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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第二章「東征/魔法戦争」

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愛のおはなし/Eros,Philia,Agape,Storge




正義から逃げてはならない。


私の正義。貴方の正義。誰かの正義。

――――――――――――――――――――――――言い訳するな。


正義から目をそらしてはならない。


昔の正義。今の正義。未来の正義。

―――――――――――――――――――――――――――――口実をつけるな。


必要な悪などない。

仕方ないことなどない。

今できないことなどない。


誰にでもできる。いつでもできる。いくらでもできる。


当たり前のことを当たり前にし続けるだけでいい!


さあ!征こう!すべてを正義の為に!!




【太守府/港湾都市/倉庫街】


老人は潮風に目を細めた。

今日も気持ちが良い一日となるだろう。昨日がそうであったように。明日がそうであるように。


爽やかな朝を始めよう。9月30日のように。


『医療班』


設置要件。


水の調達が容易である事。水質は工業用水程度で構わない。

水捌けが良いこと。屠殺場と同程度が望ましい。

風通しが良いこと。大声は出さないし、出させない。


「最適だな」


部下、ベトナム国章をつけた下士官は胸を張る。


「この場所を見つけた兵を後ほど出頭させます」


老人は把握している。

だが、頷いた。

団長に直截、声をいただこうと考えて。


その兵士は元々、ベトナム企業の日本駐在員だったらしい。

合弁会社の関係者で日本語が堪能。場所を見る目は、過去の経歴にない。


天性のものなら、磨いてやらねば。



「フィルタリング結果を」



市民:113(敵意2/恐怖8)

暴徒:48(敵意5/恐怖5)

職業的犯罪者:3(恐怖10)



「敵影無し再検索継続」

「敵がいたら驚くがな」


老人は笑った。


『確認後に創るか?』


奴隷市場で魔法指揮所を束ねるエルフの副団長。

骨伝導なら声を出さずに会話が出来る。機器の性能とコツがいるので、まだまだこれからの技術だが。

老人は人類の進歩に目を細める。


はるか離れた港湾と、建物の外の警備兵、そして今も街中で探索している浸透斥候。眼に見える範囲から見えない範囲まで、一堂に会しているように意思をかわせる。


エルフの副団長は奴隷市場に居ながらにして、魔法を介し、一人一人の兵士のカメラや偵察ユニットに意識を滑り込ませている。

いまは、さて、どの兵士のカメラから見ているのか・・・・・あるいは、老人のベレー帽かもしれない。


『どうみるね?』

『早いと考える』


間がない。老人はソコを評価した。答えの正否よりまずソコだ。

奴隷市場の副団長はエルフ。

老人の技術を伝えれば、最低数百年は人類を支える事が出来る。


人類の未来はなんと明るいことか!


『賛成だ。まだ早い』

『どうする?』

『素体は十分、今の我々ではこれ以上処理出来ない』


ハードはソフトと違って増設に時間と手間がかかる。


『スクリーニングだけ続けてくれ』


データは多いほど良い。護衛艦の通信回線が使える内に日本に送ろう。


『り、解った』


老人は独り頷いた。

了解、などと言わせてはならない。あえて言葉を分けて貰っている。


教える立場は、どうしても上に立ってしまいがちだ。

知識の有無、力の強弱は優劣の問題では無いというのに。


現地出身兵を仕切るエルフの副団長と地球兵が見本にする老人。

二人の間に上下ができれば、部隊が終わる。


それは、人類の、新たな世界の終わりに他ならない。もちろん、老人がいる限りそんなミスはあり得ないが。


これは日本の友人、そのブレーンが、ブレーンの一人でもある老人が常に気を配る事。

もちろん老人はその種の問題には慣れているし、友人のようにイラつきもしない。


友人は代々続く政治家で、自分は叩き上げの軍人だ。

その辺りの機微は、面白くもある。


老人は想いをもてあそぶ。

(賢愚を含めて人とは愛しいものだ。それはそれなりに、躾て導き殺せばよい)


倉庫の奥、戸口の兵士。敬礼に答礼。


「164体、集めました」


全員、清潔な化繊の捕虜服。

大きなNOがふられ、猿ぐつわ、目隠し、ヘッドフォン。

プラスチック樹脂の拘束具で手足が無理なく拘束され、パイプ椅子に座っている。

多少の怪我は入念に治療されている。


「下処理は合格だ」


人間種の現地兵に頷いた。


「はじめよう」




【太守府/港湾都市/埠頭/桟橋】


あたしの先を行く頭目。


桟橋の先。一番大きな繋留台の上。埠頭全体が見回せる。

あの娘達が手をふってる――――――うん、可愛い。特に妹たち、特にあの娘。


みんな可愛くはあるけれど。


頭目は頭目で自分の子ばかり、でもないけど、中心に見てにやけている。


「すっごくにや、嬉しそうね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お互い様」


あたしは平静を装う。・・・・・・・・・二ヤついていたかしら?


あたしたち、頭目とあたしは手を振り返した。

あの娘たちは青龍の貴族の側。

周りは黒旗団のドワーフ達に獣人。Colorfulの五人は書籍の山と格闘中。

世界で一番安心な、青龍の貴族の側、気を抜いて楽しそうな、あの娘たち。


「手を組みましょう・・・・・・・・・怖いわよ、笑顔笑顔」


不覚。顔に出すなんて。


「些末なことを考えすぎよ」


含み笑いの頭目。なにが?早速、青龍を裏切るほどバカじゃないわね。でも、青龍を利用出来るなんて考える大バカではあるか。


「あの雌獅子に対抗しよう、ってこと」


――――――――――は?青龍の女将軍のこと?


「不利は否めない」


――――――――――な?


「あたしたちは肢体を使えないのに、雌獅子は何もかも投げ出して・・・・・・・・・・・・・・・・・・投げつけてくる」


――――――――――なにを。


「でも、馴染んだ肢体より、新しい方に目移りするものよ。むしろ手を出せないのが利になるかも」


――――――――――色ぼけが!!!!!!!!!!


「悪い話じゃないでしょう?」


――――――――――ざっけんじゃ


「あたしたち共通の恋敵――――――――――ん?大丈夫、誰にも言わないから」

「待って」


頭目はゆっくりと待つ、本当に。

まるで、あたしが考えをまとめる時間を諮るように。


「青龍はこちらの女と接触出来ないのよ」


そういう、つまり、その・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・性的に。


青龍が、あたしたちの世界の人間と血の交わりを持つと、神々の禁忌に触れて呪われる。

当事者はおろか、周りの者達、いや、邦や大陸を覆い尽くしかねない程の凄まじさで。


だから青龍はソレを禁止して、違背すれば専門の軍がなにもかも焼き尽くし呪い返しで全てを清める。

太守府で留守番と称して居座っている三佐、青龍の貴族、その上官の本業は魔法使い。

清めの炎と呪い返しの大魔法を使う歴戦の魔法騎士だ。


もちろん、頭目は知っている。


青龍が参事会に布告したあと、太守府の娼婦達に話を回し締め付けたのは盗賊ギルド、青龍来訪に備えて太守府に詰めていた頭目だ。


「あたしたちを抱けない」


たち、って!


「いつまでかしらね」


???


「青龍は帝国を滅ぼしたら消えるの?」


わけがない。青龍は帰る場所がない。どこから来たのか知らないけれど、あたしたちの世界から去る気はない。

そう断言している・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あたした、ちの世界自体は欲しくも無いくせに。


「サンサ、だったわよね。あの魔法使い」


青龍の魔法使い、魔法騎士だというだけじゃないけれど。

青龍の世界、いえ、あたしたちを含めた世界を司るニホンの指導者の娘。

本人も父の意を受けて世界を変える動きに絡んでいる。


青龍の公女。


「あたしたちを見て、興味深く、ただ、見ていた」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気が付いたか。

確かに。


青龍の言う『神々がもたらす血の呪い』、あたしたちの世界と交わることにより生まれる疫災。


その『国すら滅ぼす疫病』などは本当だとわかる。


公女自体がそれを防ぐために炎をふるっている位だ。


だけど。

神々すら『邪魔だな』と醒めた眼で観察している青龍が、ただ単純に呪いを見過ごす訳がない。


神々にただ従うなら、青龍の貴族に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

恋慕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しているかもしれない、

こちらの女を放置する訳がないし、興味深く眺めるなどあり得ない。


頭目が言うように、公女は試している、多分。


少しずつ、一人ずつ、距離を縮めて何が起きるか。

何かが起きたら、対処出来るか。

対処出来ないなら出来るまで。

対処出来たら数を重ね。


だから、認めている・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あたしたちを。


希望的に過ぎる?

ううん。

とても青龍らしい。


神々とあたしたち、そして青龍自身すら試料にしてみる。


神々の禁忌に甘んじる気がまるでない、傍若無人で唯我独尊。

だとしたら。


頭目がそういうつもりなら、あたしは伝えなくちゃならない。


「あなたは勘違いしてる」


頭目が考えるような相手じゃない。

青龍の、あの貴族は、彼は違う。


「大丈夫よ!彼は貴女の事をちゃんと見てる。女として、魅力ある相手として、もちろん、私もね」


違う!


「欲しがるところまでいかないのが信じられないけど、もの凄い堅物よね。でも大丈夫よ。私たちならね」

「だから、違うわ」


頭目は、黙ってあたしを見た。意外でもなさそう。なにも知らないくせに。


「彼はあなたが使える相手じゃない」


後ろ盾にするには、最適に見えたでしょうね。

世界を征する強大な青龍、この地で全権を握る支配者。

頭目が肢体を投げ出してでも手に入れたいのは解る。


子供を護る為に。


「彼はただの貴族じゃない」


ただの、辺境統治の貴族なら良かった。時間をかけて、青龍がこの世界に定着すれば、この邦の代官か領主として居続けるだろう。

それなら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・通じ合うこともあるだろう。


あるいは、別な土地を治める為に去るかもしれない。

でもそれならついていってもいい。

頭目の立場なら、定着してほしいだろうけど、すくなくとも強大な青龍の、そのなかで力をもつ彼は庇護者として最適だ。


『力を持つ』だけならば。


「彼はただの貴族じゃない」


頭目は知らない。サンサと呼ばれるのが、単なる『大魔法使い』で『青龍の上位貴族』ではない、と。


「あの大魔女は青龍の公女」


彼、青龍の貴族がなぜ、辺境に来たのかは知らない。

だが青龍――――――――――世界の中枢――――――――――その公女があえて辺境までやって来る―――――

―――――彼と話す為。


地位?知恵?血筋?武勲?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・判らないけれど、一つだけはっきりしている。


「彼は青龍の中枢、に、極近い存在」


辺境の女が、小さな世界の、細かな利害の、儚い楼閣にいるものが関わればどうなるか?余波で消し飛ぶだけだろう。


「ほんの少しの風向きで世界を敵に回すわよ」


権力中枢は不動。

権力末端は盤石。


中枢周りが一番不安定で危険。


現に彼はあの器でこんな所に飛ばされた。

そして青龍の、世界の中枢はそれでもなお彼を忘れていない。


安全のためなら、頭目が利用したいなら、左遷されて忘れられた貴族であるべきだったのに。


青龍の中枢である公女、青龍の有力武人である女将軍と騎士団が、勝手に集まってしまう。


これ以上無いくらいに不安定。

あの、青龍の貴族を後ろ盾にすれば、一蓮托生。

明日には追われる身にすらなりかねない。


青龍に、世界中に。


「あら素敵」

は?

「貴女も素敵だけど」

わけわかんない。なんの話よ。


「私が貴女を好きな理由、ああ、もちろん人柄がね」


子供を産むほど好きだった男と同じ種族だから?


「わかってないな?」


????・・・・・・・・・・・・・・・なんで、頭目は隠していた正体を晒したのかしら?あたしに?しかも口封じもなし??


「貴女が私を好きな理由と同じ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・確かに、不思議、かな??


あたしはなんで頭目に気を許したんだろ??裏家業の危険人物に???青龍に頭目の正体を告げた時も、利用するつもりになれなかった。

青龍が港に来てから教えたほうが、取引材料になったのに。


ううん、港に青龍が行くと知って慌ててしまったんだ。

だから引き合わせて・・・しまった。


「子供が好き。貴女も私も」


だから?


「あなたは種族の特徴かもね」


エルフは余り生まないから、子供は大切にする。自分の子どもも他人の子どもも。


「あたしの生い立ちは知ってるわね」


知ってる。

聴かされた。


盗賊ギルドの有力組織、その頭の末娘。


ワガママいっぱい、贅沢なにもかも、甘やかされ甘やかされ甘やかされ、ちやほやちやほやちやほやされて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


なんで頭目になったの?

ギルド全体の?

実力も運も地盤もあるだろうけど、なんで、なる必要があったのか。


「恋をしたとき、あの人を護ってくれなかった」


相手のエルフを、か。


「あの子、私の子供を」


殺そうとした、か。

優しく優しく何でも叶えてくれた父親と兄達が。


「それでわかった」


自分自身が大切にされていたんじゃない。血族の末娘が大切だっただけ。役目を果たす血を継ぐ女が必要だっただけ。


「知ってみれば、とっても簡単。支払って、受け取る」


吐き捨てる頭目。

簡単で真理で――――――――――無価値。


『義務と責任』『貨幣と商品』『保護と奉仕』

だから、か。

反吐がでるわね。


大切にしてやったから、大切にしかえせ?


誰が甘んじていてやるものか。

切り刻んでなお収まらない胸くそ悪さ。

ああ、だから、頭目になったのね。


「だから私は大っ嫌い」


自分の子供ですら道具でしかない奴らが。


「だから私はだーい好き」


子供を無条件に護る人が――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ああ。



「彼はどうかしら?」


飛沫からあの娘たち、妹たちと頭目の子供を護った。


反射的に、じゃない。

反射的に道化を攻撃したあたし。


それを見て、考え、判断し、子供達を護る最善の動きを行った彼。


頭目の子供。

ただ知り合っただけの子供たちを、その身で庇い、それを不思議にすら感じない。



「あたしの子が誰かに殺されたら」


ハーフエルフと知られたら、いつでもあり得る。

『殺されそうになったら』じゃないんだ。


「彼が街を滅ぼすでしょうね」


青龍の貴族、その怒り。

当然の帰結。


あたしは疑わない。


ただ、たまたま、知り合っただけの、たまたま隣にいる子供。

傷つけられたら怒る。

本気も何もない。

青龍はただ怒る。

怒って何もかも破壊する。



あの娘、あたしが守る、あの娘をだまして利用した太守府の市民。


ソレを知った彼は邦を焼こうとした。

躊躇なく、当然に。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――あの娘自身が赦しを請わなければ、あたしたちはここにいないだろう。

だけど、そうすると。

あたしは頭目に問わざるを得ない。


「子供を護る為、じゃないの?」

「あたしは最初から、親子で大陸中を逃げ回る覚悟よ」


いけるところまで。


ずっと前、青龍が至る前から。

いずれ、来る日の為に。

力を蓄え隠れ家を創り、いつでもすぐになにもかも捨てて。

我が子、ハーフエルフのあの子と生きる為に。

ハーフエルフが生きられる場所が無い大陸で。


「その時に彼が一緒なら幸せじゃない?」


彼って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・かも。


「例えば失脚して龍の力を失っても、青龍から追われても」


逃げられないけど。


「私を愛してくれなくても」


同じことが大切だとわかってくれる人がいる――――――――――頭目が先に殺されても。


「貴女の子供が殺される前に、彼は盾になり殺される」

「私の子供が死ぬときは彼が手を握っていてくれる」


頭目は笑った。少女のように。


「長生き出来たらいいけどね」


最初から、生を全う出来るなんて、考えたことはない、か。


「死にたくはないけれど、長生きしたいとも思わない」


ハーフエルフの子供をもつ、持ち続ける。

誰にも認められずに、ほうっておいてもらえずに。

それはそういうことだ。


「もちろん、彼に心から賛成してもらえないと話にはならないわね」


だから口説く。誘惑して、篭絡して、決して後悔させない。


「ん――――――――――――――――――――なら、彼が失脚したほうがいいのかな?間違いなく、そうならないと妻にはなれないしね」

身分の桁が違うから。


「そのままの立場で一生添い遂げるほうがいいでしょ!!!!」

妻になりたいという気持ちはわかるけど。


あたしが怒ると頭目、彼女は舌を出した。からかいすぎ!!


「よくわかった。あなたの幸せが見つかったのね」


同じ目線の彼。


妻になれなくても仕方がない。

短い余生にしたいわけでもない。

長くとも、短くとも、三人で生きるのは楽しいだろう――――――――――

――――――――――――――――――――三人で死ぬのは素敵だろう。


「素敵な明日でしょう」


もしかしたら。

人生がむしろ短くなったとしても――――――――――負けたわ。言ってやらないけど。


でも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「あの子の父親を忘れたのか、って?」


!!!!!!!!!!


「貴女が考えそうな事」


!!!!!!!!!!!!!!!


「そうね~~~~~~~~」


うわー凄く腹が立つ


「貴女は生涯独りの男を愛するでしょうね――――――――――片思いでも」


何百年よ!!!あたしエルフよ!!!!!!!


「エルフが人と付き合うのはそーいうこと。でも、お勧めしない」


ニヤニヤと笑う頭目。


「永遠のすれ違い、なんてなったら」


埠頭のあの娘達を見た。


「貴女の大切なお姫様――――私はなにも知らないから安心して――――――あの娘たちの恋煩いになにもしてやれないわよ」


恋?恋煩いって!あの娘達はまだ子供よ!


「わからない?」


――――――――――無償の愛。無限の愛――――――――――。

――――――――――愛を無限にそそがれ続ける――――――――――。

それに狂わない女がいるのかしら――――――――――。



「詩?」


それには答えない頭目。もしかして自作?


「どんな愛でも、深く真摯なものならば、逃げられない―――――きっと、お互いに」


青龍の貴族が子供に感じる、感じさせる、あたたかさ

あたしたちの世界に無いものだ。


だから、あたしたちには、よくわからない。


相手に何かを期待する、欲望しかない、あたしたちには。


きっと、青龍の世界固有のモノ。


きっと背景に在るのは青龍の無欲さ。

欲しがらなくなるほどの豊さ、かな。


それは青龍の、青龍自体の特徴?濃淡や高低、個人差はあるかもしれない。

女将軍も騎士長も、騎士達も僧侶も、もしかしたら道化だって、それは青龍の皆が抱いているかもしれない。


なら、皆が、彼を、その独りを選ぶわけね。

青龍の、何かを体現する彼を。


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