表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十二章「男と女と大人と子ども」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

481/1003

DearではじまりSincerelyに続く。

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします



本作では一人称で描写される登場人物の固有名詞を使いません。

他の登場人物も複数ある役職名やアダナ等で呼ばれます。


文節の大半は一人称となりそれが次々と入れ替わります。

よって、以下の特徴で誰視点であるのか、ご確認ください。


・一人称部分の視点変更時には一行目を【】で区切ります。

・【語る人間の居場所/誰視点】とします。

・「誰視点か」の部分は「青龍の貴族」「魔女っ娘」など代表的な呼称(役職名やアダナ)を入れます。

・次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。


以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)




【登場人物/一人称】


『俺』

地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿/たいちょー》

現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様/我が君》

?歳/男性

:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。軍政官なのでいつも陸上自衛隊制服(常服)着用。元々訓練以外で戦闘服を着たことがない。


『あたし』

地球側呼称《エルフっ子/エルフっ娘》

現地側呼称《ねえ様》

256歳/女性

:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。シスターズの姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳、白い肌。長身(数値不明)。革を主体とした騎士服にブーツに剣が常備。


『わたし』

地球側呼称《魔女っ子/魔女っ娘/幼女》

現地側呼称《あの娘》

10歳/女性

:異世界人。赤い目をした魔法使い。太守府現地代表。ロングストレートのブロンドに赤い瞳、白い肌。身長は130cm以下。主に魔法使いローブを着る。


『わたくし』

地球側呼称《お嬢/童女》

現地側呼称《妹分/ちい姉さま/お嬢様/愛娘》

12歳/女性

:異世界人。大商人の愛娘。ロングウェーブのクリームブロンドに蒼い瞳、白い肌。身長は130cm以下。装飾の多いドレスが普段着。


『Colorful』:奴隷商人に造られたハーフエルフの最高級愛玩奴隷たち。髪の色がいろいろなため、神父が全員あわせて「Colorful」と命名。一人一人の名前は髪の色に合わせて白・朱・翠・蒼・橙と主人公が名づけた。異世界では用途別の奴隷を出産から教育まで一貫して生産する奴隷牧場がある。前領主(帝国太守)が奴隷商人に発注し、引渡し前に戦争開始。占領軍の太守資産接収に伴い軍政司令官に引き渡された。軍属として雇用契約を結んでいるので日本の労働法が適用される




親愛(Dear)なる生徒へ。


取り急ぎ忠告する為にペンを執った。


問い合わせの件は理解している。

すでに講義済みの範囲を超えて資料を確認中だ。

学者のくせに意味のある知識を持っている人間を知っている。


楽しみにしたまえ。

回答は軍事郵便を使うので安心されたい。




さて、本題だ。

君が現地の子供たちの世話をやいている、それは嬉しい驚きだ。


だからこそ。

“我々が何者であるか”

それを再確認しておいてほしい。


これは異世界不干渉原則のことではなく任務の話ではない。

個人的な関係においてこそ、重要なことだ。


君と子供達、その点だけを考えるといい。


我々が子供達を幸せにすることはできるだろう。

容易いことだ。

それは我々が担うべきことで、疑う余地はない。


問題になり得るのは、互いの距離の取り方だ。


異世界不干渉原則や防疫隔離は、十数年から数十年は続くだろう。

段階的に緩和、あるいは特例は儲けられるだろうが、個々人には関係がない。

それはなにも日本の都合だけで行われているわけではない。

それが異世界生態系や社会文化の存続に必要不可欠である、というのが前提だ。


忘れていただろう。


我々は通りすがりの侵略者にすぎない。

我々にも子供達にも、それぞれに歩む人生がある。

君にだけ、大人だけが責任を負う。

君との出会いを幸運でおわらせるために。


我々の存在そのものと、子供達の幸福を分けて構築するべきだ。

さもなければ、別離と破滅が等しくなってしまう。


或る段階を越えてしまえば、それは決して引き戻せはしない。

それは極短期間でも成立する。

男女関係ほどには不可逆ではないにせよ、侮れないものだよ。


なに、脅かそうというんじゃない。


幸いにして君と君のスタッフには能力がある。

ここしばらく軍政官交流掲示板では話題になっているぞ

現地の財物組織だけを組み合わせて、持続的自立的施策を造った。


それと同じ事は可能だ。

子供達が互いを支えざるを得ないように、共に歩こうとするように。

そして君にはそれが出来る。


同時にそれが、多くの軍政官の指針にもなる。

もしかしたら、今後の多世界間交流の基礎にも。

彼らが彼らだけで歩いて行けるようにすること。

親しき隣人、厄介な競争相手、良き敵として。


“お前たちは俺が育てた”

と言えるように、努力すること。




私信の形をとるために敬称階級は無視した。

問い合わせに対する回答を楽しみにしたまえ。



衷心より(Sincerely)




署名

マイケル(Michael)ホーヴァス(Horvath)

※第七章「神の発生」UNESCO Report.より


≪付箋≫

親展扱いなれど宛先人不在の為に、配達先軍政司令部代理指揮官(陸上自衛隊三佐)に受け渡し。


受領署名:〈墨塗り〉


合衆国郵便公社


≪付箋≫

原本翻訳文書/国際連合公用語第六言語対応

・英語 ×

・フランス語 ×

・ロシア語 ×

・中国語 ×

・スペイン語 ×

・日本語○


《国際連合安全保障理事会/軍事参謀委員会/プランC関連文書保管庫/没収文書ファイルより》




【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面階段/隊列先頭中央/青龍の貴族の手が届かない距離/一足飛びに届く距離/エルフっ娘】


あらためて。

よーく視る、あたし。

青龍の騎士団、騎士の所作。


戦う時は一人一人が分かれ、それぞれの役割りが合わさり、個々に動く。

動きも役割もバラバラなのは、腕と足が似つかぬと等しく。


俯瞰して組み立てなおせば、見えない陣形を体にし、主を頭にした一つの生き物。


集団ではなく、集まってもいない。

似ているように例えてみても、それはやっぱり非なるモノ。

――――――――――――――――――――――――――――あたしたちが生きていく世界。



青龍の騎士たちは、銃がある。

銃は槍より弓より長く、一人の間合いを広くとる。

だからもともと、集まらない。


だから、であれば、戦列を組む動きは必要無さそう

――――――――――なるほど。


だから、よね。


時々、青龍の騎士たちは並んで歩調を合わせるけれど。

単なる示威じゃなかったみたい。

あらかじめ、体に間合いを覚えさせる、ための工夫か。


並ばず、続かず、付いて行かない。

だからこそ、動きと拍子を合わせておく。

常にそれを再現できる、してしまうように。


互いを見ずとも、傍におらずに散開するからこそ、一つの型に合わせておく。


戦士の様に個々を生かして互いに合わせたりは、しない。

兵士の様に衆を頼んで互いに寄り集まったりも、しない。

騎士の様に抜きんでて突出し周を鼓舞したりも、しない。


体格を無視して歩幅を合わせること。

だから移動しながら陣形が崩れない。

合わせずに合う、まるで舞踏の様に。


追ったり追わせたり、一人一人の差異を生かして敵を崩す。


早い者は突出させたところを討つ。

速い者は孤立を誘って討つ。

遅い者は焦らせて討つ。


あたしもさんざんやった方法だけれど。

青龍の騎士には、そんな手口は通じない.




【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿正面階段途中/青龍の貴族】


先回りすることもないか。

ちびっこ二人の手をニギニギしながら考える、俺。

手札を増やす努力の前に、役を造る工夫をする。


ポーカーの必勝法、ではないが、楽しみ方。


コール。

※賭けの対象となるチップを積む

レイズ。

※積むチップの枚数をせり上げる。

ドロップ。

※積んだチップを棄てて勝負を降りる。


これこそ至高!

ドロー(カード交換)なんて飾りです!

偉い人にはわからんのです!


そもそもエライ人(三佐)はイカサマか投げプレイしかしないし。


手に入れると決めたら正攻法に目もくれない。

それ以外は執着がないから勝敗に無関心とか。


俺は既に役を造れる。

二手三手先なんか考えても、維持するコストがかかるだけ。


聖都という綺麗な遺跡。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、出来立ての、遺跡、的なとこ。

春の気候に、良い天気。

海沿いの土地柄に、安全な占領地。

そして国際連合略奪美術品の数々。


基礎がある分、この娘たちには馴染みやすかろう。


エルフっ娘は大陸中を200年近く旅した観光マニア。

寝物語にいろいろ聞いたけど、けっこうすごかった。

本当は俺が寝かしつけないといけないんだけどね。


魔女っ娘は異世界で一番好奇心旺盛な魔法使い。

いまは引っ込み思案だが、俺より前からエルフっ娘にいろんな話を聞いていたんであろうことは想像に難しくない。

ってか、今みたいに余人を交えず俺たちだけだと、けっこうはしゃぐよね。


お嬢は異世界有数の穀倉地帯、その富豪の娘。

宿を借りたこともあるが、邸宅や別荘が美術館状態。

美術鑑賞の趣味には慣れてるわけだ。

※第108話<風薫る。>~

第110話<戦争を欲するならば、平和に備えよ/Si Vis Bellum Para Pacem.>まで


そしてColorful。

意図はどうあれ、最上級階級に仕えることを前提とした知識を与えられ経験を積んでいる。

この娘たちが育った場所には、美術コレクションが整っているらしい。

しかも特定個人の嗜好に偏らず、広く異世界の通史に基づく作品群が。

異世界の美術史を造るにあたって、そこは極めて重要な意味を持つだろう。

とかなんとか。

※第381話<工芸品としての奴隷> より



勝ったな。


とはいえ先はまだまだ続く。

最後のそれこそ次の一手。

それだけ準備しとこうかな。


嗚呼!

この(J'ai)恍惚( l'extase)( etJ'ai)畏れ( l'extase)選ばれし(d'être)者ゆえに( choisi.)


次の観光の為に。

次の次の娯楽の為に。

永遠に続くニートの楽しさを味わい続ける為に!




【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面階段/隊列先頭中央/青龍の貴族の手が届かない距離/一足飛びに届く距離/エルフっ娘】


春先に出会った、彼、青龍の貴族。

そして青龍。


これから、永い時間を彼のもとで過ごす、あたし、たち。


ただ彼のもとで、ずっ~~~~~~~~~と、甘えて過ごす

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ダメダメ。


許されるし、誘われるし、堕ちそう。

でも、だめ。


揶揄われて弄られて玩ばれる、そのためだけの一生。

それはすごく、蠱惑的だけれど、それだけじゃダメ。

彼、青龍の貴族、その傍に居続ける為には足りない。


それはそうよね。


世界には、あたしと彼だけがいるわけじゃない。

あたし、たちと彼だけでもない。

彼がどれだけ強くても、強いからこそ狙われる。


あたしたちはそれぞれ、あたしは戦いに、備えないといけない。

それは、あたしだけじゃなくて、あの娘の問題でもあるんだから。


もう春も半ば過ぎ。

この春の間に見極める。


戦い方だけでも決めておく。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それ以外は、おいおい考えるとして。


それでも今までは、悪くないわよね、あたし。


見知らぬ相手を見切る。

即興で状況に合わせる。

そのくらいはお手の物。


なんだかんだで、百年くらい戦友が居なかったから。


その場その場の相手。

その時その時の状況。

その場その時の敵達。


敵も味方もあ互いを知らない。

だからこそ、巧くいっていた。

これからは、そうもいかなわ。


彼、青龍の貴族。

彼の女が、彼の手勢を知らないなんて許されない。

彼は気にしない、のが、大変不愉快だけど、あたしが赦さない。


だから知っていく、あたし。


青龍の騎士団。

団と呼ばれて、違和感が無い。


あたしたちの知っていた世界なら、団を成すなら百騎要る。

指の数で足りない数でも、青龍の騎士なら、皆怯える。


鎧は重い。

動き回るために人並外れた肉体が必要。

兜は見えない。

察するためには才覚と経験が欠かせない。


鎧を纏い続けることは、並外れた膂力(りょりょく)が必要。


騎士はそれだけでは務まらない。

だから騎士というのは、数が少ない。

それが、あたしたちの常識になる。


兜の中から機敏に反応するのは、人並外れた勘が必要。


独特の質感がある、鎧兜。

全身鎧でありながら、軽やかな動き。

顔も身体も見えないのに、反応する仕草。


目立たないのに眼を惹く、青龍の装具はとても軽いのだけれど、そうは見えない。

魔法で周りを把握しながら、周りからは面貌で見えにくい、と見えてしまう。

それをしらない、あたしたち以外から見れば、存在自体が不意打ちみたい。


怖ろしいことに膂力(りょりょく)も勘も、経験すら要らないんだから。


青龍は、武具防具を支えるために、力を割くことは無い。

あたしたちは戦う前に、装具を纏うだけで消耗するのに。


赤龍を含めた、あたしたちの世界。

肉体を前提としなければ、立つことすら出来ない世界。

消耗と休息を考えなければ、一歩も進めない世界。


あたしたちが求める、青龍の世界。

肉体は支えられ続け、その先に進むことが出来る世界。

補充と交換が当たり前、歩く前に跳びだす世界。


鎧を支えるのか、鎧に支えられるのか。

在り方がまるで違うのね。



そんな騎士だけで組み上げられたのが、青龍の軍。

彼、青龍の貴族、その郎党しかいないのに。

帝国軍の戦列槍兵達、千人が行進する様な威圧感。



あたしたちが、その力を知っているから?


ううん、違う。

青龍を初めて見た連中が、その仕草一つで絶望したじゃない。

※第9話<トリガー>他より


判らなくても、解る。

殺される側は、殺す側を見誤ったり、出来ない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ