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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十一章「夏への扉」

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473/1003

石橋を、叩いて跳ぶのは粗忽者?/Leap Before You Look.〈W.H.Auden〉

【用語】


『軍装』

:国際連合軍の基本兵装。平凡ながら実戦を繰り返し動作の安定度で知られたM-14小銃。「Land Warrior」(※1)を原型としながら完全にコンセプトを造り直した防片プロテクター&通信戦闘管制システムによる防具。将校(場合によっては下士官)と衛生兵、パイロットはガバメント。7.62×51mmNATO弾(※2)に45ACP(※3)。


※1:史実では情報化の意味を取り違えた爆笑兵器として嘲られ、オスプレイの様にうっかり採用されることもなく無事終了。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・したよな?

時々思い出したように似たような欠陥アイディアが国防高等研究計画局に持ち込まれたり内部発生します。MPさんこっちです。


※2:志願兵制による兵員不足、他に行き場のない最底辺からなる勧誘兵士の低レベル化、そもそも国家間戦争の可能性が無く実戦は限られた精鋭だけで終わる、などの先進国特有の事情で定着した5.56×45mm弾。

弾頭が軽く装薬も少ないために運びやすく撃ちやすいので、兵隊の形を取らせるには最適。

軽い弾頭は容易く風に流され、遠距離ではあたらないしちょっとした障害物や傾斜ではじかれる。命中しても小さな弾頭は貫通力が高く、標的を戦闘不能にするには山の様に撃ちこむ必要があるので結局弾薬が重い。

そんなわけで実戦には向かない。

「甘言で釣らないと来ない」志願者(概ね所得若年失業者)に5.56mm。

だって安く付くしね。

「呼ばれもしないでやって来た」志願兵(概ね軍人家系や意識高い系)に7.62mm。

死なれちゃ困るので。

先進国軍隊では5.56の人形を盾にして、7.62が敵を倒す形が定着している。

というか人形まで最前線に立たせないといけないのは米軍だけかもしれないが。

だが合衆国海兵隊は陸軍より志願兵の割合が高い。


※3:拳銃が階級の付属品であるときは9mmでも問題はない。先進国内での使用を前提とした場合、殺傷力が高すぎると困るのは警察と同じ理屈。ただ異世界では実戦しか想定されないために45ACPに切り替えられた。幸いにして未だ機会が少ないので今のうち、自衛官将校は日夜ガバメントを撃ち続けている。生き物に対して撃っているのは黒旗団かWHO/UNESCOの将校ぐらい。




「正気か?」

「百万動員は既に始まっております」

「100万とは、馬鹿以外には考えつかぬ数字だの」

「間抜けと阿呆は『多』と『大』を好みますから馬鹿なのです」

「数だけはいよう。退役軍は陣単位で居住しておるし、通常訓練隊や士官学校生、傭兵隊に貴族私兵。極論すれば労役徴用と同じ手法で組を造り、領民に隊伍を組ませることもできる」

「ご賢察にございます」

「兵糧はどうする。半年前、帝国の全盛期ですら難しい。間違いなく国が傾き、戦い始める意味がない。そこまですべき相手がそもそもおらなんだが。しかも今は、大陸随一の富を持つ沿岸部は年を経た備蓄と共に失落。残された耕地の大半、内陸高原は穀倉ごと踏み荒らされた前線。そして季節は収穫からほど遠い農繁期。備蓄は種苗まで使い尽くし、穀物の値が年一番になる、つまりは量がすくない刻ぞ。兵だけではなく、兵糧を集めて運ぶ者まで含めて、何百万人分の糊口をしのげば

――――――――――戦の前に、帝国が滅ぶ」

「ご賢察にございます」

「装備もだ。剣も槍も鎧も使えば減る。矢など言うまでもない。日々の調練だけで減る。折れる欠ける痛む無くなる。ましてや促成やら、寄せ集めに戦の真似事をさせるとあらば。不慣れな調練でどれだけ費えるか、熟練兵の年教練より新参兵の日々教練。軍規に疎いか忘れかけてるような連中だぞ。しかも不足で値が上がりよるなか、金に代える者が出る。誰が集め、誰が造り、誰が繕い、誰が見張り、誰がまとめる

――――――――――戦の前に、軍が無くなる」

「ご賢察にございます」

「で?」

「費えはそれほど、かかりませぬ」

「ほう」

「百万を調えるは、3ヶ月を先を目処といたします。まず各々がところ動かずに、まとめるところから。次に隊伍を組みあうように。さらに装備を整えつつ。最後の十日に集めまして。そのまま戦にかかります」

「兵糧は節約なるが、まだ、足りぬ」

「ご明察にて」

「数を集めること、隊伍を組ませること。

 新たに集める者は、それだけに限ります」

「戦にならぬ」

「戦をしませぬ」

「ほう――――――――――盾か」

「ご明察にて」

「ならば戦が始まり、そこから兵糧も半分以下だの」

「流石は御前。蒼備えと殺りおうて三日もすぎて尚、そこまで残せると言われる。希有壮大なる御一人(おんひとり)、感服致しました」

「筋道はなろうが、まだ、足りぬ」

「ご明察にて」

「半分殺される前に、軍など消えよう」

「十の一人が殺られれば、士気以前に御座いましょうな。いえ、前衛が崩れますれば、皆続きますか」

「ましてや正規兵ではない。十に一人どころか均してしまえば、軍が砂になるのは百に一人で足りような」

「ご明察にて」

「して」

「蒼備えは期待を裏切りませぬ」

「はは!百に一人が殺された、そんなことに気が付かせるほどぬるくはない――――――――――確かにな」

「これまでの戦を診る限り、戦場で負けたと気が付いたかどうか。瞬く間に殺しつくされ死体を見る間もありませぬ」

「それだけか」

「ご明察にて」

「今回は戦いになる。勝ち負けが判るくらいにな」

「流石は御前。蒼備えと殺りおうて、そこまで持たせると言われる。希有壮大なる御一人、感服致しました」

「で」

「別段も備えあり」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よくやるの」

「皇帝陛下の御深慮に寄り『殺さないでいただけた』からこそ今が在る者たちにございます。ようやっと費えとなることに言祝ぐべきことにございましょう」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・主が言うのなら、そうなのであろうな」

「帝国もまた、そう在りたいものです。蒼備えがむしろ『生かしておかねば』思うように」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よくまあ、御前会議前に独断で」

「ご明察恐れ入ります」

「条約にせよ決戦にせよ軍の再編成は必要

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・手回しが良いことだ」

「恐れ入ります」





【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿正面階段途中/青龍の貴族】


セーフセーフセーフ。

人知れず九死に一生を得た俺。

恥の多い人生になるところだった。


そうじゃないのか?

問われたら、堂々と、言い切れる。


見たまえ諸君!

シスターズ&Colorfulを!


観光を楽しむ魔女っ娘。

いや、俺を見上げなくていいから。

ほーら、大きい柱だぞ~!


よし。


お嬢は異郷に眼を輝かせる。

いや、俺にしがみつかないでいいから。

ほーら、吹き抜ける風いいね~!


よし。


立ち位置を時々代える五人、Colorful。

ローテーション組んでんの?


俺の背中に穴が開くから凝視

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・してもいいけどね。


まあ、よし。

というわけで、自慢の娘たちである。

ので俺も胸を張っているのだ。


しかも帝国女騎士もリラックスしてくれている。

時々は笑みをくれるから、俺を忘れないでいてくれています。

俺たち虐殺者に囲まれて、女独りで敵中に居て、まったく緊張していない。


すごいなー。

真似できないなー。

見習ってみようかなー。


いつか。


そりゃもちろん、修羅場のくぐり方が俺なんかとは段違いだろうが。

手の届く距離で刃物や鈍器で斬り合いド突き合う人生だもんな。


俺が捕虜になったら、こんなに堂々と振る舞えるわけがない。

部下も子どもたちも居なかったら、取り乱す自信がある。


だからこそ!

俺が舐められてるんじゃないかと推測できる。

だからこそ!


自慢です。

軟弱者も役に立つ。


否!


軟弱な俺だからこそ、役に立つ。

誰にも怖がられないから。

想像してみればわかるだろうよ。


ここにいるのが、三佐だったら?


女騎士が自害しかねない。

マジ。


あの女、捕虜収容や尋問にもかかわってるからね。

俺の知り合いは、そっちに配属されてる奴も多い。

丸腰で屈強な捕虜多数を引見する姿、アレだって。


太守領では比較的、おとなしくしてるんだろうな、相対的には。

俺みたいに子供や年寄りから道を訊かれないタイプ。

胸を張って生きるって大変だよね、主に周りが。


え?

俺が胸を張っているかって?


恥が少ないとは言ってないよ?

無いなんて言ってないよ?


今はそうでも、これまでは?

勘の良いキミにはわかるよね?




【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面階段/青龍の貴族/隊列先頭中央/エルフっ娘】


あたしはカタナを持っていないことに感謝。


この女(帝国女騎士)に隙を見せるわけにはいかないもの。

彼、青龍の貴族、その視線がこの女(帝国女騎士)に向いた。

だからといって反応したら、この女(帝国女騎士)の思うつぼ。


気にしないそぶりは出来ないけれど、一瞥するくらいでちょうどいい。


あたし、たちが彼の女だってことは、はっきりしっかり明瞭に示す。

この女(帝国女騎士)がソレに踏み入ろうとしていることに、敵意も示す。

だけどそれは、あたしたちが決めることじゃないことも、彼に示す。


つい反射的にカタナを構えたら、なにもかも台無し。


あの娘、妹分は彼が。

あたしのカタナは青龍の騎士長が。

それぞれ 持ち歩いている。


騎士長が一瞬、受け取るのを躊躇したわよね、やっぱり。


あたしが彼に渡したカタナ。

彼が騎士長に渡したカタナ。


あたし、主の女、そのカタナを受け取ってよいか。

そのあたり、彼、青龍の貴族より、判ってるのね。


あたしがカタナに託した想い。

彼がカタナで表した信頼。


それだけ、騎士長が重んじられているってことだけれど。


彼に仕える人の苦労が偲ばれるわ。

これからも続くんでしょうけれど。

あたしも、見習わないといけない。


女として仕える。

騎士として仕える。


あたしは両方始めたばかり。


そんなあたしの見本、騎士長は、あたしの後ろに付いた。

彼、青龍の貴族の視界を塞がないようにしたうえで。

右手にカタナを持ち、いつでも放ることが出来る。


一挙動で、あたしの手にカタナは移るわね。


騎士長は片手銃しか持ってない。

もともと、騎士たちの采配が役割り。


あの娘、妹分、Colorful、一番弱いところを守るのが、彼。

一番強い力を、一番弱いところに据える。


とっても理に適っているわ。


彼、青龍の貴族はつくづく実利的。

頼りになるともいうけれど。


判ってるのかしら?


女が大事なものを男に捧げる。

剣士が剣を主に捧げる。


そーいう意味なんだけれど、でも、笑われるかな?


何を今さらって。

それはお互い様だけど。

貴男だって、いつも示してくれてるし。


自分のモノだって

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あたし、たちに、ね。




【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿正面階段途中/青龍の貴族】


俺は前を向いて歩く。

失敗を反省したからそれでいいのだ。

正確には失敗の可能性を反省した、のだし。


転ばぬ先の杖、最高じゃないか!


俺だって過去の女に思いをはせるときが無いでもないが、それはいい。

よほどのことが無ければ過去にならないしね。

異世界転移とか。


日本以外にいた君とはもう会えないのだ、そう想うと悲しいなあ。


それはさておき。

異世界転移で別れ別れにでもならない限り、しばしの別れでしかない。

しばしとは、年か日か、あるいは時間単位。


出征するときにはお別れ会が続いたが。


これが最期とくど

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ではなく。

これが最後と逃げ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・たりはせず。

これがラストと色々な理由で詰め寄られた時はどうしようかと思いましたが、子どもを盾に距離を空けつつキミの為、もあるから、必ず帰ってくる待っていておくれだがもしものときは忘れて幸せになってほしいとかなんとか。


良い思い出だな!


生きてさえいれば、また出会って口説くときもある。

それは間違いなくあるのであって、例外は少ししかない。

だからそんなに考える必要もないし、時が来たらまたなにか思いつくからどーにかなるであろう。



重要なのは、エルフっ娘。


いやホント。

マジ。

信じて。


一番大切なのはキミなのだから

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・信じられると、それはそれで心が痛む。


時々(朝晩)口頭で確認しますので、程よく信じてください。

文書の提出は上司と相談が必要なので求めないでください。

信じる:信じない、7:3くらいがベストなんですよ、俺調べ。


いやほんと。


お釈迦様も言っていた、と聴いた人が書いた文献を読んだ人の書いた資料を読んだことがある。

サンクスリット語は、古語現代語含めて、俺が知らざるところ。

だがきっと言っていたハズの真理。


――――――――――なにごとも、ほどほどに――――――――――


言い換えれば、中道を征け、行け、イケ?


さすがである。

教えを護るためなら戒律なんて変えてもいーよ?

信徒が生きるためなら、何してもいーよ?

とか言っちゃう人は違う。


なお仏陀は〈悟った人〉という意味で、神様じゃありません。


異世界に響く般若心経サンクスリット語聖歌。

異世界人には聴かせられないけれど。

異世界文化不干渉原則。




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