動の主役はUNESCOだ。
異分子排除装置はともかく記録装置はあっち持ち。
記録ってのはまあ、期待値。
奇跡の総本山だけに、何か起こらないかな、と
――――――――――地球人類の期待。
もちろん俺に関係ないからって、把握してないわけじゃない。
国際連合の一員同士。
武力制裁活動の担い手同士。
右手がやってることを左手はしらない
――――――――――在り得ない。
邪魔はしないようにしないとな、お互いに。
だからこそ言える、知ってる、俺さえも。
巫女も神官もいないから、何が起こるってのは望み薄。
大神殿、あるいは聖都全体、それが遺跡か史跡かわからない。
政治的経済的な意味じゃない。
政治的には陥落した時点で終わってるし。
経済的には居住人口を帰還させれば終わる。
それはそれとして無視しているわけではないが。
UNESCOが最も好奇心を隠さないのは、技術的な側面。
魔法の帝国。
奇跡の反帝国。
科学の日本。
そこだそこ。
魔法は帝国を採集していれば、いずれ解るだろう。
――――――――――だそうだ。
奇跡は帝国が根絶やしにしたので調べようがない。
そんな中、根絶やしにされ終ってない奇跡の、唯一の手掛かりが、ここ聖都。
いや、解体が終わってないってだけで、根絶やしじゃね?
奇跡を司っていた人たちは、日本が異世界転移する頃には皆殺し。
タッチの差どころではなく、絶対に間に合いませんでした。
で。
聖都で奇跡が確認できるのかっていうと。
誰もいないわけで。
魔法や奇跡ってのは、術者がいないと起動しない、らしい。
術者が居なくなっても起動し続けたりはする、らしい。
だが例外もある。
地下迷宮的な所では、罠の魔法が無人でバシバシ起動してる、とか。
ということは、術者がいないといけない、ってのは絶対条件じゃない。
つまりはたぶん、こういうこと。
現在、大神殿を造った、魔法や奇跡を操る異世界文明
――――――――――術者がいないと魔法や奇跡が起動しない。
過去、たぶん、は違う魔法や奇跡の文明があった
――――――――――術者が死に絶えても、魔法が起動/停止/再開する。
帝国が一生懸命に探検させていた地下迷宮。
それを造ったのは先史文明的ななにか。
そこでは無人なのに様々な魔法が起動し続けている。
で、大神殿は現在異世界文明が造った。
ゼロからこの場所、先史文明の遺跡とは関係ない辺境に。
結論。
すくなくとも聖都は術者がいないと動かない文明だけの産物。
誰もいないと、何も起こるわけないから、奇跡も調べようがない。
おー納得。
俺は。
だがUNESCOは俺ではなかった。
諦めるよーなUNESCOではない。
関わりたくありませんが無理ですかそうですか。
術者がいなけりゃ何も起こらないよね。
だから術者を連れてくる。
相も変わらぬ地球人類は絶好調。
パンがなければケーキを食べればいいじゃない。
軍隊がなければ国際連合軍を造ればいいじゃない。
巫女神官がいなければ魔法使いを連れてくればいいじゃない。
魔法使いと巫女神官の違い?
パンとケーキなのか?
軍隊と国際連合軍なのか?
第一印象で決めたような対比である。
三段論法?
結果?
推して知るべし。
聖都で何かを起こすために、何が起こるかもわからずに、異世界人を手配した。
それはもういろんな能力持ちの異世界のみなさんを山ほど聖都に連れてきた。
成果も出なかったが義性も出なかったのはまだマシだった。
俺みたいな素人から見れば、ね。
プロフェッショナルから見れば大きな一歩だった。
犠牲の有無は考慮されなかった。
過去形。
俺のような貧乏性から見れば、無関係者の犠牲は気にしてほしいんですけど。
まあ無関係じゃない異世界人なんて、国際連合に居ないけどさ。
国際連合軍に参加する、出来るのは帝国軍絡みのプロフェッショナルばかり。
現地協力者と違って、全部雇用契約結んでます。
帝国以外に雇い主がいない傭兵。
征服戦争は実質、十年前に終わってるしね。
諸王国に雇われていた傭兵は、逃げてなきゃ死んでる。
異世界で、今いる傭兵は帝国軍に雇われていた人たち。
あの正しくチートな帝国軍。
訓練が行き届いた常備軍。
その一員である傭兵。
単なる実戦経験豊富、なら消耗と補充を繰り返してむしろ弱い。
もちろん異世界帝国は、そんな戦史に残るようなネタ軍事国家ではない。
基本が圧勝という、実践経験豊富な軍隊。
瞬く間に領土を拡大しても、反乱はほとんどない。
戦時下で敵軍王侯貴族騎士を根絶やし。
戦後は既存の実力派、商人や富農など都市村落代表者たちを取り込み。
一方的な虐殺はちょくちょくあれど、それで消耗はしない。
虐殺だって時間をかけ準備、時期を選び兵力を整え、相手に気づかれずに開始。
そりゃ消耗するわけがない。
支配体制が安定しているために、領土に比べて少ない兵力。
属領から募集補充する程度で、兵士不足が生じなかった。
つまり経験を積んだ常設兵士、それを補充し経験を伝えて積ませる制度と時間、不足を感じたことがないってこと。
兵卒にまで至る職業軍人。
それに加えて帝国上層部が、なお雇う価値を見いだした連中が傭兵。
質の高さは折り紙付き。
けっして何十万という数ではないし、文化的な問題はあったようだけどね。
むしろ万単位だったからこそ、文化的な問題が抑えられたのかも。
その辺りはおいおい判明するんであろうけどな。
そんな帝国系傭兵の中で、帝国軍から離れていた皆さん。
帝国が征西に着手するにあたり、従軍を断った傭兵たちのことだ。
だから国際連合軍の戦果にも捕虜にもならなかった、何千かの傭兵。
国際連合が雇用している異世界人は、そうした方々が中心。
中世世界で地勢が違う遠距離遠征軍に加わるとか、きついよね。
風土病とか考えなくても、未知の気候や、未知の習慣食生活などなど。
正規軍兵士ならばいやも応もないが、経験を積んだ傭兵や傭兵団はまた違う。
いわゆる大陸沿岸部には、富裕な商人商会や都市に雇われた傭兵がそれなりに居た。
帝国軍再配置に伴う治安悪化を見越して、かなり需要もあったし帝国軍も推奨していた。
それはもちろん一時の特需だけれど、地域の有力者に顔を売るチャンス。
傭兵なんか金だけじゃなくて、権力がないと雇えないからね。
既に充分な権力がなけりゃ、兵を集めりゃ潰される。
既に充分な権力を持っていればこそ、それを維持する為に暴力が要る。
それが世界的権力、帝国に顔が利く連中ならなお結構。
そうやって雇われ、その間に信用を掴んで地縁血縁に根をおろして、徐々に退役していく。
そんな目論見だったそうな。
それが定着する前、帝国軍が征西に向けて配置転換中に、襲いかかったのが俺たち地球人。
すんませんでした。
俄に巻き起こった反帝国世論による帝国系傭兵団への忌避感。
混乱一歩手前により、新戦力導入より異分子排除に動く世相。
新たな侵略者による帝国残党狩りにたいする、警戒感。
地球人のせいで先行きに迷った多くの傭兵、傭兵団が俺たち地球人、国際連合に注目した。
で、そこで、傭兵たちの耳に響き渡った一報。
黒旗団、青龍の女将軍に仕えるってよ。
で、黒旗団が破格、まあ、異世界から見て、の条件で雇われて戦場を飛び回っている姿も、見られたわけだ。
異世界の傭兵たちは、概ね国際連合に志願した。
黒旗団ほどの規模や戦力ではなくても大歓迎で。
そこには結構な数の魔法使いも居たわけですね。
魔法使い絶対主義の帝国に、すくなからぬ魔法使いたちが仕えなかった理由。
魔法使い=貴族扱いされて報酬は良い。
でも、世界の果てまで行きたくない。
従軍を断った傭兵たちと同じってこと。
彼も人なり。
我も人なり。
むしろ、帝国に仕えなくても魔法使いは準貴族扱い。
彼らの方が、身の振り方は自由が効いたらしい。
俺たち国際連合に鞍替えしたのは、そんな帝国関係者だけでは無い。
帝国にだけは仕えたくない旧諸王国残党もいる。
実質10年前には敗北決定したみなさん。
この人たちもハンパなく強い。
あの帝国軍に対抗して生き残るだけじゃなく、戦い続けた極々少数派なバケモノが諸王国残党。
ものすごく少ないだけに学者や技術者、大半が魔法使いですす。
帝国からの勧誘が好条件でも節を曲げず、なお生き残る。
勝ち目がなくても、そうと知ってなお諦めず。
この人たちが、帝国を駆逐していく地球人に興味を持ったのは当然ではあるよね。
そしてもちろん復讐のためではないことを明確化しつつ、国際連合も受け入れた。
復讐心一辺倒の者は聖都で討ち死にしているので、むしろ意地っ張りの比率高し。
魔女っ娘のお父さんも、そーいうタイプだったんじゃなかな。
国際連合に雇用加入した異世界軍人の品質おしてしるべし。
そんな逸材から選んだ学者技術者職人。
同じく厳選された魔法使いを、地球科学でコーディネート。
多世界初の共同作業です。
皆様拍手で見守ってください。
贄と捧げるが、共に同じといえるかどうか。
そんな選ばれしエリートたちが聖都、ってか、俺たちがいるココ大神殿に投入されたのですよ。




