絶対静止系/貴方が存在する処
【用語】
『銃剣』
:軍隊で戦闘用に用いられる刃物。銃剣以外の刃物は例外であり、兵器とはみなされない。歴史的には細身で刺突用の着脱可能槍先として登場し、細身のまんま短剣になり、スコップ替わりになることを目指した幅広型に落ちついている。異世界派遣軍の主装備であるM-14用M6銃剣が使われている。M6は第二次世界大戦中に完成された銃剣の標準形で、細長い刀身を持つ短剣型。最新のコンバットナイフ形からみれば一世代前に当たる。ただ最新の銃剣は銃剣突撃を想定していないために、実用性で言えばこちらが上。
実際の戦場、互角の装備を持った歩兵同士の戦闘ではしばしば銃剣突撃/戦闘は発生している(それを記録しているのは主に英国軍。例によってフォークランド紛争などで)。ただし合衆国陸軍ではすっかりそれが廃れ、銃剣訓練自体が休止と再開を繰り返している。つまるところ合衆国志願兵、という名目の勧誘兵士の質が下がり近接戦闘(その訓練)に耐えることが出来ないから。同時に彼ら向けの最新装備(M-16系小銃)は耐久力が低く、銃撃以外に使えない。殴り合うことで壊れてしまうあたり耐久力ってレベルじゃねーぞ。それなら火砲に戦車や航空機で何もかも吹き飛ばした後で群れで投入したほうがマシで、っていうかそれ以外に使い道が無い。群れいっても、兵士の大半は本国の訓練基地(失業者隔離所)で生涯を終えるのでどーでもいい、という割り切りもある。
だから銃剣は飾りです!野営するとき以外使わないんだから銃につけることもできるサバイバルナイフでいいよね。
最新のコンバットナイフ形が旧ソビエト・現ロシア発祥であることからもお察しください。
兵士はキャベツ畑で採れる国。数だけ揃えて訓練無しで戦場に送り込む。命令通りに動くバリケードか土嚢。生き残れば兵士に成れるし、死んだって敵の弾を減らせるからいい。ってドクトリンな世界。とにかく訓練が省ける兵器、コストが安い使い捨て兵器(兵士)が重要。そりゃ銃剣戦闘なんかできるわけがない。AKで始まる名前の小銃が全部、弱装弾で威力が低い代わりに撃ちやすい、ってところが、もう、ね。
プロフェッショナルを造る気が無い当たりで合衆国陸軍といい勝負。
なお常に最前線で戦争を想定せざるを得ない合衆国海兵隊では銃剣術が省かれたことが無く、最新型銃剣の配備も一番遅くなった。というか、一世代前の銃剣と併用できる条件が整ってから、渋々嫌々受領した。最新兵器を倉庫にしまってしまうのは海兵隊の伝統です。
任務中のキャンプなんて想定してねーんだよ!
キャンプの道具で人殺しするんじゃない。
人殺しの道具でキャンプをするんだ。
――――――――――合衆国海兵隊ホーヴァス軍曹――――――――――
【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面階段/隊列先頭中央/青龍の貴族の手が届かない距離/一足飛びに届く距離/エルフっ娘】
「着剣!」
青龍の騎士長、号令。
あたしは少し驚いた。
珍しい。
声で指揮するのを驚く辺り、青龍に慣れてきてるわ。
普段であれば、魔法で合図を送るだけだし。
それが命じられた者の耳の中だけで、響く。
だから、あたしたちが合図や命令を聴くことは無い。
あたしは、まあ、なんとなく聴こえちゃうけれど。
なんとなく、っていうのは、本当になんとなく。
風に乗らない、皆の肌に響く言葉や符丁。
そんな僅かな音が、風に乗って耳に届くだけ。
あたしたちも、その魔法を時々は使っているし。
彼、青龍の貴族から贈られた、首飾り腕飾り脚飾り。
それはもちろん、あたし、たちが誰のものか示すしるし。
でも、そーいう一番大事な役割、に付け足しがあるの。
飾りを付けていることで、気持ちだけじゃなくて魔法で彼につないでもらえる。
声に出さずに喉を振るわせるだけで、彼に話しかけることが出来る。
彼の声を、耳の奥で直接聴くことが出来る、けどまあ、あまり使わないわよね。
あたしたちが何処で何をしていても、彼の耳に届く。
だから何だ、ってはなし
肌が触れ合うところに、常にいるんだし。
直接耳にささやかれた方がきもちい、嬉しいし。
本当は、身振り手振りでだいたい伝わる
でも使い方に慣れるように、とは言われている。
だからみんな、あたしたち同士で時々つかっている。
そのうち、彼、青龍の貴族、その施政が落ちついたら、むしろ出番が増えるかもしれない、かしら。
会見会合会食に園遊会、広く社交の範囲、つまらないこと。
彼が忌避する雑事で、彼の女が担わなければならないこと。
あの邦をうっかり滅ぼしたりしないようにしてもらうこと。
太守領の連中を、彼、青龍の貴族が、それと気づかぬうちに踏みつぶしたりしないように。
人死には、あの娘が嫌がるし。
彼だって、あの娘を悲しませたくないし。
妹分にしてみれば、付き合いがある人もいるし。
あたしたちが彼の足底から有象無象を遠ざけるために。
彼の癇に触らないよう、意識されないように立ちまわる。
そんなとき、この魔法は役に立つ。
事前ではなく最中に、彼の女たちでやりとりできる。
誰もがいる場所で、誰にも知られないように、誰とでも話せるんだから。
質問や確認。
所見や意見。
移動に集合。
あたしたちそれぞれの得意を合わせ、不得意を補い、彼の女という一つの存在として動ける。
あら?
つながり合っている、あたしたち。
それがない、すべての人々。
これって、帝国軍と諸王国軍の差と、おなじかしら。
帝国軍は魔法を使う。
それは剣や槍、弓矢を凌駕する。
と、あたしもそう思っていたけれど。
帝国の魔法使いには、感応系も大勢いたわよ、ね。
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿正面階段途中/青龍の貴族】
30点かな~。
俺は、声に出さずに採点中。
手順が身についているのはOK!
でも、それだけだ。
仕草が身についてないのはNG!
部下のことですよ?
俺は普段から女や子どもや女や女しか見ていない
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ということはない。
あえて言うなら女や子どもや女の娘や女以外をみないように気をつけているだけだ
――――――――――失敗は成功のもとですよ?
ついつい感想を口走ってしまうのは、女相手の時だけです。
俺が部下を褒めるときは、曹長の指示を待ってから。
兵の良し悪しなんて、俺にはわからないしな。
女の良いところなら、俺以上に判る奴はいないと言い切れる。
それを表に出すのを、はばからない。
身振り手振りに声に出す。
まずもって、俺自身が楽しむために。
それが相手に聴こえていても、問題はない。
綺麗、可愛い、色っぽい。
褒められて嫌がる人間に会ったことはない。
悪口と違って、賛辞ってのは良いもんだ。
見知らぬ相手であれ、見知った相手であれ、誰が褒めているのであれ、誰が褒められているのであれ、ね。
俺が都合よく解釈してるだけ?
などと苦笑した相手から言われることもある。
はてさて
――――――――――俺が俺の解釈以外を、考慮する余地があるのだろうか?
と聞いたら爆笑されました。
解せぬ。
まあ何にせよ、良い感想以外は口をつかない。
良いこと以外、感動がない、感情が動かないからな。
感情が動かなければ、でてこないよねそりゃ。
もちろん褒めなきゃいけないなんて思っちゃいない。
互いに讃え合わないといけない世界
――――――――――さぞや無価値で、罵るモノすらないだろう。
そーもそも、罵倒すべきモノを、わざわざ見たりするものか。
女や音楽、絵に映画、飲み食い他は相対値じゃなく絶対値。
そりゃ数値化には、なじまないよな。
相対評価と絶対評価、って意味じゃないから念のため。
みんなでサボってもペナルティがないし、成果もない。
みんなで努力して成果があっても、報われたりしない。
みんなを陥れるか他人を出し抜いた時だけ評価される。
みんなで留まる。
みんなで進む。
みんなで下がる。
みんなを外から見れば変化している。
みんなを中から見れば変化してない。
みんなの内で競い合えばどうなるか。
全体がどうなろうと、それを測る機能はない。
測れないモノは、皆が無視する。
集団内部で敵対し、牽制し、相殺して、自滅。
そりゃそうでしょうよ。
その方が楽だし。
相対して、誰かと比べて、って基準はそんなもん。
相対評価は、学校や官庁役所に大企業でお馴染み。
それがスタンダードな社会は、それだけで終わってる。
【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面階段/青龍の貴族の右前/魔女っ娘】
わたしの目の前、剣の柄。
わたしの背丈だと、ちょうど視線にかかります。
竜の骨を想わせる、滑らかな素材。
縄目を思わせる意匠は、滑り止め
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃない。
いえ、それも在るんでしょうけれど。
これは、所々に節があり
――――――――――やっぱり、蔦?です。
まるで蔦が絡んでいるような、意匠が剣の柄。
わたしは慌てて、鎧に目を向けます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり、葉、です。
鎧の表面、浮き彫りにされている、紋。
一見、竜の鱗かと思いましたが。
アカシャ、いえ、ミシャ、違わなくて、それだけじゃなくて、いろんな葉、ううん、花の咲く草木ばかりの葉を意匠にしてます。
花が好き
――――――――――――――それは一目で種類がわかり、春が好きなんだ、ってわかります。
春に咲く花ばかり、しかも、葉が若葉ばかりなんです。
肢体の香りまで、柑橘で、やっぱり春に花を咲かせる果実。
果実の香りに、同じ木の、花からとった香りを重ねてる。
ふつうは判りませんよね
―――――――――――――――わたしだって、ちい姉さまの調香を知らなければ気がつきませんもの。
しかも、見た限り、竜や家紋の意匠が、ない、ような
――――――――――眼が合いました。
帝国女騎士さんは、微笑み、わたしの眼を惹くと、ゆっくりと、判りやすく、ご主人様を見ました。
むぅ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃありません。
なんか素敵ですけど、ま、まけ、退きませんけれど、それよりどうして、そう感じてしまいます。
嫉妬より、反発より、あえてさきにして
・・・・・・・・・・・・・・・・・疑問。
この女が、この街を、壊したひとなのに。
戦のこととはいえ、人々を殺した。
戦が終わってなお、無辜の人たちを殺しつくした。
そしてそして、なお、こんな、綺麗な街を、綺麗と感じているはずなのに。
一生懸命に壊す?
花が好き。
春が好き。
御洒落が好きで、恋もする。
殿方の趣味も良い。
たった一人で臆すことなく青龍を迎え。
自分の魅力との技能で、愛する人を射止められ、ては困るのですけど、できるとお考え。
そんな貴女。
素敵で強い、女の人。
――――――――――なぜですか?
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿正面階段途中/青龍の貴族】
絶対評価はその真逆。
世界がいくつあるか知らんが、世界と俺は1対1。
美醜好悪快不快なんて、そんなもん。
在るか無いか。
出来るか出来ないか。
巧いか下手か。
そこに他者は介在しない、しようがない。
美しさや可愛さやエロっぽさ、ソレに対峙する俺。
例え複数平行同時進行体感決定に置いても、揺らぐわけがない。
エルフっ娘と帝国女騎士
――――――――――どちらが好いと、誰に言えようか?
幻想的と現実的。
神秘的と肉感的。
蠱惑的と挑戦的。
うむ
――――――――――最高だな。
Bestってのは、唯一にして無数。
頂点は常にたくさん。
究極も至高も、世の中にあふれてる。
もちろん、悲しいことに自分は独りしかいないので、優先順位と選択基準はあってしまうのだよ独りしかいないから。
選べといわれたら、帝国女騎士。
これから仲良くなるのだからね。
優先すべきは、エルフっ娘だが。
すでに親しいから身びいきでね。
マメシバ、元カノ、メンゲレ大尉、メイド長に、頭目、三佐は外見はともかく人間の範疇にないから三佐の副官、うちの軍政部隊を外周から包囲して幼女童女少女たちの貞操を護らんとして銃口と同軸スコープ越しに俺とよく目が合う女性自衛官たち
――――――――――意外や意外。
つまりアレだ。
出会いに恵まれてるな、俺。
みんな大好きです。




