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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第二章「東征/魔法戦争」

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48/1003

何事もなかった(大本営発表)



テロとの戦い。


そんな事をぬかすのは、無能か病人か詐欺師だ。

私が知る限り、判別しがたい。


そうなったらどうするか?どうも出来ないようにされた経験は豊富だがな。

今なら片付けてみせるさ。


テロが相手なら永久に勝てない。つまり、負けだ。

だから正規戦に持ち込む。


最低10万以上の兵力を一年以上動員し続ける。

敵にはそれなりの支配領域を持たせた上でな。


テロリストに領域がないなら作らせてやるさ。代わりに作ってやってもいい。


それ以外は無駄であり、犠牲は犬死以下だ。



ああ、大前提を、あえて言っておこう。言うまでもないのだが、あえてな。

あらゆるすべてはそれからだ。


テロを発生させた味方を名乗るクズを一人残らず銃殺にしてからだ。


《合衆国大統領/元合衆国統合参謀本部議長/転移後の国際連合軍事参謀委員会席上にて》




テロかね?

悪の所業だな。


テロを起こす者は既に負けている。

何も手に入らない。

悪だからだ。


テロを受ける者は既に負けている。

何一つ取り戻せない。

悪だからだ。



戦いにおいて、勝敗がつかない事は有り得ない。だが、勝者がいないことはよくある。

正義が無いところに勝利はない。


当然の事だ。強弱など無関係だ。理屈など無縁のことだよ。


実例をあげよう。


一つ。

我々は植民地帝国に勝利した。民兵の寄せ集めに過ぎない我々が、だ。

愚か者は


「勝ったから強かったのだろう」

「当時の宗主国は疲弊していたから弱かった」


などと強弁するが、結果から強弱を決めて勝敗に繋げるようでは不合理にすぎるね。


二つ。

我々が国内の敵に対峙した時、いろいろ言われたものだ。


連中は国中に浸透しており悪質な者と有益な者の区別がつかない、だからどうにもならない。

連中は国内資本の大半を担っているから、殲滅したら我が国経済が破綻する。

連中とは言えど皆殺しにしたら人類社会が黙ってはいない。


さて、どうであったか。


区別しなければいい。

我が国は発展し続けている。

確かに何か言っている人間は居たようだ。


あるいは、キチンと全滅させられなかったから、聴こえてこなかったのだろうか?

最後の点は検証の余地あり、だな。

次は、キチンと、な。


三つ、ん?もういいかね?

結構。


これは単純な事実だ。

我が国の歴史について様々な文献がある。

批判的なものもあるだろう。否定的なものもあるだろう。それらはいずれも事実を含んでいるといえる。


しかして、どのような立場のどのような見方からしても、明らかなこと。

我々は正しく、正しいから勝利し、しかして身の丈に合った物を手に入れた。


テロリストもカウンターテロリストも何も得られない、故に敗北であり、なぜなら悪だからだ。

ふむ。だから、互いにつぶし合うのだろう?まったく世界は善くできている。


《国際連合軍特別教導旅団副長/日本国与党連合常任幹事会資料より》




【太守府/港湾都市/埠頭の端/軍政司令部】


俺は潮の香りにさそわれるように海をみた。


とても綺麗な、澄んだ海。香りも、まさに『香り』と言うべきでたまらない。

こうして考えると俺は今まで『潮の香り』を嗅いだことがなかったんだな、とわかる。


今日は良い一日になりそうだ。


「HAHAHA!!Openingが銃殺&ナマズCUTデシタネー!Very!Very Nice!!!今日は処刑Days!NEXT FIRE?」


台無しだ。


ナマズ切りって?ナマス切りか?メッタ刺し帆柱吊し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・思い出しちまったじゃねーか!




【太守府/港湾都市/埠頭の端/青龍の貴族背後】


わたしはご主人様の背中を見つめています。

やっぱり、ここが一番落ち着きます。

ご主人様が見えないと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だめ、だめ

――――――――――ご主人様はいらっしゃるいらっしゃるいらっしゃるいらっしゃる――――――――――


「さ!確かめなさい」



【太守府/港湾都市/埠頭の端/軍政司令部】


俺に抱きつく魔女っ子。


涙目?

お嬢まで続くがこちらは悪戯っぽい笑顔。


魔女っ子は海苦手?

カナヅチとか?海水浴は一般的じやないのかな?まあ、時代的に、異世界的に?


なら大丈夫。

俺はもちろん海兵隊(神父)までいる。

子供の一人や二人で慌てる事はない。


「HEY!let’s ME!もふもふTime!OHU――――――――――!」


両腕を開閉し筋肉質な体をパシパシ叩く神父。

しかもグラサンと海パン以外脱ぎやがった!奴隷市場を出る時には着替えてたのか!お前は海水浴に来たガキか!

そして幼女童女にカモ~~~~~ン!


うわ。

退くわ~~~~~~~~~。



シスターズの小さい二人が俺に抱きつく。

気持ちはよく解る。


頭目の子は母親から俺に手渡し。

なにゆえ。



ふぁさ、と視界を覆うブルーシート。

赤い稲妻。

神父絶叫、から残像へ。



Fuooooooo――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――KA―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――カメ○メハ!!!!!!!!!!



両手掌底胸部死突。

ドップラー効果まで。

エルフっ子スゲーな!!踏み込みがすごいよ!!赤いキャミソールドレスでその踏み込みは・・・・なんでもありません。

いえ、タイトスカートじゃなくてよかったな、と、だけ、はい。


防水シート越しに心臓の上に喰らった神父はそのまま、キモイ笑顔のまま、海に落ちた。

直接触りたくなかったんだな。

わかるわかる。


水跳ばすなよ!子供が濡れるじゃねーか!子供とはいえ三人はキツかったな。

いや、面積的に。




【太守府/港湾都市/埠頭の端/青龍の貴族正面】


おっきくて、つよい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すりすり

―――――――――――――「なにウットリしてますの」―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――は!!!わたしがご主人様の盾にならないと!

――――――――――――――――――――――あ~~~~~~~~~~びしょびしょです!ごめんなさい!申し訳ありません!



【太守府/港湾都市/埠頭の端/青龍の貴族左】


あたしはすぐに跳び退き、飛沫をさけた。

あの娘たちは無事。


青龍の貴族が濡れてしまったので、駆け寄る――――――――――!!!!!!!!!青龍の貴族はタオルを受け取った。


頭目から。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・子供を一番安全な青龍の貴族に、わざわざ預けたのはこの為・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・負けた・・・・・・・・・・・・・・なんて言うもんですか!!!!!!!!!!




【太守府/港湾都市/埠頭中央/青龍の貴族正面】


わたくしは気を取り直しました。


「ささ」

頭目が素早くご領主様の腕をとる、フリをして挟みます。


ナニをナニにとはモウシマセンガ。


「お召し替えを」


頭目の視線の先は天幕、というより簡易宿舎。

青龍の『てんと』の横、お椀を伏せたような、建物ではないけれど、陣幕のような単なる仕切りでは済まないシロモノ。


「あちらは帝国が野戦露営に使うものです」


頭目が提案し、埠頭に駐留する黒旗団、の副長が建てさせたとか。

住み比べでもされるのかしら。


「防音にすぐれ、外からはのぞけませんのよ」


頭目が囁く。ご領主様の耳元で。


わたくしと、あの娘。わたくしたちの頭上で何を!!!!!


コレを聴き逃すと思ってるのかしら!

わたくしたちは慌ててご領主様にとりすがります。




【太守府/港湾都市/埠頭中央/軍政司令部】


俺は背中側から飛沫を拭い眼を見開いた。


春先だが余り冷たくない。

海流、かな?たしか南から北に流れているとか。


「暖流、か」


緯度からするとかなり北のココの寒さを和らげ、穀倉にしているのは海流だな。

幸いに突然現れた日本列島は遥か先なので影響は与えていない、今の所は。


大丈夫か?海流が変わったら気候変動で済むのか?ってより、公転と自転の周期と回転軸がズレているから季節があるわけで・・・・・・・・・・・・検証待ちながら、ほぼ地球と同じってのは、なんだかな。


空間転移説(同じ宇宙の遥か彼方への移動)より多世界転移説(時空間どころか平行世界の境界を移動)が主流な訳だ。


証明はいつになるやら。


海流については日本全国の学者がこぞって『人工衛星を上げろ!』ってシュプレッヒコール。まあ、別に海洋学者だけでもなく自然科学系の学者学生はみんな叫んでるみたいだが。


学者と学生が海洋資源調査の漁船に便乗しブイを投げ込みまくっている。


全国の漁協は密漁監視と海洋資源調査に総動員。

今一番忙しい仕事じゃないかな・・・・国連軍以外では。

異世界海洋生物による環境汚染を危惧するWHOの作戦。資源調査以前に環境把握を進めるECOSOC(国際連合経済社会理事会)の活動。


大陸側は国際連合軍海上封鎖中。

大洋側は偵察気球が確認した限り島影もなし。

学術調査は大洋側がメイン。


例によってWHOの『消毒』用対潜哨戒機に『除染医療隊』を積んだ飛行艇がエスコート。

日本列島外活動は国連管理下だからだが。


こえーよ!




【太守府/港湾都市/埠頭中央/青龍の貴族右】


あたしが割り込んでも頭目は知らんぷり。

まずいわ・・・・・・・・・・・・・・・武人の常、敵である帝国の装備に青龍の貴族が興味をもってしまった。


中をみたい、と思わない訳がない。


「ささ、お一人でなさるのは、わたくしどもの不作法になってしまいます」


な!たしかにそうだけど!貴人の着替えを、するに任せるなんて変だけど!

見え透いたことを!

青龍が、あたしたちの風習を尊重するのを利用して、密室で二人きりになろうとしてるだけじゃない!


だいたい!


武人なら外で着替えたって・・・・・・・・頭目が目配せ・・・・・・・・?・・・・・・??・・・・・

三人???????・・・・・・・・・・・・・え・・・・・・・つまり・・・・!!!!!!!

・・・・・・えと・・・・・・あんたたち!!!!!!・・・・・・・・・違うから!!!!そういう事じゃないから!!!!!!




【太守府/港湾都市/埠頭中央/軍政司令部】


俺の右に頭目。


盗賊ギルドのボスっていうとアレですが、二十代後半?もしかして前半?お子さんの年齢からそれは・・・・・とにかく、妙齢の赤毛美女でしかもフクヨカです。

ポッチャリではなくグラマラス。


腕をとられて大変心地よ・・・・・・・・・・・・・・・・・・心苦しいですハイ。


『消毒用意♪』

三佐!

ナゼ!

WHOの記章!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハッ!幻覚か!


コレは罠だ!

大自然の誘惑だ!

偉大なる宇宙の造形美が俺にナニさせようとしてるのか!

セクハラ訴訟待った無し!


目の前のエルフっ子は妹達+α(頭目の子)に言い訳?シスターズ内紛?


更に目の前、テント、天幕ってより、こりゃパオだな。

いわゆるモンゴルの草原でみる遊牧民用仮設住宅。


よし!ここに閉じこもろう。

一人でヒキコモってイメージトレーニングだ!

――――――――――――――――――――――けっして『本日半休』にしたい訳ではない。


帝国製か・・・中は?

ん?頭目?お母さん?いま、なんか、悪い顔しませんでしたか?


「ちょっと待った――――!アタシが征く!」


どこへ征く?何を言いたいんだお前は?


何故か出てきた元カノ。


何故に俺の背中を押すのか。


着替えんのか?なら後でいいよ、俺は。

押すな押すなバカ!おっと。

入り口の幕に皆で突っ込んでしまう。

まあたいした――――――――――


――――――――――――――「チョットダケヨ~~ン!」―――――――

AH――――――――――!!――――――――――




【?????】


そのき世界はナニかを――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――見なかった。


断じて見なかった。


海に浮かぶ海パン神父がいつのまにいやたしかに時間はあったがなぜそこにそんなすがたでまさか化粧は自前か何故にそんな労力をカケタノカキサマソノハカイリョクハマサニ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――テロリズム。


※『テロリズム』既存社会の不安定化から破綻までを目指す破壊活動。破壊対象は物理精神具体抽象を問わない。




【太守府/港湾都市/埠頭中央/青龍の貴族正面】


わたしは少し熱くなりました。

ほのかに暖かいお日様。

昼間の炎はあっついです。


ご主人の裾を掴んだまま海辺へ。

なんでお椀を伏せたようなものが燃え上がっているのかしら。

あら、潰れて形をなしていないのに、お椀?


なぜそんなふうに思ったのかしら。




【太守府/港湾都市/埠頭の端/軍政司令部】


俺は初春の風を味わう。

まあ、4月じゃ春先とは言いにくいが、風は涼しい。

やっぱり、北、か。


海。


底が見通せる。

木造帆船とはいえ大型船が出入りする埠頭。

それなりにある水深、その海底が見える。


生活排水はそのまま垂れ流しているのだが、下水道が無い代わりに上水道もない。

しかも人口が億で数える地球とは違う。

汚水の総量自体が少ないのだろう。

それでも河口付近なら街が半壊した瓦礫や死体が流れているのかもしれないが。


南から北に向かう潮流が、全てを北に流してしまうのかも。


そういえば、この街の人口は、資料が上がってたかな?いや、なにもなくて良かった。

ただでさえ、街が大変なんだから、ここではな。


何も起こらなくてよかった。

そんなことより。


何か起こしてしまうところじゃなかったか?俺は?




【太守府/港湾都市/埠頭中央/青龍の貴族の離れた後ろ】


あたしたち、というより、彼ら?青龍の一行は埠頭に来ていた。


港街を分ける大河の南岸。

普段は荷揚げ荷降ろしと、港の中心。


だが、青龍が攻めて来ていらい開店休業中。


今までの支配者、帝国は元々、海に関心が無かったとはいえ、全ての沿岸を征し、世界中の海運を手に入れた。

海運はつまり海軍でもあるから、帝国が沿岸から追われたということは、世界中の海軍が一瞬で青龍にのみ込まれたということ。


海戦と言えるほどの闘いもなく、全ての港を半月程で占領、か。

まあ『海戦がなかった』と言っているのは青龍だから、帝国からみたら大海戦があったのかもしれない。


そう言えば、旧太守は十数隻の軍船で南下して、海で青龍に皆殺し、だったわね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・戦争扱いもされないんだ。


内陸へ、内陸へ。

帝国は追い散らされたが、青龍の貴族に言わせると

『帝国は自分たちの得意な場所に転進』

したという。


沿岸、これも青龍の貴族に言わせると『海を征した』、彼らは海運を再開させている。

ただし、青龍の許しを得た船だけ。


勝手に船出してもかまわない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・沈められるだけ。

青龍は警告も制止もしない。


「ね」

頭目が声をかけてくる。


あたしも、話があったから、ちょうどいいわ。

青龍の貴族にかかわるのは、あなたたち親子の命取りになる。

そう、教えてあげないと。




【太守府/港湾都市/埠頭の端/軍政司令部】


る~~るる~~~~るるるる~~~~る~~るる~~~~るるるる~~~~る~~るる~~~~るるるる~~~~る~~るる~~~~るるるる~~~~る~~るる~~~~るるるる~~~~。


自己嫌悪のテーマ。



俺は何をしようとしてしまったのか~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!

全力セクハラ5秒前!!!!!!!!!!


しかも!直前に浮かんだのは保身!!!!!!!!!!三佐が出てきたって事はソレだ!

『やっちゃったら焼いちゃうぞ♪』

っていう焼き払われる自分の命が危ないっていうソレ!


うわ!サイテー!!


「自分を気遣う年若い(二十代)女を、優しさにつけこんで押し倒すところだった」


グサッ!!


「しかも相手は立場があり断れないかもしれない」


ドスッ!!!


「さらにその直前に気になったのは相手を傷つける心配ではなかった」


アグッ!!!


「怖い上司に殺される自分の身しか心配しなかった、その時は罪のない相手の女性も焼かれるのに」


アビャ!!!!!


「しかも、その女性の子供が見ている前で」


生まれて来てごめんなさい~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!


「ギルティギルティギルティ!let’s HELL!What the hell」


バキャ!OUTeeeeeee!


「まあ聴きなさい」


クビ、決まってます!ギブッギブッ!!!キクキク!!効いてる!!


「貴方は留まりました」


え?ご老人?


「そのままENJOY!HAPPY!!に出来た。誰も止める者は居ませんでしたよ」


突然俺を占め落としかけた褐色シルバーマッチョはインドネシアの老人。

すごい体術ですね。

あと少し続けられたら落ちてました。

首筋と腕だけで、格闘しているようにすら見えない。


「出来なかったのではなく、しなかった」


アレが無ければいったかも・・・・・。


「アレとは?」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――頭痛が!


「何もなかったのに、踏みとどまった」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何もなかった。


「貴方は勝った。負けなかった、のではなく、勝った」


老人は優しげな目をしていた。


「見なさい、その子を」


手のひらに、猫っ毛。

俺は頭目の子の、ずっと頭を撫でていたのか。


「見なさい、この子達を」


魔女っ子とお嬢。皆、微笑んでいる。少し、心配そうか??

いかんいかん。


「これが、勝利です」


老人は、立ち上がった。


「貴方は正しい。だから勝つ。当たり前です。それでも」


握手。

力強い、しかし包み込むような、大きくて暖かいおじいさんの手。


「おめでとう」




【太守府/港湾都市/埠頭中央/青龍の貴族背後】


わたしにはよく解りませんでした。

海を眺めるご主人様。

ゆるぎなき視線。


隣にいらした褐色の、お爺さん。

お爺さんは去り際に、わたしたちを見つめます。


「君たちの髪を撫でるのは彼の特権だろう」

「「はい」」


頷い、いえ、その、特権だなんて!ちいねえ様!なんで落ち着いてるの?


「あちらで正義を行うが、君たちには早いので、まだ近づかないで欲しい」

「「わかりました」」


頷いたわたしたち。少し声を潜めるお爺さん。


「うちの団長が君たちと張り合うだろう」


青龍の女将軍さん。


「堂々と戦って、もしよければ、少し分けてあげて欲しい」

「「嫌」です」


お爺さんは破顔されました。同じ答えだな、と。


「いや、確かに、道理だ」


いやふぉん、ぱそこん、で誰かに命令されているご主人様を見るお爺さん。


「なるようになる、な」


わたしたちに敬礼。


「では・・・・・・・・・・・・君たちは答礼してはいけない。普段通りに礼を示しなさい。加減は自由に」


お辞儀するわたしたち。

そしてわたしは、ちいねえ様に頭目さんの子と、歩き出すご主人様に慌ててついて行きました。



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