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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十二章「男と女と大人と子ども」

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ちがう、そうじゃない

『エリック・アーサー・ブレア』

:などという本名はどうでもよく「ジョージ・オーウェル」という筆名だけに意味がある。物書きたるものこうありたいね。ね?ね??

小説家であるからには思想家で哲学者で学者。ついでに政治家で、時代が産んだ反全体主義活動家。


全体主義全盛期。


スターリン率いるコミュニスト。

――――――――――マルクスがまとめたコミュニズム(共産主義)とは関係が無い。

ヒトラー率いるファシスト。

――――――――――ムッソリーニが造ったファシズム(寡頭制民主主義)とはまったく関係が無い。

ルーズベルト率いるニューディーラー。

――――――――――ケインズが唱えたケイジアン(修正資本主義)とは縁もゆかりもない。


まあボコり合ってルーズベルトが勝ったんですけどね。

それらすべてを皮肉って嘲笑しながら全否定する論理を組み立てたのが小説「1984」であり、以後の社会思想や文明論に取り返しがつかない影響を与えた。


「2+2=5」という正解。

「101号室」にある、貴方が一番恐れるもの。

「ビックブラザー」が常に視ていたりいなかったり。


それらはソビエトやナチズムを「失敗作」として嘲笑し、より完成された官僚主義社会を構築した作中で使われるキーワード。

このディストピアの描写はどーにもこーにも1950年代のアメリカじゃないかと思うのはわたしだけですかそうですか。




貴男が誰とどうしていたのは知っています。

が、興味ありません。

貴男が何を感じているのかも判っています。

それが大切ですから。


何をしたのか、じゃありません。

何を想っているのか、なんです。


今までは皆「ワタシを好きになれ」と強制するから、失敗したんですよ。

今から貴男には「ワタシを愛している」と気づかせてあげましょう。


――――――――――恋愛小説版「1984」ジョージ・オーウェル


「正解」

「そのりくつはおかしい」





【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿正面階段途中/青龍の貴族】


俺の部下、に限らないだろうけどな。

ぎこちない動作と、あからさまな戸惑い。

いやいやいやいやいや、解るよ判る。


M-14なんか初めてだったもんな~。


侵略開始まで、配布に半月、慣熟、できたとは言えない訓練に1ヶ月半。

その訓練だって射撃ばっかだし。


異世界転移と同時に国際連合軍編成開始。

兵装転換スタート。


最初の半月で自衛隊員全員、今まで撃った実弾数を軽く越えたよね。

いや俺じゃなくて、自衛隊で一番実弾を使ってる連中を基準にして。

俺だけで言えば、兵装転換最初の一日で生涯発砲弾数を越えました。


今までは正面装備に予算をとられて、肝心の訓練や弾薬が二の次三の次

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・イタリア軍かな?


練度不足なんてもんじゃねーぞ。


世界を見渡せば下には下がいるし、その中には米軍こそが含まれる。

それで俺らの練度が上がる訳じゃないし、生き残れるわけじゃないし、負ける。

だがまあ今回に限って言えば、かえって訓練不足で良かったかもな。


正式装備に慣れていたら余計、兵装転換に苦労するんだから。


新旧装備は、まずサイズが違う。

銃本体。


ああもちろん、89式64式M-14は小銃の名前。


89式は重さが3.5kg、長さが916mm。

銃剣は全長27cm刃渡り15cm。


M-14は4.5kg、1118mm。

銃剣が29cm刃渡り17cm。


ちなみに64式は重さ4.3kgで全長990mm。

銃剣が全長41cm刃渡り29cm。


銃剣の嵌めかたも違って、ダブルクリップと押し込みバネ式。


長さが違えば取り回しが違う。

重さが違えば力加減が違う。


実銃の不足やら管理過剰やらでトイガンまで使って慣れ、させようと一応している89式小銃。

今でも生産されてるけど有り余る在庫数を配備して実銃実弾を使いたい放題にしたM-14。

双方は銃全体で20cm、銃剣だけでも2cm違う。


M-14の方が長い。


まあ銃剣戦闘を考えれば、長い方がいいがな。

刀より槍が有利なのは、長いから。


剣道三倍段って知ってる?


刀と槍が戦う場合、槍の方が三倍有利。

と考えれば大体あってる。


ただし長ければ、重さ以上に取り回しの負荷も高まる。


刃物を扱う時にこれは危ない。

急いで怪我をしたら大変だ。

別に一対一で戦うわけじゃなし。


そういう意味では、M-14でもたついてもいい。


速度より正確性。

優劣ではないが、優先順位はある。

食事や女と同じ。


まあプロテクターのグローブは、防刃だけどね。

指を落としたり、手を切り裂く心配はない。

良かった良かった。


しかも毛細管現象を利用して、汗を排出する。

蒸れる事なき優れもの。


バイザー閉じて隙間も塞ぎ対NBC兵器用の密閉状態にしても、臭気センサーに引っかかるかもしれない。


汗を感知されないようにする装備は、特殊部隊用だからね。

吸収するシェルを内部皮膜の間に挟むのだが、メンテナンスが高くつく。

一般兵士は特殊なセンサーをかいくぐる必要はないのでOK!


そんな快適安全な装備のおかげで、安心して不慣れな銃剣を扱える。




【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面階段/隊列先頭中央/青龍の貴族の手が届かない距離/一足飛びに届く距離/エルフっ娘】


もちろん聖都には敵なんかいない。

青龍の敵は、ね。


それはもちろん、青龍の貴族、その女を害する者もいない、ということ。


あたしも聴かされている。

聖都市街に居るのは、青龍が命じた者だけ。

青龍たち。青龍の捕虜。


聖都まわりは、今は、それだけ。


この地方の人たち。

帝国軍の攻囲中も盛んに出入りしたはず。

むしろ兵士や労役に物や人を売るために、平和な時代より、出入りは多かっただろう。


それが絶えた。

ある瞬間。


喚ばれた者以外、一人残らず。

両方、命じられた者だけ

――――――――――此処に在れ、と。


なのに青龍は、周りを警戒。

敵がいなくとも、安全だなんて考えない。

まるで結界を張るように、ううん、結界そのもの。


あたし、たちを護るにあたっては、万事遺漏なし。

それはまあ、いつものこと。


それは彼、青龍の貴族、彼の女であるから、護られるのは、彼の意志な訳で

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気恥ずかしくはある。


うん、そーいうもの、っておもうべきね、うん。

ちょっと頬を引き締めないと、うんうん。


まあ、全く気を抜いたりはしないけれど。

青龍の貴族、それ以外の青龍には要注意。

それは青龍の道化みたいな悪ふざけ以外。


道化は道化で腹も立つし、殺しそうになるけれど。


あれはあれで青龍の貴族、その隷下にいる。

古来宮廷には、ああいう奴がいるモノだ。

臣下でも家臣でもない、主の側に侍る道化。


そうしているのか、そうせざるをえないのか。


演じている者もいるだろう。

素でいる者もいるだろう。


好かれているか嫌われてるか、どちらであってもかまわない。


主と臣下、家臣によって成る輪を乱す者。

突飛な解釈を提供して、俯瞰の在り方を示す者。

統一された一団が、自閉自縛に陥ることを防ぐモノ。


だからこそ青龍の貴族、彼と同格のように振る舞う。


その役割と見られているからこそ、それが見過ごされている。

その役柄を自覚しているからこそ、殺される際まで突き進む。

その役目を認められているからこそ、未だ生かしておかれる。


だからこそ、どれほど腹立たしくても、それがワザとであろうとなかろうと、実害の在る無しを問わず、敵じゃない。


青龍の貴族、その敵じゃない。

それが大切。


だけど、敵はいる。




【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿正面階段途中/青龍の貴族】


うちの隊員を見れば、俺みたいにホッとできるってもんだろう?


第三次世界大戦型の軍隊

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・的な組織。


時代遅れっていうんじゃありません。

一昔前の物が一番使えるんです。

型落ちが最も実戦向き。


デバックが終わり、塞げる穴を全部塞いで、どーにもならない欠点は広く知られてみんなで避ける。


これほど信頼できるものがあるか?

古けりゃいいってもんじゃないけどね?

二昔前の物は避けた方が良い、ってより駄目だからね?


日本のトレンド、日本人とは関係ない、日本のメディアが好きなネタ。

半世紀くらい前に試しつくされ欠陥が判明した思想制度に謎信仰。

欧米で廃棄か改良型が出回ってるのに、敢えて挑む挑戦者。


政治や経済思想が全部それ。


欧米崇拝でもいいが、ちゃんと崇拝しようよ、とツッコミ待ち。

崇拝された方が驚いてるから。

キリスト教は素晴らしいってヘブライ語でタナハ叫ばないよーに。

※タナハ:ユダヤ教の聖典


それ双方に喧嘩うってるから。


陳腐化とは定着習熟一般化。

それにたどり着けずに捨てられたモノと一緒にしないよーに。

自衛隊とは違うのだよ自衛隊とは。


明治の伝統は根絶やしにしないと。


戦争をしないことを国是としているからこそ、現代戦争を回避できている自衛隊。

近代、21世紀型ではなくて20世紀型、人類を何回滅ぼせるか競った時代。

一世代前の軍隊、に近い組織だからこそ、時代遅れ(せんそう)の状況に適応できる。


戦争ってのは、敵を殺せば終わるモンじゃないからね。


異世界、剣や槍のプロフェッショナルが溢れている、敵。

そんな奴等に、最新武器で対抗できるもんか。

効率が悪くて足が出る。


50億人類を何回皆殺しにできるか、それを競った時代の再装備。


現代戦争型のジャンク品は全部国産兵器。

下層国民を前提にしないと使い道が無い。

それが邪魔にならない構造になっている。


職業軍人を前提としているからこそ、それができるんだけどな。


練度が低い?

悪い癖が付いていない、ともいえる。


実銃が足りないから玩具の銃で訓練して、弾薬が無いから射撃をせず、金がかからないから体だけ鍛える。


大いに結構!


銃の恐怖と取回し、その基本だけが身についてりゃいいんだよ。

5.56mmの反動に慣れてしまったら、7.62mmに耐えられない。

実銃に慣れてないからこそ、再配備のM-14を慎重に扱える。


予算不足装備不足を前提に、最初から自前で戦うことを考えず、在日米軍と融合して造られた組織が機能してる証拠。


でも曹長の渋面がよくわかる。

フェイスカバーで見えんけど。

充分であっても十分じゃない。


立場から考えたら、そう思うよね。

俺から見たって判るんだもの。

戦闘員数外の俺から。


お前がやってみろ?

バカ言っちゃいけない。


当事者意識を持たないからこそ、客観という。

相手の身になってはいけない。

むしろ厳禁。


お互いのレベルに安住したら、お互いに終わりじゃないか。

――――――――――いや~仮定だと、冷静に考えられますね。


なーに本番なら冷静以前。

なにも考えられる訳がない。

なにも俺だけのことじゃないぞ。


訓練が充分なら、感じることはできるだろう。

感じられたら、反応は、出来るじゃなくて、する。

それが部下たち、標準的自衛官のレベルかな。


そこが曹長のゴール。


俺はそれすらできんだろう。

感じることすら出来ないから、反応すら出来ない。

ほんと、向いてないんですよね。


だから、出来るうちに出来ることを

――――――――――みんな頑張れ!


応援はまーかせて♪



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