同じ馬鹿なら殺らねばBAM!BAM!
【用語】
『合衆国大統領』
:駐日大使、国連大使兼任。
女性初の合衆国軍統合参謀本部議長で次期大統領候補と目されていたが、祖父以来の縁がある日本へ大使として赴任。その際に家族も連れてきている。
異世界転移後、緊急時の継承順位に従い大統領に就任し在日米軍並び領域の軍を掌握。在日合衆国市民の統率者となる。
代々続く軍人の家系。
娘は文民(弁護士)になったが、孫は軍務(空軍F-16パイロット/三沢基地所属)についている。
普段から合衆国陸軍将官の礼服を身にまとう。
とても正直なので「次期大統領候補と目されていた」り「日本へ大使として赴任」した理由はお察しください。
「味方以外」は撃て。
「敵ではないと断言できるモノ以外」殺せ。
はい、ですです。
皆様お馴染み「国際連合ファースト・コンタクト規定」ですよ。
「ゲーム理論」
でいうところの
「協調最強」
は相手との持続的な関係が前提ですもん。
初見殺しならかんけーないですね。
自然界にはありふれてますけど
――――――――――「体に訊いてみろ」って。
?
からだ、体、肢体
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違います!!!!!!!!!!!
免疫機能、人体のは~な~し~です!!!!!!!!!!
そーいう趣味の話は、あの娘たちと詰めておくのでよけーなことをかんがえないよーに。
で。
生物共通の交戦規則。
コンニチハしたウィルス、菌、微生物はいきなりコレもんです。
まず殺って、バラして、記録して、ポイッと。
人体は一つの生態系ですから。
異物はまず、生き残れません。
たいちょーが身一つで異世界、中世みたいなとこに放り出されたら?
まあ概ね三日で死にますよね。
おんなじ。
そもそも動植物って、常に異物を攻撃してるんですから。
森林浴だスバラシー、なーんていうじゃないですか。
それって異物を排除する殺菌性化学物質の効果ですから。
ありとあらゆる生体は、自己以外のすべてが敵なんです。
樹々が必死に人間を殺そうとしている化学攻撃。
それが異物を悦ばせてるっていう、ね。
振りかざす刃がちいさずぎて鍼灸治療になる感じ。
互いが互いを殺し合っている凄惨な戦場。
それが、圧倒的強者には平和で穏やかにしか感じられない。
むしろ心地よく思うあたり、残酷なもの。
うちらがどー感じようが、本質は変わりません。
敵意は敵意。
刃は刃。
目的は明確。
己以外のすべてに死を!
実際、医学っていうのは、人体の免疫機能ほか、ひとくくりに「恒常性維持機能」を後押ししてる、そんだけ。
単純化すれば、治療法がある病気なんかない。
なにもかも対症療法。
船底の穴は塞げないから、水を掻い出すだけ。
治癒魔法によって初めて、人類は病気そのものに干渉できるんですよ。
確立した生態系の強靭なことといったら
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?
なら異世界防疫対策は大げさかって?
のんのんのん
――――――――――言いましたよね。
確立した生態系に入り込んだ異物が、どんな目に遭うか。
なう♪
異世界に入り込んだ異物が、どんな反応をうけているか?
い・せ・か・いに入り込んじゃった、地球世界!
地球に入り込んだ、じゃないですからね?
世界一個を敵にして。
汚染するかされるか。
殺るか、殺られるか。
どちらでしょーか?
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿入り口正面/青龍の貴族】
俺の鼓膜に響く音。
骨伝道で伝わった振動。
だから、音というのは無理か。
うむ。
いつも通り
――――――――――なんだかわからん。
演習は続くよ何処までも。
続けてたまるか其処までは。
俺は一応しか目を通さなかった演習計画、その結果を眺める。
俺を、俺たち本隊を視認した、それを俺、か曹長に知らせた佐藤。
佐藤の合図を確認した芝。
きっとこれは、俺のような部外者にもわかるように気を使ってる。
だからこそ判りやすいように見せてるのだろう。
見えない合図に見えてもわからない合図。
俺はいつものことながら、失って初めてわかるありがたみに涙する。
バイザー、その内側に映る情報は大切だ。
いまさら?
映るっていうか、俺の眼鏡型だとレーザー照射で、眼の中に投影しているが。
表示される意図は同じ、内容は違う。
階級と職制に必要な情報、状況に相応しいと決められた誤報。
作戦上の都合による何もかも
――――――――――知ったことか。
将校の中には、戦闘中以外は敢えて外すやつも少なくはない。
上級司令部の思惑を把握するために。
作戦上の都合を出し抜くために。
騙されて殺されないように。
戦場で味方に正しい情報を送る訳がない
――――――――――ベテランか捻くれ者は、そう考える、な。
敵を騙すなら味方から。
大本営発表は味方向け。
味方を知りたければ敵を視ろ。
普段から付けていると、味方からの情報に慣れてしまう。
たから外しておく、慣れないために
――――――――――慣れると違和感を見過ごしちゃうからね。
勝敗いずれであれ犠牲は必要。
言われるままに動けば英雄にされてしまう。
盲従する兵士・部隊なんかゲームにしかいない。
上司ウケがいい、ってことは、使い勝手がいい捨て石。
そんな馬鹿は決して多くはないから、あの手この手で操るわけで。
それを見越してバイザーの着脱も計測されてるんだろうなーとは思うが。
ただし着脱時間と評価を比例させたり、外さないように指導したりはしない。
必要な時に外さなければ、思考誘導に問題なし。
規制や罰を付ければ、皆が従うわけもない。
一生懸命裏をかくだけ、無駄が増えるバカのやること。
誰がどれだけ外しているか把握してれば、それでこと足りる。
それに合わせて提供する情報を加工すりゃいいだけだ。
俺はどちらでもなし。
伝えられた内容を信じやしない。
真偽なんか見りゃわかる。
判らないことは、どーでもいい。
どうせ戦闘中は外せない。
つまり今はつけてない。
演習中だからね。
哨戒気球の情報も。
偵察ユニットの情報も。
先行する佐藤や芝の視界も見えやしない。
いやまあ、見たって仕方ないけど。
哨戒気球で地区全景を見たって時間の無駄。
偵察ユニットの航路データを見ても何もわからん。
選抜歩兵の視界を追ったら、酔ってしまう自信がある。
索敵情報の分析は、プログラム解析に将校補正がひとつまみ。
しかもここ、聖都なら第13集積地のオペレーターがついてるし。
一応、危険地帯の情報が視覚表示されるのは、子どもたちには便利かな。
まあキル・ゾーン近くじゃないから、外したままでいいか。
うちの娘たち、すぐ付けられる位置に、かけてるし。
危険地帯に近付けは、通信端末から警報が響く。
通信機ははずしてないし周りは隊員が囲ってるしな。
安全地帯から出そうになっても、警報が響くしね。
引率の俺も安心だ。
俺たち非戦闘員と部下の隊員たちとは意味が違う。
きちんとフェイスカバーを閉じている、だが閉めてはいない隊員たち。
例えばさっきの合図、彼らには誰が発したか表示されているだろう。
曹長だが。
曹長しかそれを発する人間いないじゃん。
などといってはいけない。
パイザー内側に表示されて視える、実際は網膜にレーザー投影されている、表示。
確認だけではなく、視線操作も可能。
今の曹長みたいに合図を発するとか、そーいう操作。
視線でアイコンをダブルスライド。
一昔前ならマイクを指で弾いて合図を送っていた
――――――――――って映画で観た。
だから皆、構えを崩さずに意志疎通。
戦闘中は複雑なコミュニケーションがいらんからな。
合図が基本、時々符丁。
コレで足りる。
すごいなー。
何がすごいか、わからんけど。
隊員たちが判ってればいいのである。
非戦闘員、民間人や戦力外には合図で済ませたりはしない。
きちんと言葉で指示。
まあ突発時に会話も無いから、一方的に命令するだけだが。
でないと死ぬし、殺せない。
戦闘の邪魔。
つまり、俺に合図で済ませる、ってことは突発事態じゃない。
ましてや俺があるきだしても、警告も合図もない。
予定内の行動。
予定外なら、合図では済ませない。
失って初めてわかるってことは、どーでもいいってことなのか。
皆が、俺たちを囲む隊員までが、俺に続いて歩き出す。
佐藤、芝、他のみんなが判り、俺だけ判らない。
どーでもいいんだけどね。
困らないけどね。
涙は心にしまっておいて、さて、前進。
【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面/隊列先頭中央/青龍の貴族の手が届かない距離/一足飛びに届く距離/エルフっ娘】
あたしだけに響く音。
あたしにだけは届く音。
あたしが立ち聴きしてる音。
まあ、きかせてる、んでしょうね。
気がつけば、あたしの動きに合わせてる女たち。
青龍の騎士たちは、彼、青龍の貴族に合わせて動き始める。
そして同時に、彼の女たちが反応する。
それはつまり、あたしが彼と一緒に動き始めるからだけど。
それが狙い、ね。
彼の肌に響く音。
あたしにしか、聴こえない。
それが単に、エルフの力っていうのは、とっても面白くない。
あたしだけの繋がりが、欲しいじゃない?
そんなこと、彼、青龍の貴族には関係ないこと。
気にも留めてないでしょうね。
ただ単に、そう在ることを使っているだけよね。
彼が、先に行く二人、サトウ・シバ両卿に送る命令、合図。
それを皆、女たちに伝える、伝わるようにするのが、あたしの役目。
いつの間にか、ではあるけれど、皆、あたしの動きを観てるから。
あたしは彼の動きを聴いている。
聴けば肢体が反応しちゃう。
だから同時に動くわけ。
あの娘たちが、それを察して、それに合わせる。
人やハーフエルフの感覚では、追いつけないから。
彼だけを見ていたら、彼の動きに遅れてしまう。
それは、まあ、皆、不本意よね。
そのくらいのことで嫌われたりはしないけれど。
むしろ構われるかもしれないけれど。
足手纏いになるのは、絶対に自分では赦せない。
皆がそう想ってる。
それを避けるために、あたしが視られてる。
いつのまにか。
彼の合図を聴かされて、彼が動く前に動く。
あたしに合わせれば、彼の動きにかなり近い。
合図。
行動。
追従。
彼が発し、あたしが動き、皆が視る。
彼が動き、皆が動く。
だから、聞かせてるのね。
そうなるように振る舞うのは、いつものこと。
それはそれで嬉しいんだけど。
命じてくれないかしら。
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿入り口正面/青龍の貴族】
俺たちが誇る三本柱。
一本は曹長。
残る二本の佐藤・芝。
二人はさっさと大神殿内部へ。
俺たちが正対している、正面の階段を上がり切った先にある、巨大建造物の開口部。
正面入り口なのか出口なのか。
三本のバカ太くて高い大柱で支えられている。
斥候二人は三本柱の真ん中、左側から抜けていく。
一応は屋内ながら非常に大きい空間が取られている神殿。
偵察ユニットを突入させることだってできそうだ。
しないけど。
偵察ユニットはラジコン飛行機。
とはいえ、それなりの大きさと機動音。
時には簡易ミサイルとして使えるくらい。
やろうと思えばホバリングさせて数十m単位で使えはするが。
偵察ユニットの運用前提は100m~1kmくらいの範囲。
威力偵察ならまだしも、この状況で偵察には使えない。
ここは人手に頼るのが実戦準拠で演習に相応しい。
大神殿内部は、もちろん調査済み。
追加調査の予定もない、今日は。
だが記録装置と警備装置は常駐だ。
その辺、俺たちには関係ないがな。




